幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――とある森



桑原「こ、ここは…まさか!?」



どこかで見覚えのある光景。



桑原は自分の額を指でポリポリと掻いた。



桑原「ハハハッ…、流石にそんなわけねーよな…」



その時、桑原の脳裏に雪菜の顔がよぎる。



桑原(はっ!そういえば雪菜さんは!!?)



必死になって辺りを見渡す桑原。



雪菜の姿はどこにもない。



桑原「雪菜さ〜〜ん!!!!」



雪菜の名を呼びながら周辺をくまなく捜す。



桑原「い、いねーよ…。俺と小僧と一緒に雪菜さんも飛ばされた筈だが」



少し足をのばして雪菜を捜したがやはり雪菜はこの辺りにはいないようだった。


桑原は足を止めて森の中を見渡す。



障気に満たされた異様な森の雰囲気。




桑原に突然、悪寒が走った。



桑原「しかし本当に気持悪いな。雪菜さんを捜すにはまずはこの森からとりあえず出ねーとな…」



桑原は森の中を進んで行く。



桑原「しかし凄い森だぜ。見たこともねー植物ばかりだし、暗くて前がよく見えねーぜ」



ガサガサガサ



桑原(!)



茂みの中から何かが激しく動いている音が聞こえてくる。



獣か?



桑原「何だ?」



ガサガサガサガサ



徐々に音が近くなってくる。



ゴクッと唾を飲み込む桑原。



桑原「何か…、もの凄く嫌な予感がしてきたぜ…」

(こういう時の俺の予感は、必ず的中するんだよな…)



ガサガサガサガサ!!!!



音が直ぐそばまで近づいてきた。



「グガガガァァァァ!!!」



不気味な声と同時に化け物がその姿を現した。



化け物は三つ目で頭には大きな角があった。前足には鋭くて長い爪が生えている。顔は豹のような感じだ。



桑原「あっ、やっぱり」



桑原は苦笑いを浮かべた



化け物は桑原の姿を確認すると今にも襲いかかってくるような勢いだ。



桑原「わ、笑っている場合じゃあねーぜ!何だこの化け物は!?」



ダッ!!



化物は桑原に飛びかかってきた。



ビューン!!



化物の鋭い爪が桑原に襲いかかる。



桑原「ゲッ!」



バッ!!



桑原はジャンプして化け物の一撃をかわした。



桑原「クソォォォ…。金髪の野郎との戦いで霊気があまり残ってねーってのによー」



ダッダッダッ!!!



化け物は再び桑原に襲いかかってきた。



桑原「クソッ!仕方がねー!」



スッ



桑原は右手を前に素早く突き出した。



ジジジ……



桑原「霊剣!!」



桑原は霊剣を作り出すと同時に化け物に向かって駆け出した。



「グガァァァァ!」



桑原「ウォリャァァァァ!!!!!」



ズバッ!!



ズバッ!!



ズバッ!!



「グォォォォ!!!」



桑原は素早く動いて化け物を霊剣で切り裂く。



ドーーン!!!



化物は地面に倒れた。



シュゥゥゥ……



化け物が死んだ事を確認すると桑原の右手からは霊剣が消えた。



桑原「ハァハァハァ……。今ので殆どの霊気を使い果たしちまったぜ」



桑原はそう言うと地面に座り込んでしまった。



桑原(あんな化物がいるってことはここはやっぱり人間界じゃねーって事だな……)



ガサガサガサ!!



ガサガサガサ!!



ガサガサガサ!!



桑原(!!)



桑原は慌てて立ち上がる。



桑原「う、嘘だろ…。まだいるのか!?」



ガサガサガサ!!



「グガァァァァ!!!」



先程、桑原が倒した化け物と同じタイプの化け物が姿を現した。



ガサガサガサ!!



ガサガサガサ!!



桑原「ま、マジかよ…!?」



「グガァァァァ!!!」



「ガルルルル!!!」



さらに2匹、同じ化け物が姿を現した。



桑原「ハハハ…。もう霊気ねーし、どうしよう……」



桑原はチラッと森の先を見た。



そして息を思いっ切り吐く。



ダッダダダッ!!



桑原は全力で森の中を走って逃げ始めた。



「グガァァァァ!!!」



化け物達も桑原を追いかけて走りだす。



桑原「霊気もねーのに三匹も相手に出来るかってんだ」



「グガァァァァ!!!」



桑原「チクショー!!化け物の方が足が速いぜ!!!」



「グガァァァァ!!!」



一匹の化け物が桑原に追いついた。そして長くて鋭い爪で攻撃してきた。



ビューン!



