幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編01
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――幽助と蔵馬が煙鬼のいる大統領府に到着して数日が過ぎた。そして魔界の新しい王を決める大会がいよいよ明日にと迫っていた。


ガチャッ



幽助は、朝早くに起きて大統領府から出て何処かに出掛けようとしていた。



蔵馬「おはよう幽助。こんなに朝早くに何処に行くんだ?」



ビクッ



幽助「うお!?」



蔵馬が突然背後に現れて声をかけた為に幽助は、驚きの声をあげた。



幽助「蔵馬か。気配消して突然、声をかけるなよ。驚くじゃねーか!?」



(ニコッ)
蔵馬「ごめんごめん。つい」



幽助「核(魔族の心臓)に悪いぜ。全く」



幽助は、苦笑いを浮かべた。



蔵馬「ははは。それで何処に行くんだ?」



幽助「明日は、いよいよ大会だからよ。その前にどうしても行きてぇとこがあるんだ」



蔵馬「行きたいとこ?」



(ニッ)
幽助「ああ」



蔵馬(そうか今日は、確か・・・)



蔵馬は、幽助の表情を見て幽助が何処に行こうとしているのか察知した。



蔵馬「フッ、分かった」



幽助「なんだ、蔵馬、おめー、俺が行こうとしているとが分かったのか?」



蔵馬「ああ。幽助の顔を見たらね。なんとなく分かったよ」



幽助「蔵馬は、今日は、どうするんだ?」



蔵馬「俺は、ここに残って明日からの大会に備えて回復用の薬草の調合と闘いに使う植物の手入れでもしているよ。今回の大会は、前の大会以上に激しい闘いが予想されるからね」



幽助「あれから三年も立っているんだ。みんなかなり強くなっているだろうぜ。陣や酎達にも明日会えるのが楽しみだぜ」



蔵馬「その酎が雪菜ちゃんを保護してくれて桑原君が保護されていた躯のとこに連れて来てくれるとは思わなかったよ」



幽助「ああ。そうだな」



蔵馬「とにかく桑原君と雪菜ちゃんの無事の情報が煙鬼の所に入って来てわかって良かった。彼等も躯達と一緒にここに来るらしいし明日には会えますよ」



幽助「桑原達の情報を得るのに煙鬼のおっさんとこに来て正解だったな」



蔵馬「そうだね」



幽助「しかしよー。煙鬼のおっさんからあの話しを聞いた時は、本当に驚いたぜ。まさか桑原の奴が大会に参加するなんてよ」



蔵馬「躯の提案らしいけどね。それに下手に彼を保護して警護するより大会に参加させてしまった方が魔界の猛者が揃う大会だから奴等が桑原君を追って魔界に来たとしても簡単には、手を出しづらいだろうからね」



幽助「そうだな」



蔵馬「ここで話しをして遅くなってもなんだから幽助いってきなよ。悪いな、引き止めてしまって」



幽助「ああ!じゃあちょっくらいってくるぜ」



クルッ



幽助は、蔵馬に背を向けて右手を挙げて蔵馬に別れを告げて歩き始めた。



コツコツコツ



蔵馬は、徐々に小さくなっていく幽助の後ろ姿を見つめながら呟いた。



蔵馬「幽助が“彼”のところに行くのは、三年ぶりになるのか」



――躯の居城



桑原「うりゃぁぁぁ!!!」



ビューン!!!



時雨「ぬっ」



ガシッ!!



