幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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互いに間合いをとる飛影と奇淋。



躯は二人の力関係を瞬時に見極めた。



躯(当然の事だが妖力、戦闘技術、サイズ、経験、あらゆる面で奇淋が圧倒的に飛影を上回っている)



先に行動を起こしたのは飛影だった。



飛影「行くぞ」



フッ



飛影の姿が一瞬で消え去る。



奇淋(飛影か…スピードは、かなりのものだ)



ボォォォォォ!!!



奇淋の頭上に現れた飛影の剣には魔界の炎が燃えている。



飛影「邪王炎殺剣」



ビューン!!!!!



高速の一撃が奇淋の肩を狙って振り下ろされる。



バッキ!!



飛影(何だと!?)



飛影の剣が奇淋の身体に触れた瞬間真っ二つに折れた。


奇淋「その程度の力で私に傷をつけることは出来ない」



ドゴォォォォォ!!!



奇淋は飛影の腹に強烈な一撃をくらわせる。



飛影「ぐっ!!」



たまらずその場に膝をつく飛影。



奇淋「どうした?この程度の攻撃でもう終わりか?」


飛影は鋭い目で奇淋を睨みつける。



飛影「まだだ」



飛影は直ぐに立ち上がり、素早い動きで奇淋に近付き肉弾戦を仕掛ける。



ドガ!!!!



バキ!!!!



ドゴォォォォ!!!



高速の連打!連打!



奇淋「なかなかの威力だ」



攻撃を受け続けている奇淋は涼しい表情。



飛影(馬鹿な!?殆どダメージを受けていない。今の俺の攻撃は戸愚呂(弟)クラスの妖怪なら一撃で倒せる破壊力はある筈だ)



奇淋「ハァァァァァ!!!!!」



飛影(!!?)



ドゴォォォォ!!!!



再び飛影の腹に奇淋の一撃が直撃する。



飛影「ぐはっ!!」



躯(これで決まりだな)



飛影(この俺がここまで手も足も出ないとは…)



飛影は崩れるようにその場に倒れてそのまま意識を失った。



奇淋「飛影か……」



奇淋は目の前に倒れている飛影を見つめている。



躯が奇淋の隣にやって来る。



躯「奇淋、お前は実際に手合わせをしてみてこの飛影をどう思った?」



奇淋「少ししか動きをみていませんが、荒削りながら素晴らしい格闘センスをもっていますね。
私に破れたことでより強くなることでしよう」



躯「そうか」



奇淋「躯様が私を彼に会わせたのは、何か目的があってのことでしよう?」



躯「フッ、気付いていたか。全てはこの男の為だ。
奇淋、お前はこれから大変になるだろうな」



奇淋「私がですか?」



躯は意識を失っている飛影を見つめがら微笑んだ。




――数時間後



飛影 「う……」



意識を取り戻した飛影はゆっくりと起き上がる。



飛影「クソッ!この俺が手も足も出ないとは」



コツコツコツ



何処からか足音が聞こえてくる。



飛影「躯か…」



躯「目を覚ましたようだな」



飛影「俺は何時間ぐらいくだばっていた?」



躯「3時間ぐらいだ」



飛影「チッ」



躯「派手にやられたな。だが最強クラスの戦士の力が分かっただろう」



飛影「ああ。だが、次は俺は負けん」



躯「いい目だ。飛影、これからお前に俺から課題をやる。今から半年で奇淋を超えてみせろ」



飛影「半年?」



躯「俺の見た感じだと雷禅の野郎がくたばるのが半年後ぐらいだ」



飛影(雷禅…幽助の親父か)


躯「雷禅が死んだら全軍をもって総攻撃をかける。その時お前はNo.2として俺の片腕となりそばにいろ」



飛影「フン、いいだろう。貴様に言われるまでもなく、俺はあの野郎を倒すつもりでいる」



躯「そう言うと思ったよ」」



躯は背を向けて歩き始めた。


飛影「待て躯、一つ聞きたい。何故俺を奇淋に会わせた?」



躯は足を止めて振り向く。


躯「フッ、お前は俺がこれまで触れてきた意識の中で一番心地良かった」



飛影は困惑した表情で



飛影「答えになっていない。どういう意味だ?」



躯はニヤリと笑いながら



躯「フッ、俺を失望させるなよ。飛影」



躯は再び背中を向けてその場を後にした。



飛影「チッ、相変わらずつかめない野郎だ」



飛影自身はまだ気付いていないが、奇淋を半年で超えるという新たな目的が出来たことで身体に高ぶる熱い何かを感じ取っていた。



――躯の部屋



バスッ



躯は自分の部屋に戻り、クッションに腰をかけて再び顔を布で隠した。



躯「飛影、あのまま放っておいたら、つまらん事で無駄に命を落としていただろうな」

(飛影…お前が半生をかけてまで探し続けていた氷泪石と妹の行方。その全ての目的を果たしたお前には戦いだけが残り、喪失感の中で死に場所を求めていた。だが、奇淋という超えるべき壁を見つけた今なら、
お前の中で何かが変わった筈だ)



躯は飛影に新たな生きる目的を与える為、
躯軍最強の戦士奇淋と手合わせをさせたのだった。
奇淋の圧倒的な力を見せつける事で、
飛影の中の心の変化を促したのだった。



躯「フッ、奇淋よ、お前のNo.2の座は、半年も待たずとも飛影によって奪われてしまう事になるかもしれないな」



――その頃飛影は



躯の居城から離れた森の中にいた。



飛影「ハァァ!!」



飛影は全力で妖気を放出。邪王炎殺黒龍波を天に向けて放った。



飛影「俺は誰にも負けんぞ」



躯の予想通り、
半年後に雷禅の死が魔界全土に知れ渡る。



その時、飛影は奇淋を倒し、躯軍の筆頭戦士の座を奪っていたのだった。



************************


飛影は不敵な笑みを浮かべていた。



躯「どうした飛影?」



飛影「いや、何でもない。奇淋の言っていた人間とやらを捕獲に行って来る」



飛影はそう言うと訓練所を後にした。



躯「A級妖怪並の人間か…。そのような者が魔界に現れるとは。これから魔界で何かが起り始める前ぶれか…」



躯は何か嫌な予感を感じていたのだった。



続く
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