幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――翌日の午後



桑原は、前日に起こった雪菜のピンチを助ける為に、久々に霊気を使った為、筋肉痛ならぬ軽い霊気痛になっていたのだった。



ピキッ



桑原「痛てて…。この感じ、四聖獣と戦った時よりははるかにましだが、少し霊気を使っただけでこの様じゃあやっぱりいけねーよな…」

(何せ最後に霊気をまともに使ったのが正聖神党の奴らを浦飯達とやっつけて以来だもんな…)



雪菜「あれっ、和真さん
お出かけですか?」



桑原が自宅の玄関の戸を開けて出掛けようとしたら雪菜が声をかけてきた。



ピキッ



桑原(痛てて)



桑原は痛みを我慢しつつ、精一杯の笑顔を作って雪菜の方を振り向く。



桑原「そうっすよ。ちょっと皿屋敷中学校の裏山に行ってきます」



雪菜「裏山ですか??」



桑原「そうです」



雪菜(?)



行き先が裏山と聞いて不思議そうな顔をする雪菜を置いて桑原は自宅を出た。



この時、桑原の姿を見つめる二つの影があった。



駁「比羅、今日もずっと監視するのか?」



比羅「いや、今日はこれまでた。さっき国から伝令があった。黎明もこちらに来たらしい。私は黎明と合流する」



駁「黎明までも人間界に来たのか?たかが人間一人を暫く監視して捕らえるだけなのによ。本来なら俺一人でもいいぐらいだぜ」



比羅「王の指示だから仕方あるまい。私達はただ任務を忠実にこなすのみだ」



駁「へっ、あの責任感の強い黎明の事だ。王が黎明に人間界に行くように命令したっていうよりは恐らく、自ら王に掛け合って人間界に来る事を志願したんだろうぜ」



比羅「そうだろうな」



駁「まあ俺は別にいいけどよ。じゃあ俺は一旦戻るぜ」



比羅「ああ」



フッ



駁の姿が比羅の目の前から消え去った。



比羅は桑原に視線を移す。


比羅「桑原、お前は私達に必要な存在。必ず手に入れる」



そう言うと比羅の姿もその場から消え去った。



実はもしこの日、比羅たちが桑原を監視をしていたら、桑原は容易に捕われてしまっていたのだった。



――その頃、桑原は歩きながらこれまでの出来事について考えていた。



桑原(雪菜さんといつも一緒にいることが多いから、あの視線が俺なのか雪菜さんなのか、一体どっちに向けられたものかわからねー…。雪菜さんの涙は宝石になるからな。垂金みてーにそれを狙う奴かも知れね…)



考え事をしながら歩く桑原。



桑原の前から若い男性の三人組が一緒に並んで歩いてい。



それは桑原の友人の桐島・大久保・沢村の三人だった。



桐島・大久保・沢村(!)




三人は目の前を歩く桑原の存在に気付いた。



桐島・大久保・沢村「おお〜い、桑原さ〜ん!!」



桑原(しかしもし何かがあった時に備えて、自分の身や雪菜さんを守れるように次元刀はいつでも出せるようにしねーとな…)



桑原は考え事に夢中で三人の呼びかけには気付かず、そのまま三人の横を通り過ぎてどんどん歩いていく。


大久保「あれれ…。桑原さん、俺達に気付かずに行っちゃったぞ」



沢村「何か考え事に夢中だったみてーだな」



桐島「待ってくださいよ〜桑原さ〜ん!!」



桐島が桑原の所へ走って行った。



桑原「うん?」



桑原は自分の名前を誰かが呼んでいる事にここでようやく気付いた。



そして桐島に気付く。



桑原「おう!桐島、久しぶりじゃあねーか!!何やってんだ?」



桐島は地元の普通の高校を卒業した後、大学には行かずにそのルックスを活用してホストクラブで働いたのだった。
今ではお店の人気ベスト3に入るまでの人気ホストにまでのぼりつめていた。



