幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――亜空間



王(……俺には時間がない。だが、やるしかない!)


向かって来る追跡爆弾を見つめながら集中する。



王「行くぜ」



ピカーーー!!!



両手に蓄積させていた魔光気が強い光を放つ。



そして光が消えると王の両手の拳には魔光気の塊が出来ていた。



樹「あれは魔光気を拳に溜めた打撃技か」



王「ウォォォォ!!!!」



ズキューーン!!!



王は襲いかかる大量の追跡爆弾に自分から向かって駆け出した。



王「魔光撃ィィィィ!!!!!!!」



ズドドドドド!!!!!



高速で繰り出される拳によって追跡爆弾は爆発する間もなく次々と破壊されていく。



王「今の俺にもうこの技は通用しない」



梟「チッ…」



舌打ちする梟。



王「くらえーーー!!!」



大半の追跡爆弾を破壊した王は梟に迫って行く。



ビューーン!!!



左の強烈なストレートを梟の顔面を目掛けて放った。


だが、王の攻撃は梟には通用しなかった。



ガシッ



王の拳を右手で受け止める。



梟「甘い!!」



ギュッと受け止めた拳を握り締める。



梟「私にこの程度の攻撃が通用すると思ったか」



梟の言葉に首を軽く横に振る。



(ニヤッ)
王「いや、思わないな」



王は左手を梟に受け止められた状態のまま、素早く右手を少し後ろに下げた。



瀬流「あれは!!」



さっきまで王と戦っていた瀬流は王の次の攻撃が何か察知した。



王「受け止められるとは分かっていた。俺の狙いはこっちだ」



王は梟の腹部に視線を移すと右手を腹部に向けて突き出した。



梟(!?)



王「魔光連弾!!」



ドドドドドドドドドド!!!!!!!



王の右手からマシンガンの様に小さな魔光気の弾が放たれた。



瀬流との戦いで見せたあの技である。



梟「グォォォォォ……!!!!!」



予想外の王の攻撃によって次々と腹部に弾がヒットしていく。



梟は攻撃を受けた衝撃で、受け止めていた王の左の拳を離してしまった。



王は左手が自由になった瞬間、次の攻撃に出る。



王「ウォォォォォ!!!!」


ビューーン!!!!



梟の顔面に左のストレートが今度はヒット。



梟「グァァァァ!!!」



ドシャッ!!!



梟の身体は大きく吹き飛び、強く地面に叩きつけられたのだった。



その拍子に梟のマスクが外れた。



樹(………!!!)



イチガキ「梟!!」



瀬流「くっ、やはり強い…」


王は樹達の方を向いて言い放つ。



王「悪いな、身体が自由に動ければ俺は最強だ」



樹(……分からない。何故、王はあの状態からあそこまで復活する事が出来たのだ)



梟「面白い」



ゆっくりと立ち上がる。



王(まだもう一人(瀬流)残っている。こいつに時間をあまり削くわけにはいかない)



梟(ニヤッ)



王「何がおかしい」



梟「クックック、私の力の全てを使って倒したいと思う相手にようやく出会えた」



満足そうな顔で両手を前に出して構える。



そして。



ブォォォォォ!!!!!



王「奴の妖気がどんどん上がっていく!?」




梟「クックック」



ズズズズズ



妖気が急激に上昇すると共に髪の毛の色が見る見るうちに金髪に変化していく。


樹「梟の髪が!?」



梟の髪の毛の色が変化した事に驚く。



イチガキ「あれは梟が本気を出したんじゃ」



主であるイチガキが直ぐに樹に説明した。



王「他の奴ら(臥竜と瀬流)より数段上とは思っていたが、想像以上だな…。これはとんでもない妖気だ。さっきまでとはまるで別人だぜ」

(雷蛾を倒したというのも納得いくな…)



イチガキ「ヒョヒョヒョ、これから放つ技こそ梟の最強の技じゃ!!」



梟「こおおお」



口から体内に火気物質を集め始めた。



バチバチバチ



梟の両手に凄まじいまでの妖気が蓄積されている。



その両手が起爆装置となるのだ。



王「だが、いかに巨大な敵でも俺は負けないぜ。
それに力は俺の方がお前より上だ。この世界の為に俺はまだまだ死ぬない」



樹「戦いの中で何度も見せている王の生に対する強い執念。あれは恐らく桑原を手に入れた後に待ち構えている戦いの為にまだ死ねないという気持ちのあらわれなのだろうな」



皐月「そうだろうね。彼らの目的を達成させる為の戦いには王の力は必要不可欠だしね」



ブォォォォォ!!!!!



