幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編02
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――魔界統一トーナメントBブロックの三回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
鉄山(てつざん)



激戦となる四つのブロック。



まずはBブロックの棗と鉄山の闘いから追いかける。


――Bブロック



上空から審判が二人の様子を見ている。



審判「始め!」



A〜Dブロックの四つの闘場の審判達が同時に試合開始の合図をする。



審判の声が闘場に響き渡る。



棗「行くわよ鉄山」



鉄山「おう!!」



ズキューン!!!!!



棗と鉄山は同時に高速のスピードで走り出した。



その走り出したタイミングはほぼ同時。



接近する二人。



棗「ハァァーー」



鉄山「ウォォォォォ!!」


ビューン!!!



鉄山(速い)



鉄山がパンチを放つ態勢をに入る時にスピードで勝る棗は既にパンチを鉄山に向かって放っていた。



バキッ!!!



棗の一撃が鉄山の顔面を殴りつける。



ザザザ・・・



攻撃を受けた衝撃で後ずさる。



(ニッ)
鉄山「お前のパンチは流石に効く。しかし孤光とお前のパンチはとても女の放つパンチとは思えないぞ」



棗の一撃を受けて楽しそうに笑う鉄山。



棗「それは当たり前よ。私は強いもの」



ビューン!!!



棗はそう言うと素早くパンチを繰り出す。



鉄山「それは良く知っている」



フゥー



鉄山は上体を素早く後ろに反らして棗の攻撃をかわした。



そして上体を後ろに反らした状態で棗の右手を両腕で掴んだ。



棗(!)



棗の右腕を掴むと素早く自分の身体を180゜回転させて棗を肩に担ぐ様な態勢を作る。



鉄山「ウォォォォォォ!!!!」



ググッ



大きな声と同時に棗の軽い身体はあっという間に持ち上げられた。



ブーーン



そして、もの凄い勢いで棗の身体を地面に向かって投げつけた。



ドガァァァァァ!!!!!


棗の身体は背中から思いっきり地面に向かって叩きつけられた。



鉄山の凄まじいまでの力。棗の身体を叩きつけた地面には深く大きな穴があいていた。



その穴の中で倒れている棗の身体はピクリとも動かない。



鉄山は深くあいた穴に近付いて覗き込んだ。



鉄山「遊んでいないでさっさと上がって来い。今のはあまり効いていない筈だぞ」



棗「フフッ、分かったか」


鉄山の言葉を受けて起き上がると直ぐに腰を擦る。



棗「痛たた・・・」



バッ



棗は地面の穴から素早く飛び出した。



棗「電鳳にしても鉄山にしても貴方達は相変わらずの馬鹿力だよ」



棗の素早いスピードによる一撃。そして鉄山のパワーによる投げ技。



それぞれの持ち味を活かした挨拶代わりの攻撃であった。



鉄山「しかし昔から堅物な所があったお前が遊びでやられたふりをするとは少し驚いだぞ」



棗「フフッ、失礼ね。全く誰が堅物よ。でもこれは彼の影響かもね」



鉄山「彼?」



(ニコッ)
棗「秘密よ」



鉄山(??)



不思議そうな顔をする鉄山。



棗「鉄山、本格的に行くよ」



鉄山「ああ。挑むところだ」



スッ



棗と鉄山がそれぞれの構えを見せる。



棗・鉄山(・・・)



互いに静止した状態で静かに時間は過ぎて行く。先に仕掛けるタイミングをはかっているのだ。



そして・・・。



棗「ハァー!!!」



先に仕掛けたのは棗だった。



ズン!!



体重を前にかけて鋭く踏み込む。



棗の一撃。



それは前大会の一回戦で酎に放ったものと同じものだった。鉄山の腹部に向かってその一撃は放たれる。



だが、鉄山はその攻撃が来ると予測していた。



鉄山(やはりこの技できたか)



少ししゃがみ加減に屈むと防御態勢。



ガッ!!



