幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜
□序章
23ページ/35ページ
――幻海のお墓参りに行った日の翌日。
ここは桑原の自宅。
外は日が暮れて暗くなり、もう夜と言える時間帯になっていた。
桑原は幻海のお墓で感じた謎の視線をあれから時々、肌に感じていた。
桑原「なんか幻海の婆さんの墓参りに行ってから、時々誰かに見られているような気がするんだよな」
ポリポリと頭を掻きながら桑原は自分の部屋の窓から外を眺めた。
窓の外は暗くて外を歩く人の姿もなかった。
桑原「なんか変なもんに取り憑かれたんじゃあねーのかな〜??婆さんが生きてればみてもらうんだけどな…」
桑原は腕を組んで困り顔。
コンコン
誰かが桑原の部屋のドアのノックをする音が聞こえてくる。
桑原「鍵は開いてるぜ」
雪菜「和真さ〜ん。コーヒーが入りましたよ」
桑原は部屋の外から聞こえてくる雪菜の声に思わずニコリ。
桑原「ああ〜!雪菜さんだったんすか。今部屋のドアを開けます」
ガチャッ
直ぐに部屋のドアを開ける桑原。
そこには優しい笑顔の雪菜がコーヒーを手に持って立っていた。
雪菜「和真さん、コーヒーをどうぞ」
雪菜はコーヒーを煎れたカップを桑原に手渡した。
桑原「今日も雪菜さんがコーヒーを煎れてくれたんすね〜。でも珍しいっすね。いつもなら煎れてくれたらリビングに来るように呼んでくれるのに今日は直接部屋まで持ってくるなんて」
雪菜「あ〜、今日のはですね…」
ゴクゴク
桑原は雪菜が話し終わる前にコーヒーを飲み始めた。
桑原「やっぱり雪菜さんが煎れてくれたコーヒーが一番美味いっす。どこぞの親父の煎れたコーヒーなんか普通に煎れるだけなのに、不味いなんてもんじゃあねーし」
雪菜「和真さん、そのコーヒーはですね……」
ゴクゴクと美味しそうにコーヒーを飲む桑原。
雪菜「あっ、和真さん、そんなに一気に飲んだら熱いですよ」
桑原「ああ〜。雪菜さんの煎れたくれたコーヒーは最高っす!!」
まるで極楽浄土にいるかのような幸せな顔をしている桑原。
雪菜(このコーヒーは私が煎れたんじゃあないのですけど…)
桑原の部屋の入り口を桑原の父が通りかかる。
相変わらず桑原の父は、
冬なのにアロハシャツを着て黒のサングラスをかけた派手な男であった。
今日も陽気に息子に声をかける。
桑原の父「HAHAHAHA!和、美味しそうに飲んでくれているな。いつもは俺が煎れたコーヒーは不味いって言って飲まねーのにな」
ブハァッ!!!
桑原は父の言葉でコーヒーを思いっきり吹き出した。
桑原「コーヒーを煎れたのはてめーかよ!親父ぃ〜!!」
桑原の父「その通りだ」
桑原「よく味わうとこれは親父の煎れた奴だ。ま、不味い。舌も火傷しちまってる!」
桑原の父「HAHAHAHA!!気付かないお前が悪い」
桑原の父は笑いながらその場を後にした。
桑原「チクショー!親父の奴、親父が煎れたコーヒーをいつも不味いって言って俺が飲まねーから狙って雪菜さんに運ばせたな。しかし何で俺、親父が煎れたコーヒーってわからなかったんかな??」
雪菜「和真さん、シャツにコーヒーがこぼれていますから着替えた方がいいですよ」
桑原「そうっすね」
桑原が洋服箪笥の扉に手をかけようとしたその時だった。
桑原(!)
バッ!!
ガラガラ
桑原は素早い動きで部屋の窓ガラスを開けて外を見た。
雪菜「和真さん、急に血相を変えて窓を開けてどうしたんですか??」
桑原(…またあの視線だぜ。やっぱり誰かが何処かでこっちを見ているみてーだ。感じた視線は俺を見ているのか?それとも… )
チラッ
桑原は真剣な目で雪菜を見つめた。
雪菜「和真さん、恐い顔してどうしたんですか?」
桑原の突然の変化に戸惑う雪菜。
桑原は雪菜に心配をかけないようにする為に笑顔を作った。
桑原「いやあ、何でもないっすよ、雪菜さ〜ん。コーヒーをこぼして熱かったから窓をちょっと開けて冷たい空気を部屋に入れて身体を冷やしたんですよ」
雪菜「あ〜そうだったんですね」
安心したのか、雪菜は安堵の溜め息をつく。
桑原「そうで〜す」
(あの視線は、俺か?それとも雪菜さんを見ていたものなのか?。チクショー!! 分かんねーぜ)
ガチャッ
静流「ただいま〜」
静流が外出先から桑原宅に帰ってきた。
そして帰って来た静流は開いたままの桑原の部屋の前を通りかかる。
静流「あれっ?和、寒いのに窓なんか開けてなんかあったの?しかもコーヒーをこぼしてシャツ汚してさ」
桑原「うるせーな。何でもねーよ」
雪菜「あっ、おかえりなさい。静流さん」
静流「ただいま、雪菜ちゃん」
ガラガラ
桑原は開けていた窓を閉めて静流に話しかける。
桑原「姉貴、今日はいつもよりやけに遅かったな。何かあったのか?」
静流「帰り道でさっき、螢子ちゃんとばったり会ってね。久しぶりに会ったもんだから話しに夢中になっていたのよ」
桑原「雪村の奴、大学休みだからこっちに帰ってきてんだな」
静流「螢子ちゃん、大学で小学校の先生を目指して頑張ってるみたいね。あんたは大学を卒業したら一体何の仕事につくのかしらね〜」
桑原「うるせーな、全く」
桑原は思わず渋い顔になる。
ぐぅぅぅ
桑原の腹の虫が悲鳴をあげた。
桑原(飯は食ったが少し小腹が減ったな。そういえば最近浦飯に会ってねーよな。久しぶりにあいつのラーメンでも食べに行って来るか)
桑原「姉貴、雪菜さん、俺、ちょっと外に出てくるわ」
そう言うと桑原は汚れたシャツを着替えた。
静流「今から出かけるの?」
桑原「おう。ちょっと小腹が空いたんでな、浦飯のとこでラーメン食ってくるわ」
静流「出たついでに帰りにコンビニでタバコ買って来てよ」
桑原「へいへい」
ガチャッ
桑原は家を後にした。
――桑原宅近くの屋根の上。
暗闇の中を一人歩いている桑原を金髪の男と小柄の赤い髪の男が見ている。
駁「奴が俺達に必要な能力を持っている例の者なのか?霊気もあんまり感じないし普通の人間みたいだが」
比羅「普段の生活では霊気は使う事があまりない。平和な生活でただ霊気を抑えているだけだろう。あいつの情報だとあの人間で間違いない。何度か私が意図的に発した気にも反応を示しているからな」
駁「なんか今一つ信じられないぜ。ちょっと奴の力を試してやるか」
比羅「駁、何をするつもりだ?」
比羅の問い掛けには答えず、駁はただ不気味な笑みを浮かべただけであった。
続く