幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――幽助が螢子と会った日の夕方



幽助はいつものようにラーメンの屋台の準備をしている。



幽助「スープはこれで完成っと」



幽助は食材を色々調べてみる。



幽助「やべーな、ちょっと材料が足りねー」



チラッと腕時計で時間を確認。



幽助(まだ時間は大丈夫だな。仕方ねー、買いに行って来るか)



――近くの商店街



「ありがとうございました」



ガーー



お店の自動扉が開く。



幽助「さてと、足りねーもんは揃ったし帰るか」



幽助が屋台に戻ろうと歩きだしたその時、前方から眼鏡をかけた中年の男と歯が少し前に出たつり目の男が歩いてくるのが見えてきた。



幽助(おっ!あれは岩本と明石。あいつらはまだこの街で教師やってんのか)



岩本と明石も幽助の存在に気付く。



岩本「あれは浦飯。人間のクズ野郎が」



明石「相変わらず頭の悪そうな顔をしていますね」



幽助(あいつら変わってねーな。好き勝手言いやがって)



幽助は知らぬ顔で二人の横を通り過ぎる。



岩本「浦飯、待て!」



岩本と明石の横を通り過ぎて二、三歩いた所で、岩本が声をかけてきた為に幽助は足を止めた。



岩本はニヤリと笑い、幽助の隣にやって来た。



そして幽助の肩をポンポンっと叩く。



岩本「浦飯、元恩師が貴様の目の前を通っているんだ。挨拶して少しは敬ったらどうなんだ」



幽助(てめーを恩師と思った事なんか一度もねーぜ)


明石「そんなことも出来ないとは母親同様にろくな育ちをしてないからですよ。」



明石はクククっと嫌味な笑みを浮かべる。



幽助「てめえ!お袋は関係ねーだろうが」



幽助の目つきが鋭くなる。


岩本「おや?浦飯、何を買ったんだ?どうやら食料品のようだが」



明石「岩本先生、こいつは噂じゃあラーメンの屋台で客商売をしているらしいですよ。その材料じゃあないですかね」



岩本「フン、ラーメン屋か。貴様の作るラーメンなど所詮は犬の餌程度だろうな」



岩本は幽助を見下す目で見ていた。



岩本「この街は貴様のような人間のクズがいるような場所じゃあない。お前は刑務所の中の監獄がよく似合う」



明石「ははは、そうですね」



明石は岩本の話しに同意して大きさ声で笑う。



幽助「てめえら!人が黙っていたら好き勝手ぬかしやがって!」



幽助は拳を強く握る。



岩本はチラッと幽助が拳を強く握っていることを確認した。



岩本「悔しかったら不良だった中学の頃のように殴ってみろ」



明石「こいつは人を殴ることしか自分を表現出来ない能のない奴ですからね」



幽助「てめえらー」



幽助は岩本と明石を殴ろうと拳を強く握り殴りかかった



ピタッ



幽助は岩本の目の前で拳を止める。



岩本はそれを見てニヤリと笑う。



岩本「どうした浦飯?俺を殴らんのか?非常識な貴様らしくない」



「そこまでだ!」



その時、幽助と岩本達の後ろから声が聞こえてきた。


幽助は後ろを振り向く。



そこには岩本達と同様に幽助が通っていた中学校の教師であった竹中が立っていた。



岩本(チッ)



竹中は幽助と岩本達の側までやって来る。そして久しぶりに会う幽助の顔を見つめる。



竹中「幽助、久しぶりだな」



幽助「竹中」



竹中は幽助に声をかけた後、直ぐに岩本と明石を睨みつける。



岩本「な、何だ!」



竹中「岩本先生、明石先生、貴方達と幽助のやり取りの一部始終は見させてもらった。貴方達が彼に対する暴言の数々。岩本先生、貴方は彼に非常識と言ったが、貴方達の方が余程非常識だ。教師として恥ずかしくないのか!」



