幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編01
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――魔界のとある場所 ここに一軒の家がある。



小柄の可愛いらしい女性が家の外に出て魔界の空を見上げている。



「和真さん、大丈夫でしようか?」



女性の名は、雪菜。本来なら氷河の国に住んでいる氷女の妖怪である。



ガチャッ



家の扉を開けて黒髪の道着を来た女性が外に出てきた。この家の主・棗である。



棗「雪菜ちゃん、もう身体の方は、大丈夫?」



雪菜「はいっ。お陰様でもう大丈夫です。すっかり元気になりました」



(ニコッ)
棗「そう、それなら良かった」



雪菜「酎さんは、今日は、来られるのですか?」



棗「酎ならもうすぐ来ると思うわよ。あいつ毎日ここに通ってくるし」



雪菜「私、本当に驚きました。お二人が恋人同士だったなんて」



棗「私も、今だに変な感じよ。前にね、私があいつに口説かれた時に私があいつに自分より弱い男に興味がないっていったのよ」



雪菜「えっ、そうだったんですか??」



棗「そしたらあいつったら私より必ず強くなるからっていって期限を私にいってきたのよ。私、少し驚いたけど根性ある奴は、嫌いじゃあないからこれを受けたのよね」



雪菜「酎さんは、余程、棗さんに惹かれたのですね・・・」



(ニコッ)
棗「フフッどうかしらね。前の大会が終わってからあいつは、私より絶対に強くなってやるっていって、しょっちゅうここに通ってきたの」



雪菜「酎さん、棗さんより強くなろうと本当に頑張ったんですね」



棗「頑張っていたわね。私に何度も倒されても倒されてもここに来るたびに面白いぐらいに強くなって来ていたのよ」



雪菜「じゃあ、酎さんは、棗さんとの約束の期限内に棗さんより強くなったんですか?」



棗「まぁ、そうね。約束期限の半月ぐらい前になるかな・・・」



棗は、雪菜にその時の事を語り始めた。



〜回想〜



酎「棗さん、来たぜ!!相手してくれや」



棗「もう、約束の期限まで後り半月よ。あれから強くなってきたのかしら?」



酎「今日こそ、棗さんより強くなったところを見せてやるぜ!」



棗「いいわ。私より強くなったところを見せてもらうわよ」



バッ



棗は、戦闘の構えをとった。



酎「今日こそ、棗さんに勝って俺の女になってもらうぜ 」



バッ



酎も棗同様に構えて戦闘大勢に入った。



二人が手合わせするところを見ている二つの視線があった。



鈴駒と流石の二人である。



鈴駒「酎も諦めずに本当に頑張るね〜」



流石「鈴駒ちゃんがいつも酎ちゃんの特訓の手伝いをしているのだからそろそろ勝ってもらわないとね」



酎「行くぜ!」



ダッ!



ビューーン!!



酎は、地面を蹴ると一直線に棗に向かっていった。



棗は、その場から動かず身構えている。



酎「でゃぁぁぁぁぁ!!」



ビューン!!



酎は、棗に右手による強烈なパンチを放った。



棗「動きが前回より早くなってきたわね」



バチィッ!



棗は、左手で酎の拳を弾いた。



棗「ハァッ!」



ズンッ!



ドッ!!



棗は、一歩前に体重をかけて踏み出すと酎の腹部を狙って突きによる一撃を放つ。



酎「棗さん、もうその技は、くらわねぇぜ」



バッ!



酎は、素早く弾かれた右手と左手を腹部の位置で斜めにクロスさせた。



ガッ!!!



ズズズ・・・


押されながらも棗の突きによる衝撃を両手に妖気を集中させて防いだ。



(ニッ)
酎「やっと棗さんの得意の突きを防いだぜ」



棗「驚いた・・・あなたが防御を身につけてくるなんてね。自分の弱点に要約気が付いたわね」



酎「まぁな!いくら特訓して攻撃力や妖力ををあげても棗さんの攻撃を防ぐ防御を身につけないと棗さんにいつまでたっても勝てねぇと思ったからな」



棗「今までのあなたは、ほとんど攻撃重視で持ち前の打たれ強さだけで私の攻撃に耐えていたものね」



酎「というわけで今日こそは、勝たせてもらうぜ」


バッ!



再び酎は、戦闘の構えに入った。



棗「どこまで防御技を身につけてきたが私が試してあげるわよ」



ダッ!!



タッタッタッタッタ!!!



棗は、酎に向かって走り出した。



パンッ



酎は、両手で頬を叩くと気合いを入れた。



酎「おぉーし!!行くぜ!」



タッタッタッタッタ



酎も棗に向かって走り出した。



酎「おらぁぁぁぁ!!!」



ビュッ!!ビュッ!!



酎は、棗に近づくと左手で棗の腹部にジャブを放つ。



パッパッ!!



棗は、左手で素早く酎の攻撃を受け止めた。



バッ!



