幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編02
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――魔界統一トーナメントBブロックの三回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
鉄山(てつざん)



――Bブロック



喧嘩仲間同士の闘いとなったBブロックの三回戦の第一試合。



激しい闘いを続ける棗と鉄山はAブロックで時雨と闘う桑原が放出した、巨大で気合いが入った霊気を感じ取ったのだった。



鉄山「俺達もそろそろ本気(マジ)になってやるか?」


棗「いいだろう。挑むところよ鉄山」



棗・鉄山「ハァァァァ!!!!!!」



桑原の霊気に触発された二人は遂に抑えていた妖気を全て解き放った。



ドォォォォン!!!!!



棗と鉄山の二人の巨大な妖気は柱の様に上空に向かって放出される。



その時だった。



ドォォォォン!!!!!



巨大な妖気がCブロックから二つ。そしてDブロックから一つ放出された。



まるで桑原の霊気に共鳴するかの如く。



放出された妖気は棗と鉄山と同じ様に妖気の柱となって上空に向かって放出されていた。



――メイン会場



小兎「こ、これは凄いです!!!Aブロックの桑原選手が放出した巨大な霊気に共鳴するかの様に、BブロックとCブロックを合わせて四つ。Dブロックからも巨大な妖気が一つ放出されて上空に向かって柱の様な形を作っております!!!」



「あいつら凄いぞ」



「しかし桑原って奴は人間のくせにとんでもない奴だぜ」



「どいつもこいつもバケモンだ!!」



観客達も各ブロックから放出された霊気と妖気に驚きを隠せない。



――Bブロック



鉄山「フフン。血が騒ぐのは俺達だけではなかった様だな棗」



他のブロックから放出されている妖気の柱に視線を移す鉄山。



(ニコッ)
棗「酎も九浄も彼の霊気に触発された様ね。彼らも根っからのバトル好きだし」


酎と九浄が自分達と同じ様な感情を持った事を嬉しそうに笑う。



だが、一つ気にかかる事が棗にはあった。



棗「鉄山、Dブロックの妖気、何か変な感じがしない?」



鉄山「Dブロック?この妖気は蔵馬って奴か。特に変な感じはしないぞ」



棗「私の気のせいか・・・」
(桑原に触発されて放出した妖気には間違いないのだろうけど、まるで命をかけた様な・・・。何か最後の力を振り絞る、そんな感じがした)



棗が感じた蔵馬の妖気。



それは実力で上回る梟と闘う蔵馬が桑原の霊気に触発されて、全ての妖気を放出しながら命を賭けた最後の勝負に出た瞬間であった。


鉄山「折角、血が騒いで全力の妖気を放出して盛り上がってきたんだ。他のブロックで闘っている連中には負けられん。勝負の続きをするぞ」



棗「ええ。そうね」

(何故か分からないけど桑原と武威って男の時に感じた命がけの気質。そんな感覚を私は感じた。彼は幽助君の友達だよね。大丈夫かしら)



棗自身は蔵馬とは顔見知り程度の付き合いでしかないが、只ならぬ妖気の気質を感じた為に蔵馬を心配をするのであった。



鉄山「久しぶりに見せてやるぞ俺の能力」



スッ



そう言うと両腕を後ろに思いっきり引いたのだった。


棗「いよいよあれを出すつもりか」



棗には鉄山が何を仕掛けて来るのかは見当がついていた。



それは鉄山の持つ能力である。



鉄山「ウォォォォォ!!!!!」



ギュンンンンン!!!!!


大声を張り上げると鉄山の両腕に強力な黒い妖気の光が集まってくる。



棗(鉄山の能力は発動までに時間がかかる。だけどあれを発動させてしまうと私にとってはかなり厄介になる。止めさせてもらうわよ)



ズキューーン!!!!!!!!!



棗は鉄山に向かって駆け出した。全力を出した棗のスピードは孤光には流石に及ばないものの、先程までとは比べものにならない程の速さであった。



一瞬で鉄山に近付く。



棗「ハァァーー!!!!」


ビューーン!!!!



全力の一撃。



ドゴォォォォォォォ!!!