棗の一撃を受け止める。



鉄山「肉弾戦に入る時の最初の攻撃をその技でくる癖は昔と変わっていないな」


棗「良く覚えていたわね」


鉄山「お前と闘ったのはかなり昔の事とはいえ、お前の手の内は分かっているからな」



バーン!!



棗の受け止めた一撃をその怪力で弾き飛ばす。



その瞬間に棗の態勢が僅かだが崩れた。



鉄山「もらったーー!!」


ビューーン!!!



僅かの隙を見逃さずに放たれる鉄山のパンチ。



バキッ!!!



棗「う・・・」



棗の頬に強烈な一撃がヒットする。



ザザザ・・・



今度は棗が後ずさる。



棗「今のは効いたよ。鉄山、貴方のパンチの威力が衰えていないみたいで安心した。相変わらず重たい一撃ね」



頬を擦りながら鉄山と同じく楽しそうに答える棗。



鉄山「フフン。パワーと体力ではお前は“絶対”に俺には勝てないぞ」



自信ありげに言い放つ。



棗「でも貴方もスピードと技の技術では私には“絶対”に勝てないわよ」



負けずに言い返す。



鉄山「ったく、負けず嫌いな女だ」



ズキューン!!!



二人共、最初の時と同じく同時に駆け出した。



棗・鉄山「ハァァーー!!」



バキッ!!!



棗「くっ」



鉄山「ぬっ」



今度はお互いの一撃がヒットした。



棗・鉄山「行くよ(ぜ)」



ズガァァァァァ!!!!!


