幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――亜空間



樹(王よ、忍の復活の為、俺はお前に負けるわけにはいかない。この戦いが終わった時、最後に笑うのは俺達だ)



ここで樹が初めて、王との戦いに動き始める。



樹「影の手よ」



フッ



二本の影の手が姿を現し、樹の両肩に乗る。



イチガキ「影の手!?
樹、何をするつもりじゃ?」



イチガキは樹が戦闘態勢に入った事に驚いた。



おそらく魔界の最強クラスの妖怪ですら、この王とまともに戦える妖怪は殆どいないだろう。樹はたかがB級クラスの妖怪。イチガキが驚くのは無理はない。



樹(俺の力では王に傷をつける事は出来ない。だが…)



樹はイチガキの問い掛けには答えず、王に視線を向けて、何かを待つ。



樹(王の技の正体を見極めねば俺達に勝ち目はない)


グググ……



王の両サイドに倒れていた臥竜と瀬流が、王に貫かれた腹部を抑えながらゆっくりと立ち上がる。



その時だった。



最強の技を使い、戦いの形勢が逆転しつつあったこの時、王が次の行動を起こした。



バチバチバチ



王の身体に凄まじいエナジーが走る。



王「ウラァァァァァ!!」



ピカーーーーーーーーー



王の身体が白く光る。



そして。



ドーーーーーン!!!!



王は魔光気の力を使い、
身体から強い衝撃波を放った。



樹「あれを受けるのは少しまずいな」



ガシッ



イチガキ「ぬぉ!?」



イチガキの手を掴む。



樹「イチガキ、離すなよ」



ズズズ……



危険を察知した樹は素早くイチガキの手を取ると別空間に姿を隠した。



臥竜「ウォッ!?」



瀬流「グァッ!!?」



立ち上がったばかりで、
まだ態勢が整っていない二人の身体を衝撃波で吹き飛ばした。



ズシャッ!!!!!



吹き飛ばされた二人の身体は地面に叩きつけられた。


ズズズ……



樹が別空間からイチガキを連れて戻って来た。



イチガキ「全く、ヒヤヒヤしたぞ」



樹「俺達も油断は全く出来ない」



そう言うと樹は王の衝撃波を受けて倒れている実験体達に視線を向けた。



瀬流「チッ…」



瀬流は上半身を起こすと視線を臥竜に向けた。



瀬流「…流石はこの世界で最強と言われているだけはあるな」



臥竜「ああ…、奴を倒すには、あの得体のしれない技の正体を見極める必要がある」



瀬流が見た臥竜の目は何かを考えてる様だった。



瀬流「…臥竜、何かあるのか?」



臥竜は瀬流の言葉に頷くと樹の策を小声で話した。



瀬流「…分かった」



瀬流は立ち上がると
両手に炎を作り出した。



そして臥竜も拳に妖気を込める。



臥竜「行くぞ瀬流」



瀬流「ああ」



互いの目を見る二人。



臥竜(我々に王の意識を強く向けさせなければ)



樹が臥竜に授けた策は王の意識を二人に向けさせる事。それだけだった。



ダッ!



二人はゆっくりと駆け出した。



駆け出した二人の後ろ姿を見ながら樹は考える。



樹(…分身体の姿が見えない第三者が本体である王に攻撃をしたら一体どうなるのか…。王の意識をしっかりと引きつけるんだ臥竜、瀬流)



二人は王の意識を自分達に向けさせるためにゆっくりとした単調な動きをしていた。



王(さっきの腹のダメージが残っているのか?動きが遅くなっているな)



王の意識は二人に向いていっていた。



(ニヤッ)
王「お前らは回復能力があるとはいえ今度は致命傷となる傷を受ける事を覚悟しろよ」



ブォォォォォ!!!!!



王の身体から魔光気が二人に向けて放出された。



樹(ピクッ)



樹はここで何かに気付く。


樹(…まてよ、確か王はさっきもあの技を使う直前に魔光気を放出していたな……)



ブォォォォォ!!!!!