鉄山の腹部にまともに入る。



鉄山「ゴフッ!!」



棗の一撃で口から血を吐き出す鉄山。



棗「貴方のこの能力は発動させるまでは無防備になる。鉄山、どんどん行くよ。この能力を使われる前に一気に勝負を決めてやる」



ズドドドドド!!!!!



腹部に放つ連打。



そして・・・。



棗「ヤァァァァーー!!」


ドゴォォォォォ!!!!



鉄山の腹部に棗の右腕がめり込む程の破壊力のある一撃を入れる。



鉄山「グォォォォォ!!」


棗の凄まじい連続攻撃を受けながらも鉄山は能力を発動させる準備をしていた。


――選手達の休憩場



才蔵「棗の奴、鉄山の能力が発動する前に一気に勝負をつけるつもりだ」



痩傑「全力の一撃だからなあれをまともに受けている鉄山はたまったものではないぞ」



才蔵「そうだろうな。だが、鉄山も全力を出している。あいつのタフさは俺達の中ではトップクラスだ」



(ニヤッ)
痩傑「誰かさんは前の大会の二回戦で鉄山のタフさには結構、手を焼いていたな」



才蔵「フッ、誰の事だろうな」

(あいつのタフさは昔より遥かに凄いぞ。棗、お前も驚く筈だ。一筋縄では鉄山を倒せないぞ)



スクリーンに映し出されている棗は激しい連続攻撃を鉄山に続けていた。



――Bブロック



鉄山の身体に撃ち込まれた棗のパンチ。



それは数十発に及ぶ。



棗(全然倒れる気配がない。昔の鉄山なら全力の私がこれだけ撃ち込めば既に倒れて勝負はついている筈。それに無防備なら尚更よ・・・)



全く倒れない鉄山のタフさに僅かながら焦りが見え始めた棗。



ズドドドド!!!!!



腹部に放たれている連打。


バキッ!!!!!



顔面に入る強烈なパンチ。


棗は一気に勝負を決めようと手を休まずに攻撃をし続けていた。



だが、鉄山は倒れるどころか、彼が発動させようとしている能力は殆ど完成されようとしていた。



棗(これで決める)



体重を前にかけた必殺の一撃。



棗「ハァァーー!!!!」


ズン



鉄山の胸部にまともに直撃した。



鉄山「ヌォォォォォ!!!!!」



ヒューーー!!!!!!



全力の必殺の一撃を受けた鉄山の身体は闘場に設置されている森がある場所まで吹き飛んだ。



ズガァァァァァァ!!!!!!!!



森の中の木を十本以上なぎ倒した所で鉄山の身体は止まった。



棗(ハァハァハァ。これで決まった筈よ)



だが、鉄山は森の中でゆっくりと起き上がる。



鉄山「かなり効いたぞ棗。だが、まだまだ俺は倒せんぞ。今度は俺の番だ」



黒い光を宿した両腕を空に向かって高く掲げた。



両腕からは二つの黒い光が放たれる。黒い光は一定の高さまで上るとその光はその場で止まる。



棗(あれは!!)



空で光る二つの黒い輝きに気付く棗。



棗(まずい)



ズキューーン!!!!!!


森に吹き飛ばした鉄山を追って森に向かって高速のスピードで駆け出した。



鉄山「行くぞ棗」



今度は両手を横に広げた。


上空で止まっていた二つの黒い光はお互いに反対方向へ向かって高速のスピードで動き出した。



そして黒い光はBブロックの闘場を包み込む様に動いていた。



黒い光が動いた場所は結界を形成していく。



鉄山「フフン、完成だ」



棗が鉄山の目の前に到着した。



棗「参ったな。完成してしまったか・・・」



闘場の四方を見渡すと黒い結界が張られていた。



鉄山「昔喧嘩した時はこの能力が発動する前にお前の連続攻撃の前に俺はやられたんだっけな」



棗「あれだけ撃ち込んだのに、その程度のダメージか。全力を出して上がった貴方の防御力の高さには呆れたわよ」



鉄山「重力20倍」



右手を前に突き出して呟く。



棗(!!)



