幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編02
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――魔界統一トーナメントBブロックの三回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
鉄山(てつざん)



――Bブロック



棗の放った封神拳・壱式“鷹襲波”は触れた箇所から練り込んだ妖気を噴出して流し込み、鉄山の身体の内部を攻撃。



身体の外部の様に鍛える事の出来ない内部に大きなダメージを受けた鉄山はその場に倒れたのだった。



(ニコッ)
棗「…流石に身体の外部は鍛えられても内部までは鍛えられないものね…」



鉄山に鷹襲波が決まり勝利を確信した棗であった。



――選手達の休憩場



酎「お〜!!やったぜ棗さん!!」



スクリーンに映し出された鉄山が倒れた映像を見て歓喜の声を上げる。



九浄「今のは凄かったな」



酎「しかし棗さんのあの両手から噴出した妖気の光は何だったんだ!?鉄山の奴には見た感じ傷一つないようだが…。あいつは何で倒れたんだ?」



九浄「おそらくあれは身体の外側ではなく、妖気を体内に伝えてを内側から破壊する技だろう」



酎「身体の中かよ!?防御なんかお構い無しだな。あんなもんくらってしまったら一発で俺はアウトだ」



九浄(確かにあれをくらったら俺でも立ち上がれるかどうかは分からないな…)


才蔵「この喧嘩は棗の勝ちだな痩傑」



痩傑「ああ。いくら攻撃に対して打たれ強くなっても身体の中を攻撃されたら鉄山でも立ち上がれないだろうな。勝負あった」



棗と鉄山の喧嘩仲間同士の対決は決着がついたかに見えた。



だが…。



――Bブロック



鉄山は胸を右手で抑えながら立ち上がったのだった。


鉄山「ハァハァハァ、まだだ。まだ俺はやれるぞ…」


身体の内部に受けたダメージが大きいのか?かなり苦しげな表情で喋る鉄山。



棗「鷹襲波を受けて立ち上がるなんて…」



勝負がついたと思っていた棗は流石に驚きを隠せなかった。



――選手達の休憩場



酎「おいおいおい!立ち上がったぞあいつ!?」



九浄「驚いたな鉄山の奴…、あの技を受けて尚も立ち上がってくるとはな」



――Bブロック



鉄山「棗にこんな技があるとは驚いたぞ。新しい技の様だな。身体の外ではなく、中を攻撃するとは…。恐ろしい技だ」



棗「…私も立ち上がった鉄山に驚いたわよ」



鉄山「流石の俺でも今の技をもう一度くらってしまえば立ち上がる事は出来ないな」



自分の身体に視線を移す。


鉄山(棗の技で俺の気脈は壊されている。長時間を闘う事はもう出来ないだろう)



棗「一度技を使ったからには私はもう出し惜しみはしない。もう一度貴方に流し込んで今度は倒すよ」



スッ



棗は再び構える。



そして先程と同じ様に気を練り始める。



ここで鉄山が予想外の行動を起こす。



鉄山は胸部を抑えていた右手を空高く上げた。



カーーー!!!!!!



Bブロックの闘場に張られている黒い結界が強い光を放ち始めた。



棗「眩しい…。鉄山は一体何をしたの!?」



ゴゴゴ…!!!



