幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編02
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――魔界統一トーナメントBブロックの三回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
鉄山(てつざん)



――Bブロック



本気になった鉄山はBブロックの闘場に黒い結界を張り巡らし、自身の能力である重力操作を発動させたのだった。



鉄山の重力操作によって変化した闘場の重力は従来の20倍。



自身の持ち味の一つであるスピードを奪われた棗は防戦を余儀なくされていた。


ドガガガガガ!!!!!



棗「くっ!」



棗の腹部に向かって連続でパンチを放っている鉄山。その強烈な攻撃を棗は必死に防御して耐えていた。



全ての力を防御にまわしている為に決定的となるような一撃を防ぐ事はかろうじて出来ていた。



鉄山「棗、お前の狙いは分かっているぞ。昔の様に結界が消えるまでの間は防御に力を集中させて時間を稼ぐつもりなのだろう?」


重力操作の影響を受けない鉄山にはかなりの余裕が見られる。



棗「・・・さあね」



攻撃を防ぎながら答える棗。



無防備な状態で棗の攻撃を受け続けた鉄山。



攻撃を防御している棗。



一見、防御をしている棗の方が有利に聞こえるこの状況。



能力が発動するまでの間、無防備だった鉄山を一気に倒すべく、棗はかなりの数の攻撃を鉄山に加えた。だが、ダメージを感じさせない鉄山の動き。



1000年以上にも渡って鍛え上げられた鉄山の打たれ強さは凄まじいものであった。



闘い始めた時の二人の会話からも分かる様に、棗はスピードや技の技術は鉄山よりも優れてはいるものの、一撃一撃のパワーと打たれ強さ。つまり攻撃力と防御力では鉄山には及ばない。


その為に防御をしていても、全力の鉄山の攻撃をその身体に受ける事によって、強い衝撃でダメージが蓄積され、それと同時に体力もどんどん失われていた。


鉄山「最後の喧嘩はこれを発動させる前にお前に叩きのめされたからな。この能力でお前を倒したいと思っていた」



棗「意外と執念深いな」



鉄山「あの時はお前にボコボコにやられてしまったからな」



大昔に二人が喧嘩をしていた頃はその殆どを拳や蹴りによる肉弾戦で闘っていた。



雷禅や他の喧嘩仲間達と喧嘩をする時もそうであった。



だが、時にはお互いが持つ能力を活かした技や能力を使って闘う事もある。



電鳳なら雷、周なら炎とそれぞれの技や能力がある。鉄山の能力は重力の操作であった。



棗は過去の鉄山との喧嘩で、重力の能力を使われた時は、結界が消えるまでの間は防御して闘っていた。



棗「鉄山に能力を使われるとスピードがメインの私や孤光にとっては命取りになる。鉄山に喧嘩で勝つには能力が発動するまでの間に倒すのが一番だったからね」



鉄山の能力に苦戦していた棗が考え出した攻略方法が、能力の発動までの無防備な状態の時に一気に攻撃して鉄山を倒してしまう事。


1000年以上前に闘った最後の喧嘩は棗が能力の発動前に全力で一気に鉄山を倒したのだった。



その時の悔しさから鉄山はこの能力で棗を倒したいと思っていたのだった。



鉄山「だが、俺はこれがきっかけで1000年以上もの間、身体を鍛える事でタフになり、能力を発動させるまでの無防備になる弱点を克服した」



(ニコッ)
棗「弱点を克服するきっかけになったのだから私にボコボコにされて逆に良かったんじゃないの?」



意地悪っぽく笑顔で話す。


鉄山「・・・ノーコメントだ」



確かにその通りだと思った鉄山であった。



ドガァァァ!!



鉄山のパンチを右腕でガード。



ビリビリビリ



棗「ツッ・・・」



右腕が痺れる程の衝撃が走る。



痺れた右腕を見ながら棗は考える。



棗(しかし誤算だった。昔の様に、このまま結界の効果が消えるまで防御をし続けるのは難しい)



鉄山は結界があるうちに勝負を決めようと攻撃の手を休める事はなかった。



棗(鉄山の奴、ずっと鍛えていた為か攻撃力が昔より遥かに増している)



ドガッ!!!!!