トッ



酎(!)



クルクルッ



シュタッ!!



棗は、素早くジャンプして酎の右肩に軽く手を触れると空中で回転して酎と少し離れた後ろに着地した。



棗「いくわよ」



ビューーン!!



ビューーン!!



ビューーン!!



棗は、高速のスピードで酎の周りを円を描くように回り始めた。



あまりのスピードに棗の姿がいくつもの姿に分身しているように見える。



酎「来たな」



素早く動きながら棗が酎に話しかける。



棗「これまでのあなたは、この動きについていくのがやっとだった。私に攻撃を当てることが出来るかしら?」



酎「ぬぅぅ・・・」



キョロキョロ



酎は、必死に目で棗の動きを追っていた。



棗「さあ、いくわよ!」



ビューン!!!!!



素早く動く棗の攻撃は、複数に分かれた分身による攻撃と同様に酎に向かって四方から放たれた。



(ニッ)
酎「棗さん!!俺は、この攻撃が来るのを待っていたんだ」



バッ!!




グググッ!!!!




酎は、少し肩を下げて両腕を引くと全身に妖気を伝え始めた。



酎「うぉぉぉぉぉ!!!!!」



ピシッ!!



酎の身体が鋼鉄と化していく。



棗(!!)



ガッガガガッ!!



棗の四方からの攻撃は、酎の鋼鉄化した身体に弾かれる。



棗「身体の鋼鉄化!?」



(ニッ)
鈴駒「酎の新しい技が上手くいった!」



ガシッ!



棗(!)



酎の突然の鋼鉄化に驚いた棗は、一瞬の動きの乱れから酎に右手を捕まえられた。



酎「これが棗さんに勝つ為に編み出した爆肉鋼鉄だ」



鈴駒「あ〜あ、名前が鈴木の爆肉鋼体のパクリだけどな」



鈴駒は、酎のネーミングセンスに苦笑いを浮かべた。



酎「おりゃあぁぁぁぁ!!」



ブーーン!!



酎は、その場で棗を一本背負いで投げ飛ばした。



ドタッ!!



地面に背中を打ちつける棗。



棗「くっ・・油断したわ」



ムクッ



酎「フン!!」



ズンッ!!



棗(!!)



棗が起き上がる瞬間に酎は、得意の切札の頭突きを放った。



ピタッ



酎は、棗に頭突きが棗に触れる直前でその攻撃を止めた。



棗「当てないの?」



(ニッ)
酎「いくらなんでも女性に頭突きなんてくらわせないぜ」



酎・棗「はっ!?」



棗(・・・)



酎(・・・)



お互いの目と目が顔のすぐ近くで合ってしまった。



棗「顔が近い!」



バキッ!



ドテッ!!



酎は、棗に殴り飛ばされる。



酎「痛てて・・・」



棗は、頬が少し赤くなっている。



棗「でも身体を鋼鉄化させるなんて驚いたわ。あなた相当、特訓してきたようね」



酎「俺は、棗さんにどうしても勝ちたかったからな」



棗「油断していたとは、いえ予想外の技で私に一本を取ることができたから悔しいけど今回は、私の負けだわ」



鈴駒「おおっ!」



酎「じ、じゃあ、棗さん、お、俺の勝ちでいいんだな!!」



棗「不本意だけどね」



(ニカッ)
酎「おっしゃああ!!!」



酎は、両手を上に突き上げて人生で最高の満面の笑みを浮かべた。



酎「じ、じ、じゃあ、棗さん、俺の女になってくれるんか?」



棗「・・・まぁ正直、私の好みのタイプじゃあないけど、約束だからね。いいわよ。それに私を想ってここまで強くなったあなたなら大事にしてくれそうだしね」



ポーー



酎は、頭から足下まで全身が完全に真っ赤になった。



鈴駒「あ〜あ、あのバトルマニアが顔を真っ赤にしっちゃってよ・・」



流石「じゃあ、鈴駒ちゃんも真っ赤になる?」



鈴駒「えっ?」



チュッ



流石は、鈴駒の頬に軽くキスをした。



(ほんわ〜)
鈴駒「流石ちゃ〜ん」



流石「うふふ」



鈴駒の顔が真っ赤になって目がハートになったのは、言うまでもない。



棗「でも、最初にいったけど私は、弱い男に興味は、ないの。だからこれからも特訓を続けてもっと強くなりなさいよ」



酎「は、はい」



酎は、嬉しさのあまり頭が完全に舞い上がって返事を返すのがやっとだった。



〜回想終了〜



(ニコッ)
雪菜「棗さんにお付き合いのOKをもらった時の酎さんの顔が目に浮かびます」


棗「面白いくらい顔を真っ赤にしたのよ。あのいかつい顔なのに中身は、凄く純情なのよ、あいつ」



雪菜「なんだか可愛いらしいです」


(和真さんになんだか少し似ているかも)



