幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜
□大会編02
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――魔界統一トーナメントのDブロックの二回戦・第二試合
梟(ふくろう)
×
鈴木(すずき)
――選手達の休憩場
梟の肢体爆弾によって起こった大爆発の映像がスクリーンに映し出される。
飛影(あの野郎の今の妖気はこの俺に迫るものを感じたぞ)
凍矢「蔵馬、鈴木は大丈夫だろうか?」
蔵馬「鈴木は今の攻撃をまともに受けたはずだ。無事だったとしてもこれ以上の戦闘はおそらく・・・」
蔵馬は険しい表情でスクリーンを見つめる。
――Dブロック
梟の肢体爆弾による大規模な大爆発が起きたDブロック。
辺り一面が爆発によって酷く焼けて地形も大きく変貌している。
それは爆発の大きさを物語っていた。
立ち込める砂煙の中で梟の変化していた髪の色がゆっくりと元に戻っていく。
(ニャッ)
梟「ククク、手応えはあったぞ」
梟の視線の先には鈴木が仰向けに倒れていた。
肢体爆弾をまともにその身体に受けた鈴木は全身に大きな傷を負って瀕死の状態となっていた。
鈴木「うぐぐ・・・」
梟「あの一撃を受けて粉々にならずによく生きていたな。それがお前の強さなのだろうが」
鈴木「クソォォ・・・」
梟は鈴木の状態を見て静かに語りかける。
梟「私の肢体爆弾をその闇アイテムで使える様になったとしてもその様ではもはや私とは闘えない」
鈴木「・・・今のお前の一撃は瞬間的に爆発的に妖気が上がった。俺がかわせない程にな。鴉の姿と技、そして再生能力・・・、お前は俺が知っているあの鴉ではないな・・・。一体何者だ!?」
梟に問いかけながら苦しそうに上半身を起こす鈴木。
スッ
梟は軽く手を前に突き出した。
梟「フッ、俺の名は梟。鴉であって鴉ではない存在。後はあの世でジックリと考えるのだな」
梟の瞳が妖しく光る。
鈴木(!!)
ボン!!!
鈴木の胸部が爆発した。
鈴木「ぐわァァァァ!!!!!!」
ドサッ
梟のトドメともいえる一撃で鈴木は力尽きた。
梟は上空を見上げる。
審判は上空から鈴木の様子を確認。
審判「Dブロックの第二試合は鈴木選手の戦闘不能と見なして梟選手の勝利です!!!」
梟の勝利を宣言した。
梟「ククク!!ハッハハ!ハハ!!!!」
梟の高笑いが闘場に響き渡る。
鈴木の敗北によって三回戦の第一試合は蔵馬と梟の対戦が確定となった。
――選手達の休憩場
休憩場にあるスクリーンに映し出されているDブロック。
蔵馬はその闘場の二つの光景を深く目に焼きつけていた。
梟によって倒された鈴木の変わり果てた姿。
そして変わり果てた鈴木の姿を見ながら高笑いしている梟の姿。
隣にいた凍矢は蔵馬の表情を伺う。
ゾクッ
凍矢は一瞬だが背筋が凍る様な感覚に陥る。
凍矢「蔵馬・・・」
勝負は既についている状態にも関わらず瀕死の鈴木に対して非道ともいえる一撃。
蔵馬は梟に対して巨大な殺気を放ち始めた。
そして蔵馬は静かに呟く。
蔵馬「あいつは俺が倒す」
――メイン会場
皐月「あ〜あ、いい男がすっかりぼろぼろになっちゃって」
皐月は残念そうな顔をする。
(ニャッ)
イチガキ「ヒョヒョヒョ。あの梟は実験体とはいえワシの研究の集大成ともいえる作品。見事な勝利じゃわい」
皐月「あれだけの強さを持っている梟ならば樹の計画が順調にいけばこれから復活する事になる“彼”のいい手駒になりそう。見事な仕事だよイチガキ」
イチガキ「ヒョヒョ、枯れかけたワシの夢を叶える機会と闇撫の不思議な力による技術力を与えてくれた樹と皐月には感謝しておるぞ」
イチガキの濁りきったその目は大きな野望を持つ男の目に変わっていた。
皐月「フフ、貴方の本当の役目はこれからなのだから、樹も私も期待してるよ」
ズズズ
皐月はそう言うと再び空間の中に入ろうとする。
イチガキ「行くのかね?」
皐月「ええ。今から樹の策の手伝いにね。沢山の血が見れそうよ」
イチガキ「今度は何を企んでいるのかは知らないが相変わらずご苦労な事じゃな」
皐月「フフッ、ある世界を滅ぼしてくるのよ」
フッ
不気味な言葉を残して皐月は空間の中に消えていった。
イチガキは皐月の消えた後を見ながら心の中で呟く。
