幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編01
2ページ/35ページ

――棗の家の前



飛影は棗と楽しそうに話しをする雪菜を見ていた。



飛影(安心したぜ。どうやら、雷禅の昔の仲間に保護してもらったようだな)



飛影は雪菜の元気な姿を見て安堵の表情を浮かべていた。



飛影(あれから人間界で生活を続けていたせいか随分と表情が明るくなったな)


クルッ



飛影(行くか、雪菜の無事が分かればここには用はない)



ザッザッザッ



飛影はずっと走って来た森の中の道を戻り始めた。



「飛影じゃあないか?」



飛影(!)



飛影の目の前に棗の家に向かっていた酎とばったりと鉢合わせした。



酎「お前さんがこんなとこで何をしているんだ?」



飛影「酎、久しぶりだな。別に大した用ではない。パトロールで来ただけだ」

(チッ、タイミングが悪い)


酎「何だパトロールか」



飛影「そういうお前はいつもの女の所か?」



(ニカッ)
酎「まあな。今から棗さんのとこに行くんだ」



飛影(ご苦労な事だ)



酎「そうだった。飛影、暗黒武術会の時にお前さん達と一緒だった、氷女の嬢ちゃんをこの直ぐ先の棗さんとこで保護しているぜ。この森の入口であの子が倒れていたのを俺が見つけて棗さんの家に運んだんだ」


飛影(なるほど、こいつが発見したのか)



酎「軽い打撲をしていたが大したことなかった。嬢ちゃんから話しを聞くと人間界で大変な目に会っていたみたいだぜ」



飛影「その大変な目とは妖気でも霊気でもない正体不明の気を持つ相手に襲われたということだろう?」



酎「そうだぜ・・・って何で飛影がそれを知っているんだ?」



飛影「桑原の馬鹿に聞いたからな」



酎「桑原!?桑原は無事だったんか!嬢ちゃんが凄く心配していたからよー」



飛影「ああ、2番地区の森の中をさ迷っている時にパトロール隊の者が発見した。今は恐らく躯の居城にいるはずだ」



酎「そうか、あの嬢ちゃんが桑原の無事を知ったら安心するだろう」



その時、棗の声が聞こえてきた。



棗「そこに誰かいる?何か話し声が聞こえたけど」



酎「棗さん、俺だ!」



棗「誰かと思ったら酎なのね。貴方以外にそこに誰かいるの?」



飛影「俺はそろそろ行くぞ」

(雪菜と会うつもりはないしな)



ザッ



ガシッ



飛影が立ち去ろうとした時、酎が飛影の肩を掴んだ。


酎「飛影、何処に行くんだ?嬢ちゃんと会っていかないのか?」



飛影「俺はいい」



(ニッ)
酎「まあ、折角来たんだからよー。知らない仲じゃあないんだから嬢ちゃんに会って行けよ」



酎「棗さ〜ん!!ちょっとこっちに来て見なよ!珍しい奴に会ったぜ」



飛影(チッ、余計な事を)



棗「珍しい奴??」



雪菜「誰でしょうか?」



棗「雪菜ちゃん、とりあえず行ってみようか」



雪菜「はい」



ザッザッザッ



棗と雪菜が歩いて飛影と酎の所までやってきた。



雪菜「あ・・・」



飛影と雪菜の目があった。


飛影・雪菜(・・・)





一瞬、二人の間で沈黙が流れた。



棗(この人は飛影っていう名の躯の所にいた邪眼を持つ妖怪ね。確か幽助君とも友人だったはず)



沈黙の中で先に口を開いたのは、雪菜の方だった。



雪菜「お久しぶりです。最後に会ったのは貴方が魔界に行った時でしょうか?」


飛影「ああ」



飛影は魔界に旅立つ時に雪菜に氷泪石を手渡された時の事を思い出し始めた。



――飛影の回想



雪菜「これを・・・。母の形見です」



スッ



雪菜は飛影に氷泪石を手渡した。



雪菜「氷女は子を産むと一つぶの涙をこぼします。それは結晶となり産まれた子供に与えられます。私の母、氷菜は二つぶの涙をこぼしたそうです」



飛影は黙って雪菜の話しを聞いている。



雪菜「一つは私がそしてもう一つを私の兄が持っているはずです」



飛影「よくあの垂金に盗まれなかったな」



雪菜「おなかの中に隠してましたから」



飛影(・・・)



雪菜「あ!!ちゃんと洗いましたから汚くないです」


雪菜は慌てた表情で飛影に説明をした。



飛影「どうしてこいつを俺によこすんだ?」



雪菜「私の兄は炎の妖気につつまれていたそうです。全身を呪布にくるまなければ持てない程だったと泪さん(飛影と雪菜の母の友人)が言っていました」



飛影(俺を放り投げた女だな)



雪菜「あなたと近い種族の人だと思うんです。もしもそれと同じ物を持った方に会ったらそれを渡して私は、人間界にいると伝えて下さい」



飛影「くたばったに決まってるぜ。空飛ぶ城の上から捨てられたんだろ?」



(ニコッ)
雪菜「きっと生きています」



飛影(・・・)



雪菜「これも泪さんが言ってました。『あの子は、私達の言葉を理解していた・・・きっといつか復讐にくるわ』っと。私もそう信じています」



雪菜は真剣な目で飛影の目を見ている。



雪菜「心まで凍てつかせてなければ長らえない国ならいっそ滅んでしまえばいい。そう思います」



飛影「フン・・・それでお前、国を飛び出したわけか〜となると氷河の国が兄探しを許したって話しもウソっぱちだな」



雪菜は顔色を変える事なく飛影の言葉を聞いている。


飛影「いいか、甘ったれるなよ。滅ぼしたいなら自分でやれ。生きてるかどうかも知れん兄とやらにたよるんじゃない」



飛影は雪菜に言い聞かすような口調で話す。



雪菜(!)



