幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
11ページ/37ページ

――樹の回想による“あの男”を殺した闘い。



その闘いこそが仙水の復活の大きな鍵となっていたのだった。



――王の居城



樹「比羅、お前達に合わせたい男がいる」



比羅「うん?何者だ?妖怪か?」



(ニヤッ)
樹「ああ、戸愚呂(兄)という名の妖怪だ」



樹は不敵な笑みを浮かべて比羅に答えたのだった。



比羅「どんな奴だ?」



樹「フッ、少し変わっているが、お前達に役立つ能力を持つ男だ」



比羅「それは楽しみだ」



樹「後でお前の部屋で会わすさ」



ズズズ…



樹はそう言うと空間の中に入ろうとした。



比羅「待て樹」



空間に入ろうとする樹を呼び止めた。



比羅の呼びかけに空間に身体が半分入った時点で樹の動きが止まった。



そして空間から樹は顔を覗かせた。



樹「何だ?」



比羅「お前に言っておきたい事がある」



比羅の言葉に樹は怪訝そうな顔をした。



比羅「お前が妖怪という事で悪く言う者もいるが、私達の悲願を達成する事が出来るかもしれない可能性をもたらせてくれた事に、私はお前に感謝している」



樹「フッ、そんな事か。お前達に目的があるように、俺も目的があってお前達に協力しているだけだ。感謝する必要はない」



そう言うと樹は空間の中に消え去った。



比羅「闇撫の樹か…」



樹が空間に消えた後を比羅は暫くの間、見つめていたのだった。



――亜空間



亜空間に戻った樹は別れ際に比羅の言葉を思い出していた。



樹「フフフ、ハハハハハ」


普段はあまり笑わない樹が亜空間に響き渡る声で笑った。



樹「フッ、馬鹿な奴だ。お前達の悲願は叶う事はないさ。お前達は俺にとっては只の捨て駒でしかない。利用されているだけという事を気付かないとはな」



――比羅の部屋



樹と別れた比羅は自分の部屋に戻り、駁が同士達を連れて来るのを待っていた。



コンコン



誰かが比羅の部屋のドアをノックした。



比羅「誰だ?」



部屋の扉に視線を移して、外にいる者に問い掛ける。



「比羅、私だ」



ドアの向こうから女性の声。



比羅の双子の妹・砂亜羅である。



比羅「砂亜羅か。入ってもいいぞ」



「比羅、俺もいる」



砂亜羅とは別に男の声が聞こえてきた。



その声が誰か分かると、比羅は少し嬉しそうな顔をする。



比羅「フッ、お前も砂亜羅と一緒か。入れよ」



ガチャッ



部屋の扉が開き、
仮面を外した素顔の砂亜羅と短い銀髪の男が部屋に入って来た。



比羅「元気そうだな砂亜羅、雷蛾(らいが)」



比羅は妹と銀髪の男の名を呼んだ。



男の名は雷蛾。
彼はこの国の十二ある
将軍職(十二人の同士)ではなかった。



主に王の護衛を任務として居城に滞在している。


その実力は最強の比羅には及ばないものの、他の将軍達とも引けはとらない実力者であった。



彼は少し野性的な雰囲気が漂い、いざ戦闘になると冷静で状況分析に優れた男である。



砂亜羅「目的の桑原の捕獲は上手くいったのか?」



比羅「残念ながら邪魔が入り失敗した。今度は桑原を追って魔界に行く事になりそうだ」



砂亜羅「魔界だって!?」


雷蛾「やれやれ、戻って来たばかりだというのにもう次に行く場所が決まっているのか」



比羅の「魔界へ行く」という言葉に砂亜羅は驚き、雷蛾は呆れていた。



比羅「ああ。しかも今度は大きな闘いだ。同士達全員を引き連れて行く事になる」



砂亜羅「全員!?」



雷蛾(!)



普段は冷静で表情をあまり変えない雷蛾の比羅の言葉によって顔色が変わった。



雷蛾「まさか五年前の大戦より、大きな闘いか?」



比羅「フッ、安心しろ。あの闘いほどではない。激しい闘いにはなるだろうが、今回は私達が勝つ可能性の方が強い」



雷蛾「フゥ〜、それならいいが…」



五年前にこの世界で起きた大規模な闘いをする雷蛾は安堵のため息をつく。



雷蛾「しかし人間界で邪魔が入るとは、一体何があったのか詳しく話が聞きたいものだ」



比羅「だったら雷蛾、
お前もこの場にいるといい」



雷蛾「この場に?」



比羅「ああ」



比羅は雷蛾に答えると視線を砂亜羅に向けた。



比羅「砂亜羅、お前は駁に話しを聞いてここに来たのではないだろう?」


砂亜羅「何の事だ?私は駁とは会っていない。
比羅が帰って来た事を袂に聞いて直接ここに来たのだからな」



比羅「駁にこの部屋に同士達を集める事を頼んでおいた。もう少ししたら他の同士達を連れてここに来るだろう。この場で人間界での出来事と魔界へ向かう目的を同士達に説明をする」