棗「フフッ、そうね。それで実は、つい最近なんだけど私、酎にプロポーズされたのよ」



雪菜「え〜〜〜〜!!!」



雪菜は、驚きの声を上げた。



棗「雪菜ちゃん、何もそんなに驚かなくても」



雪菜「二人が恋人同士って話しにも驚きましたが今回は、さらに驚きました。それで棗さんは、どうしたんですか?」



棗「実はね、酎が私にプロポーズした時にちょっとしたことがあったの・・・」



棗は、再び雪菜にプロポーズの時の事を語り始めた。



〜回想〜



酎「棗さ〜ん、来たぜ!」



コンコン



棗「開けていいわよ」



ガチャッ



酎がいつものように棗の住む家に訪れ扉を開けた。



棗「ああ、酎、いらっしゃい・・・ってなあに、そのかっこうは!?」



棗は、驚きの表情を浮かべた。



なんと酎が綺麗な服を来て正装して現れたのだった。



棗(・・・)



酎(・・・)



棗「ぷっ、あははは!!!!」



棗は、酎の普段とのあまりのギャップに涙を流して大笑いした。



酎「な、何が、おかしいんだ!!」



棗「ああっ、おかしい。酎、あんたにそんなかっこうは、似合わないわよ〜」



酎「う、うるせ〜よ!!」



棗「それ、あなたが選んだの?」



酎「鈴木のコーディネートだよ。鈴木がこれを着ていけっていったから・・・




チラッ



棗は、酎の姿をもう一度見た。



棗「ぷっ、あはははは!!!!」



酎「ええいっ!笑うな!!」


(鈴木、後で絞める!)



棗「ごめん、ごめん、あんまり酎の姿がおかしくて、あ〜笑い過ぎてお腹が痛い。それで、そんなかっこうをして一体どうしたのよ??」



酎「え〜っと今日は、棗さんに大事な話しがあるんだ」



棗「改まってどうしたのよ。大事な話しって何?」



酎「た、単刀直入に言うぞ。な、棗さん、お、お、俺と一緒になってくれ!!」



棗(えっ・・これってプロポーズよね・・・)



ポーー



棗の顔が赤くなった。



棗(ど、どうしようか・・でも酎なら私の事をを大切にしてくれるだろうしな・・)



酎「ひ、平たく言うと俺と、け、結・・・」



「ちょっと待ったぁぁ!!」



棗(!)



酎(!)



棗「あっ、九浄」



酎と棗の前に現れたのは、棗の双子の兄・九浄であった。



九浄「悪いが可愛い妹は、お前には、やらねぇぜ」



棗(なんか、話がややこしくなってきた・・・)



九浄「不本意だったが妹との交際は、認めてやっていたが結婚となったら話しは、別だ」



酎「九浄、俺は、棗さんが好きなんだ。兄貴のお前さんには、認めて欲しいぜ」



九浄「お前みたいなむさい男が俺の義理の弟になるなんて嫌だぜ・・・だが お前のことだ簡単に棗を諦めないだろう。そこで俺に認めて欲しかったら条件がある」



酎「条件?」



九浄「間もなく開かれる魔界統一トーナメントで俺に勝つか、俺より上の順位に行くことがお前を認める条件だ」



棗「おい、九浄・・・」



九浄「棗は、黙っていろ。酎、どうする?そしてそれが駄目なら結婚は、絶対に認めない。結婚は、諦めて貰う。どうだ!この条件を呑むか?」



(ニッ)
酎「いいぜ、それで九浄が認めるならよ。障害があった方が男は、燃えるってもんよ」



棗「おいおい、酎まで・・・」


(私は、まだ結婚するとは、一言も言っていないんだが・・・)



九浄「よし!約束だ。お前にだけは、一切手を抜かねえ!覚悟しとけよ」



ダッ



タッタッタッタッタ



九浄は、それだけを言うと走り去っていった。



酎「あいつ、何で俺が、今日、棗さんにプロポーズする日に限ってここにくるんだ・・・」



棗(そのかっこうよ・・・酎のこのかっこうは、目立ちすぎるもの、九浄だって何かと思って気になって見にくるわよ・・・)



〜回想終了〜



棗「というわけで私がプロポーズの返事も聞かないままで酎の頭の中は、九浄と闘って勝つってことで今は、いっぱいなわけよ」



雪菜「ははは・・・なんだかですね」



雪菜は、苦笑いを浮かべた。



棗「でも九浄は、正直、私より強いわよ。酎がもし本当に九浄に勝ったらプロポーズを受けてやろうかなって私は、思っているの」



雪菜「酎さんにとって今度の大会は、人生の岐路にたたされた形になりますね」



ザッ



楽しく会話をする棗と雪菜の会話を見つめる一人の男の姿があった。



「雪菜・・・」



それは、雪菜の双子の兄・飛影であった。



続く
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