幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントCブロックの三回戦・第一試合


九浄(くじょう)
×
酎(ちゅう)



――Cブロック



桑原の巨大な霊気がAブロックから放出された。



二人は闘いを一時的に止めて、放出されている桑原の霊気を感じ取り始めた。



酎「あいつ、張り切っているのか、火事場の馬鹿力なのか分からねーけど、
熱いものがビシビシと伝わってくるぜ」



九浄「確かにな。人間のクセに大したものだ」



………。



………。



………。



二人は何かを思い出そうとしている。



そして。



酎・九浄(!!)



二人の顔は同時に何かを思い出したような感じだ。



そして思わず顔を見合わせる二人。



九浄「酎、あの人間の霊気はどこかあいつに似ていないか?」



酎「お前さんも思ったか。俺もだ」



二人の脳裏には一人の男の顔が浮かんだ。



もちろん浦飯幽助である。


前大会では幽助が対戦相手であった黄泉を肉弾戦に誘う為に放出した攻撃的な妖気に桑原が放出した霊気が酷似していたのだ。



この時、別の闘場で闘っていた躯、棗、周、痩傑が幽助の妖気に共鳴するかのように抑えていた妖気を解き放ち全力で闘ったのだった。



酎「人間のあいつもこんなに頑張っているんだ。俺も負けるわけにはいかねー」


九浄「フッ、こんなに気合いの入った霊気を近くで感じると燃えないわけにはいかないよな酎」



お互いの目を見つめる二人。



酎・九浄(ニッ)



二人の考えは同じだ。



酎・九浄「ウォォォォォ!!!!!!」



二人の合わさった大きな声が闘場に響き渡った。



酎「もうどうにもなれってんだァァァァァ!!!!!コンチクショーォォォォォォ!!!」



九浄「血が騒ぐぜェェェェェ!!!!!全くよーォォォォォ!!!!!」



ドーーーーン!!!!!!


二人は抑えていた妖気を限界点まで一気に解き放った。



二人の妖気は巨大な二つの妖気の柱となり魔界の空に向かって放出され始めた。


その時だった。



ドーーーーーン!!!!!


ドーーーーーン!!!!!


ドーーーーーン!!!!!


Bブロックから二つ、Dブロックから一つの巨大な妖気の柱が魔界の空に向かって放出された。



――メイン会場



小兎「こ、これは凄いです!!!Aブロックの桑原選手が放出した巨大な霊気に共鳴するかの様に、BブロックとCブロックを合わせて四つ。Dブロックからも巨大な妖気が一つ放出されて上空に向かって柱の様な形を作っております!!!」



「あいつら凄いぞ」



「しかし桑原って奴は人間のくせにとんでもない奴だぜ」



「どいつもこいつもバケモンだ!!」



観客達も各ブロックから放出された霊気と妖気に驚きを隠せない。



流石「す、凄いよ鈴駒ちゃん……」



目を丸くして驚いていた。


(ニコッ)
鈴駒「酎の奴、桑原の霊気に燃えたみたいだよ」



スクリーンに映る酎を見つめる鈴駒。



映像の酎は楽しそうな顔をしていた。



鈴駒(気持ちは分かるよ酎。オイラだって闘場にいたら同じ事をしていたと思う)



流石「あのAブロックの人間がきっかけになったんだよね?」



スクリーンの桑原を指差す流石。



鈴駒「そうさ。あの桑原はオイラも昔闘った事あるから分かるけどあいつは根性あるよ」



流石「ふ〜ん、そうなんだ。ねぇ、聞いてもいい?鈴駒ちゃんも酎ちゃん達と同じ様に闘場で闘っていたら酎ちゃん達みたいになっていた?」



(ニッ)
鈴駒「もちろんだよ」



笑顔で流石に答えた。



――Cブロック



酎・九浄(!?)



