幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――深い森の中を二匹の妖怪が歩いている。



月畑「人間の反応はこっちみたいだぞ」



酒王「しかし、人間は意外と沢山人間界から魔界に迷い込んで来るよな」



月畑「そうだな。こんなに迷い込んでくるなら本当にこのパトロール隊を作って正解だったよ」



酒王「煙鬼の打ち出したこのパトロール隊の法案は元々は雷禅の考えていた政策だったらしいぜ」



月畑「そうらしいな」



現在の魔界の王である煙鬼が発足した法案が出来るまでは、魔界に迷い込んだ人間の運命は生きて人間界に帰されるか、または妖怪の餌になるかの二つに一つだったのだ。
そう、これまでは完全に迷い込んだ人間を発見した妖怪の手によって人間の生死の全てが委ねられていたのだ。



この二つのうちどちらの可能性が今まで高かったのかというと、妖怪の餌になってしまう可能性の方が高かった。



酒王「人間を妖怪の餌にはせずに人間を保護して人間界に返す。人間を食べなくなって死んだ雷禅らしい政策だぜ」



月畑「そうだな。俺は躯様がこのパトロールをする事に素直に従っているのが未だに不思議だ」



酒王「そうだな。躯様は俺の目から見てもこのパトロールを楽しんでおられるように見える。煙鬼の融和政策に対しても特に反対もされていない」



月畑「その融和政策自体も雷禅の考えていたことだろう?あの二人は長年対立してきたのに何でだろうな?」



酒王「それは分からないが、二人は色々な意見の食い違いで争ってきたとはいえ、お互いにどこか通じるところがあったんじゃあないのか?」



ザッ



月畑「おい!話しはここまでだ、人間の反応はこの辺りだぞ」



月畑と酒王の目の前には桑原が登ったあの巨木があった。



酒王「いつもならこの辺りに人間が魔界の障気を吸って倒れている筈なのだが、いないな」



――巨木の上



桑原「な、何だ!?すげー妖気を感じたぜ」



巨木の上で眠っていた桑原は月畑と酒王の妖気を感じて目を覚ました。



酒王「この木の上から霊気を感じるぞ」



月畑「何で木の上なんだ?人間が迷い込んだ時に木の上に落ちたのかな??」



酒王「とりあえず木を揺さぶってみるか」



月畑「そうだな」



ガシッ



酒王は木を両手で掴むとその力で木を揺らし始めた。


桑原「な、何だ!木が揺れ出したぞ!?」



ズルッ



桑原「およっ!!?」



ヒューーーー!!!



ドテッ!



木の上から地面に落ちる桑原。



桑原「い、痛てて…」



酒王「いたぞ!人間だ」



月畑「何でこの人間、魔界の障気を吸って意識があるんだ??」



桑原「クソッ!これだけの妖気を感じるって事はてめーは妖怪だな!」

(休んで体力と霊気は随分回復している。ここは強行突破してやるぜ)



ブォォォォォォ!!!



桑原は霊気を一気に開放した。



酒王・月畑(!)



酒王「こ、この人間から凄い霊気を感じるぞ!気の大きさだけなら俺達と殆ど同じかそれ以上だぞ…」



月畑「あ、ああ…。こいつは本当に驚いたな。しかしこいつを捕獲して人間界に送り返さないと」



酒王「そうだな。ここは俺に任せろ」



桑原「へっ、イライラしているんだやってやるぜ」



ズイッ



酒王が月畑の前に出てきた。



桑原(!)



ピキッ!



桑原は酒王の姿を見て固まってしまった。



酒王の姿…。それは少女漫画に出てくるような目をキラキラさせたナルシストの男のイケメン顔を巨大化にして、
そこから太くて長い両手に太くて短い両足が生えていた。



桑原(ぶ、不気味過ぎる…。こ、こんな奴とは死んでも戦いたくないぜ…。こんな奴と戦うならまだあの金髪の野郎の方がいいぞ)



月畑(あっ、あの人間が酒王の姿を見て固まってる)


桑原「先手必勝」



酒王「!?この人間向かってくるぞ」



クルッ



桑原は向かって来るように見せていきなり身体を反対方向に向けた。



そして桑原は行動を起こした。



ダッダダダダッ



そう、桑原は一目散に逃げていったのだ。



月畑「あっ、逃げた」



酒王「あっ!コラァァ!!!待てェェェェ!!」



ドスドスドス



酒王も慌てて桑原を追いかけ始めた。



月畑「あの顔を見たら普通は逃げるよな…。俺も正直今だにあいつの顔には慣れないぜ」



月畑は苦笑いを浮かべる。



月畑「しかしあれだけの霊気を持つ人間を傷つけずに捕獲するのはかなりの至難の業だぞ。とりあえず上の方に報告しとくか」



ザッ!ザッ!ザッ!