梟の妖気がさらに大きくなっていっていた。



王は軽く息を吐くと、梟の目を見た。



梟(………)



二人の目が合う。



王(今から大量の魔光気を消耗する事で俺に残された時間が一気になくなってしまうかもしれない…)



王の脳裏に謎の女性から聞いた言葉が再びよぎる。



――王の回想



《あなたの願い通り力は殆ど戻っているはずです。ですが、あなたの肉体は死んでいたも同然の状態でした。それをずっと維持させるのは私でも不可能です。その為、あなたの戻った力は一時的なもの。時間が経てば再び瀕死の状態に戻る事でしょう》



王(そうか…。時間にしたらそれはどのぐらいだ)



《およそ30分》



王(充分だ。余裕で奴らを倒してここから抜け出してやる)



《これは忘れないで下さい。あなたの力は巨大過ぎます。その力を使えば身体にかかる負担も計り知れません。力を使えば使うほど、残された時間も減っていくことを…》



王(分かったぜ。お前が誰か分からないが感謝するぜ)



謎の声の口調が変わった。


《私に出来る事はこれだけ。祐一、死なないで…》



王(お前はまさか…、あ、ありえないぜ)



《この戦いに勝って祐一の悲願を叶えて》



ここで謎の声は途絶えた。



王(………)



――王の回想・終



王「見た感じ、今から仕掛ける技がお前の最強の技なんだろうな」



王の言葉に梟は不敵な笑みを浮かべる。



梟「フッ、正解だ。私はこの攻撃でお前を確実に殺す。粉々にしてな」




王「俺もいっきに最強の技で勝負を決めさせてもらうぜ」



梟「臨むところだ」



お互いに真剣な目だ。



王はチラッと樹達を見る。


王(樹と女とクソジジイを倒すのは簡単だが、あの実験体が少し面倒だな。数体の分身体で、さっきのように樹達を攻撃する事は簡単だ。だが、分散する事で俺の攻撃力は減ってしまう)


皐月「やはり感じ取れる力は王の方が上か…。
樹はこの勝負はどちらが勝つと思う?」



樹「フッ、勝負か…」



皐月の問い掛けに樹は目を瞑って口元を少し緩める。


樹「王が復活してしまったのは本当に大きな計算外だ。王の力を封じる能力を持つ臥竜が既に戦闘不能になったいま、悔しいが梟が勝たねば残された戦力では俺達に勝ち目はない」



皐月(ゴクリ)



瀬流(樹様の言われる通り、梟が敗れれば俺達に勝ち目はない。俺では王に勝てない)



イチガキ「ワシの頭脳によって生まれた梟。お前はまさにワシにとって研究の集大成ともいえる存在。ワシの頭脳が最強と呼ばれる男を倒す時がきたのじゃ」



王は再び視線を梟に戻す。


梟の妖気は既に全力ともいえる状態にまで高まっていた。



王(フッ、出来れば樹達もまとめて倒したいとこだが、こいつの妖気がそうさせてはくれないぜ)



王は肩の力を抜いた。そして亜空間に響く大きな声
で叫ぶ。



王「お前らには俺の最強の技の名を教えていなかったな。教えてやるよ」



ブォォォォォォ!!!!!


王の身体から凄まじいまでの魔光気が放出された。



瀬流「あの技か!」



王「そうだ!!何度もお前達に見せたあの技だ!」

(この男を確実に一撃で粉々にするには力の大半を拳に集中して攻撃するしかない)



梟の気脈に次々と入っていく王の魔光気。



そして梟の前に王の分身体が姿を現した。



樹「お互いに最強の技での勝負。戦いは一瞬で決着がつく」



王「俺の生まれた世界であるこの神夢界。その名を付けた俺の技を受けてみろ!!!」



梟「私の身体にある全ての妖気を限界点まで高めた。死ぬのはお前だ王!!」



ダン!!



梟は飛び上がると素早く本体である王に向かって行く。



梟「ククク、死ね!!」



王「雷蛾の仇をとらせてもらうぜ!」



そして分身体も梟に向かって駆け出す。



梟「肢体爆弾(リンボム)ゥゥゥゥゥ!!!!!!!」



王「神夢界ィィィィィ!!!!!!!」



起爆装置である梟の両手が本体である王の身体に触れるのが先なのか?それとも王の分身体が梟を粉々にするのが先なのか?



壮絶な戦いとなった王と樹達の死闘。



それがついに終幕を迎えようとしていた。



続く
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