両腕をクロスして胸部への直撃を防ぐ。



棗(くっ!しかしここまで攻撃力が増しているなんて予想外よ)



攻撃を受けた衝撃で棗の顔が苦痛で歪む。



棗(昔ならなんとかなったけど、こんな攻撃を受け続けていたら結界が消える頃には私の身体が動かなくなってしまう・・・)



棗は現状からの打開作を考え始めた。



――選手達の休憩場



躯はスクリーンに映し出されている棗と鉄山の闘いを見ていた。



躯「棗の奴、意外と苦戦している。あの鉄山とかいう男。大した強さだ」



鉄山の実力に感心する躯。


躯「しかし桑原の放出した霊気がきっかけで各ブロックの試合がこれだけ動く事になるとはな」



Bブロック以外の闘場に視線を移す躯。



躯の言葉通り、桑原の放出した霊気がきっかけとなって、各ブロックの三回戦の第一試合は大きく試合が動いていた。



Aブロックは桑原と時雨の決着。



Bブロックは棗と鉄山が全力となり、そして鉄山の能力の発動。



Cブロックは全力となった酎と九浄の闘いの激化。



そして桑原の霊気がきっかけとなって、蔵馬が命をかけて梟に最後の闘いを挑んだDブロック・・・。



スクリーンに映し出されているDブロックの映像には激戦の末に立っている者。そして激戦によって傷ついて地面に倒れている者がいた。



それは蔵馬と梟である。



だが、普通と違う光景が一つあった。



闘場にいるのは蔵馬と梟の二人だけではなかったのだ。



選手達の休憩場にいた一人の男が闘いの最中に乱入したのだ。



桑原と武威の試合で蔵馬が闘場に行った事はあったが、あの時は決着が既についていたからさほど騒がれてはいなかったが、今回は決着がつく前の乱入。



予想外のハプニングでメイン会場や選手達の休憩場ではざわめきが起こっていた。



躯「フッ、あいつがまさか乱入するとはな」



スクリーンに映し出されている乱入した男を見つめる躯。



乱入した男は闘場に立っている男と何か会話をしている様だ。



躯(今大会は何が起こるか分からないな。面白い大会だ)



そして再び視線を棗と鉄山が闘うBブロックに移した。



棗が必死に鉄山の攻撃を防ぐ姿が映し出されている。


躯「さぁどうする棗?このまま、あの攻撃を受け続けていたらお前の負けだぞ」


躯は前大会で激戦を繰り広げた相手である棗と出来ればもう一度再戦を望んでいた。



だが、今大会では組み合わせ上、二人が闘うにはお互いが決勝まで勝ち進まなければならなかった。



躯「お前が俺に決勝で待っていると言ったのだ。棗、こんなところで負けるのか?俺を失望させるなよ」



――Bブロック



ズガガガガガ!!!!!



激しい鉄山の攻撃は続いていた。



鉄山が結界を張り巡らせてから、既に30分以上は経過していた。



棗(ハァハァハァ)



肩で息をしている棗の顔からはかなりの疲労が伺える。



バゴォォォォォ!!!!



防御が間に合わなかったのか?棗は強烈な一撃を腹部に受けた。



棗「うっ!!」



ヒューー!!!



破壊力抜群の鉄山の攻撃を受けた棗の軽い身体は20倍の重力の中でも吹き飛ぶ。


ザザザ・・・



吹き飛ばされてもなんとか足で地面を削って踏み止まる棗。



鉄山(やはり疲労か?疲れが見え始めてきたな)



鉄山の強烈な攻撃を受け続けて、ついに疲れが見え始めた棗を一気に叩くべく直ぐに棗に向かって追撃。



激しい攻撃が再開される。


鉄山「棗、攻撃を防ぐタイミングが遅れてきているぞ。かなり体力の消耗が激しい様だな」



棗「…誰かさんの攻撃が重たいからよ」



だが、棗が攻撃を受けたのは疲労で防御が間に合わずに受けたものではなかった。



何か狙いがあったのだが、重力の為に失敗したのだった。



鉄山「オラァァァァ!!!!!」



ビューン!!!!!