岩本「なっ・・・!」



明石「むっ・・・」



竹中「貴方達と彼のどっちに非があるのか周りを見てみるがいい」



岩本と明石は周りを見回した。すると一連のやり取りを見ていた人達は岩本たちに冷ややかな視線で見ていたのだった。



岩本「チッ・・・」



岩本はばつの悪い顔で明石の肩を叩く。



岩本「お、おい、行くぞ!!」



明石「は、はい!!」



岩本と明石は逃げるようにその場を後にした。



幽助は竹中を見つめていた。



岩本たちがいなくなると、竹中は幽助の方を振り向いて幽助の肩に手を置いた。


そしてニコリと笑う。



竹中「フッ、元気そうだな」



竹中はまるで自分の子供を見つめるような優しい笑顔で幽助に話しかけた。



竹中「彼らはお前を挑発してわざと殴らせて、お前を傷害で警察に引き渡す腹みたいだったぞ」



幽助「悪い、あんたに面倒をかけちまったな」



竹中「よく我慢して岩本先生達を殴るのを思いとどまったな。」



幽助「頭にきたから一瞬ぶん殴ってやろうかと思ったけどよ、こんな奴を殴っても仕方ねーなって思ったんだ。昔の俺なら有無を言わさずに殴っていただろうけどな」



竹中「あの場面で殴らず堪えることが出来たのはお前が成長したということだ」


幽助「竹中・・・」



竹中「まあ、彼らがいくらお前にとって嫌いな先生でも知らない仲じゃあないのだから挨拶の一つぐらいはした方がいいぞ」



幽助「ああ、分かったよ。へっ、岩本たちも変わってねーがあんたの直ぐに説教をするとこも全く変わってねーな。またあんたに説教されるとは思わなかったぜ」



幽助はニコリと竹中の顔を見て笑った。



竹中も幽助の屈託のない表情を見て笑う。



竹中「ところで幽助、お前は何をしているんだ?中学を卒業した後は高校に進学しないでしばらく行方もわからなくなっていたから心配していたんだぞ」



幽助「ああ、ちょっと遠いところへ行っていたからな。せっかくあんたに会ったんだ。俺の仕事を見せてやるぜ!」



竹中「お前の仕事を?」



幽助「飯はまだ食ってねーだろ?美味いもん食わせてやるぜ」



幽助は竹中を自分の商売しているラーメンの屋台に連れて行った。



竹中「これは・・・?」



幽助「見てわかるだろ?ラーメン屋だよ。椅子に座ってくれよ」



竹中「あ、ああ…」



ちょっととまどいながらも椅子に腰をかける竹中。



幽助は竹中が椅子に座ったのを確認するとラーメンの調理に取り掛かった。



竹中「幽助、ここはお前の店なのか?」



幽助「ああ、少し古い屋台だけどな。こう見えても結構お客は入ってんだぜ」



竹中「あの幽助がラーメン屋にな〜・・・」



竹中はラーメンを作っている幽助の姿を見て感慨深くなった。



竹中「お前と桑原達は皿屋敷中に私が赴任してから携わった生徒の中でも一番の問題児だったぞ」



幽助「へへへ、だろうな!あの頃は毎日のように喧嘩や色々な悪さをしていたからな」



竹中「全く何度も注意しても悪さはやめないし、学校はさぼるわで手を焼かされたものだ」



幽助「俺がいくら悪さしても先公達は俺をびびって見て見ぬ振りをする中で、岩本はあの調子で俺につっかかってきていやがったが、あんただけは俺のことを親身に気にかけてくれていたよな」



竹中「お前を最初に見た時は私がこいつをなんとかしてやらんないといかんと直ぐに思ったな。本当にありとあらゆる悪さをしてくれたよな」



幽助「まあな、しかしあんたもよくあきらめなかったな。あの時の俺にとってはあんたは本当に煙たい存在だったが」



竹中「フッ、よく言うだろう?“馬鹿な子供”は可愛いとな」



竹中はニヤリと笑う。



幽助「へっ、何言ってやがる」



竹中「今だからいうがお前が子供を助けて事故にあった時に私は自分を責めたものだぞ。あの時逃げたお前を意地でも指導室に連れて行っていればあんな事故に合わせずに済んだのになっと。お前の家に行った時にお前のお母さんの涙を見て特に思ったぞ」



幽助(俺が最初に死んだあの日の事を言ってんのか)


竹中「しかし死んだと思っていたお前が生きて学校に戻ってきた時は本当に嬉しかったぞ」



少し目を潤ませる竹中。



幽助「・・・ラーメン出来たぜ」



そっと竹中の前に出来上がったラーメンを置く。



竹中「いい匂いだ」



幽助のラーメンを食べ始める竹中。



幽助「俺が作ったラーメンはうめーだろう?自信作だぜ」



竹中「美味い」



竹中は何か満足したような優しい笑顔を幽助に見せた。



幽助「俺の学生時代はろくな先公がいなくて正直、先公なんて大嫌いだった。あんたのことも説教ばかりで俺の何が分かるんだって思っていたよ。でも俺のことをこんなに気にかけてくれていたとは思わなかった。竹先、ありがとうな」



竹中「幽助・・・」



幽助の意外な言葉に竹中を驚くと共になんともいえない感情が沸き上がる。



幽助「ちょっと用があって春まで店を閉めるけどよー。春にはまた再開するから俺のラーメンを食べに来てくれよな」



竹中「ああ、また寄らせてもらうよ」



竹中は目を潤ませながら笑顔で答えた。



幽助にとって昼間の螢子とそしてこの竹中との会話がこれから始まる激しい闘いの前の最後のゆっくりとした一時となった。



――竹中が帰った後はいつも通りに屋台の営業を続けた幽助。辺りはすっかり暗くなり周りには人が一人もいなくなっていた。



幽助「そろそろ帰るか」



幽助が帰り支度を始めたその時だった。



幽助(!!)



凄まじい妖気と殺気を幽助は感じ取った。



幽助は素早く前に飛び出す。



相手は気配を消して徐々に幽助に近付いて来る。その妖気と殺気がどんどん大きくなっていた。



幽助「何者か知らねーがおもしれーぜ」



幽助は目を瞑り相手の動きを探る。



幽助(来たな)



フッ



その時、幽助の背後に何者かが現れて強烈なパンチを放ってきた。



幽助「甘いぜ」



フッ



幽助の姿が消えてパンチが空を切る。



「!?」



幽助「くらいやがれ!」



幽助は今度は逆に相手の背後に現れてその拳で鋭い一撃を放つ。



「フッ」



素早く下にしゃがんで拳を避けると同時に幽助の殴って来た手を下から掴んで幽助を投げ飛ばす。



「ハァァ!」



ブーーン



幽助(!)



20m先に投げ飛ばされる幽助。



だが地面に叩きつけられることなく右手で地面に手をつくと空中で二回転して態勢を整えて地面に着地した。



現れた相手の顔を見て幽助はニヤリと笑う。



幽助「久しぶりだな。お前の挨拶にしたらちょっと手ぬるい感じだったぜ、黄泉」



幽助はゆっくりと歩いて黄泉に近付く。



黄泉「戯れだ。浦飯、魔界統一トーナメント以来だな」



前回の魔界統一トーナメントの三回戦で激しい戦いを繰り広げた二人。



幽助と黄泉の三年ぶりの再会であった。



続く
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