幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――死んだ者の魂を再生する事の出来る力まであるという王家に伝わる秘宝である“星の宝玉”。



闇撫の樹は王を倒して秘宝を手に入れる為についに行動を起こした。



仙水忍の魂の再生が樹の秘宝を手に入れる最大の目的であった。



――亜空間



イチガキの実験体の一人である瀬流と闘いを始めようとした王の前に現れたもう一人のイチガキの実験体が姿を現した。



イチガキ「この男の名は臥竜(がりょう)」



王「こいつも凄まじい妖気だな」



スッ



戦闘態勢に入った臥竜に対して、ここで瀬流が始めた口を開いた。



瀬流「臥竜、お前は少し待機していろ。俺はこの男とサシで勝負したい。この男の顔を見ていると何故か分からないが、殺意が沸いてくる」



臥竜(………)



無言で主であるイチガキに視線を移した。



イチガキ「まぁ、良かろう。暫くお前は控えておけ臥竜」



臥竜(コクッ)



イチガキの言葉に頷く臥竜。



瀬流「イチガキ様、有り難う御座います」



瀬流は両手を前に突き出すと妖気を手の平に集中。



ボォォォォォ!!!!!



両手の手の平から炎が燃え盛る。



樹がイチガキの隣まで歩いて来た。



樹「あの実験体を一人で闘わせていいのかイチガキ?王の力は全ての世界を合わせても最強の力を持つ。奴一人で手に負える相手ではない筈だ」



樹の問い掛けにイチガキは答える。



イチガキ「ヒョヒョヒョ、瀬流が自発的に王と闘いたいというからのう、もしかしたら実力以上のものを発揮するやも知れん。様子を見てみたくなったんじゃ」


自分の作り出した実験体を見ながら楽しそうに微笑む。



瀬流「行くぞ。炭クズにしてやる」



王「さっさとかかってこい。二人同時にかかって来ない事を後悔させてやる」



瀬流「出かい口を叩けるのはそこまでだ」



ズキューーン!!!!



瀬流は王に向かって一気に駆け出した。



王は向かって来る瀬流をジッと見つめている。



瀬流「死ね!!」



ビューーン!!!!



炎に覆われた右手で王の腹部を狙う。



フゥー



王は素早く右に動いてその攻撃を難なくかわす。



瀬流(!?)



王「遅いな」



そして。



キュンンンンンン!!!!


王は右手を素早く後ろに引くと魔光気を集中。



バチバチバチ



王の身体から魔光気のエナジーが放出された。



瀬流「これは!?」



瀬流は王がどのような技を放ってくるのか瞬時に察知した。



瀬流「まずい!臥竜、樹様とイチガキ様を守れ!!」


臥竜(!)



瀬流の言葉を受けて臥竜は直ぐに動き出した。



王「死ぬのはお前らだ!!!」



後ろに下げた右手を前に向かって一気に突き出した。


王「魔光連弾」



ドドドドドドドドドド!!!!!!!



王の右手からマシンガンの様に小さな魔光気の弾が放たれた。



瀬流(かわせない!)



スッ



瀬流はかわすのが不可能と判断すると、直ぐにダメージを最小限に抑える為に素早く両手をクロスさせて防御した。



ドガドガドガドガドガドガ!!!!!!



瀬流「むゥゥゥゥゥ!!!!!!」



次々と瀬流の身体に弾がヒットしていく。



ドドドドドドドドドド!!!!!!!



王の右手から放たれた弾の数は軽く50発を越えてさらに放ち続けられる。



凄まじい数の弾は瀬流を越えて、樹やイチガキに向かって飛んでいく。



王は瀬流にダメージを与えると共に、あわよくば力の弱い樹やイチガキをついでに倒してしまおうという計算の上で魔光連弾で放ったのだった。



ドドドドドドドドドド!!!!!!!



樹「まずいな、王の奴、俺達も狙って放ってきたようだ」



直ぐに飛んで来る弾を避ける態勢を整える樹。



イチガキ「案ずるな樹。ワシの実験体が来た」



スッ



瀬流の言葉を受けて動いていた臥竜が樹とイチガキの前に立つ。



臥竜「二人には指一本触れさせはしない」



ブォォォォォ!!!!!



