幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編01
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――棗の家の近くの森に中にある崖の上



棗「貴方に話しがある」



飛影「話しだと?」



棗「ええ、ちょっと貴方に聞きたいことがあって来てみたのよ」



飛影「聞きたい事?」



棗「貴方は雪菜ちゃんが生まれてから一度も会ったことがない行方不明の兄がいるって話しを聞いたことあると思うけど」



飛影「ああ、一応な」



棗「雪菜ちゃんが酎によって私の家に連れて来られてからまだ日が浅いけど、あの子と沢山の話しをしたしあの子がこれまで歩んできたことも聞いた。今、あなたに話した行方不明のお兄さんの話しもそう」



飛影「何が言いたい?」



棗「いいわ、単刀直入でいう。私はあなたが雪菜ちゃんの探しているお兄さんではないのかと睨んでいる」


ピクッ



飛影「フン、残念だが違うぜ」



(ニコッ)
棗「そう?」



飛影は棗に自分が雪菜の兄ではないかと指摘されても顔色を一切変えることはなかった。



飛影「何故、俺があいつの兄だという?」



棗「理由は色々とあるけど一つずつ挙げていくわね」



飛影「そうしてもらいたいものだ」



棗「一つずつ話していく。一つ目は雪菜ちゃんがお母さんの友達から聞かされたという特徴。貴方がそれと同じ種族の妖怪だということ」



飛影「あいつも俺が魔界に行く前に俺に言っていたぜ。俺と同じ種族の妖怪なら他にもいくらでもいる」



棗「話しを続ける。二つ目は貴方が雪菜ちゃんを見る目。貴方の鋭い目つきが私の目から見ても愛しい者を見る目をしていた」



(ニャッ)
飛影「フッ、それはお前の勝手な思い込みだぜ」



棗「そうかな?あの子に人間界での生活の事を聞いていた時の貴方は間違いなく久しぶりに会うような肉親を見る目だったわ」



飛影「お前が勝手にそう思うなら思えばいいさ。他にもまだ根拠はあるのか?」



棗「あるわよ。貴方はパトロールでここに来たっていっていたけどあれは嘘よね?」



飛影「パトロールでなければ俺がこんな辺境の地になんかにこないぜ」



棗「酎はあの調子だから気付いていなかったけど、パトロールは煙鬼が作った決まりで必ず複数のチームで動くことになっているはず」



飛影(・・・)



棗「時には一人で動くこともあるけど、パトロールの場合は非常時に連絡が出来るように一人で動いた場合にも近くに必ず仲間が控えているはずよ。見た感じ、近くに仲間もいないようだけど、あなたは何故一人なの?」



飛影「さあな、俺には邪眼があるから一人での方が動きやすい」



棗「その自慢の邪眼で人間を見つけていないのでしょう?貴方がさっき自分自身で言っていたけど、小さい霊気の人間も見逃さない邪眼師の貴方が見つけていないのはおかしくない?」


飛影(鋭い女だな・・・流石は雷禅の仲間ってとこか)