ゴゴゴゴゴ・・・



黒い結界が張られた闘場全体が大きく揺れる。



ズンンンンンン!!!!!


そして棗の身体は何かに抑えつけられる様な感覚に陥る。



棗「くっ、来たわね・・・」


鉄山「俺の能力の発動だ。時間がかかるのが難点な上に発動まで無防備になるこの能力。だが、俺は弱点を補う為に、普通に生活をしていても身体だけは鍛えてきたのだからな」



ズキューン!!!



鉄山は高速のスピードで棗に向かって走り出した。



鉄山「オラァァァァ!!!」



ビューーン!!!!!



重たい鉄山のパンチは棗の腹部を狙っていた。



棗「むっ」



フゥーー



鉄山の攻撃をかわそうと右に避ける。



グググ・・・



だが、棗の身体の動きが鈍くなっていた。



ドゴォォォォ!!!!!



棗の腹部に一撃が入る。



棗「うっ・・・」



ザザザ・・・



棗の身体が衝撃で後ずさる。



棗「やばいわね。鉄山のこの能力は私の様なスピードタイプには不利だ」



黒い結界内は鉄山によって重力が通常の20倍の重さに変化していた。



鉄山の能力・・・それは結界内の重力を軽くしたり重くしたりと重力を自由自在に変化させる事が出来る。しかも同じ結界内にいる術者は重力の影響を受けずに自由に動ける特性までも持っていた。



スピードタイプの棗には重力の重さでスピードを殺されてしまい先程までの様には動く事が出来なかった。


鉄山「今度はどんどん行かせてもらうぞ棗!!」



鉄山の激しい攻撃が開始されようとしていた。



棗(今はこの状態で避けるよりはダメージを最小限にする為に防御に集中した方がいいわね)



ググッ



棗はその場から動かず、繰り出して来る鉄山の攻撃に対して備える事にした。



鉄山「ウォォォォォ!!!!!」



そして鉄山の連続攻撃が開始されたのだった。



バキッ!!!



ズガガガガガ!!!!!



ドゴォォォォォ!!!!!


重力の変化に左右されずに自由に動ける術者の鉄山。


先程のお返しとばかりに激しい攻撃が棗に向かって放たれていた。



棗(くっ、やはりきついわ。でも鉄山のこの結界はずっとは続かない。今は耐えるのみ)



――メイン会場



Aブロックの桑原と時雨の師弟対決。



決着は先程ついたばかりであった。



雪菜「和真さん、時雨さん、素晴らしい闘いでした」


二人の闘いを見終えた雪菜は涙を流していた。



涙は氷泪石となって地面に転がり落ちる。



地面に落ちた自分の氷泪石には目もくれずに雪菜は視線をBブロックの棗の方に移した。



スクリーンに映し出されている試合の光景に雪菜は驚く。



雪菜「棗さん!!!!!」


防戦一方になってしまった棗の姿を見て思わず声を上げる。



鉄山は全力の一撃を棗に向かって放っていた。



電鳳と並んでパワーに優れた鉄山の一発一発の攻撃の重さは棗の放つ攻撃の数段階は上をいっていた。



雪菜「棗さんはあの攻撃を防御しているとはいえ、かなりのダメージだわ。あのままではやられてしまう・・・」



棗の闘いを心配そうな顔で見つめる。



――選手達の休憩場



才蔵「鉄山の重力操作の能力がいよいよ発動したな」


痩傑「あれは結構厄介だからな。特にスピードを持ち味としている棗や孤光はこの能力を使われると苦しくなる」



才蔵「あの結界はずっと続くものではない。消えるその時まで棗にとっては耐える時間になる」



――Bブロック



ドゴォォォォ!!!!!



棗「くっ!!」



防御はしているものの、胸に入った強烈な一撃に顔を歪める棗。



棗(私は負けないよ。結界が消えるまで耐えてみせる)



棗と鉄山。喧嘩仲間同士の対決は鉄山の能力が遂に発動した。



棗にとっては我慢の時間帯になったのだった。



続く
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