幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜
□大会編03
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――亜空間
王が臥竜に止めを刺す為に放った魔光気。
その魔光気を消し去ったのは、雷蛾を倒してこの場に駆け付けた梟であった。
梟「お前の仲間の黒鵺は倒した。次はお前の番だ」
王(!?)
梟の言葉を聞いた王の顔色が見る見るうちに変わっていく。
王「お前が雷蛾を倒しただと!」
梟「そうだ。私の攻撃を受けた黒鵺は瀕死の状態となった。黒鵺の事は戸愚呂(兄)様に任せてきた。おそらく今頃は戸愚呂(兄)様の能力によって身体ごと喰われて死んでいる筈だ」
王(戸愚呂(兄)…、あいつか…)
王の脳裏に戸愚呂(兄)の顔がよぎる。
そして続いて雷蛾の顔が浮かんでくる。
王(雷蛾…)
王と雷蛾は大戦時代に出会い、共に共通の敵と戦った戦友である。
大戦後の雷蛾は王の護衛として忠実に仕え、そして友人でもあった。
そんな王は雷蛾の敗北を知り、かなりのショックを受けていた。
それを樹は見つめていた。
樹(流石に部下の敗北に精神的に動揺しているな)
樹「イチガキ、どうやら戸愚呂(兄)の方は首尾よくいったようだな」
イチガキ「ヒョヒョヒョ、そのようじゃな。お前さんの計画通りじゃ」
王(馬鹿野郎…。黎明に続いて雷蛾お前もかよ…。俺より先に逝くなよな)
沸々と王の中で強い怒りが湧いてくる。
樹(フッ、ここまで計画は上手くいっている。王の想像以上の強さには驚かされたが、臥竜が王に化粧を施し、さらに梟の登場で俺達の勝利が見えてきた)
梟「王よ、心配するな。
お前も直ぐに黒鵺の下へと送ってやるさ」
王「チッ、悲しんでいる状況ではないな。雷蛾、お前の敵は俺がとってやるぜ」
王は梟に強い殺意を見せた。。
臥竜「……ふ、梟……」
苦しそうな顔で梟の名を呼ぶ。
真っ二つになった臥竜の身体は徐々に再生はしているものの、王によって受けたダメージは相当なものであった。
梟に臥竜は王に施した動きを封じ込める化粧。そして時間が立つに連れて魔光気を使えなくする化粧を施した事を伝えた。
梟「フッ、上出来だ。臥竜、その身体ではもはや戦闘は無理だろう。後は私に任せておくがいい」
臥竜(ニヤッ)
臥竜は梟の言葉を聞くと安心したのか、直ぐに意識を失ったのだった。
瀬流「臥竜!!」
瀬流が気を失った臥竜の下へ駆け寄ってきた。
梟「瀬流、臥竜を連れて少し離れていろ。邪魔だ」
瀬流「邪魔だと!!ふざけるな!俺も戦う」
梟の言葉に怒る。
その瀬流を梟は威圧するような目で見る。
瀬流「むぅ……」
その眼光の鋭さに言葉に詰まる瀬流。
梟「さっさといけ。いいな…」
瀬流「ああ…」
瀬流は気を失っている臥竜を肩に担ぐとしぶしぶ梟から距離を取った。
梟「王よ、覚悟はいいな?行くぞ」
スッ
梟が手で合図すると、
大量の追跡爆弾達が王を取り囲む為に動き始めた。
王は追跡爆弾の動きを目で追いかける。
あっという間に追跡爆弾達は王を包囲した。
王「チッ、爆弾みたいな格好をした気味の悪い化け物だぜ」
王はチラッと臥竜に施された化粧を見た。
王(あいつは時間が経つにつれて俺の魔光気が使えなくなる化粧を施したと言ったな)
王はこの状況を打破する為に頭の中で考え始めた。
イチガキ「どれどれ、梟がこの場にやって来た事でワシらの勝つ確率はどう動いているか見てみるかのう」
イチガキは手に持つ装置を見る。
(ニヤリ)
イチガキ「臥竜がほぼ戦闘不能の状態にされたとはいえ、あやつは王の巨大な魔光気を徐々に封じ込めていく化粧を施す事に成功した。こっちには瀬流と新たに加わった梟がおる。戦況は大きく変わったはずじゃ」
ピピピッ!