棗「本当はパトロールではなく、桑原って人間から雪菜ちゃんが魔界に飛ばされた事を聞いたあなたは、あの子が心配で探しに来たんじゃないの?」



飛影「さっきから勝手な想像でよくいうぜ」



棗「さらに決定的な事を言わせて貰えばあなたが見ていた氷泪石。雪菜ちゃんから氷泪石の事も聞いたわよ!氷泪石は氷女が産んだ我が子に与えるものみたいね」



飛影「あいつは出会ったばかりのお前にそこまで話しているのか」



棗「聞いた。雪菜ちゃんに双子の兄がいるように私にも双子の兄がいるからね。同じ双子の兄妹がいるって事で直ぐに雪菜ちゃんと打ち解けたの」



飛影「なるほどな。だが、この氷泪石は雪菜から俺が人間界から魔界に行く時に魔界であいつの兄とやらに会ったら渡して欲しいと渡された物だ。俺の物ではないぜ」



スッ



飛影は首にかけている雪菜の氷泪石を棗に見せた。



棗「一つは貴方が言うように本当にそうかも知れない。でもあなたは先程、二つの氷泪石を見ていた。もう一つのあれはあなたの氷泪石じゃあないの?」



飛影「フン」



棗「持っているでしょう?」



飛影「よく見ていたな」



棗「あいにくと私は昔から生きる為にどんな相手でも注意深く相手の事を観察していたから目がいいのよ」


飛影「チッ、どうやらお前にこれ以上誤魔化す事は出来ないようだ。氷泪石の話しを雪菜がお前に話し、さらにこの氷泪石まで見られていたら隠す事はもはや出来んな」



スッ



飛影は首から自分の氷泪石を取り出して棗に見せた。



棗「じゃあ、貴方が雪菜ちゃんの探しているお兄さんってわけね」



飛影「ああ」



棗「やはりそうか・・・でも何故?何度も妹である雪菜ちゃんと会っているのに自分が兄だと雪菜ちゃんに名乗りでないの?」



飛影「それはお前には関係のないことだ。俺もお前に聞きたい。お前は何故、出会ったばかりの雪菜の世話をそれほどまでに焼く?」


棗「さっきもあなたにいったけど私には、双子の兄がいるっていったよね?」



飛影「ああ、お前の兄もお前と同様に雷禅の昔の仲間だったな」



棗「そう、兄の九浄。私と九浄は、双子の兄妹として生まれたけど両親は私達が幼い時に妖怪同士のトラブルで死んだ。私と九浄は両親が死んでから親のいない孤児となり魔界で生きる為には強くならないといけなかった。泥水をすすりながら必死で強くなって生き抜いてきた」



飛影(こいつも親がいなかったのか)



棗「雪菜ちゃんも生まれてすぐに母を亡くした。父親もいないし人間界では悪い人間によって長い間、一人幽閉されるなど大変な思いをしてきたみたいね。立場は違うけどあの子に共感する部分が沢山あったから力になりたいと思ったの」



飛影(・・・)



棗「雪菜ちゃん、この魔界に人間界から一緒に飛ばされた桑原って人間と無事に再会出来たら行方不明の兄の手がかりを探したいっていっていたわよ」



飛影「俺はさっきあいつに会った時にもし兄の行方のことを聞いていたら兄は死んでいたといって雪菜の氷泪石を返すつもりでいた」


棗「どうしても雪菜ちゃんに自分が兄だと名乗らないつもり?」



飛影「名乗るつもりはない」



棗「だったら私と勝負しない?」



飛影「勝負?」



棗「もうすぐ開かれる煙鬼主催の魔界統一トーナメントで私があなたと対戦してあなたに勝ったら雪菜ちゃんに兄ということを名乗る」



飛影「フッ、俺がそんな勝負に応じると思うのか?」


棗「勝負に応じないなら、このまま雪菜ちゃんに貴方がお兄さんだと話す。それとも私と勝負するのが怖い?私に勝てたら今日の話しは聞かなかった事にしとくわよ」



棗「どうする?」



飛影「チッ、厄介な女に知られたものだぜ。お前との勝負を受けてやる」



棗「貴方との対戦を楽しみにしとく。言っておくけど私は強いわよ」



飛影「前回の大会でお前と躯の試合を見ていたからな。お前の強さはよく知っているぜ」



棗「私の話しはそれだけだから」



クルッ



タッタッタッタッタ



棗は飛影に背を向けてゆっくりと走りだした。



飛影(行ったか)



ピタッ



棗は走っていた足を止めた。



飛影「何だ?」



棗「貴方が何故、雪菜ちゃんに自分が兄だと名乗らないか、私にそれは分からない。でも貴方にとって雪菜ちゃん、雪菜ちゃんにとってはあなたが唯一の肉親だということを忘れないで」


飛影(・・・)



クルッ



棗「勝負の約束を忘れないで」



飛影「ああ、分かったからもう失せろ」



(ニコッ)
棗「フフッ」



タッタッタッタッタ



棗は笑みを浮かべると走り去った。



飛影「チッ」



クルッ



飛影は崖の上から見渡される魔界の大地をジッと見つめていた。



――棗の家



ガチャッ



棗「ただいまっと」



酎「棗さ〜ん!何処に行っていたんだ?突然姿を消してよー」



雪菜「姿が急に見えなくなったからびっくりしました」



棗「ああ、ごめん。ちょっとしたお節介にね」



酎・雪菜(??)



棗(しかし、酎が私にプロポーズした時の九浄じゃないけど、勝負って形で相手と話しをつける辺りは私もあいつに似ているな。やっぱり兄妹ってとこよね)



棗は苦笑いを浮かべた。



――魔界の18番地区(18階層)



「行くだぞー」



「陣、来い!」



ドーーン!!!!



二人の妖怪の激しい技と技がぶつかりあっていた。妖怪の名は、陣と鈴木。



そしてもう一組。



「ハァァァ!!」



「トァッ!」



ガキーン!!



ガキーン!!



ガキーン!!



氷で作った剣と不気味な妖気を放つ剣を持った二人の妖怪が凄まじい闘いを繰り広げていた。その妖怪とは、凍矢と死々若丸。



四人は四方を森で囲まれた広大な大地で間もなく開かれる大会に向けて激しい修行を続けていたのだった。


続く
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