桐島「久しぶりに皆が揃いそうだったからカラオケに行こうかと思って向かっていたとこです。桑原さんとこにも電話入れたんですよ」



桑原「そうなのか?悪いな、ちょうど入れ違いだったみてーだ」



沢村と大久保も歩いて桑原のそばまでやってきた。



沢村「久しぶりっす。桑原さん」



桑原「よう!沢村、こっちに帰って来てたんか」



沢村は中学や高校の時とは違い、長髪になっていた。地元の工業高校を卒業後、メガリカに憧れて就職先の大阪でバンドを結成して、地道に活動しながらインディーズデビューを目指している。



沢村「一昨日の夜に久しぶりに帰ってきましたよ」



桑原は長髪になって派手なかっこうをしている沢村を見て笑う。



桑原「この四人の中では、やっぱりおめーが一番変わったな沢村」



沢村「ははは、やっぱりそうっすよね」



沢村は長い髪を触りながら苦笑い。



大久保「桑原さんも一緒に今からカラオケ行きましょうよ」




大久保は沢村と一緒に地元の工業高校を卒業した。
その後、家が母子家庭である為、家の苦しい家計を助けるべくそのまま地元の工場に就職。兄弟達の面倒を見ながら日々真面目に働いている。



桑原「すまねー…。今からちょっとどうしても外せない用事があるんだわ」



大久保の誘いに桑原は申し訳なさそうな顔で断る。



大久保「そうなんっすか、残念です。桑原さんの歌うメガリカの曲を久しぶりに聴きたかったですよ」



桑原「悪いな。この埋め合わせは必ずするからよ」



桐島「桑原さん、実はカラオケの後、夜に飲み会もやるんですけど、そっちの方にも来れないっすか?」



桑原「おう、そっちの方なら行けるぜ」



桐島「じゃあいつも俺達が集まっているあのお店に19時に」



桑原「分かったぜ」



大久保「俺達はこのままカラオケに行きますんで」



沢村「じゃあ桑原さん、また後で!」



桑原「おう!後でな」



桐島・大久保・沢村と別れた桑原は、皿屋敷中学の裏山に向かった。



――皿屋敷中学校の裏山




桑原「よし!まずは、昨日出した霊剣から行くぜ」



ジジジ…



桑原は右手に霊剣を作り出した。



桑原「でゃあぁぁ!!」



シュッ!シュッ!シュッ!



桑原は霊剣で素振りを始めた。



桑原(鈍った身体を鍛え直さねーとな)



バッ!



桑原は目の前にあった巨木に向かってジャンプした。


桑原「おりゃぁぁぁ!!」


シュパ!シュパ!シュパ!


桑原は霊剣で木の枝を次々に斬っていく。



シュパ!シュパ!シュパ!


桑原が地面に着地すると霊剣で切り裂いた木の枝が地面に落ちた。



ピキッ!



桑原(あっ、痛てて…)



桑原「ふ〜う。次は身体に負担が結構かかる霊剣手裏剣だ」

(この身体の痛みの大半は、この霊剣手裏剣によるものだからな)



桑原は目を瞑って両手に霊気を集中した。



目を開けると同時に両手の手の平を開いて巨木に向かって手裏剣を飛ばした。



桑原「オラァァァ!!」



ピュッ!ピュッ!ピュッ!


ザクザクザク



巨木に突き刺さる霊剣手裏剣。



桑原(うっ…)



消耗の激しい霊剣手裏剣を使った為か、一瞬眩暈が生じた。



桑原(やっぱこの技は結構霊気を使っちまうようだな…使うときは気をつけねーとな)



桑原は思いっきり息を吐くと真剣な目に変わる。



桑原「さてと次が一番の難題の次元刀だぜ」



桑原は右手に霊気を集中し始めた。



桑原「行くぜ!次元刀」


ジジジ…!!



桑原(!?)




