幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――亜空間



臥竜(俺の命に代えてでも王の魔光気を封じてやる。そうすれば王はあの技が使えなくなる筈だ)



スッ



臥竜は素早く両手に筆を持って構えた。



その動きを王は目で追う。


王(あれは俺の動きを封じた筆…。一応、注意しておく必要があるな)



樹は臥竜が再び筆を取り出したのを見て考える。



樹(王の動きを既に封じている状態で、臥竜が再び筆を取り出したという事は別の何かを封じるという事か。考えられるとしたら魔光気の封印…)



《臥竜!!》



臥竜《瀬流か》



王の前に立つ臥竜に瀬流が念信で語しかけてきた。



瀬流《筆を再び取り出したのは、奴に化粧を施すつもりか?》



瀬流の問い掛けに臥竜は答える。



臥竜《そうだ。王の魔光気を封じる》



瀬流(!?)



臥竜の言葉に驚く瀬流。



瀬流《お前の化粧は霊気や妖気だけでなく魔光気も封じられるのか?》



臥竜《ああ。気なら封じる事が可能だ。樹様が暴いてくれた王のあの技は魔光気を封じ込めれば使えない》


瀬流《しかし奴はお前の化粧によって動きを封じられている。筆を持ったお前を警戒する筈だ。簡単にお前の接近を許さないだろう。奴のあの技はどう対処するつもりだ?》



臥竜《そこでだ瀬流、王に化粧を施す為にお前にも協力してもらいたい》



瀬流《分かった。それで
俺は何をすればいい?》



臥竜《俺が動く時、お前も一緒に動いてくれ。そして王に攻撃を仕掛けると見せかけておいて、お前は
王の魔光気の影響を受けない場所にお移動し、そこから王に向かって炎で攻撃をしてくれ》



瀬流《なるほど、お前の考えは分かった。俺が遠隔攻撃をする事によって、
王がお前に向けている意識を俺に向けるという事だな》



臥竜《そういう事だ。俺が化粧を王に施す為には接近しないといけない。その為には俺は確実に王の魔光気を身体に受ける事になる。俺の前には分身体が現れるだろうが、瀬流の攻撃が上手くいきさえすれば分身体は消える筈だ》



(ニッ)
瀬流《お前の前に現れた分身体は俺が消してやる。
任せておけ》



臥竜《瀬流、頼むぞ》



そして臥竜は瀬流との念信を断つと、鋭い眼孔を王に向けて大きな声で叫んだ。


臥竜「行くぞ王」



王「来い」



ダッ!!!!!



臥竜は王に向かって駆け出した。



瀬流(………)



そして瀬流も臥竜が動くのを確認すると、王に向かって駆け出した。



王「技の正体がお前達にばれても、俺の技は防げないぜ」



ブォォォォォ!!!!!



王は身体から魔光気を放出した。



バッ!!



瀬流は、素早く後ろにジャンプして王から距離を取った。



王は瀬流の動きを目で追いかける。



放出した王の魔光気の光は臥竜を包み込み、気脈に入っていく。



瀬流「ハァァァァァ!!!!!!」



ボォォォォォ!!!!!



瀬流は両手に炎の輪を作り出した。



気脈に取り込んだ魔光気が見せる幻覚。臥竜の前に
分身体が姿を現す。



王(………)



臥竜「出てきたな」

(俺の攻撃は幻影である分身体には一切通用しない。そして分身体が仕掛けた攻撃を俺が防御しても、幻覚であるために、分身体は俺の防御もすり抜けて俺の身体を攻撃する。王に接近するには瀬流の攻撃に全てがかかっている)



瀬流「くらえーー!!」



瀬流がここで臥竜の策に従い攻撃を開始した。



本体の王に向かって二本の炎の輪を投げる。



ボォォォォォ!!!!!



二本の炎の輪が地面を転がり、王に向かって行く。



(ニヤッ)
王「技の秘密が分かったらお前達は必ずそうくるだろうと思っていたぜ」



意識を臥竜に向けたまま、王は、瀬流の攻撃に備える。



ボォォォォォォ!!!!!


迫って来る二つの炎の輪。


そして。



ドゴォォォォォ!!!!!