もはや防御はおかまいなし。二人は激しい肉弾戦を繰り広げ始めた。



――選手達の休憩場



スクリーンに映し出されている二人の闘いを喧嘩仲間の痩傑と才蔵が見ていた。


二人の事を誰よりも良く知る二人は棗と鉄山の闘いについて語り始めた。



才蔵「あいつら本当に楽しそうに闘っている」



痩傑「闘う前に妖気を解き放ったとはいえ、まだまだ二人共本気ではない。久しぶりの喧嘩の感触を肌で感じて楽しんでいるようだぞ」


才蔵「棗の奴もスピードは鉄山よりも速いのだから、そのスピードであいつを翻弄すれば馬鹿正直に撃ち合わずに済むのにな」



痩傑「それを言えば鉄山の奴も得意な技をまだ使ってこない。ただ単にあの二人は撃ち合いを楽しんでいるだけの様だな」



スクリーンに映し出されている二人は生き生きとした表情でひたすら肉弾戦を繰り広げている。



痩傑「あいつらの気持は良く分かる。俺も前の大会で闘った周との闘いは楽しかったからな」



才蔵「今回の大会は組み合わせのせいとはいえ、喧嘩仲間同士がぶつかる事が少ないのが残念だ」



対戦表に目を移して残念そうな顔をする。



痩傑「しかし今回は予想外だったな。電鳳と周が喧嘩仲間達や躯、黄泉以外の連中に倒されるとは思わなかったぞ」



彼らの喧嘩仲間である電鳳は蔵馬によって倒されて、周は飛影によって倒されていた。



二人はそれぞれ二回戦で既に敗北しているのだ。



痩傑「蔵馬に飛影か。それに坊主(幽助)も含めて、あの三人は前の大会から考えたら、たった三年の間に見違えるぐらいに力をつけた」



才蔵「確かにな」



幽助・蔵馬・飛影の三人は前大会では今と同じく、それぞれが三回戦まで進出。



その三回戦で幽助は黄泉、蔵馬は九浄、飛影は躯によって、それぞれ敗れていた。



今回も同じく三回戦まで勝ち進んでいるが、三人の強さはまるで別人の様に強くなっていた。



才蔵「蔵馬と電鳳の試合を俺は見ていたが、殆ど電鳳の勝ちだった。だが、勝ったのは蔵馬。電鳳は最後に逆転負けをしてしまった。見事だった。勝負とは分からないものだよ」



痩傑「周を倒したあの飛影は最後は完全に周を上回っていた。全く大したチビだ」



二人は蔵馬と飛影の成長に感心していた。



痩傑「1000年以上生きている蔵馬はともかく、坊主と飛影の様な若い世代が育ってくるのを見ると年を取ったっていう感覚に陥らないか?」



才蔵「フッ、老け込むにはまだまだ早いぞ痩傑。だが、俺が思うにあの三人より最も成長したと思うのは九浄と激しく殴り合っているあの男だろう。大した飛躍ぶりだ」



才蔵の目にはCブロックで酎と九浄の闘いが目に映っていた。



二人の闘いは拳と拳の撃ち合い。棗達と同様に肉弾戦を繰り広げていた。



そして映像の中の酎は新技を九浄相手に繰り出し始めていた。



痩傑「あれは誰だ?」



スクリーンに映し出されている酎の顔を見ても誰か分からない様子。



才蔵「何だ?お前は知らないのか?」



そして才蔵は痩傑の顔を見るなり笑みを浮かべて答える。



(ニヤッ)
才蔵「あいつの名は酎。棗の男だ」



痩傑「な、何だとォォォォォ!!!」



痩傑は才蔵の答えに驚きの声を上げたのだった。



――Bブロック



激しい肉弾戦で闘い続ける棗と鉄山。



二人の闘いはもうすぐ次の段階に差し掛かろうとしていた。



鉄山「オラァァァァ!!!!!」



渾身の力を込めた鋭い一撃を入れる鉄山。



フゥー



棗は素早くしゃがんで鉄山の攻撃をかわす。



鉄山「オッ!?」



棗「貴方も私の手の内は分かるって言ったけど、それはもちろん私もだ。昔と変わっていないね鉄山。力を込めた一撃を相手に放つ時はスピードがいつもより数段階落ちるとこなんか特にね



棗「ハァァァーー」



ズドドドドド



鉄山「ヌォォォォ!!!」


棗の両手による激しい連打が鉄山の胸部から腹部にかけてヒットしている。



ザザザ・・・



ザザザ・・・



棗の凄まじい連続攻撃を受けてどんどん後ずさる鉄山。



棗「今度は決めるよ」



ズン



棗は一歩踏み出して体重を前にかけると、先程は鉄山に防がれた必殺の一撃をここで放つ。



ドガァァァ!!!!!



鉄山「グォォォォ!!!」


ヒューーー!!!!!



棗の必殺の一撃を腹部に受けた鉄山の身体は一気に吹き飛ぶ。



ズガガガガガガガァァァァ!!!!



そして地面を削りながら50m先で倒れる。



棗「完璧。手応えあり」



自分の放った一撃の余韻に浸る。



棗の一撃を受けて地面に倒れていた鉄山はゆっくりと起き上がる。



鉄山「久しぶりにくらったぞ。威力は昔より遥かに増している感じだな」



棗「やれやれタフなとこは変わらないね」



鉄山「フフン。当たり前だ」



棗「さてと続きをやろうか鉄山」



鉄山「当然だ」



二人が再び肉弾戦を始めようとしたその時だった。



ドォォォォン!!!!!



棗・鉄山(!!)



Aブロックから凄まじい霊気が放出されたのを二人は感じ取った。



Aブロックで時雨と闘っている桑原である。



それは時雨と激戦を繰り広げる桑原が時雨との激しい闘いの中で放出したものであった。



棗「この霊気はあの桑原って人間の霊気!?」



鉄山「ほう。この霊気は唯一この大会に参加したとかいう人間の霊気か」



棗・鉄山(・・・)



二人は何かお互いに考える様に顔を見つめる。



鉄山「おい棗、直ぐ近くでこんな気合いの入った霊気を感じると血が騒ぐな」



棗「まるで前大会の時の幽助君みたいね。黄泉と闘った時も彼はこんな気合いの入った妖気を放っていたものね。桑原って人間は彼とは友人っていう話しだから、良く似ている」



鉄山「俺達もそろそろ本気(マジ)になってやるか?」


棗「いいだろう。挑むところよ鉄山」



棗・鉄山「ハァァァァ!!!!!!」



桑原の霊気に触発された二人は遂に抑えていた妖気を全て解き放った。



いよいよ本気になった二人の持つ技と技がぶつかる事になるのであった。



続く
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