月畑は一人で躯の居城に向かった。



――一方、酎と再会を果たした雪菜はというと。



雪菜「貴方は酎さん!?」


酎「本当にびっくりしたぜ、森の入口にお前さんが倒れていたんだからな」



雪菜「酎さんが私を助けてくださったんですね…。本当にありがとうございます」



酎「いいってもんよ。知らない仲でもないしよ〜。しかし何があったんだ?全身に軽い打撲を負っていたようだが」



雪菜(はっ!?そういえば)


雪菜は桑原の事を思い出した。



雪菜「酎さん、和真さんを見かけなかったですか!!?」



酎「和真??和真って誰だ?知らねーな?」



雪菜「あっ…桑原です。桑原和真…」



酎「桑原…?桑原っていえば確か暗黒武術会の時に浦飯チームにいたあの霊気の剣を出す人間か?」



雪菜「そうです」



酎「見てないな。俺が見つけたのはお前さん一人だけだ」



雪菜「そうですか…」



雪菜は桑原の事を心配して暗い顔になる。



酎「とにかくよ。お前さんに何があったか俺に話してみな。この棗さんと一緒に力になるからよ」



棗「そうだよ。私達が力になる」



雪菜「は、はい!!ありがとうございます」



二人の言葉に雪菜の表情は明るくなる。



棗「え〜っと貴方の名前は…」



雪菜「あっ、雪菜です。名乗るのが遅くなってすいません」



棗、ニコリ。



棗「分かった。雪菜ちゃんだね。じゃあ何があったか話してくれる?」



雪菜「分かりました」



雪菜はこれまで起きた出来事の全てを酎と棗に話した。



…………。



…………。



酎「なるほどな。あの黄泉と互角にやりあうような奴に狙われたらたまったもんじゃあないな」



棗「私は妖気でも霊気でもない気を持っているって奴に興味がある。一度戦っててみたいよ」



酎「へへっ、棗さんの事だからそう言うと思ったぜ。九浄も聞いたら同じ事を言いそうだな」



棗「あいつは私の双子の兄だからね。それに他の喧嘩仲間達も私と同じ事を言うと思うよ。でも酎、そういう貴方も戦ってみたいんじゃないの?」



棗の問い掛けに酎はニヤリ。



酎「まあな。なんてったって俺はバトルマニアだからよ」



雪菜(なんかこの二人色々と凄そうです)



酎「でも安心しな。桑原の奴は大丈夫だと思うぜ。今魔界では迷い込んだ人間を保護するパトロール隊が作られているからな。魔界にお前さんと同じ様に飛ばされたんなら直にパトロール隊に保護されるだろうよ」



雪菜「そうですか…。良かったです…」



酎の言葉にホッとする雪菜。



棗「でも、話しに聞いた男はその人間を捕まえて一体何に使うのだろうね」



酎「さあな。でも桑原が魔界に飛ばされたのならそいつも簡単に桑原に手を出すことは出来ないだろうよ」


棗「そうよ、雪菜ちゃん。保護してしまえば魔界には、私や酎もいるし私の喧嘩仲間達や躯とかもいるし、大丈夫よ」



雪菜「はい」



雪菜はチラッと棗の方を見た。



雪菜は棗に何か聞きたそうな顔をする。



棗「うん、どうしたの?」


雪菜「ところで先程から気になってはいたのですが棗さんは酎さんとどういう関係なんですか??」



棗「あ〜、私は…」



棗が話そうとしたらズイッと酎が前に出て来て遮った。



酎「おっと、お前さんにはまだ話していなかったな。実はよー…」



酎は棗との関係を雪菜に話した。



雪菜「えっ!?えーーー!?そうなんですか!!」



雪菜は酎と棗の関係を聞いて驚きの声を上げたのだった。



続く
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