幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――居城の一室



駁「比羅、あの男の言っていた策に従うのか?」



比羅「樹の言う通りなら彼の策に従って私達は動いた方が得策だ」



王の勅命が出ているとはいえ、駁はやはり妖怪である樹の策と言うのが腹立たしい様だ。



比羅「樹の言う通りなら
彼の策に従って私達は動いた方が得策だ」



比羅は駁を諭す様な口調で話した。



そして暫く比羅は駁と話しをした。やはり駁の樹に対する不満は拭えなかったが、とりあえずはおさまった。



そして二人の話しは魔界で行われる大会に移行した。


駁「魔界で新しい王を決める大会があるとはな」



比羅「その大会で奴らはお互いが競い合うことで多くの者が妖力と体力を消耗することだろう」



駁「その大会直後で消耗している奴らを相手に俺達は戦力を結集して桑原の捕獲に乗り出すというわけだな」



比羅「そういうことだ。大会が終了次第、私達は行動を起こす」



(ニヤッ)
駁「魔界の連中と闘いになっても消耗した奴らなら俺達の相手ではないぜ」



不敵な笑みを浮かべて
自信ありげに話す駁。



その時だった。



ガチャッ



扉を開けて袂が入って来た。



余程慌てているのか、
袂は汗だくになっていた。


袂「比羅、駁、大変です!楽越(らくえつ)が勝手に単身、魔界に向かいました」


比羅・駁「何!?」



比羅と駁は突然、袂がもたらせた報告に驚きの声を上げた。



駁は驚いていたが、直ぐにやれやれだなっと言っているかの様な表情となった。


駁「比羅、物好きな楽越のことだ、おそらくは魔界の奴らの大会に一人の戦士として参加するつもりだろうぜ」



袂「あっ、そういえば」



駁の言葉に袂は思い出したかの様に胸元から一枚の紙を取り出した。



袂「彼の部屋に書き置きがありました」



スッ



袂は楽越が書き残したという紙を比羅に手渡した。



紙には「俺は魔界の大会に参加するぜ。妖怪共は俺がやつけてやるから任せておけ」と書かれていた。



比羅「楽越め、勝手な事をしてからに…」



袂「彼は私達の中でも異色な存在ですからね」



駁「さらに言えば楽越は純粋なバトルマニアだからな。俺達の目的の事など全く気にしていないのだろうぜ」



袂「私達の気を魔界の者達の前で使っても、気の波長を自由自在に変えることが出来る彼なら、正体が魔界の者達にばれる心配はないと思います。しかし勝手な行動は困りますね」



駁「全くだ!比羅の説明をあいつは聞いていなかったようだな」



比羅は黙って目を瞑り、
何かを考えていた。



そして。



比羅「袂、すまないが残りの7人の同士を集めて再び私の部屋に呼んで来てくれ」



比羅は突然、同士達を再び集める様に袂に指示を出した。



駁「比羅、同士達を集めてどうするつもりだ?」



比羅「大会が終わる頃を見計らって魔界に向かうつもりだったが、気が変わった。私達もすぐに行動が起こせるように魔界に向かう。大会を監視し、魔界の奴らの能力や技を把握しておいた方が得策だろうからな」


袂「分かりました。直ぐに呼んで来ます」



ガチャッ



袂を同士達を集める為に
部屋を後にした。



駁「なるほどな。だが、
楽越の事はどうする?」



比羅「追い掛けて楽越を
止めてもあいつの事だ、
私の言葉に従わないだろう。奴は気の波長を自由自在に変えれるのだから、書き置きの通り、大会の参加者の一人として魔界の奴らと大会で思う存分闘ってもらうさ」



