幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――人間界



黄泉「魔界だ」



黄泉の口から桑原を飛ばした場所が明かされた。



幽助�蔵馬「魔界!?」



同時に驚く二人。



黄泉「そう魔界だ。俺の空間転移の術でな」



幽助「しかし黄泉、何で魔界なんかに飛ばしたんだ?雪菜は妖怪だから大丈夫だろうが、桑原はいくら強いっていっても、あいつは人間だぜ。妖怪の餌の標的にならねーのかよ?」



蔵馬「それは大丈夫ですよ。煙鬼が組織したパトロール隊が魔界に迷い込んだ人間を保護して人間界に送り返すことになっている。桑原君も恐らく彼らに保護される筈だ」



幽助「そういえばそうだったな。じゃあ、桑原も今頃はパトロール隊に保護されているのかもしれねーってのか?」



蔵馬「多分ね。黄泉もそれを見通して彼らを魔界に飛ばしたのだろう?」



蔵馬の問い掛けに黄泉はニヤリ。



黄泉「そうだ。下手に人間界の別の場所に飛ばしたとしても僅かな時間稼ぎにしかならない。だから俺はわざわざ魔界に飛ばしたのだ」



蔵馬「魔界には飛影や雷禅の昔の仲間達、そして躯もいる。確かに人間界の違う場所に桑原君を逃がすよりは魔界で保護してもらってから、彼らに事情を話せば、きっと桑原君の力になってくれるだろう」



黄泉「魔界には俺と同等か、それ以上の者が沢山いる。あの男も簡単には手出しは出来ないだろう」



幽助「前に戦って見て分かってたけどよ。黄泉、おめーは本当に色々な術が使えるよな」



黄泉「俺は目が見えなくなってからは、
魔界で生きていく為に
色々な術を使えるように修行したのでな」



幽助「大会でおめーともういっぺん戦うのが楽しみだぜ」



黄泉「フッ」



蔵馬「俺が気になっているのは桑原君の事を奴らは一体何処で知ったのだろう?」



幽助「そういえば、あの野郎が言っていたな。俺達と過去にあった事がある奴が、桑原や俺達の事を教えたって言っていたぜ」



蔵馬「なるほど。桑原君や俺達の能力を知る者か…。一体何者がこの一連の出来事に関与しているんだ?」


話しをしているうちに三人はいつの間にか幽助の家の前までやって来ていた。



幽助「俺の家に着いたぜ。コエンマが何かあいつらについて情報を知っていればいいんだけどな」



蔵馬「ああ。コエンマは必ず俺達の大きな力になってくれるさ」



ガチャッ



パチッ



幽助が先に家の中に入って部屋の明かりをつける。



続いて二人が幽助の家に入る。



黄泉「これが人間界で人間が住む所なのか?思ったより狭いな」



幽助「狭くて悪かったな。人間界の一人暮らしはこんなもんだぜ」



幽助は一年ほど前から実家を出ていた。
現在は実家からそう離れていない場所に古いアパートを借りて一人暮らしをしている。



蔵馬「幽助、早速で悪いが、直ぐに霊界と通信してみてくれ」



幽助「ちょっと待ってくれ、直ぐに探すからよ」



幽助は散らかった荷物の山の中から霊界と通信するモニターを探している。



蔵馬は幽助が探している間に黄泉の傷の手当をしていた。



蔵馬「黄泉、魔界に戻ったらどうするんだ?」



黄泉「修羅が心配しているだろうからな、まずは修羅と合流する」



蔵馬「この間お前に会った時に思ったが、修羅もかなり強くなっているようだな。これからの成長が楽しみだろう?」



黄泉「まあな。修羅には俺より強くなってもらわないといけないのでな」



蔵馬「今度の大会で修羅もさらに大きく成長してくれることだろう」



黄泉「俺としてはそうなってもらわないと困る」



幽助「おっ、あったぜ!」


幽助は机の上に通信用のモニターを置いた。



黄泉「浦飯、これが霊界と通信が出来るモニターか」


幽助「ああ、そうだ。待ってろ、今から霊界に繋ぐぜ」



パチッ



幽助はモニターのスイッチを入れた。



蔵馬と黄泉は幽助の後ろでモニターを見つめている。


パッ



暫くするとモニターに一人の女性の姿が映し出された。



その女性はとても可愛いらしい容姿で、薄い水色の長い髪をポニーテールにしている。



幽助「よう!久しぶりだな、ぼたん」



ぼたん「急に通信があったから誰かと思ったら幽助じゃないか!久しぶりだね」


幽助「最近、おめーとは全然会っていなかったもんな。相変わらず元気そうだな」



ぼたんはニコリと笑う。



ぼたん「元気があたしの取り柄だからね。幽助から霊界に通信してくるなんて珍しいね。何か急用かい?」


幽助「ああ、ちょっとな。コエンマはいるか?」



ぼたん「コエンマ様??もちろんいるけど」



幽助「ぼたん、悪いけどコエンマを直ぐに出してくれねーか?急用だ」



ぼたん「分かった。幽助、ちょっと待っててね」



幽助「おう、悪いな」



幽助は後ろからモニターを見ていた蔵馬と黄泉に目で合図する。



蔵馬「コエンマがいる見たいで良かった」



黄泉「霊界の現在の統治者か。どのような者か楽しみだ」



暫く待っていると、口におしゃぶりをくわえた子供がモニターに姿を現した。



この子供こそが実はコエンマなのである。



父である閻魔大王が不祥事を起こして罷免となってからは、コエンマが霊界を統治していた。



コエンマ「久しぶりだな、幽助。ワシはこうみえても忙しいのだぞ」



幽助「忙しい時に悪いな、コエンマ。今日はおめーに聞きたい事があるんだ」



コエンマ「聞きたい事じゃと?」



黄泉(こんな小さい子供が霊界の統治者だと!?)