ズズズ・・・



時雨は、燐火円磔刀で桑原の強烈な霊剣の一撃を受け止めた。



時雨「うむ。いい一撃だ。拙者の剣術をたった数日ながら随分とものにしたな。人間ながら大した男だ」



桑原「へへへ」



シュゥゥゥ



桑原の右手から霊剣が消え去った。



時雨「おそらく拙者の見立てでは、御主の今の実力は、霊界の基準でいえばすでにA級を超えてS級クラスに到達しているはずだ」



(ニッ)
桑原「マジかよ。俺には、あんまり実感がないが」



桑原は、右手の手の平をギュッと握りしめた。



時雨「数日間でこれだけ急激に霊力を上げるとは、おそれいったぞ。今の御主ならその剣もかなり使えるはずだ」



スッ



時雨は、右手の人差し指で桑原のズボンの左のポケットを指差した。



桑原「ああ、これか」



ゴソゴソ



スッ



桑原は、ズボンの左のポケットから以前鈴木にもらった試しの剣を取り出した。


桑原「これを使って次元刀を出せば今までにない剣が出来た。前は、これを出しただけで霊気の消耗が激しくて気を失っていたからな」



時雨「それは、本当に変わった剣だな。もう少し修行を詰めばきっとその道具を使わずに自らの手で作り出すことも出来るようになるぞ」



ジジジ



ピキーン



桑原は、右手に次元刀を作りだした。



桑原「まぁ、大会は、メインでこの次元刀を使って闘うことになりそうだな」



時雨「フッ、しかし次元を斬る防御不可能のその剣も特殊な能力だぞ。本当に御主は、面白い男だ」



(ニッ)
桑原「そうか?」



時雨「しかし御主を捕えようとした者達は、御主の何の能力を必要としているのだろうな?」



桑原「それがわかれば苦労がないけどよ。試しの剣で次元刀を出した特殊なあの剣がそんな能力には見えないし」



時雨「とにか・・」



コツコツコツ



時雨が言いかけたその時、訓練場の外から足音が聞こえてきた。



(ニカッ)
桑原「この足音は、雪菜さん!!」



桑原がいった通りに間もなく訓練場に雪菜が入って来た。



時雨(何でわかるんだ?)



(ニコニコ)
桑原「雪菜さ〜〜ん」



ダー!!



桑原のスピードは、マッハを超えて雪菜のそばに行った。



(ニコッ)
雪菜「和真さん、時雨さん。躯さんが大会に参加する者は、明日が大会だから朝早くここを出発するので大会に備えてみんなゆっくり身体を休めるようにっていってましたよ」



時雨「確かにそうだな。心得た。桑原よ、修行は、これまでだ」



桑原「は〜い。わかりました!!」



時雨(・・・)



桑原は、雪菜のそばであまりにも幸せそうな顔をしていた。



(ニャッ)
時雨「やれやれだ」



時雨は、苦笑いを浮かべながら桑原と雪菜の二人が再会した時の事を思い出した。



〜時雨の回想〜



ガキーン!!



桑原の霊剣を時雨が弾く。


時雨「桑原!もっと素早く動かないか!!」



桑原「うぉぉぉぉ!!!」


ダッ!



ビューン!!



ガキーン!!



再び弾かれる霊剣。



時雨「何だ!その動きは、情けないぞ!!」



時雨の厳しい叱咤の声が訓練場に響き渡る。



桑原「せいゃぁぁぁぁぁ!!」



ビューン!!



ガキーン!!



時雨「よしよし!その調子だ」



コツコツコツ



その時複数の足音が訓練場の外から聴こえてきた。


時雨「来客のようだ。修行は、一時中断だ」



カチャッ



時雨は、燐火円磔刀を下げた。



桑原「はぁはぁ。お、おう」



シュゥゥゥ



桑原の右手からも霊剣が消えた。



「おっ!やっているな」



スー



桑原(!)