Bブロックの方角から二つ、Dブロックの方角から一つの妖気の柱が魔界の空に放出されていたのを二人は感じ取った。



九浄(この妖気は棗に鉄山、それにあの蔵馬か…)



酎(蔵馬に棗さん…、俺達と同じ気持ちだったみたいだな)



棗や蔵馬といった信頼出来る仲間が同じ気持だった事で何故だか分からないが酎は嬉しい気持になった。



(ニッ)
酎「おい九浄、桑原につられたのはどうやら俺達だけじゃあないみたいだ」



(ニヤッ)
九浄「ああ、どいつもこいつも血が騒ぐんだろうぜ」


スッ



構える二人。



九浄「棗や鉄山には負けられないぜ。さっさと続きを始めるぞ」



酎「おうよ」



ビューン!!!!!



繰り出される拳と拳。



バキッ!!!



スピードでは酎を遥かに上回る九浄の一撃が酎に入る。



そして直ぐに二人は肉弾戦に突入した。



酎はスピードは殺されるが、防御力重視の鋼鉄化。そして鋼鉄化された拳は攻撃力の増加にもなる。



そして酎とは違い防御力を攻撃力とスピードに変換する九浄の皇拳。



特に攻撃力よりも飛躍的に上がった九浄のスピード。


そのスピードのおかげで、攻撃のヒットする回数が多いのは圧倒的に九浄。



当たる攻撃の回数から言えば酎のおよそ二倍から三倍はあるだろう。



酎を苦しめているこのスピードの代償が深刻な防御力の低下。



時間が経てば経つほど九浄の防御力は低下していた。


その為、酎の攻撃を一発を受けると、九浄が酎に放つ攻撃の十数発分のダメージを受けていた。



だが、再開された二人の肉弾戦で大きく変わった事が一つ。



桑原の放出した霊気がきっかけとなって二人は己の持つ全ての力を出して闘い出したのだ。



もはや後先の事を考えていない凄まじい力と力のぶつかり合い。



酎「ウォラァァァァァ!!!!!」



九浄「ハァァァァァ!!!!!」



バキッ!!!!!



ズガガガガ!!!!!



ドゴォォォォォ!!!!



酎「ぬっ!!?」



九浄「ぐっ!!?」



酎と九浄の闘いはどんどん激しさを増している。



ドゴォォォォ!!!!



酎の拳がまともに九浄の腹部に入った。



九浄「ウォッ!?」



腹部を抑えてよろめく。



酎「もらったぜェェェェ!!!!」



ビューーン!!!!!



追撃とばかりに九浄の顔面に向かって一撃を放つ。



九浄(それはどうかな)



フォーー!!!



右に素早く動き攻撃をかわした。



酎「チッ!!」



九浄「鋼鉄の身体で落ちたお前のスピードでは、
連続で俺に攻撃を入れられねーよ」

(連続で受けたら何の為に防御力をスピードに変えてまで上げているのか分からないぜ)



そう言うと一気に酎の懐に入り込む。



そして。



シュシュシュシュシュ!!!!!!



凄まじいスピードで放たれる九浄の連打。



ズドドドドド………



酎「っつ……!!!」



ザザザ……



酎の身体はどんどん後ずさる。



九浄は闇雲に酎の腹部を殴っているわけではなかった。



拳の一発一発を同じ箇所だけに集中して殴っていたのだ。



ピシッ!!!



鋼鉄の身体に少しずつひびが入る。



ズドドドド………!!!!!!



数えきれない程の九浄の拳が繰り出される。



ピシピシピシ



パリーーン!!!



亀裂が入っていた酎の腹部の一部が割れた。



酎(………!?)



九浄(あいたぜ)



その瞬間を九浄は待っていた。



ビューーン!!!!



すかさず強烈な一撃を酎の剥き出しとなった生身の部分に向かって放つ。



ドゴォォォォォ!!!!



酎「ぐわァァァァァ!!!!!!」



ゴボッ



強烈な一撃を腹部に受けて口から血を吐き出した。そして酎の身体は吹っ飛んだ。



パリーーーン!!!!



ヒューーー!!!!!



剥き出しになった腹部へ、強烈な一撃を受けた衝撃で、鋼鉄化した腹部の部分が大きく砕け散った。



酎「クソッ」



ザーーー……!!!!!



両手で地面を掻いて、
身体が飛ばされるのをなんとか堪える。



ズン



酎(!?)