破壊力抜群のパンチを放つ。



(キッ)
棗「行くわよ」

(今度は成功させる)



棗が狙っていたもの。それはこの状況からの脱出である。



棗「受け止める!!」



ズン



全身の体重を両足に一気にかける。



そして・・・。



ガシッ



まさに紙一重。



棗の胸部に鉄山のパンチが直撃する直前にその攻撃を受け止めた。



棗「くっ!!!」



ザザザ・・・



受け止めた衝撃で後ずさる棗。



鉄山の攻撃を受け止めた棗の両手には強い衝撃が走る。



鉄山「受け止めただと!?」



これまで防御に徹していた棗の予想外の行動に驚く。


棗「ヤァァァァァ!!!」


グィッ!!



棗は鉄山の腕を取ったまま鉄山の後ろに回って関節技をかけた。



鉄山「グァァァァ!!!」


鉄山は痛みのあまりに大きな声を上げた。



(ニコッ)
棗「完璧」



ギリリリリリ



棗はさらに関節技に力を込めて締めつける。



鉄山「ウォォォォォ!!!!!」



強烈な右腕の痛みで鉄山の身体から脂汗がにじみ出てくる。



棗「結界の効果が切れるまでこのまま技をかけさせてもらうわよ」



ギリリリリリ



鉄山「グゥゥ・・・」



グググ・・・



鉄山は関節技をかけられていない左手で棗を攻撃して、技を外させようと試みるが、鉄山の背後に回って完璧に技をかけている棗の前に、彼は上手く抵抗が出来ずにいた。



(ニッ)
棗「フフ、このまま降参してもいいわよ鉄山」



鉄山「フフン・・・、誰か降参するか」



――選手達の休憩場



痩傑「あの鉄山の攻撃を防御していては身体がもたないと判断したのか、あいつの得意技の一つの関節技を使ってきたか」



才蔵「しかしあの重力で鉄山の攻撃をタイミング良く受け止めるは難しい。あの状況でよく受け止めたものだ」



痩傑「流石は棗と言ったところか」



才蔵「しかし関節技が上手く鉄山に効いていればいいが、このまま結界が消えるまで鉄山が関節技をかけられたままで終わるとは思えない」



真剣な表情でスクリーンを見つめる才蔵。



(ニヤッ)
痩傑「それは前大会で鉄山と闘った男の予想か?」



茶化す様な口調で話す痩傑。



才蔵「フフ、まあな」



――Bブロック



関節技をかけた状態で時間が過ぎて行く。



鉄山(・・・)



鉄山は棗の関節技を外そうと強く抵抗をしていたが、何故か突然、抵抗を止めて途中から耐え始めていた。


同時に始まった各ブロック三回戦の第一試合の四つの激戦。



残すはこの棗と鉄山の試合だけとなっていた。



棗がこの関節技をかける直前にCブロックでは酎と九浄の試合の決着がついていたからだ。



双子の兄が勝ったのか?恋人である酎が勝ったのか?


妖気の変動を感じる事に集中していたら棗はどちらが勝ったのか分かったかも知れない。



だが、鉄山に技をかける事に集中している棗には二人の決着がついた事すら気付いていなかった。



棗「抵抗を止めたのは降参するつもり鉄山?」



鉄山「フフン。さあな・・・」



20倍の重力の中で動きを封じられ、激しい攻撃を受け続けた状況から、形勢逆転となった棗の関節技。



だが、鉄山は関節技に耐える事である事を狙っていたのだった。



鉄山(棗、もう少しで俺はお前の技から抜け出す。覚悟しろ)



二人の闘いはいよいよ終盤に差しかかろうとしていた。



続く
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