桑原は、訓練場に一番最初に入って来た男の顔を見て驚いた表情を浮かべた。



(ニッ)
酎「久しぶりだな、桑原。暗黒武術会以来になるのかな?本当に魔界に飛ばされてやがったんだな」



桑原「お、おめーは、酎!!?どうしてここに??」


スー



続いて躯が入って来た。



時雨「これは、躯様」



ペコッ



時雨は、頭を下げた。



時雨「あの者は、確か以前に黄泉の下にいた妖怪でしたね」



時雨は、躯の隣に行き酎の方に視線を向けて躯に話しかけた。



躯「そうだ。当時、黄泉の片腕だった蔵馬が黄泉の下に連れてきた妖怪の一人だ。あいつが桑原と、知人とはな」



酎「俺がここに来たのは、桑原、お前さんに会わせたい者がいてな」



桑原「誰だ??」



(ニャッ)
酎「今、お前さんが一番会いたがっている者だろうよ。おい嬢ちゃん、入ってきなよ」



「はい」



コツコツコツ



酎が言うと一人の少女が訓練場に入って来た。



桑原「あ・・・」



桑原は、驚きのあまりに口を開けた。



(ニャッ)
酎「会いたかっただろ?」


桑原「ゆ、ゆ、雪菜さ〜〜ん!!!」



桑原の大声が訓練場に響き渡る。



(ニコッ)
雪菜「和真さん。無事で良かったです」



雪菜は、桑原の顔を見て何かホッとしたような優しい笑みを浮かべた。



ダッ



桑原「雪菜さ〜〜ん!」



桑原は、雪菜の下に駆け出した。



ガバッ!



雪菜「え・・」



ギュッ!!



雪菜「きゃあ!?」



ギュゥゥゥ



桑原は、雪菜を強く強く抱きしめた。



桑原「雪菜さん・・無事で無事で本当に良かったっす」



雪菜「か、和真さん・・」


スー



雪菜は、目を閉じて安心した様な表情で桑原の胸に顔を埋めた。



(ニャッ)
酎「やれやれ、俺達もいるのによ〜」


(良かったな。桑原、お嬢ちゃん)



時雨「躯様」



躯「何だ、時雨?」



時雨は、小声で躯に呟いた。



時雨《あの氷女がおそらくは、飛影の妹です》



躯「そうか、あの氷女がな」



躯は、雪菜をじっと見つめていた。



(ニャニャ)
酎「おいおい、お前さん達いつまで抱きあってんだ?」



桑原・雪菜(!!)



バッ



桑原と雪菜は、慌てて離れた。



桑原「ははは」



桑原は、顔を真っ赤にして照れた表情。



(ポッ)
雪菜(・・・)



雪菜は、うつ向き顔が真っ赤になっていた。



(ニャニャ)
酎「いいね。お前さん達。初々しいぜ」



桑原「からかうなよ、酎!親父かてめえは!」



(ニャニャ)
酎「照れるな、照れるな。みんなわかっているから」


雪菜「いきなりでちょっとびっくりしましたが和真さんと本当に無事にまた再会出来て嬉しいです」



桑原「雪菜さん」



躯「盛り上がっている所に悪いが桑原に話しがある」


桑原「話し?」



〜時雨の回想終わり〜



時雨(そして躯様が桑原に大会への参加の事をお話しになったんだったな)



桑原「おい、時雨!」



時雨「何だ?」



桑原「俺にお前の剣術を教えてくれてありがとうな」


時雨「ああ。よく拙者の修行について来れたな。拙者から学んだ事を活かして御主の大切な者をしっかり守れよ」



時雨は、チラッと雪菜を見た。



雪菜(?)



(ニッ)
桑原「ああ」



(ニャッ)
時雨「フッ」



コツコツコツ



時雨は、笑みを浮かべると訓練場を出ようと歩き始めた。



ピタッ



時雨は、振り向かず桑原に背を向けたまま話し始めた。



時雨「桑原。大会では、もはや師弟関係ではない。拙者ともしも対戦する事があれば御主に拙者が教えた全てを出しつくすつもりで向かってこい」



桑原「ああ。あんたに習った全てを出しつくしてそして俺が勝つ」



時雨「楽しみにしているぞ。明日は、早い。ゆっくり身体を休めろよ」



桑原「おう」



コツコツコツ



時雨は、そういうと訓練場を後にした。



雪菜「時雨さんって強くて優しい方ですね」



桑原「そうっすね」


(時雨、ありがとうな)



桑原は、時雨に学んだ剣術と新たな力を武器に大会に挑む。



――魔界の7番地区



幽助は、魔界の7番地区(7階層)の中心地の少し外れに一人訪れていた。



幽助「ここに来るのは、久しぶりだな」



そう呟く幽助の目の前に一つのお墓が建っていた。



ドスン



幽助は、勢い良くお墓の前に腰を下ろした。



幽助「今日は、あんたの命日だったな。来てやったぜ。親父」



幽助が訪れたお墓とは幽助にとって遠い先祖で遺伝上の父でもある。



それは今は亡き雷禅が眠りについているお墓であった。



続く
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