幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
1ページ/35ページ

――幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

〜序章〜



世界には三つの世界が存在している。



一つは人間が住む人間界。


二つ目は死んだ人間が行く死後の世界と言われている霊界。



そして魔界。



この魔界は邪悪な妖怪が住んでいると言われている世界。



障気に満たされている魔界では普通の人間はその障気に触れるだけで忽ち仮死状態に陥ってしまう恐ろしい世界だ。



本来なら人間は魔界に立ち入ることが出来ないのだが、何かのはずみで発生する歪みによって偶然迷い込んでしまうことがある。



いわゆる人間界で言う神隠しである。突然行方不明となっていた人間は魔界に迷い込んでいたのだ。



迷い込んでしまった人間は妖怪の餌となるか無事に戻されるかは見つけた妖怪の手にその人間の運命は委ねられていた。



古来から続いていたこの風習も三年前から変わった。


それは無数の小国が存在する魔界が三年前からついに一人の妖怪によって統治されて一つにまとまったからである。



その妖怪の名は煙鬼(えんき)。



煙鬼は以前は魔界の田舎で妻と平凡に二人で暮らしていた。



その煙鬼が王になった背景には三年前に人間界から魔界にやって来た浦飯幽助(うらめしゆうすけ)という男の存在が大きく関わっていた。



浦飯幽助の発案によって開かれた魔界の王を決める大会、魔界統一トーナメント。



煙鬼は無名ながらもその実力を発揮して見事に優勝を勝ち取ったのある。



王となった煙鬼は異世界である人間界と霊界に対して融和政策をとっていた。
特に人間界に対しては人間に迷惑をかけないことを掲げた法律を次々と制定。



煙鬼の発案した法律により迷い込んだ人間を無事に保護して人間界に帰すこととなったのである。



その為に魔界全土の各地区にパトロール隊が組織された。



そのパトロール隊の隊員は魔界統一トーナメントの敗者を中心として結成されていたのだった。



――魔界の2番地区(階層)


崖の上に三人の妖怪が立っている。



彼らは魔界に迷い込んだ人間を捜索するパトロール隊である。



崖から見える光景は見渡す限り深い森が広がっていた。



「飛影(ひえい)、人間は見つかったか?」



巨体の妖怪が隣にいる男に問い掛ける。



飛影と呼ばれたこの男は、黒いマントを纏い、小柄だが鋭い目つきをしていた。



彼は目を瞑り、何やら精神を集中している。



彼は邪眼と呼ばれている第三の目を持っていた。



それは特殊な能力で千里の先すら容易く見る事も出来る。



飛影は崖から見える森に人間界から迷い込んでしまった人間の居場所を探していたのだ。



飛影は目を開くと巨体の妖怪の問い掛けに答える。



飛影「見つけた」



巨体の妖怪は「流石だ」と言うかわりに飛影の肩を叩く。



「ったく、今月に入ってもう四度目だぜ。何でこんなに迷い込む人間が多いのだろうな?」



今度は長身で派手な恰好をした妖怪が飛影に問いかける。



飛影の側にいる二人の妖怪の名は派手な妖怪が木阿弥(もくあみ)、巨体の妖怪が雑魚(ざこ)。飛影を含めた三人は魔界最強と呼ばれている妖怪・躯(むくろ)の元直属の77人の戦士の一員であった。



飛影「さあな」



スッ



飛影はそっけない返事を木阿弥に返すと外していたヘアバンドを装着して邪眼を隠した。



雑魚「見つかったなら二人共行こうぜ!この辺りは幻魔獣が多い。早く保護しないと人間が奴らの餌になるぞ」



木阿弥「そうだな、行くぞ飛影」



飛影「やれやれ…」



フッ



三人の妖怪の姿がその場から消え去った。



――2番地区(階層)の森



深い森の中は非常に暗く不気味な雰囲気を醸し出している。



この森には獰猛な魔界特有の獣と幻魔獣が多く生息していた。



そんな魔界の森の中に何かの歪みから迷い込んでしまった一人の人間の女性が倒れていた。



女性は魔界に漂う障気を吸い込み、一時的な仮死状態に陥っていた。



「グルルル………」



人間の匂いを早速嗅ぎつけたのか、獣が女性の側に近付いて来ていた。



彼女を食料とする為に。



その姿は虎のような姿をしている。ただ人間界の虎と決定的に違う事がある。それは首が二つあるということ。



「グガァァァァァ!!!!!!」



獣は女性の姿を発見すると大きな鳴き声を上げた。



そして。



バッ!!



獣が女性に襲いかかる。



カチャッ



何処からか鞘から剣を抜く音が聞こえる。



シャキーン



横一直線に光が走る。



ズバッ!!!



獣を一瞬の内に真っ二つに斬り裂く。



ドサッ!!



