幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□序章
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――畑中建設の近くの喫茶店の向かい側にあるビルの屋上



一つの人影が金髪の男に近づいてくる。



金髪の男「黎明(れいめい)か」



金髪の男は振り向かずに
近付いて来た者の名前を呼ぶ。



黎明「例の者の様子はどうだ?」



黎明は金髪の男と同様に綺麗な顔立ちをしている。
金髪の男と大きく違うのは髪の色が銀色で、目の色が黒くてとても印象的であった。



金髪の男「ああ、しばらく監視を続けていたがおそらくあいつで間違いない」


黎明「そうか、あの男の情報通りだな」



金髪の男「監視をしていたら奴は面白い者と接触したぞ」



黎明「面白い者?」



金髪の男「ああ。妖狐・蔵馬だ。奴は私が監視しているのを直ぐに気付いた。例の者は私に気付かなかったのにな」



黎明は金髪の男の隣にやってきた。



黎明「なるほど。妖狐・蔵馬か。あの男の情報だと
かなり頭の切れる男らしいな」



金髪の男「もう少し監視するつもりだったが、あの様子だと奴はいずれ私達の邪魔をするだろう。奴に邪魔をされると少々面倒な事になりそうだ。予定を変更する必要がある」



金髪の男は横目で黎明を見た。



黎明「フッ、妖狐は私に任せておくがいい。邪魔はさせないさ」



フッ



そう言うと黎明の姿がこの場から消えた。



金髪の男「私達の目的を果たすには、例の者の力は不可欠だ。必ず手に入れなければならない」



金髪の男の青い瞳には一人の人物が映っていた。



――蔵馬は喫茶店で感じた謎の気配を追いかけて外に出ていた。



蔵馬「気配はもう感じられないか」



その時、畑中建設の事務所の中から一人の女性社員が出て来た。



「あ、南野さん!!」



喫茶店の前にいる蔵馬の存在に気付いて声をかけてきた。



蔵馬もその声に気付く。



女性社員「ちょうど良かったです。専務が探していましたよ」



蔵馬「ありがとう。直ぐに行きます」




蔵馬は女性社員に笑いかけると女性社員の方に向かって歩きだした。



蔵馬(あの気配から感じとれたのは間違いなく霊気でも妖気でもない異質な気だったな。相手の正体が分かるまでは桑原君達からあまり目を離さない方がよさそうだ)



――畑中建設の社内



蔵馬は畑中建設の専務の部屋に向かった。



コンコン



「入りなさい」



蔵馬「失礼します。専務お呼びですか?」



専務「ああ、すまないが君に頼みがあってね」



蔵馬「頼みですか?」



専務「佐藤君が畑中建設が手がけている河原崎の現場に昼から行く予定だったんたが、急病で行かれなくなってしまってね。君に代わりに行ってもらいたいんだ」



蔵馬「分かりました。そういう事なら今から向かいます」



蔵馬は現場の仕事の詳細を聞くと部屋を後にした。



蔵馬(桑原君達が気にかかるが仕方ないな。夜にでも桑原君の家に様子を見にいくしかないか)



――河原崎の建設現場



蔵馬が現場での全ての仕事を終える頃には既に夜になっていた。



現場責任者「佐藤君が来れなくなって一時はどうなるかと思ったが、
南野君が来てくれて助かったよ」



蔵馬「俺の力がそちらのお役に立てて良かったです」



「お〜い!秀兄ィ!!」



大きな声で蔵馬を呼ぶ声がする。



蔵馬もその声に気付いた。


蔵馬「秀一、どうしてここに?」



秀一「会社に電話したら秀兄ィがこっちに来ているっていうからさ!ここは高校から近いし一緒に帰ろうと思って寄ってみたんだ」



――畑中秀一は蔵馬の人間界の母親である南野志保利の再婚相手である畑中の連れ子である。蔵馬が母の再婚相手の畑中姓を名乗らず南野姓をそのまま名乗っているのは連れ子の名前が同じ秀一という名前だからである。



(ニコッ)
蔵馬「そうか。久しぶりに秀一と一緒に帰るのも悪くないな」



蔵馬は秀一に優しい笑顔を見せる。



蔵馬「俺はこれで失礼します」



現場責任者「お疲れ様。また頼むよ」



蔵馬は現場責任者に挨拶を終えると秀一のそばに行く。



蔵馬「行こうか、秀一」



秀一「うん」



蔵馬(秀一が来るとは予想外だったが仕方ないな。秀一と家に一緒に帰ってから桑原君の家に行くとするか)



ドゴーーン!!!!!



二人が現場を後にしてしばらく歩いていたら後方で大きな爆発音が鳴り響いた。



蔵馬(!?)



秀一「な、何!?」



蔵馬は直ぐに全力で走って、河原崎の建設現場に向かった。



秀一「あっ、秀兄ィ!!」


蔵馬(一体何が起こったんだ)



――河原崎の建設現場



蔵馬が現場に戻ると建設中の建物の上段が大きく崩壊していた。



現場責任者「南野君!!!」



血相を変えて現場責任者が蔵馬の所に走ってくる。



蔵馬「これは一体どうしたんですか!?」



現場責任者「それが分からないんだ!建物の上部分が急に爆発した」



蔵馬「怪我はないですか?」



現場責任者「私は大丈夫だが建物内に一人取り残されている。もう駄目かもしれない・・・」



蔵馬「ここは俺に任せてください」



蔵馬は現場の責任者にそう告げると崩れかけた建物に向かって走っていった。



現場責任者「無茶だ!戻りなさい!!!」



――河原崎の建設現場の建物内



蔵馬「もう少しで完成だったのに一体どうしてこんな事に・・・」



蔵馬は辺りを見回して取り残された作業員を捜す。



蔵馬「あれは」



瓦礫に埋まっている作業員らしき人影を発見した。


蔵馬「ハァッ!!」



ドガァァァァァ!!!



薔薇に妖気を通して作った鞭で瓦礫を粉々に破壊した。



作業員が血を流して倒れている。



蔵馬「大丈夫ですか!?」


直ぐに蔵馬は倒れている作業員に近付く。



「ううう……」



苦しそうに呻き声を上げる作業員。



蔵馬(頭を少し打っているようだが、他は軽い怪我と打撲みたいだ。応急処置して病院に連れて行けば命に別状はない)



身体の痛みの為か、作業員は意識を失った。



蔵馬はいつも持ち歩いている薬草を使って作業員の怪我の応急処置を施す。



蔵馬「これでよし。後は彼を病院に早く連れていかないと」



蔵馬は作業員を肩に担ぐと出口に向かって歩き始めた。



コツコツコツ



その時、蔵馬の背後から足音が聴こえてきた。



蔵馬が振り向くと綺麗な銀髪の髪と黒い瞳を持った美しい男が現れた。



黎明である。



黎明「初めまして妖狐」



目の前に現れた黎明の放つ気から、蔵馬はこの男がただものではないと瞬時に悟った。



蔵馬(この男から感じる気は一体何だ…)



黎明「思っていたより早くやって来たな」



蔵馬「…この爆発はお前の仕業か」



(ニヤッ)
黎明「そうだと言ったらどうする?」



黎明は不敵な笑みを浮かべる。



蔵馬は気を失っている作業員を床にそっと寝かせると黎明に鋭い目で睨みつける。



蔵馬「本当にそうならば」


ピシッ!



蔵馬は床に鞭を叩きつける。


蔵馬「ここがお前の墓場になる」



続く
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