空しき旋律*儚き唄

□第13箱 先行ってて
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『黒神くん
 …何できみがここにいるのかな?』

半袖ちゃんに聞いてわざわざ時計台まで来てみれば、その前で軍艦棟の管理人にばったり会いました
…意味がわからない
管理人の仕事はどうしたんだよ、職務放棄は良くないよね

「親しみを込めてお兄ちゃんと呼んでくれって言っただろう?」

『…………気色悪い』

わたしも片割れ大好きだけどさ
この人の妹趣味はなんかもう常軌を逸してるよね、うん
全く…自称も他称も変態だからってそこまで堂々としてるのもちょっとと思うわけでねー…

「まあ、僕としては和水ちゃんがここにいる方が不思議なんだけど
 …もしかしてフラスコ計画に参加してるのかい?」

彼の纏う空気が少し変わる
黒神くんのこういう所は嫌いじゃない
やっぱりこの兄妹は面白いね

『まさか』

自然と口角が上がるのがわかる

「だとしたらなんで」

『目の前の惨状を見たらわかるでしょ』

黒神くんだってわたしと同じような目的のはずだからね

「これは阿久根くんの仕業かな」

『破壊臣…だったっけ?』

平然と言いのけてるけど、そういうレベルなのかなーこれって
阿久根くんは心を入れ換えたんじゃなかったのか…?まあ、どっちでもいいんだけどね

「和水ちゃんも押してみる?」

瓦礫の中から拾い上げた何かを黒神くんがわたしに見せる
どうやら残骸になってしまった扉の暗証番号を入力する端末みたいだね

『開いてる…っていうか扉が破壊されてるのに押す意味あるのさ?』

「一応…ね」

『ふーん』

興味がないわけではないんだよ
正直、黒神くんが何を考えて何をしてようとどーでもいいだけで
…まあ、その手に握られていたものは気にならないわけでもないんだけど

「和水ちゃんどうしたの?」

わたしとしたことが、黒神くんにバレてしまうくらい一生懸命それを見つめていたらしい

『…黒神くんは先行ってて』

先ほど投げ捨てられたそれを拾って適当な数字を叩く

『開いたね、一応』

わたし程度の異常(アブノーマル)でも開けられるってことね
まあ、これも予想の範囲内
一応、異端の十四番(イレギュラーフォーティーン)に誘われたわけだし?入るつもりは一切ないけどね
少しこの扉の性能が気になってみて、再び同じ数字を叩いてみる

『開い…た?』

ちゃんとコントロールしていたはずなのに…

「和水ちゃん?」

『今行くよー』

そろそろ夏休みだし、その間久しぶりに母様と手合わせするのもいいかもしれない
アレ以来そーゆーのとは、ご無沙汰だからねー
流石のわたしも鈍ってしまったみたいだよ
……ちょっと気になることもあるし

わたしは端末を瓦礫の中に置いて、黒神くんの後を追った


中に入ったら大きなエレベーターがお出迎えしてくれた
…んだけど黒神くんはスルーして階段に向かっていた
って、え?どーゆーこと?

『エレベーター使わないの?』

「それ地下十三階へ直通だから
 めだかちゃんたちはまだそこまで行ってないだろうし」

『……足腰の弱い人に随分と不親切な造りだね』

十三階まで階段で降りなければいけない、ってことでしょ?
要するに帰りは下った分登らなきゃいけないということで…

……もう、帰っていいかな


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