桑原「オォォォォ!!」



バッ



桑原はジャンプで攻撃をかわしたが完全にはかわしきれず胸部に擦り傷を負った。



着地した桑原の前に化け物達が集まって桑原を完全に包囲した。



桑原「痛てて。かなりやばいぜ…。霊気さえあればこんな奴ら屁でもねーってのによー」




桑原は前を向いたまま少しずつ後ろに下がる。化け物達もゆっくりと桑原に近づいていく。



桑原「逃げ場がねーぜ。どうする??」



ガッ!



桑原(!)



桑原の背中に木が当たった。



チラッ



桑原が上を木を見上げると高さが15mはある巨大な木であった。



桑原「しめた」



「グガァァァァ!!!」



化け物の一匹が桑原に飛びかかってきた。



桑原「オリャァァァァ!!!」



バッ



ガシッ



桑原はすぐさま木に高くジャンプしてしがみつく事で化け物の攻撃をかわしたのだった。



「グガァァァァ!!!」



化け物達は前足の長い爪が邪魔で木に登ることが出来ない。



桑原、ニヤリ。



桑原「へへっ。上手くいったぜ!あの長い爪じゃあ、こいつらは木に登る事は出来ねーと思ったんだ」



桑原はそのまま木に登っていく。そして途中にあった太い枝に渡って、木を背にして座った。



桑原は上から下を見ると、先程の化け物三匹が下でうろうろしていた。



桑原「…とりあえず今はここで休んで体力と霊気を回復させね…と。でないとあんな化け物がいる森を抜けられねーぜ」



桑原はフゥ〜っと大きな溜め息を吐いた。



桑原「雪菜さんは無事なんだろうか…」



右手をグッと強く握り締める。



桑原「クソッ!俺のせいで雪菜さんを危険な目に合わせちまった。強くならねーと。またあいつが来たら今の俺では手も足もでねー」


桑原はズボンのポケットの中から持ってきていた試しの剣を取り出した。



桑原「この試しの剣で次元刀を出した時に出たあの剣があの金髪の野郎が言っていた次元刀を超える上位能力なんだろうか…」



桑原の脳裏に比羅の顔がよぎった。



桑原「あの野郎、雪菜さんを傷つけた恨み、絶対に晴らしてやるぜ!」



クラッ



桑原「うっ…」



霊気と体力をほとんど使いきった桑原に急激の睡魔が襲ってきた。



桑原「…雪菜さん、必ず俺が直ぐに見つけだしますよ…」



桑原はそのまま力尽きるように巨木の上で眠ってしまった。



――その頃雪菜は…



雪菜「う…う〜ん…」



ゆっくりと目を開ける雪菜。



雪菜(ここは何処…?)



まだ意識がはっきりとしない。



暫くすると雪菜の脳裏に桑原、そして金髪の男の姿がよぎった。



雪菜(はっ!か、和真さんは!?)



ガバッ



雪菜は完全に目を覚まして起きあがった。



雪菜「ここは……」



雪菜が辺りを見回すと今自分がいる場所はどこかの家の部屋の中という事が分かった。



そして今まで自分がベッドの上に寝かされていたことにも気付いたのだった。



雪菜「誰かが私を助けてくれたのでしようか…?」



ガチャッ



その時、部屋の扉が開いた。



「気がついたようね」



道着を着た黒髪の綺麗な女性が部屋に入ってきた。



雪菜「は、はいっ。貴方は??」



黒髪の女性「私の名前は棗。貴方はこの先の森の入口に倒れていたのよ」



雪菜「そうだったんですね…。では貴方が私を助けてくれたんですね?」



棗「ううん、助けたのは私じゃあないよ。助けたのは彼よ」



棗が手で合図を送ると一人の男が部屋に入ってきた。


そして男が部屋に入ってくると同時にお酒の強烈な匂いが部屋の中に入ってきた



雪菜「あ、貴方は!?」



入って来た男の顔を見て雪菜は驚く。



何故なら入って来た男は雪菜が知っている人物だったからだ。



男は雪菜の顔を見てニヤリと笑う。



男「久しぶりだな。お前さんと会うのは暗黒武術会以来だな」



雪菜「貴方は酎さん!?」



続く
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