光に続いて今度は闘場が大きく振動し始めた。



棗「凄い揺れだ!」



結界は暫くの間、強い光を放ち続けて、闘場も激しく揺れ続けていたが、結界の光が消えると同時に揺れもおさまったのだった。



鉄山「フゥ〜。やれやれだ」


軽く息を吐くと辺りを見渡し始めた。



闘場はまるで何もなかったように静寂を取り戻していた。



大きく変わった事が一つ。


(ニヤッ)
鉄山「めったにやらないからな、どうかと思ったが上手く消せたな」



棗は視線を動かしながら闘場内を素早く見渡す。



棗「結界が消えた…」



鉄山の重力操作の能力の発動に必須であった結界が完全に消え去っていた。



棗の持ち味の一つである素早い動きを闘場を20倍の重力に変化させる事によって奪っていた結界。それを能力者の鉄山がなんと自らが消し去ったのである。



棗「貴方が自ら結界を解くなんて初めてじゃない?一体どういうつもり鉄山?」


鉄山「フフン、もう暫くしたら結界の効果が消えただろうが、今から俺がやる事には結界があると少し都合が悪いからな」



棗「一体何をするつもりなのかは分からないけど、結界を解いたという事は私を封じていた重力が消えて自由に動けるって事を忘れないでよ」



鉄山「それは承知の上だ。お前にさっきの技があったあった様に俺にも今日は切り札がある」



棗「切り札?」



鉄山「見せてやるよ棗」



スッ



そう言うと鉄山のトレードマークであるヘルメットを脱いだ。



その隠れた素顔が露わになる。素顔は凛々しい顔立ち。



棗「フフ、久しぶりにヘルメットを外したところを見たわよ」



鉄山「俺は自分が被るヘルメットをコレクションしている事はお前は知っているな?」



棗「ええ……」

(そういえばヘルメットを集めている事を昔に言っていたような気もするわね…。私にはどのヘルメットも同じに見えて違いがわからないから本気で聞いていなかったけど…)



鉄山「コレクションの中には一部のヘルメットに特殊な能力が組み入まれている物がある。このヘルメットもそうだ。だが、戦闘でこれを使うのは初めてだ」



そう言うと両手で掴んでいるヘルメットを前に突き出すと妖気を込め始めた。



鉄山「鎧化(アムド)」



カーーーーー!!!!!



鉄山が言葉を発するとヘルメットが光りを放ち始めると同時に何かが飛び出してきた。



棗(ヘルメットから一体何が!?)



カシャッ!!カシャッ!!カシャッ!!



光の中で何かが装着されるような音が聞こえる。



カーーーーー!!!!!



一緒、強い光を放つと光は徐々に消え去っていく。



そして……。



消えた光の後には上半身に赤い鎧が装着された鉄山がその姿を現した。



(ニヤッ)
鉄山「驚いたか棗?」



棗「鉄山の上半身に鎧の様な物が!?あのヘルメットが変化したというの!!」


鉄山のヘルメットの予想外の変化に唖然としたのだった。



――選手達の休憩場



痩傑「何だあれは!?才蔵、お前はあれが何か知っているか?」



才蔵「いや分からん。あいつのヘルメットが変化したのを見るのは俺も初めてだ」



――Bブロック



棗「ヘルメットが鎧になるなんて驚いた。でもそれは私の鷹襲波の対策で身に纏ったのかしら?」



鉄山が身に纏っている鎧は棗の見た感じではかなり防御力が高いように見えた。


鉄山「フフン、そんなところだ」



棗「やっぱりね。どれだけ防御力を上げたか見てあげるよ鉄山」

(私の鷹襲波は内部に気を流し込む技。そんな者を身に付けて防御力を上げたって無駄よ)



鉄山「このヘルメットを作った者がどんな奴かは知らないが大した技術力だ。名は確か“強い妖戦士田中”とか言う者らしい」



棗「強い妖戦士田中?ふざけた名前ね。強いって付けるなんて、変なネーミングセンス」



――救護室



救護室では梟に瀕死の重傷を負わされた、強い妖戦士田中こと鈴木ベッドに寝かされて治療を受けていた。意識はまだ戻っていない。


その傍らには心配そうに見つめる樹里の姿があった。


パチッ



鈴木が突然目を覚ました。


樹里(!!?)