王の身体から放出された魔光気の光は瀬流と臥竜を包み込んでいく。



樹(王はこの戦いの中で何度も攻撃的な魔光気を放出しているが、あの技を使う時、俺やイチガキには魔光気の光が届かないようにしている)



王の魔光気は先程と同様に瀬流と臥竜の気脈に流れ込んでいく。



樹(そう。俺にはまるであの二人にだけ焦点を合わせて放出している様に見える)



王(………)



瀬流「出てきたな」



二人の前に王の分身体が姿を現した。



臥竜(今だ)



臥竜は素早く頭に巻いてるバンダナを取った。樹に分身体が現れた事を知らせる為だ。



イチガキ「臥竜の奴、一体何の真似じゃ?」



樹「俺への合図だ」



イチガキ「合図?」



樹は何かを狙う素振りを見せた。



臥竜「仕掛けるぞ瀬流」

(樹様、頼みます)



瀬流「おう!」



二人は分身体に向かって同時に攻撃を仕掛けた。



だが、二人の攻撃は先程と同じ様に分身体の身体をすり抜ける。



王(………)



分身体は瀬流に攻撃を仕掛けるべく動き始めた。



この時、本体である王は瀬流と臥竜に完全に意識を向けていたのだった。



樹(今だ)



ここで樹が動いた。



樹「行け、影の手よ」



フッ



樹の命令を聞いた二つの影の手は、一瞬で姿を消した。



王の分身体は瀬流の腹部に向かって拳を放つ直前だ。


その時だった。



フッ



空間の中から二本の影の手が王の本体の頭上に姿を現した。



グォォォォォ!!!!!



影の手が王に向けて攻撃を仕掛けた。



王(!?)



ドガァァァァァ!!!!



不意をつかれた事で、素早い動きもままならない王は影の手の攻撃を頭部にまともに受けてしまった。



王(………)



イチガキ「駄目じゃ、全くダメージを与えておらん…」



その言葉の通り、樹の攻撃は王にダメージを全く与えていなかった。



だが、次の瞬間。



シュゥゥゥゥゥ………



王の分身体が突然、その姿を消したのだった。



瀬流「き、消えた…」



臥竜《樹様、樹様……》



臥竜は直ぐに分身体が消えた事を念信で樹に伝えた。


樹(消えたか……)



樹は頭の中で王の技について考える。



そして一つの結論にたどり着いた。



樹(なるほど、読めたぞ。王の技の正体が)



ボォォォォォ………!!!


王は二つの影の手を魔光気で消し去った



王(闇撫の樹か…)



樹に視線を向ける。



その視線に気付いた樹は鋭い視線で王を見る。



ここで両雄の目が合う。



樹「どうやっているのかは知らないが、
魔光気に己の意識を移し、気を放出させる事により、相手の気脈に入り込み、
そこから相手の脳の神経を操作し相手に幻影を見せる。それが臥竜達が見たお前の分身体の正体だ」



王(………)



王は黙って樹の話しを聞いている。



樹「神経を操作されて見せられている幻影から攻撃を受ける事で脳がそれをダメージとして認識し、本来あるはずがない傷が現実に浮かび出てくる」



瀬流・臥竜・イチガキ(!!)


イチガキ「そんな!?
幻覚で受けた事を現実に持ってくるなんて真似が出来るなんて信じられん!」



瀬流「しかし奴は樹様の攻撃を受けても、ダメージはなかった筈なのに何故急に分身体が消えたんだ!?」


その瀬流の疑問に樹が答える。



樹「簡単な話しだ。俺の攻撃を受けた事で二人の意識を操作していた王の集中力が切れた。只それだけの事さ」



樹は腕を組んで、
「当たっているだろう?」と王に言わんばかりの不敵な笑みを浮かべる。



樹の挑戦的な顔を見て、
王がここで口を開いた。



王「…フゥ〜、たかがB級妖怪と思って油断していたな。大した男だ。だが、俺の技の秘密が分かったと言っても俺の技を完全に攻略したとは言えないぜ」



王の表情にはまだ余裕が感じられる。



ザッ



王の目の前に臥竜が立つ。


(ニヤッ)
臥竜「奴が放出する魔光気が技の正体だと分かっただけで大収穫です」



臥竜はそう言うと頭に外していたバンダナを巻き付けた。



臥竜(俺の命に代えてでも王の魔光気を封じてやる。そうすれば王はあの技が使えなくなる筈だ)



臥竜が化粧使いとしての力をここで発揮しようとしていたのだった。



続く
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