音が鳴ると同時に装置に、勝率が表示された。
(ニヤッ)
イチガキ「91.3%か。約9割じゃ。ヒョヒョヒョ、これは愉快じゃわい」
数値の高さから勝利を確信して喜ぶ。
イチガキ「樹もこれを見てみるがいい」
装置に表示された数値を樹に見せようとする。
だが、樹は装置には目もくれず、只、王の目をジッと見つめている。
イチガキ「……??どうしたんじゃ樹?」
樹「あの王の目…」
イチガキ「王の目?」
樹の言葉を聞いて直ぐに王の顔を見るイチガキ。
イチガキ(何処か王の目に変わったとこがあるのか?ワシには同じに見える。
さっぱり分からん……)
樹(気になるのはあの目だ。あれは何かを仕掛けてくる者の目だ。王の魔光気は今ならこれまでと変わらずに使える筈。王の魔光気が完全に使えなくなるまで決して油断は出来ない」
この樹の予感は直ぐに現実となるのである。
そう、王がここで一気に勝負に出るからだ。
王(ニッ)
梟・瀬流(………!!)
樹(……何だ?この王から感じる重圧感は!?)
樹、梟、瀬流は王が発する只ならぬ気配を感じ取った。
梟「…行け、追跡爆弾!」
危険を察知した梟が動いた。
さらに数倍の数の追跡爆弾を作り出す。
包囲している追跡爆弾達に王に攻撃を仕掛けるべく指示を与える。
そして新たに作り出した追跡爆弾達にも攻撃命令を下す。
樹「……少しマズいな。
これは大きな爆発となる。イチガキ、俺の後ろにいろ」
イチガキ「う、うむ…」
イチガキは慌てて樹の後ろに隠れる。
樹は影の手を使い、小さな防御壁を作り出した。
ギィース
追跡爆弾達は不気味な声を発すると一斉に王に襲いかかる。
王(………!!!)
そして追跡爆弾達は王に接触。
カーーーーー!!!!!
ドガァァァァァン!!!!!!!!!!!!
王に突撃した追跡爆弾達が大爆発を起こした。
その爆発は亜空間内全てを包み込む様な破壊力であった。
イチガキ「やれやれ……」
樹の後ろから顔を出すイチガキ。
樹「しかし派手な攻撃を仕掛ける男だな…。俺が防御壁を張らねば俺もイチガキも只ではすまなかったぞ」
イチガキ「梟は戦闘力ではワシが作り出した実験体の中でも最高傑作じゃが、
そのあまりにも高い力ゆえか、臥竜や瀬流の様に完全に制御は出来ておらん。主であるワシらの命令は聞くようだが、ワシらの身を気にかけたり、守る事はせん」
樹「まだまだ改良の余地はありそうだな…」
(だが、梟の臥竜、そして瀬流に対する態度。あの様子を見た限りでは同じ実験体同士に対しては仲間意識が強いようだ)
イチガキ「梟は王を倒したら、また調整をするつもりじゃ」
樹「それならいいが。自分が作り出した者に逆に牙を向けられないように気をつけるんだな」
イチガキ「ヒョヒョヒョ、天才のワシがそんなヘマをするわけがなかろう。
しかし樹、今の梟の爆撃で王は倒せたのではないか?殆ど動けない王はまともに今の攻撃を受けたぞ」
樹「そうだといいが…」
煙が辺り一面に漂っている。
梟は王が立っていた場所を見つめていた。煙によって王の姿は完全に包まれている。
梟(今の攻撃では倒せていない。だが、追跡爆弾は確実に王に直撃している。かなりのダメージは受けている筈だ)
ブォォォォォ!!!!!!!!!!!!