黄泉は目が見えない為にコエンマの姿を見ることは出来ないが、コエンマの口から発する子供の声を聞いて想像していたものとのギャップでかなりの衝撃を受けていた。



蔵馬(フフッ、こんなに驚いた黄泉の顔を見るのは久しぶりだ)




幽助「実はよー」



幽助はコエンマにこれまでの経緯を話しを始めた。



――一方、黄泉と幽助との戦いを終えた比羅、そしてその仲間の駁はというと……。



二人は巨大な宮殿の中を歩いていた。



駁「桑原の飛ばされた場所は魔界だというのか?」



比羅「ああ。考えられるとしたら魔界が一番可能性が高いな。噂に聞く黄泉という男は計算高く戦略化としても優秀な男。私達が手を出しやすい人間界や霊界に飛ばす事は考えにくい」



駁「だが、本当に魔界ならちょっと厄介だぞ。あの黄泉以外にも強力な妖怪が沢山いる。奴らに邪魔をされたら桑原の捕獲は簡単にはいかないぞ」



比羅「その為に私は王に許可を得て、同志を総動員して魔界に出向くつもりだ」



駁「なるほどな。黎明を人間界で失ったから、総動員すれば俺とお前を加えて11人か」



比羅「相手は黎明を倒し、そして私のフィールドを破壊出来る者達だ。相手にとって不足はない。全力で叩くのみだ」



駁「フッ、俺達の戦力を集めたら魔界の奴らと同等以上になるだろうからな」



比羅「王はどう仰るだろうか?私はまずは今回の桑原捕獲の失敗と黎明を失ってしまったことを詫びねばなるまい」



駁「…そうだな。しかし、桑原捕獲に行った人間界にまさか魔界の最強クラスの妖怪の一人である黄泉が来ていたのはちょっと計算外だったぜ」



比羅「黄泉だけではない。妖狐�蔵馬に浦飯。奴らの妖気もかなり強力だ。あの男から聞いていた情報以上の強さだ」



駁「という事はあの男が知っている頃から奴らは大きく成長していたということだろうな 」



比羅「そうなるな。駁、話しはこれまでだ。王の間だに着いたぞ」



比羅と駁の目の前に扉がある。その入口には白い道着を来た男が立っていた。



比羅「袂(たもと)、王にお会いしたい」



袂「その様子だと例の者の捕獲に失敗したようですね」



袂は華奢で長い黒髪に女性的な顔立ちをしている為にどこか妖しい雰囲気を醸し出している。



比羅「ああ、残念だがな。王にお会いして戦力を総動員する許可を得たい。お前にも後で詳しく事情を話す」



袂「分かりました。フフッ、戦力を総動員するならば、私にも戦いの場がありそうですね。それは楽しみです」



比羅、ニヤリ。



比羅「私達の中でも一番冷酷な性格を持つお前の力、私は期待しているぞ」



袂「比羅、お任せください。それでは扉を開けますよ」



袂「王、比羅と駁が入ります」



ギギー



袂の手により王の間の扉が開かれる。



扉が開かれた先には大きな玉座があった。その玉座には一人の男がいた。



王に向かって一礼をする比羅と駁。



スッ



比羅と駁は片膝を床につけてゃがむ。



比羅「王、比羅と駁、只今戻りました」



王「よく戻ってきた。その様子だと例の者の捕獲は首尾よくいかなかったようだな」



比羅「はっ、申し訳ありません」



王は髪の毛が短く、切れ長な目が印象的な顔立ち。
身体は厚い鎧に覆われている。その眼光は鋭く強烈な威圧感を放っていた。



王「比羅、我が国でも最強の力を持つお前が、たがが人間を相手にしくじるとは思えない。何か邪魔でも入ったのか?」



比羅「はっ、実は…」



比羅は人間界での出来事を王に語った。



………。



………。



王「黎明が死んだか…。惜しい男を失ったな。比羅達を追って人間界に行かせて欲しいと私に願い出た時に、私が許可を出さなければあやつは死なせずに済んだのにな…」



王は黎明の死を惜しむように目を瞑った。



比羅「この度、私が戻って来たのは王に同志達を総動員許可してもらいたいと思い、ここに戻って来た所存であります」



王「戦力の総動員か。戦力を結集してどうするつもりだ?」



比羅「おそらく、黄泉が桑原を飛ばした先は魔界。魔界には黄泉と並ぶ実力者の躯や現在の魔界の王�煙鬼とその仲間達等、かなり強力な妖怪達が揃っています。彼らの保護を桑原が受ければ捕獲は困難でしょう。そうなれば魔界の者達と戦わねばなりません。その為にも戦力を結集したいのです」



王「桑原は我らの目的の成就にはどうしても必要だ。魔界と事を構えるなら戦力を結集をしなければなるまいな。お前の望みを許可する」



比羅「はっ、ありがとうございます。早速、駁と同士を集めて魔界に向かいます」



王「うむ。比羅、頼んだぞ」



比羅「はっ」



比羅と駁は、立ち上がると王に間から出ようとした。


「お待ちください」



ズズズ……



その時、空間の中から一人の男が現れて王の隣に立つ。



男は緑色の長い髪で中性的な雰囲気が漂う美男子だが顔の半分に縦の刀傷があり碧眼であった。



駁「お前は!」



比羅「樹(いつき)」



樹、ニヤリ。



樹「俺に考えがあります」


比羅達の目の前に現れた樹とは仙水忍に最後まで付き従い、幽助たちと魔界の扉を巡って戦ったあの闇撫の樹であった。



仙水の死後行方不明になっていた樹。
その樹が今回の桑原を巡る人間界の戦い全ての黒幕だったのだ。



続く
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