駁「楽越は実力からいえば比羅、弥勒(みろく)に次ぐNo.3。楽越が勝ち抜けば奴らの戦力は削られていくな」



比羅「ああ。しかしあくまでも私達の目的は魔界の奴らを倒す事ではない。桑原の捕獲だ。大会を監視しながら桑原を捕獲出来るチャンスがあれば捕獲することも忘れるな」



駁「それは分かっているさ。俺達の悲願を果たす為だからな」



比羅「全てはこの世界の為だ」



――人間界



蔵馬が幽助の自宅の前に立っていた。




コツコツコツ



幽助が外から自宅に帰って来た。



蔵馬「幽助、何処に行っていたんだ?コエンマの話しを聞いた後、急に外に出掛たりして」



幽助「悪い悪い、ほったらかしにしていた屋台の片付けと桑原の家に行ってきた」



蔵馬「桑原君の家に?」



幽助「ああ、桑原の親父さんや静流さんが家に帰らない桑原や雪菜の事を心配しているだろうからな。一応、事情を話しに行って来たんだ」



蔵馬「静流さん達は何て言っていた?」



幽助「親父さんや静流さんは桑原が一緒にいた雪菜を巻き込んだ事を怒っていたぜ。特に静流さんは、
和の顔をぶん殴ってやるから首ねっこ引っ張ってでも連れて帰って来いって言っていたぜ」



蔵馬「ハハハ、静流さんらしいな」



幽助「最後に二人の事を宜しく頼むって言っていたぜ」



………。



二人の間に一瞬、沈黙が流れる。



蔵馬「彼らには本当に平和な人間界で幸せに暮らしてもらいたかったのにな…」



幽助「あの連中が来たらぶっ倒して、あの馬鹿を人間界にさっさと連れて帰ってやろうぜ」



(ニコッ)
蔵馬「そうだな」



幽助はキョロキョロと当たりを見渡す。



幽助「そういえば、黄泉の奴の姿が見えねーがどうしたんだ?」



蔵馬「黄泉なら幽助が家を出て直ぐに、修羅が心配しているだろうから魔界に戻ると言って一足先に帰ったよ。魔界に戻ったら、桑原君の事を保護して守ってくれるように黄泉に頼んでおいた」



幽助「ったく、あいつは相変わらず親馬鹿だな。あの生意気なガキのどこが可愛いのだろうな?」



蔵馬「ハハハ、それは幽助が父親になったら分かるかもね」



幽助「へっ、そうかもな。しかし黄泉に今回は随分と助けられたな」



蔵馬「そうだな。黄泉がいなければ桑原君は奴らの手に間違いなく落ちていただろう」



幽助「今回の事はあいつに感謝するけどよー、大会では別問題だ。黄泉とは思いっきり闘うぜ」



蔵馬「あれから三年、今度はどちらが勝つのか俺も今から楽しみだ」



(ニッ)
幽助「もちろん、俺が勝つぜ」



自信ありげに言い放つ幽助。



蔵馬「しかし残念でしたね、コエンマから奴らの有力な情報が得られなくて」



幽助「まあな。でも、コエンマも心当たりがあるような感じだったし調べてくれているから今は気長に待つさ」



――幽助の回想



幽助「という訳なんだ」



コエンマ「なるほどのう。霊気でも妖気でもない者達か・・・」



蔵馬「コエンマ、何か心当たりはないですか?」



幽助「コエンマなら何か手がかりになる情報を知らないかと思って聞いたんだぜ。なんか知らねーのか?」


コエンマ「う〜む、心当たりがないわけではないが確信がないんだ。話しを聞く限りじゃあ、その者達は
桑原を使って何かやばいことを企んでいるのは間違いないな。至急、ぼたん達と一緒に調べよう」



幽助「分かったぜ。あいつらは只者じゃあねーからな、闘うには少しでも情報が欲しいからよ。悪いが早めに頼むぜ!コエンマ」



コエンマ「任せておけ。幽助、わしはお前から話しを聞いてから、全ての世界を巻き込む大きな何かが起こりそうな、とにかく嫌な予感がしてならんのだ」



幽助「ああ、俺もだ」



コエンマ「何か進展があれば直ぐにお前に連絡を入れよう。幽助、霊界との通信機であるこのモニターを魔界にも持っていくのだぞ」


幽助「ああ、そのつもりだ」



――幽助の回想・終



蔵馬「俺は奴らに桑原君の事を教えた奴が一番気になっている」



幽助「どちらにしろ、こんなことを企んでいる野郎だ。ろくでもない奴だろうよ」



蔵馬「俺達と面識のある者か…」

(可能性があるなら暗黒武術界の参加者か仙水達の仲間の誰かだな)