煙の向こうから王の巨大な魔光気が放出され始めた。
煙は魔光気によって一瞬で吹き飛ぶ。
消え去った煙の後から王が姿を現す。
樹「やはり生きていたか」
イチガキ「殆ど動けない状態でありながら、
あの梟の爆撃を耐えよったぞ!!?」
王「フゥ〜」
爆撃によって、王が身に纏っている甲冑のいたるところが破損していた。
甲冑が破損した為、
王が首にかけている首飾りが見え隠れする。
樹(あれは……)
樹は王の首飾りにはめ込まれている虹色の輝く玉に目が釘付けとなる。
樹(間違いない。あの首飾りにはめ込まれている玉こそ、俺が求めている秘宝・星の宝玉!)
(ニッ)
王「結構、効いたぜ。
今のはかなりヤバかった。だが、耐えたぜ」
王が放出している魔光気に瀬流が反応。
瀬流「この放出系の魔光気は!?あの技がくる!
梟、王の魔光気に触れるのはマズイ。距離を取るんだ」
梟「あの技?」
王「遅いぜ。
ウォラァァァァァァ!!!!!」
ブォォォォォ!!!!!
!!!!!!!
王の身体から一気に魔光気が放出された。
それはこれまで王が放出していた魔光気を遥かに上回る凄まじい気だ。
梟、瀬流に避ける暇を与えない速さで放出された魔光気は亜空間内全てを包み込んでいく勢いだ。
梟「…巨大な魔光気だ。私が倒した黒鵺の魔光気を遥かに上回っている」
王「ウォォォォォ!!!!!!!」
そして光は梟、瀬流の気脈に次から次へと入っていく。
梟「これは一体!」
王の技を未見の梟は驚く。
瀬流「梟、この技こそ俺や臥竜が苦戦してきた王の技だ。実体を持つ分身体が攻撃して来る!だが、これはさっきまで王が放出してきた魔光気の量と比べても桁違いに多い!!一体どういう事だ」
王「魔光気が使える時間が俺にはあまりない。時間がないなら使えるうちに俺の力の全てを出し尽くしてやるまでだ」
樹、イチガキの気脈にも王の魔光気が入り込んでいく。
樹「むっ!?」
イチガキ「な、なんじゃこの感覚は!!!」
初めて感じる感覚に戸惑う二人。
そして気脈に王の魔光気を取り込んだ四人。
その四人それぞれに王の分身体が姿を現す。
梟・瀬流・樹・イチガキ「!!!!!!?」
予想外の出来事に驚きを隠せない。
梟(………!!?)
瀬流「分身体が四体も!?」
イチガキ「アワワワワ!!!!!!」
慌てたイチガキの手から装置が地面に落ちる。
ピピピ!
落ちた衝撃で装置が起動。今の樹達の勝率が表示される。
その表示は42.2%。
イチガキ「九割以上あった数値が約四割に……!?」
王「俺の大半の魔光気を拳に込めた最強の一撃。お前達全員、粉々に砕けて死ぬがいい」
王の言葉の後に同時に四体の分身体はゆっくりと動き出す。
樹(王………!!)
王は静かな口調で樹に語る。
王「樹、俺はこの戦いで大きなミスを犯していたよ。まずはお前から消すべきだった」
樹「このままではまずい!!皐月!!!俺とイチガキをこの場から連れ去れ!!」
樹は大声でこの場にいない皐月に呼びかける。
皐月「樹!!」
皐月の半身が亜空間内に現れる。
王「遅い!!!」
魔光気が使えなくなる前に持てる力の全てを分身体が放つ一撃に込めた王。
ビューーン!!!!
樹(…………!!!?)
王の放つ最大の攻撃が樹達に襲い掛かる。
王の魔光気を気脈に取り込んでいない皐月は分身体の姿を見る事は出来ない。
だが、樹に命に関わる危険が迫っている事は亜空間内に立ち込める常軌を逸した力から容易に理解出来た。
皐月「樹ィィィィィ!!!!!!」
皐月の絶叫が亜空間内に響いた。
続く