臥竜の身体から凄まじい妖気が放出された。



そして。



ピキーーン!!!!!



そして両手を前に突き出して妖気の壁を作った。



シュゥゥゥゥゥ……



臥竜の張った妖気の壁に弾は打ち消されていく。



イチガキ「ヒョヒョヒョ、臥竜よ、よくやった」



樹「中々強力な防御壁だ」



臥竜は王に向かって叫んだ。



臥竜「俺がいる限り、樹様とイチガキ様に攻撃を当てる事は出来ない」



王「チッ」



王は舌を打つと魔光連弾を打つのを止めて、瀬流に視線を移した。



王の放った弾は最終的に150発は越えていた。その弾のうちの七割は瀬流にヒットしていた。



瀬流「耐えたぞ」



クロスさせていた腕を元に戻す。



身体には弾を受けた際に生じた傷が無数にあった。



王「瞬時に防御したようだが、かなりの数の弾を受けたな。その身体ではもはや速い動きは出来ない」



瀬流「フッ、こんな傷など」


ニュルニュルニュル



瀬流の魔光連弾で受けた傷がどんどん修復されていく。



王「何だと!?」



瀬流の傷が見る見るうちに回復して元の状態に戻っていくのを見て流石の王も驚く。



瀬流の受けた傷が回復して元に戻っていく姿を目のあたりにした樹は、その再生力に、あの妖怪が頭に浮かんだ。



樹「奴はまるで戸愚呂(兄)のようだ」



戸愚呂(兄)の名が出たことにイチガキは愉快と言わんばかりに高らかに笑う。



(ニヤリ)
イチガキ「ヒョヒョヒョ、ワシの作り出した実験体達には、戸愚呂(兄)の細胞も組み込んでおる」



イチガキの言葉通り、戸愚呂(兄)の細胞が実験体達の身体に使われていた。その為、酷い傷を受けたとしても彼らは何度も再生出来るのだ。



樹「やはりそうか、フッ、素晴らしい完成度だイチガキ」



樹はイチガキの実験体の完成度に満足していた。



王「回復能力か、厄介な奴だ」



バッ



瀬流はバックジャンプして王と距離を取った。



瀬流「回復しても痛みは暫く残る。この身体の痛みの分をお返しさせてもらう。行くぞ王!!」



ボォォォォォォ!!!!!


左手を右に、右手を左に向かって円を描く様に動かす。



すると丸い炎の輪が二つ作られた。



ガシッ



二つの炎の輪を左右両方の手で持つ。



樹「イチガキ、あの実験体は何者だ?元々は一人の妖怪をベースにお前が作り出した者だろう?」



イチガキ「あやつの本当の名は是流。暗黒武術会で飛影によって殺された妖怪だ」



樹(是流)



是流とは幽助達が暗黒武術会で闘った六遊怪チームの一人で凄まじい炎の使い手であった。



是流は、飛影と三試合目で闘い、飛影の邪王炎殺黒龍波の餌食となり、この世に影だけを残して黒龍に焼きつくされて息絶えた。



その是流がイチガキによって、実験体として蘇ったのだ。



瀬流「ウォォォォォ!!!!!」



ズキューーン!!!!



凄まじいまでの殺気を放ちながら、両手に持った炎の輪を武器に王に襲いかかる。



王「来い」



スッ



構えて向かって来る瀬流を待ち受ける。



樹「奴は初めて会う筈の王に対して、凄まじい殺気を放っているな…」



イチガキ「王の目が似ておるのじゃよ。瀬流が是流だった頃に自分を殺した憎き飛影の目にな。是流の頃の記憶がないとはいえ、無意識に覚えておるのじゃろう」



イチガキの言葉に樹は王に視線を移す。



確かに王の目つきはどこか飛影に似ている。



樹「憎悪は生き物の感情の中で最も強い感情。王を相手に瀬流がどこまで闘えるか見物だ」



ボォォォォォ!!!!!