幽助「蔵馬、おめーはいつ魔界に行くんだ?」



蔵馬「桑原君の事を黄泉に頼んだとはいえ、彼らが気になるから明日の朝にでも魔界に行くつもりだ」



幽助「蔵馬、明日って仕事とかは大丈夫なのか?」



蔵馬「幽助が出掛けている間に海外に行っている義父と母さんと職場の上司に連絡をして仕事の休職願いを出したよ」



幽助「いきなり休職するっていったら驚かれただろ?」



蔵馬「まあね。俺の事は大丈夫だから気にしなくていい。幽助はどうするんだ?」



幽助「俺も予定より早くなっちまったが蔵馬、おめーと一緒に明日、魔界に行くぜ」



蔵馬「わかった。だったら明日の朝の6時にここに迎えに来るよ」



幽助「了解」



蔵馬「では幽助、俺もまだ行く前にやることがある。一度、家の方に帰るよ」



幽助「じゃあ、明日な」



蔵馬「ああ」



蔵馬は幽助の家を後にした。



幽助「さてと、俺ももう一つやることがあったぜ」



――亜空間の中



樹は亜空間の中をゆっくりと歩いていた。



樹の前方には横たわっている男の姿が見える。



樹「忍」



樹は横たわっている男の名を呟くと後ろからゆっくりと近付き、優しく抱き起こした。



横たわっていた男の名は仙水忍。元・霊界探偵だった男でもある。



彼はある事件がきっかけで人間全ての存在が悪と思うようになっていた。



彼の身体が悪性の病魔におかされたのがきっかけで純粋に魔界に行きたかった彼は魔界への扉を開こうと企てる。



それを阻止する為に立ち上がった幽助達との闘いの中で自身の最終目的地であった魔界の地で死んだのだった。



ギュッ



樹は仙水の身体を強く抱きしめた。



樹「忍、目覚めたお前に早く会いたいよ」



樹は大きな野望を持つ者の目をしていた。



――雪村宅



ピンポーン



呼び鈴を鳴らす。



螢子「は〜い」



ガチャッ



玄関のドアが開くと螢子が出て来た。



幽助「よっ!螢子」



螢子「こんな時間にどうしたのよ?」



幽助「事情が変わって明日の朝に魔界に行く事になったんだ。そんで行く前に
もう一度おめーに会っていこうと思ってな」



螢子「明日って何かあったの?」



(ニッ)
幽助「世話のかかる馬鹿の事が気になるだけさ」



螢子「はぁっ??」



幽助の言葉に不思議そうな顔をする。



幽助「まっ、そういう訳だからよ。明日、魔界に行って来るぜ」



螢子「なんかよく分からないけど気をつけていって来なさいよ」



幽助「ああっ!じゃあな、螢子。次に会う時は魔王になって帰ってくるぜ」



クルッ



幽助は背を向けて手を振りながら螢子に別れを告げた。



螢子「幽助ー!!」



螢子は帰ろうとした幽助を呼び止めた。



幽助「何だ螢子?」



幽助は足を止めて螢子の方を振り向く。



螢子「必ず無事に帰って来てよ。あたしは待っているからね」



螢子は心配そうな目で幽助を見つめる。



幽助「約束するぜ螢子。
必ず俺は帰ってくる。伊達にあの世は見てねーぜ!」


親指を立てて螢子に見せた。



螢子「幽助……」



幽助の言葉に螢子の心配は吹き飛ぶかのように、その表情はパーッと明るくなったのだった。



――翌日・幽助の自宅前



蔵馬がゆっくりと幽助の家の前に歩いて来た。



蔵馬「行こうか幽助」



幽助「ああ」



こうして幽助と蔵馬は魔界に向かって旅立っていった。



桑原を狙う比羅達は桑原を捕らえて何をするつもりなのか?



そして静かに仙水と時を過ごしていたはずの樹が、
比羅達に接触した目的とは?



人間界・魔界・霊界の三つの世界を巻き込む大きな闘いが今始まろうとしていた。


幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜


〜序章〜






大会編に続く
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