二つに分かれた獣の身体が地面に落ちる。



獣は断末魔の叫び声を上げる間もなく絶命していた。


獣の死骸の前に一人の男が着地した。



飛影である。



飛影はシュッっと剣を一振りして剣に付着した獣の青い血を振り落とす。



そして鞘に剣をおさめると倒れている女性の側に近付く。



ザッザッザ



雑魚「飛影!」



木阿弥と雑魚が飛影の側に駆け寄って来た。



雑魚「本当に飛影は速いな。お前の動きについていくのがやっとだ」



飛影「それはお前が筋肉ばかりを鍛えているからだ」


(ニッ)
木阿弥「それは言えてるな」



雑魚「チェッ、うるせーな」



雑魚は苦笑いを浮かべる。


木阿弥は獣の死骸に近付き、飛影が斬った後を見ている。



木阿弥「フッ、相変わらずお前の剣技には恐れ入るぜ」



雑魚「全くだ。飛影を敵にはまわしたくないぜ」



飛影は横目で自分が斬った獣の死骸を見る。



飛影「フン、歯ごたえのない奴だ」



木阿弥「おい!さっさと女の状態を確認して帰ろうぜ」



雑魚「さて、迷い込んだのはこの人間の女か」



雑魚は倒れている人間の女性の状態を確認。



雑魚「仮死状態だ。完全に障気にやられちまっているな」



木阿弥「本当に人間は弱っちいな。飛影、いつも通りこの人間も記憶を消して人間界に送り帰すんだよな?」



飛影「ああ、そのつもりだ」



雑魚「よいしょっと」



ガシッ



雑魚は倒れている人間の女性を肩に担ぐ。



飛影「まったくうんざりだな」



雑魚の肩に担がれた人間の女性を見て不満を口にする。



木阿弥「フフ、お前は三年もパトロールをやっているというのに未だに馴染めないな」



飛影「こんなくだらないものに慣れようとも思わん」


雑魚「へへ、俺はパトロールをゲーム感覚で楽しんでいるのけどな」



木阿弥「パトロールが嫌だったらもうすぐ開かれる二回目の魔界統一トーナメントで優勝してお前が煙鬼の作った法を廃止するしかないな」



飛影「そのつもりだ」



木阿弥「フッ、その顔は自信があるようだな」



雑魚「もうすぐ大会だ優勝を目指す者はかなり修行を積んでいるだろうぜ。今度は誰が勝ち残るか全くわからないぞ」



木阿弥「そうだな。今回は前回以上の厳しい大会になるだろう」



二人の会話を聞きながら飛影は心の中で思う。



飛影(優勝は俺がする。さっさとこんなパトロールは廃止してやる)



会話に盛り上がる二人に視線を向けると、



飛影「お前達行くぞ」



雑魚「あいよ、躯様の居城に報告に行くのだな」



木阿弥「相変わらずせっかちな奴だ」



飛影達三人は保護した人間を連れて躯の居城に向かった。



――躯の居城



躯の居城にある一室には森で保護した人間の女性を寝かせていた。



飛影が女性の側に立っている。



飛影はヘアバンドを外して邪眼を開いた。



女性「う…」



仮死状態に陥っていた為か、人間の女性の意識はまだ少し朦朧としていた。



飛影「今からお前の記憶を消す。次に目覚めた時にはここでの記憶は消える」



飛影は女性に語りかけると邪眼から女性の脳に向けて光を放った。



女性は意識を完全に失い、再び深い眠りについたのだった。



飛影は人間の女性の様子を確認すると部屋を後にした。



飛影は部屋を出ると直ぐにある場所に向かって歩き始める。



その途中で先程まで一緒だった木阿弥と遭遇した。



木阿弥「お疲れ様。人間の女性の記憶は消したのか?」



飛影「たった今消してきた」



木阿弥「邪眼は便利だな。俺も欲しいところだが、また力が最下級妖怪に戻ってしまうってのが嫌でな」



飛影「簡単な話しだ。また強くなればいいこと」



木阿弥「ハハハ、そんな面倒くさい事今更出来ないぜ。ところでお前は今から躯様の所に行くのか?」



飛影「ああ」



木阿弥「だと思ったよ。パトロールから帰ったら、
お前は必ず躯様の所に行くからな。俺は先程お会いして人間の保護の報告をしてきたよ」



飛影「そうか」



飛影はそういうと木阿弥の横を通り、そのまま歩いて行ってしまった。



木阿弥は飛影の後ろ姿を見ながら思う。



木阿弥(躯様は以前と比べると随分と穏やかになられた。それは飛影、お前の影響が大きいのだろうな)



――躯の部屋



数本のロウソクの灯かりが灯るだけ暗い一室の中に
大きなクッションに腰をかけている女性がいる。



彼女の名は躯。



無数にある魔界の国の統治者の中でも躯の力は抜き出ており巨大な一大勢力を築いていた。同じく力が抜き出ていた雷禅と黄泉の二代勢力と様々な理由で長い年月の間対立してきた。



大会が行われた時に国は解散していたが、彼女の配下の77人の直属の戦士や部下の多くは大会後も躯を慕い彼女の下に残っていた。



躯は悲しい過去のせいで半身が焼けただれて一部を機械化しているが焼けただれていない箇所から伺えるその顔は美しく大人の女としての魅力があった。



ボッ



部屋のロウソクが一瞬ゆらめく。



躯(……)



躯は何者かの侵入を察知した。



その時だった。



ビューン!!



剣が躯の頭上から振り下ろされた。



パシッ!



躯はその場から動かず右手で剣を受け止めた。



躯「飛影か、相変わらず物騒な挨拶だな」



飛影「お前に用があって来た」



飛影が躯の前にその姿を現した。



飛影と躯の住む世界である魔界。



壮大な物語の序章はまずは飛影から追いかける。



続く
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