王の身体に直撃した。



イチガキ「オォォォ!!!直撃しおったぞ。瀬流め、やりおった」



はしゃぐイチガキとは対称的に樹はいたって冷静に状況を分析する。



樹「いや、大してダメージは受けていない」



イチガキ「な、なんじゃと!!?」



王は二手に分かれて攻撃してくるのをあらかじめ予測していたのか、魔光気を臥竜に向かって放出すると同時に自らの防御力を高めていた。



瀬流「王め、俺達の行動を読んでいたな!!」



瀬流が悔しげな表情を見せる。



その時だった。



ドゴォォォォォ!!!!!


大きな鈍い音が亜空間の中に響き渡る。



瀬流「臥竜!?」



魔光気が気脈に入っていない瀬流は王の分身体の姿を見る事が出来ないが、
臥竜の腹部に分身体の強烈な一撃が入っているのは直ぐに分かった。



ズボォォォォ!!!!!



分身体の拳は臥竜の腹部を先程と同じ様に突き破った。



臥竜「ガッ……!!?」



口から大量の血を吐き出す。



王「さっき俺が腹を突き破った時より、こっちの方が効いているはずだ」



ドサッ



臥竜の身体は崩れるようにその場に倒れた。



王は臥竜が倒れたのを確認すると分身体を消し去ったのだった。



グニュルルル……



臥竜の空いた腹部の穴が
再生能力によって徐々に塞がれ始めた。



王(奴らは何度も傷口を再生出来るとはいえ、身体に受ける痛みと失った体力までは回復出来ない。長期戦になり、奴らが弱ってきたら二度と再生が出来ないように俺の魔光気で完全に消し去ってやる)



心の中で王が呟いたその時。



ガバッ



倒れた臥竜が素早く起き上がったのだった。



王(!?)



臥竜(………)



臥竜の目は何かを決意しているようだった。



瀬流「臥竜!」



ボォォォォォ!!!!!



瀬流は両手に炎を作り出して王に向かって駆け出した。



《瀬流……》



瀬流(!!)



突然頭の中に届いた念信に瀬流は足を止めた。



瀬流《臥竜!》



臥竜《来るな瀬流……。ここは俺に任せろ…》



瀬流《馬鹿を言うな。作戦が失敗した以上は一旦引いて態勢を立て直した方がいい。戻って来い》



臥竜《断る。……瀬流、
お前は手をだすなよ》



瀬流《おい臥……》



臥竜はここで強制的に瀬流との念信を切ると、筆を強く握り締めた。



そして鬼気迫る顔で王に接近していく。



瀬流「臥竜!!」



王「傷口を完全に回復させていない状態で向かって来るとは、何を考えているのか分からないが、俺としては有り難いぜ。今度は一撃で終わらせない。お前を完全に戦闘不能にしてやる」


ブォォォォォ!!!!!



臥竜に向かって魔光気を放出させた。



気脈に入っていく魔光気。


そして直ぐに分身体が王を守るように現れた。



臥竜「しゃあ!!」



両手に持つ筆を分身体に向けて振りかざした。



だが、臥竜の攻撃は分身体の身体をすり抜けてしまう。



臥竜(…………!!)



そして分身体が臥竜に攻撃を仕掛ける。



ドゴォォォォォ!!!!



その攻撃は臥竜の胸を突き破った。



臥竜「ガハッ……!」



口から血を吐き出した。



しかし臥竜はまだ倒れない。



貫かれた胸からは大量の血液が地面に落ちていく。
だが臥竜は前に進む。
一歩、一歩、王に向かって。



王(大した精神力だな)



今までは相手に一撃を放つ度に消えていた分身体であったが、王は先程の言葉通り、分身体を消さない。臥竜に連続攻撃をする為だ。


ビューーン!!!!!



王(連続での動きは魔光気の消耗が激しい。だが、
ここでこいつを仕留めれば奴にかけられた呪縛が解ける。そうすればもう一人(瀬流)を片付けるのも簡単だ)



ズボォォォォォ!!!!