だが、九浄は既に酎の目の前に立っていた。



九浄「もう一発だァァァァァ!!!!」



狙いは大きく剥き出しになった酎の腹部。



酎「ウォォォォォ!!!!!」



ガッ!!!



間一髪、両手をクロスさせて九浄の攻撃を受け止めた。



九浄「防いだ!?」



ギリギリ九浄の攻撃を受け止める事に成功したのは、腹部の鋼鉄化した部分が大きく破損した為に酎のスピードが増したからであった。


だが、この九浄の攻撃の速度で酎が防ぐ事が出来るのは十回に一回が関の山。



たまたま運に恵まれたのだと言えよう。



ピキーーーン!!!



大きく砕けた腹部の部分が酎の妖気によってまた鋼鉄化された。



そして。



酎・九浄「ウォォォォォ!!!!」



休む間もなく拳を繰り出す二人。



バキッ!!!



今度は酎の拳が九浄の顔面にヒット。



二人の肉弾戦は続く。



――メイン会場



「凄い肉弾戦だが、攻撃の手数が多い九浄の方が圧倒的に有利だな」



「ああ、酎って奴もたまに攻撃を九浄に入れているが当たる数が違い過ぎるぜ」


九浄の落ちた防御力の事を知らない殆どの観客達から見れば、酎より九浄の方が攻撃のヒットする回数が多い為に圧倒的に有利に映っていた。



だが、実際はどちらが勝ってもおかしくない状況であった。



鈴駒「酎も九浄も妖気が随分と減っている…」



酎の身体の鋼鉄化はその身体を維持する為に妖気を放出し続けて全身に伝える必要があった。破壊されても直ぐに復元出来るのは放出しているからこそ可能なのだ。



そして九浄の皇拳も放出系の技。



鈴駒「放出系の技を限界まで使い続けている二人はもうすぐ妖気を使った闘いが出来なくなる。妖気が尽きてしまうのも時間の問題だ」



――Cブロック



バゴォォォォォ!!!!



バキィィィィィ!!!!!


酎・九浄(ゼェゼェゼェ……)



鈴駒の予想通り、全力で放出系の技を限界まで使い続けていた酎と九浄の妖気は尽きようとしていた。



バッ!!



後ろにバックジャンプして距離を取って構える二人。


酎(ハァハァハァ……)



九浄(ハァハァハァ……)



二人は肩で息をしていた。限界は近い。



そんな状況の中で酎が九浄に話しかけた。



酎「九浄、お前さんのその技は相当、妖気を消耗するんじゃあないのか?もう限界だろ?」



九浄「酎、そういうお前の鋼鉄化も身体を維持する為に消耗が激しいだろう?お前こそ限界だろう?」



お互いの目を見る二人。



………。



………。



二人はお互いの目を見て悟った。



酎・九浄「ハッハッハ!!」


そしてバトルマニアの二人は大きな笑い声を挙げる。


お互いに妖気が殆ど尽きたのだ。



酎が九浄に話しかけたのも自分の妖気が尽きかけた為に九浄の様子を探る為だった。



シュウゥゥゥゥゥ……



酎は鋼鉄化した身体、九浄は皇拳を止めてそれぞれ元の状態に戻った。



九浄「どうやら俺もお前も殆ど限界だったみたいだな…」



酎「へへへ…」



そして二人は顔を見合わせた。



九浄「どうする?妖気なしで拳と拳でお互いがぶっ倒れるまでやるか?」



酎(!)



九浄の言葉に酎は何かを閃いた様な顔を見せた。



ゴソゴソゴソ



酎は何やら懐に手を入れて探し始めた。



九浄(??)



不思議そうな顔で酎の行動を見守る。



スッ



酎は懐から何かを取り出した。



そして取り出した物を九浄に見えるように掲げた。



九浄「それはナイフか?」



酎の手には二本のナイフが握られていた。



そして九浄の問い掛けに酎は不敵な笑みを浮かべて答えた。



(ニヤッ)
酎「ああ。やるかい?ナイフエッジ・デスマッチを」



続く
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