急に目を覚ました鈴木に驚いて目を見開く樹里。



ガバッと鈴木は起き上がって叫ぶ。



鈴木「誰だ俺の名前のセンスにケチをつけたのは!」


樹里「キャッ!?」



突然起き上がった鈴木に驚いて、思わずドスンっと救護室の床にしりもち。



鈴木「誰かに俺のネーミングセンスの悪口を言われたような気がしたが気のせいか」



樹里「鈴木が目を覚ました〜」



瀕死の状態で救護室に運び込まれた鈴木。



治療を受けて一命はとりとめたものの、死んだ様に眠る鈴木を樹里は心配していた。



その鈴木が目を覚ましたのだ。嬉しさのあまりに目はもはやウルウル状態。



鈴木「あれ?あんたは確か…」



ここで漸く樹里の存在に気付く。



樹里「良かった〜!!」



ガシッ



鈴木「お、おいおいおい!?」



流石の鈴木も急に胸にしがみついてきた樹里に驚く。。



樹里「え〜んえ〜ん」



鈴木の胸の中で泣きじゃくり。



鈴木「一体何がなんだか…」」



旧名:強い妖戦士田中。現在の名:美しい魔闘家鈴木。状況が今一つ掴めないままここに復活。



――Bブロック



鉄山「この喧嘩の白黒をつけるぞ棗」



ズズズ…



突然、鉄山の下半身が地中に入り始めた。



棗「鉄山の身体が…!?」



そして直ぐに鉄山の下半身は完全に地中に埋まったのだった。



棗「何のつもり鉄山?鎧を身に纏ったと思ったら下半身を地中に埋めるなんて。身動きが取れなくなるわよ」



鉄山「フフン。これでお前と決着をつける準備は整った。棗、最後の勝負だ」



右手でかかって来いと棗を挑発する。



棗(私を挑発するとは余程あの鎧に自信があるみたいね。但、分からないのは、何の為に下半身を地中に潜らせたのか…?)



鉄山「予想外の俺の行動に怖じ気づいたか棗?」



さらに挑発。



棗(面白い)



フゥ〜っと息を吐くと鉄山に向かって言い放つ。



棗「何を企んでいるのか分からないけど貴方の挑戦受けてやる」



ドーーーーーン!!!!!!!!!!!!!



そう言うと棗の背中から先程と同じ様に翼の形をした虹色に輝く妖気が噴出された。



先程とは大きく違う事。それは重力の影響を受けていない事。



棗の動きはまるで瞬間移動をするかのような高速のスピードであった。



そのスピードは魔界でもトップクラスのスピードを持つ孤光にも匹敵する程のもの。



棗の持ち味である高速のスピードに背面に練り込んだ妖気の一部を噴出させて、さらに速度を加速。



一気に相手の懐に入り込むと同時に相手の身体に触れて、練り込んだ妖気を噴出。体内に妖気を流し込み内部から破壊する。



これが重力の呪縛から解放された真の棗の封神拳・壱式“鷹襲波”であった。



スッ



棗の両手が鉄山の胸部に触れた。その箇所はヘルメットが鎧化した部分。



鉄山の目を見つめる棗。



棗「その鎧で防御力を上げたつもりだろうけど無駄よ!私の気は内部から破壊する。身体の外をいくら強化しても関係ないわよ鉄山!!」



そう言うと鉄山に触れた両手に視線を移す。



棗「鷹襲波ァァァァァ!!!!!」



ドォォォォォ!!!!!!


先程と同じ様に棗の練り込んだ妖気が噴出。鉄山の内部に流し込まれていく。



その時だった。



棗が触れた鎧から凄まじいエナジーが放出され始めた。



キュンンンンン



そしてエナジーの放出と同時に鎧は棗の鷹襲波を吸収していた。



(ニヤッ)
鉄山「悪いな棗。俺の勝ちだ」



棗(!!?)



バチバチバチ!!!!!



鎧から鉄山の両手に棗から吸収した力が宿り始めた。



鉄山「お前が練った気を鎧に吸収させた。返すぜ棗!!」



ガシッ



棗の右手を掴む。



鉄山「ハァァ!!!」



バチバチバチ!!!



なんと棗の身体に鉄山に流し込んだ筈の鷹襲波が流れ始めた。



棗「キャァァァァァ!!!!!!」



自身の技で身体の内部を破壊されて大きな悲鳴を上げる棗。



そして棗の身体から鷹襲波による虹色の光が放出され始めた。



――メイン会場・



雪菜「棗さん!!?」



――選手達の休憩場



九浄「何だと!?」



酎「棗さ〜〜〜ん!!!」



酎はスクリーンの棗に向かって叫ぶ。



――Bブロック



棗「う……」



薄れゆく意識の中で次々と浮かぶ大切な者の顔。



棗(九浄、酎…、雪菜ちゃん…)



ドサッ



棗の身体はゆっくりとその場に倒れたのだった。



続く
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