拳は臥竜の腹部を突き破る。



そして分身体は臥竜の背後に回り込むと両手に魔光気を蓄積させた。



樹「あれはまずいぞ」



瀬流「臥竜ォォォォォーー!!」



ビューーン!!!!!



分身体の強烈な一撃が臥竜の背中に向けて放たれた。


ズバァァァァァ!!!!



樹・イチガキ・瀬流(!!?)


背中に分身体の攻撃を受けた臥竜の身体は腰から真っ二つに千切れた。



この瞬間、分身体は姿を消した。



王(ハァ…ハァ…)



分身体を使っての連続攻撃は魔光気の消耗が激しい為、王の顔に疲労が見える。


千切れた臥竜の下半身は地面に倒れて大量の血液が流れる。



そしてその血液は王の足下にまで流れていっていた。


臥竜「ウォォォォォ!!!!!!」



王(!?)



臥竜は上半身だけとなりながらも攻撃を受けた時の衝撃を利用して王に襲いかかってきた。



その両手にはしっかりと筆が握られている。



臥竜「貰ったァァァァ!!!!!」



王「恐ろしい執念だ。大戦の時でもここまでしつこい奴はいなかった」



ブォォォォォ!!!!!



王の身体を魔光気の光が包み込む。



王「ウォラァァァァァ!!!」



ドーーーーン!!!!!



王の身体から放出された魔光気が大気の刃となり臥竜に襲いかかる。



ザシュッ!!



大気の刃は臥竜の両腕を切断した。



臥竜「ウガァ……」



だが臥竜は最後の力を振り絞り身体を左右に振って、切断された両手から流れる血を王に浴びせる。



王の身体に臥竜の血がかかる。



臥竜(ニヤッ)



不敵な笑みを王に見せる。


そして。



ドサッ



地面に臥竜の上半身が落ちた。



王の足下には臥竜の下半身から流れた血で水溜まりが出来ていた。



王は足下に倒れている臥竜に語りかける。



王「大した執念だったが惜しかったな。お前の筆は俺に届かなかった」



(ニッ)
臥竜「クックック、確かに俺の筆はお前に届かなかった。だが、俺の目的は達せられた。お前は俺の筆には強い警戒を示していたが、俺が浴びせた血には無頓着だったな……」



臥竜の言葉を聞いた王はハッとなり、直ぐに身体に付着した血を見る。



王「こ、これは…」



臥竜の返り血を身体に浴びた王に異変が起きた。



なんと臥竜の化粧が身体に施されていたのだ。



臥竜「時縛封呪の粧。化粧の正体は俺の血さ……。この化粧は時間が立つに連れて相手の気を使えなくしていく……」



王「貴様ァァァァァ!!!」


ドーーーン



怒った王が放った巨大な魔光気は臥竜の身体を包み込んでいく。



イチガキ「マ、マズいぞ!!消滅させられたら再生出来ん!」



樹「化粧の効果がまだ効いていない。王の魔光気は巨大なままか……」



臥竜を救うべく駆け出す瀬流。



瀬流(クソッ!間に合わない……!!)



瀬流が心の中で思ったその時だった。



フッ



一つの影が亜空間に現れた。



そして臥竜の前に立つ。



スッ



影は両手を前につき出して王の魔光気を押さえ込む。


「ハァァァァァ!!!!」



シュゥゥゥゥゥ………



王が放った魔光気は突然現れた強力な妖気の前に完全に消し去られてしまった。


王「…お前は何者だ…?」



王は目の前に現れた男に問い掛ける。



(キッ)
「私の名は梟。仲間が世話になったな」



臥竜の命を救ったのは、激しい戦いの末に雷蛾を倒したあの梟であった。



臥竜「……ふ、梟……」



瀕死の臥竜が梟を見る。



樹「あいつは一体!?」



樹は突然現れた梟を見ながら隣にいるイチガキに問い掛ける。



イチガキ「あやつの名は梟。ワシの作った実験体じゃ。あやつこそワシの最高傑作といえる男じゃ」



梟は右手を前につき出す。


すると大量の追跡爆弾がその姿を現した。



梟「お前の仲間の黒鵺は倒した。次はお前の番だ」



王(!?)



突然現れた梟。



王に最大の危機が迫る。



続く
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