桑原の右手から出来たのは、次元刀ではなくいつもの霊剣だった。



桑原「チクショー!やっぱ簡単には出来ねーよな」



ジジジジ…!!



ジジジジ…!!



ジジジジ…!!



桑原はその後、およそ2時間近くに渡って何度も次元刀を出そうと試みたが、出て来るのはやはり霊剣ばかりで次元刀をどうしても出す事が出来なかった。



桑原「ハァハァハァ…」



バタッ!!



桑原は地面に大の字になって倒れた。



ボーっと森林に囲まれた空を眺めていると、次元刀を出す事の出来ない悔しさが顔に滲み出てくる。



桑原(クソッ、俺にはもう次元刀は出すことは出来ねーのかよ!!)



《和真さん…》



桑原(ハッ!?)



桑原の脳裏に昨日目の前で看板が落ちてきて、雪菜が危険な目にあった事がよぎる。



桑原(雪菜さん…)



桑原はガバッと起き上がるとニヤリと笑う。



桑原「へへっ諦めてたまるかってんだ。何かあった時に雪菜さんを守らねーといけねーのはこの俺だからな」



桑原は再び右手に霊気を集中し始めた。



桑原「負けねーぞぉ!!出てきゃがれーー!!!次元刀ォォォォ!!!!」



右手に集中し蓄積された霊気が徐々に今までの霊剣とは違う姿に変化を遂げていく。



ピキーン!!



桑原の右手には次元刀が輝いていた。



桑原(!!)




桑原「よ、よっしゃァァァァ!!!出来た!!出来たぞォォォ!!」



桑原は右手にあらわれた次元刀を空高く掲げた。



桑原(俺はこの次元刀で雪菜さんを守るぜ!!)



ボトッ



その時、桑原のズボンのポケットから以前鈴木から暗黒武術会の決勝前にもらった試しの剣が地面に落ちたのだった。



桑原「これも一応持ってきていたんだっけな…」



シュゥゥゥ……



桑原の右手から次元刀が消えた。



スッ



桑原は落ちた試しの剣を拾った。




桑原「そういえば、これは暗黒武術会で戸愚呂(兄)と戦ってから使ってねぇな」
(あの時は、この試しの剣がめちゃくちゃ役に立ったんだったな)



桑原は試しの剣を見つめる。



そして。



桑原(!)



桑原は試しの剣を見て何かを閃いたのだった。



桑原(まてよ…、この試しの剣を使って次元刀を出して見たら一体どうなるんだ??)




桑原「この試の剣は、確か鈴木が使う者によって変わるって言っていたよな。
面白いぜ!!いっちょやってみるかーー!!!」



ガシッ!



桑原は試しの剣を強く握り締めると霊気を試しの剣に伝え始めた。



桑原「もういっちょ行くぜェェェ!!次元刀ォォォォ!!!」



試しの剣に桑原の霊気が完全に伝わり輝き出した。



桑原の身体には無数の霊気が稲妻のように走る。



ピカーー!!



あまりの輝きに桑原は思わず目を瞑った。



桑原「ぐぉぉぉっ!!」



暫くすると輝きがおさまった。桑原が目を開けて恐る恐る右手を見てみた。



桑原(!?)



右手に現れた物に桑原は驚いた。



桑原「こ、これは…次元刀じゃねー…。全く別の新しい剣だ…」



クラッ



桑原「なんかスゲーみてーだが、今の俺にはかなりきついぜ…」



バタッ



桑原はその場に倒れて完全に意識を失った。



桑原が目覚めたのは、午後19時前で、桐島達の飲み会に慌てて行ったのだった。
(それでも行く前に可愛いがっている猫たちの餌をあげに戻った)



桑原が生み出した新しい剣。この剣が後に世界を変える戦いのきっかけになるとは桑原はまだ知る由がなかった。



そしてこの日の翌日、
桑原に最大の危険が迫る。



続く
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