イチガキ(ヒョヒョ、いずれお前達はワシにとっては邪魔な存在になる。いつまでも大人しく従っておるワシではないぞ。最後に勝つのはこの天才Dr.イチガキ様じゃよ)
――Dブロック
全く動かなくなった鈴木の側に行って様子を見る審判。
審判「死んだ?いや、微かに息をしているわ」
審判は直ぐに救護班に連絡を入れた。
暫くすると瑠架を含んだ救護班と一緒に鈴木を慕う樹里も闘場に現れた。
樹里「鈴木!!鈴木!!」
必死に鈴木の名前を何度も呼び続ける樹里。
鈴木(・・・)
だが樹里の必死の呼びかけに鈴木は応えなかった。
鈴木は意識がなくてグッタリとしていた。生きているのが不思議な状態であった。
樹里「瑠架さんお願い!鈴木を助けて」
必死で訴えかける樹里。
(ニコッ)
瑠架「大丈夫よ樹里。鈴木の事は私に任せて」
瑠架は今にも泣きそうな顔の樹里に優しい笑みを浮かべて安心させる。
瑠架「樹里、貴方も心配でしょう?一緒についてきなさい」
樹里「いいの?」
心配そうな顔で問いかける樹里。
瑠架「もちろんよ。これは小兎も了承済みだから大会の方は任せて大丈夫よ」
(ニコッ)
樹里「ありがとう」
瑠架の言葉に笑顔を見せる。
樹里は救護室に向かって運ばれて行く鈴木に付き添う事にした。
鈴木はこの後、瑠架達の治療と樹里の手厚い看護により無事に一命を取り止めたのだった。
これがきっかけとなって後に鈴木と樹里は結ばれる事になるのだがこれはまた別の話しとなるのでここまでにしておこう。
――霊界
北神達が会場から大統領府に旅立つ少し前に時は遡る。
幽助に頼まれてから比羅達の事を調べていた霊界のコエンマ達。
ぼたんはコエンマの推測から樹が比羅達の協力者として関与しているかも知れない事と見つかった資料から比羅達の事で分かった情報を通信機を通じて幽助に伝えようとしていたが肝心の幽助と連絡を取ることが出来なかった。
ぼたん「駄目だ〜。幽助の奴、絶対に通信機を忘れていってるよ」
ガチャッ
ぼたんのいる部屋にコエンマが入って来た。
コエンマ「ぼたん、幽助とはやはり連絡がとれないか?」
ぼたん「はい、駄目です」
コエンマ「やれやれだ。幽助に連絡が伝わらんのなら直接あいつに伝えるしかないのう・・・」
通信機を見ていたぼたんはコエンマに視線を移した。
ぼたん(!)
コエンマの姿を見て驚く。
コエンマ「ぼたん、何をそんなに驚いているんだ?」
コエンマの姿は人間界バージョンになっていた。
ぼたん「だってその姿は人間界バージョンじゃあないですか!コエンマ様、そんな格好で一体どちらへ?」
コエンマ「魔界だ。どうしても嫌な予感がしてならん。この予感は何か分からんが、万が一の自体に備えて桑原を霊界の方で保護しておこうと思ってな」
ぼたん「コエンマ様お一人で魔界に行くのですか?」
コエンマ「いや、護衛も兼ねて特防隊の舜潤と草雷と才頭を連れて行く。行ったついでに魔界の王が誰になるのかも見届けようとも思っておるがな」
舜潤は特防隊の現在の隊長。草雷は女性の隊員。才頭は坊主頭の隊員である。
ぼたん「コエンマ様、あたしもたまには一緒に連れて行って下さいよ〜」
コエンマ「な、何!?お前も一緒に来るのか?」
ぼたんは目をうるうるさせて頼み込む。
コエンマ「ぼ、ぼたん気色悪い顔をするな」
ぼたんのうるうる顔を見て苦い顔をするコエンマ。
ぼたん「コエンマ様、お願いしますよ〜」
ぼたんは不気味な程にさらに目をうるうるする。
コエンマ「うう〜む。ま、まあ、霊界にはあやめがいるから良かろう」
コエンマはしぶしぶ承諾したのだった。
ぼたん「やった〜!!ありがとうございますコエンマ様ァァァ!!!」
両手を上に挙げて大喜び。
コエンマ「さてと行くなら直ぐに準備するんだ。準備が出来しだい出発するぞ。今から行けば大会の終盤には間に合うだろうからな」
ぼたん「あいあいさ」
ぼたんは急いで準備に取りかかり始めた。
コエンマ(もし関与しているのがワシの推測通り本当に樹だとしたらあいつの目的は一体何だ?)
コエンマは昔から樹の事を良く知っているだけに妖気の強さを超える樹の底のしれない力を警戒していたのだった。
それから暫くしてコエンマとぼたん、特防隊の三人は魔界に向かって旅立った。
コエンマは自身が感じた嫌な予感が間もなく霊界で起こる事になるとは知るよしもなかった。
それが全ての世界を巻き込む壮絶な闘いの幕開けとなるのである。
続く