瀬流「死ね!!」



瀬流の左右の手から同時に攻撃が繰り出された。



王(………)



フッ



王は瀬流の攻撃を瞬間的にかわした。



そしてその姿が消える。



瀬流(………)



だが、瀬流は消えた王に対して驚く事なく冷静に状況を分析する。



そして。



瀬流「そこだ」



ビューーーーー!!!!



左手に持っていた炎の輪を誰もいない方向に投げた。


すると瀬流が投げた方向に王が姿を現した。



ボォォォォォ!!!!!



王(!!)



姿を現した王に迫る炎の輪。



王「俺を舐めるな!!」



ガキーーーン!!!!



王は炎の輪を右手で弾き飛ばした。



炎の輪は左の方向に向かって飛んでいった。



その時だった。



ブォーーン!!!



王の頭上に姿を現す瀬流。炎の輪を王に向かって投げると同時に瀬流は行動を起こしていた。



瀬流「弾くのは計算済み。もらったァァァァ!!!!」



ボォォォォォ!!!!!



王の頭部を狙って炎の輪が振り下ろされる。



ガシッ



王はその場に踏みとどまり炎の輪をしらはどりで受け止めた。



ジュゥゥゥゥゥ……



受け止めた両手の手の平が炎によって火傷を負う。



だが、王は……。



王「ハァァァァァ!!!!!!!」



ブォォォォォォ!!!!!


火傷などお構いなしに受け止めた炎の輪に向かって魔光気を流し込む。



シュゥゥゥゥゥ………



瀬流の妖気で作られた炎が王の魔光気によって打ち消されていく。



瀬流(何だと!?)



王「でャァァァァァ!!!!!!」



ビューーン!!!!!!



瀬流の炎の輪を打ち消すと王はパンチを瀬流の腹部を目掛けて放つ。



ドゴォォォォォ!!!!!


瀬流の腹部に王の拳がめり込む。



瀬流(!!)



腹部を抑えてうずくまる。


ビューーン!!!!!



直ぐに王は追撃とばかりに拳を繰り出す。



バキィィィィ!!!!!



瀬流の顔面にヒット。



ザザザ……



瀬流の身体が後ずさる。



王「悪いがお前達とは歩んできた死線の数が違う」



ズドドドドドドドド!!!!!!



神速とも言える凄まじい連続攻撃を瀬流に向けて放ち始めた。



瀬流「ぐわァァァァァ!!!!!」



次々と瀬流の身体に王の拳が打ち込まれていく。



王の攻撃の前に瀬流は防御不可能だった。



ズドドドドドドドド!!!!!!



なすがままに攻撃を浴び続ける。



臥竜「…やはり強いな」



パサッ



樹とイチガキを守るように立っていた臥竜は白いフードを脱ぎ捨てた。



苦戦する瀬流に加勢する為に。



露わになったその姿は頭にバンダナを巻いた細い身体の男だった。



樹「イチガキ、この男は何者だ?」



イチガキ「臥竜は、かって魔界の忍だった男だ。奴の以前の名は画魔。ワシが最も憎む蔵馬に暗黒武術会で殺された妖怪だ」



臥竜の正体は、陣や凍矢の仲間であった画魔だった。


彼は暗黒武術会で蔵馬と闘い、その命と引き換えに蔵馬の動きを封じ、壮絶な最期を遂げていた。



瀬流として蘇った是流と同様に画魔もイチガキの実験体の一人、臥竜として蘇ったのだった。



スッ



臥竜は腰から素早く筆を取り出して両手に持って構える。



そして自分の顔と身体に模様を施した。



臥竜「ふう〜〜〜〜ん
戦闘の粧」



ブォォォォォ!!!!!



急激に妖気が上昇する臥竜。



その妖気は蔵馬と闘った時とはまるで比べ者にならない妖気であった。



ズキューーン



臥竜は瀬流を滅多うちにしている王に向かって襲いかかっていったのだった。



イチガキ「ヒョヒョヒョ、ワシの実験体達は、浦飯達によって殺された者達で構成されている。無念の想いを残して死んだ奴らの内に眠る力は凄まじいものじゃった。王よ、奴らの憎悪の力を一身に受けるがいい」


そして臥竜が王に接近。



臥竜「しゃあ」



王(!?)



王の身体を狙って筆を繰り出したのだった。



続く
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