雪菜は飛影の言葉に一瞬、驚いた顔を見せたが直ぐに元の顔に戻った。



雪菜「そうですね。本当・・・そうです」



飛影(雪菜)



雪菜「なんだか兄に会っても同じこと言われそうですね」



――飛影の回想終了〜



飛影「俺が最後に人間界に行ったのが正聖神党の事件の時だったが、あの時はお前とは会わなかったからな」



雪菜「そうでしたね」



飛影「今、お前が魔界にいるのに聞くのもあれだか、人間界での生活はどうだ?」



雪菜「人間界での生活は本当に楽しいです。お世話になっている桑原家のお父様に和真さんや静流さんには本当によくしてもらっています」



飛影(そういえば雪菜は桑原の家で世話になっていたな)



雪菜「私がいた氷河の国の同胞達は心の中まで凍てついていましたが、人間界で知り合った方々達は本当に温かい心で私に接してくれています」



飛影「そうか」



棗(へ〜、あいつが雪菜ちゃんと話しをしている時のあの目、何故か分からないけど今まで見た事のない温かい目をしている感じがする)



酎「話しの途中で悪いが嬢ちゃん、さっき飛影に聞いたんだが、お前さんが心配をしていた桑原の居場所がわかったぜ」



雪菜「えっ?それは本当ですか!?」



(ニッ)
酎「この飛影に聞いてみな」



雪菜「飛影さん・・・」



飛影「桑原なら無事だ。パトロールをしていた者が森の中でさ迷っていたあいつを見つけた。躯の居城に俺の仲間達が連れて行っているはずだ」



雪菜「そうですか。和真さんが無事で本当に良かったです」



雪菜は桑原の無事を知って安堵の表情を浮かべた。



棗「雪菜ちゃん、良かったわね」



雪菜「はい」



チラッ



棗は飛影の方を見た。



棗「そういえば貴方は一人?ここに何しに来たの?」


飛影「俺だけだ」



酎「パトロールって言っていたぜ」



棗(パトロール?パトロールはいつも必ず複数で動く決まりのはずなのに単独で動くなんて変ね。酎は不思議に思わないのかしら?)



棗「パトロールで探していた人間は見つかった?」



飛影「いや、残念だが見つかっていない」



棗(目が少し泳いだ。パトロールっていうのはどうも嘘みたいね)



棗「そっか。私も先月パトロールをしたけど迷い込んだ霊気の弱い人間を見つけるのも大変よ。嗅覚にすぐれた妖怪か貴方みたいな邪眼を持つ人が一緒にいれば楽なんだけどね」



飛影「大会で俺が優勝してくだらんパトロールを終わらせてやるさ」



棗「言うわね。私ももちろん参加するから貴方と対戦することになったら私は負けないわよ」



飛影「フッ」



棗(雪菜ちゃんが私に身の上話しをした時に言っていた魔界にいるかも知れないというお兄さんの話し。聞いたばかりの話しだからあれだけど雪菜ちゃんを見る目といい、他にも何かこの人は引っかかるのよね)



(ニコッ)
棗「まあいいわ」



飛影(何がだ?)



チラッ



棗は今度は雪菜の方を向いて話しかける。



棗「雪菜ちゃんはこれからどうするの?躯の所にいるあなたの探していた桑原って人間の所に会いに行ってみる?」



雪菜「そうですね。和真さんも私のことを心配していると思いますから行ってみようと思います」



飛影「俺はそろそろ行くぞ」



棗「行くなら雪菜ちゃんを折角だから一緒に躯の居城まで連れていってあげたら?」



飛影「悪いがまだパトロールがあるからな」



酎「いいぜ。俺が後で嬢ちゃんを連れていってやる」


雪菜「酎さん、ありがとうございます」



酎「いいってもんよ」



飛影「あばよ」



ザッザッザッ



飛影は走り去っていった。


雪菜「飛影さん」



雪菜は走り去った飛影の後をジッと見つめていた。



棗(雪菜ちゃん・・・)



酎「とりあえずは一旦、棗さんの家に行こうぜ」



棗「そうね。雪菜ちゃんもいい?」



雪菜「はい」



ザッザッザッ



酎を先頭に棗の家に戻り始めた。



雪菜「あれっ??酎さん、棗さんは?」



酎「へっ?」



酎が振り向くと酎達の一番後ろで歩いていたはずの棗の姿が消えていた。



――飛影達がいた森の直ぐ近くにある崖の上



飛影は一人立っていた。



スッ



飛影は首にかけている雪菜から渡された氷泪石と飛影自身の氷泪石を手に取って見つめていた。



棗「それは氷泪石」



飛影(!)



クルッ



飛影は突然自分の背後に現れた棗に驚く。



飛影「俺に何の用だ?」



棗「貴方に話しがある」



棗は真剣な目で飛影を見つめていた。



続く
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