雷蛾(なるほど…。この場に残れとはそう言う事か)



砂亜羅「大戦以来の闘いか。久しぶりに血が見れそうだ」



砂亜羅の顔は嬉しそうだ。



比羅「雷蛾、お前の力も借りたい」



比羅の言葉を聞いて、
雷蛾は比羅の顔を申し訳なさそうな顔をする。



雷蛾「本当にすまない。俺も出来たら行きたいところだが、俺は王を守らねばならない…」



比羅「フッ、分かっている。言ってみただけだ。お前がいてくれたら魔界の者達の動向を探るのに非常に助かるのだがな…」



その時だった。



ガチャッ



比羅の部屋の扉が開き、駁が入って来た。



駁「待たせたな」



比羅「すまなかったな駁。全員に連絡は取れたか?」



比羅は直ぐに駁を出迎える



駁「それが砂亜羅の姿が見当たらんのだ」



砂亜羅「駁、私ならここにいる」



駁に自分の存在を知らせる。



駁「比羅の部屋にいたのか。それで見当たらんわけだ」



砂亜羅「フッ、お前が私を捜しているとは思わなかったからな」



駁「うん?」



駁は砂亜羅の隣にいる雷蛾に気付いた。



駁「お前もいたのか雷蛾。フッ、相変わらず砂亜羅とは仲がいいな」



少しからかう様な言い方で雷蛾に話しかける。



そして駁は砂亜羅の顔をチラッと見た。



駁(ニッ)



その顔は笑っている。



砂亜羅(駁め)



砂亜羅の顔はどこかほんのりと赤い。



雷蛾「フッ、誤解するなよ。仲がいいのは、
砂亜羅とは大戦の時からの親友だからだ」



砂亜羅を抱き寄せて肩を組む。



砂亜羅(鈍感が…)



雷蛾の答えに砂亜羅の顔はちょっと不満顔。



(ニヤッ)
駁(前途多難だな砂亜羅)


比羅「それで駁、誰か一緒にここに来たのか?」


駁「砂亜羅と雷蛾に気を取られていた。おい、入れよ!」



駁は直ぐに部屋の外にいる同士達に合図した。



すると楽越、夢苦、そして少しオドオドしながら菜艶が比羅の部屋に入って来た。



楽越「よっ!来たぜ」



夢苦「お邪魔します」



菜艶「し、失礼します」



夢苦は部屋に入ると比羅の前にやって来た。



夢苦「お久しぶりです」



比羅「呼び出して悪かったな」



(ニコッ)
夢苦「退屈していたところなので構いませんよ」


夢苦の姿を見ると人間界で蔵馬に倒された同士の黎明の姿が頭によぎる。


王と話しを聞いていた樹を除くと、同士の中で黎明の死を知るのは比羅と駁だけであった。



比羅(夢苦にとっては黎明は師であり兄弟同然だ。黎明の死を夢苦に伝えるのは気が重いな……)


夢苦「どうしました?何か難しい顔をされていましたが、僕の顔に何かついてますか?」



比羅「い、いや何でもない」



慌てて誤魔化す。



夢苦(?)



不思議そうな顔で比羅を見つめる。



駁が比羅の隣にやって来た。



駁「比羅、とりあえず俺と一緒に来たのはこいつらだけだ。後は直に来るだろう」



比羅「分かった」



暫くすると弥勒と烙鵬が部屋に入って来た。



弥勒は部屋に入ってから、比羅の姿を見つけると、笑顔で声を掛ける。



(ニコッ)
弥勒「お帰り比羅、人間界から帰って来たんだね」



比羅「ああ、私の留守を任せて悪かったな弥勒、礼を言うぞ」



弥勒に労をねぎらいの言葉をかけた。



弥勒「比羅の留守の間、私のやる事は殆どなかったよ。彼が進んで仕事をやってくれたからね」



そう言うと弥勒は烙鵬の肩に手を置いた。



烙鵬「フン、肩から手をどけろ弥勒」



烙鵬は弥勒の手を払いのけた。



弥勒(やれやれ)



払いのけられた手でポリポリと額をかく弥勒。



比羅「すまなかったな烙鵬」



弥勒の言葉を聞いて烙鵬にねぎらいの言葉をかけた。



烙鵬「比羅殿の為なら
これぐらい何ともありません」



比羅「そう言ってもらえて助かるよ烙鵬」



烙鵬「しかし比羅殿、
同士達を一同に集めるとは只事ではありますまい。おそらくは何か大きな闘いがあるのでは?」



真剣な顔で話しかける烙鵬に比羅は答える。



比羅「フッ、流石に勘はいいな」



烙鵬「やはりそうでしたか…」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