幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜
□大会編０３
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――魔界統一トーナメントAブロックの三回戦･第一試
時雨(しぐれ)
×
桑原(くわばら)
――Aブロック
師弟対決は剣と剣の激しい戦いに突入していた。
桑原｢ウォォォォォ！！！！！！！｣
ビューーー！！！！！
時雨の肩を狙って試しの剣を振り下ろす。
時雨｢何の！！｣
時雨は燐火円磔刀で応戦。
ガキーーン！！！！
難なく試しの剣を弾く。
時雨｢ハァァァァァ！！！｣
ビューー！！！！！
弾くと直ぐに燐火円磔刀で桑原の腹部を狙った。
桑原｢させるかよ！！！｣
ガキーーン！！！！！
桑原も時雨の攻撃を弾く。
桑原･時雨｢ウォォォォ！！！！｣
ビュー！！！！
今度は同時にお互いの獲物が繰り出される。
そして。
ガッ！！！
試しの剣と燐火円磔刀が絡みあった状態で止まった。
桑原｢ダリャァァァァ！！！！｣
グググ……
桑原は試しの剣に力を込めて燐火円磔刀を押し込む。
時雨｢ぬぅぅぅ！！！｣
ズズズ……
桑原の力によって後ずさる。
しかし時雨も負けてはいない。
時雨｢拙者を押し込もうなどと甘いわ！！｣
グググ……
時雨も直ぐに押し返す。
桑原｢ヌォッ！！？｣
今度は桑原が後ずさる。
この繰り返しが暫くの間続いたのだった。
――メイン会場
雪菜｢和真さん、時雨さん｣
祈るような目で二人の戦いを見つめていた。
――Aブロック
桑原･時雨(………)
動かない勝負を中断すべく、二人はお互いに目で合図した。
二人は絡み合う剣を離した。
桑原(ハァハァハァ…)
疲労の為か桑原は肩で息をしている。
時雨｢仕切り直しといくか｣
桑原｢お、おうよ！｣
バッ！
バックジャンプして少し距離を取ると獲物を握り締めて構える二人。
――選手達の休憩場
躯｢武威との一戦で見せた力を存分に発揮すれば桑原が勝つのは間違いない。
だが、桑原が力をあまり使いこなせていない今の状態では、戦いの経験面で大きく勝る時雨の方が有利だ｣
――Aブロック
桑原が次元刀で斬った時雨の傷を見る桑原。
桑原(俺より傷が大きい筈なのに全く動きが変わらねーばかりか、逆に良くなってきている。どうなってんだ…)
時雨は桑原の次元刀によって桑原以上に大きなダメージを受けているのもかかわらず、それを全く感じさせない戦いぶりを見せていた。
それは全て弟子である桑原の為であった。
時雨の強い精神力が肉体の限界を越えているのだ。
桑原(それに引きかえ、俺の方はやっぱ消耗が激しいぜ。あの技で結構霊気を使った影響が身体に出まくりだぜ)
時雨｢来い桑原！！！！｣
時雨の声が闘場に響き渡る。
桑原(時雨、おめーに勝つのが俺の目標だ。やるしかねー！)
ズキューーン！！！
桑原｢行くぜ時雨ェェェェ！！！！！｣
時雨に向かって桑原は駆け出した。
ガキーーン！！！！！
時雨との激しい剣でのぶつかり合いが再開された。
二人の剣での戦いはいつ終わるのか全く分からないほど続いた。
――選手達の休憩場
スクリーンに映る二人の様子をどこか楽しそうに躯は見ていた。
躯｢フッ、時雨の奴、試合をしているというよりはまるで桑原に稽古をつけてやっているみたいだ｣
――Aブロック
チッ！
燐火円磔刀が桑原の腹部を浅く斬った。
桑原｢うっ！｣
桑原の態勢がほんの僅かだがここで崩れる。
時雨(………)
時雨は桑原に生じた僅かのスキを見逃さない。
ビューー！！！！！！
時雨の渾身の一撃が桑原の頭部を狙って振り下ろされた。
桑原(！？)
ガシッ！！！
間一髪、試しの剣で刃を受け止めた。
桑原｢今のはちょっとヤバかったぜ……｣
時雨｢ならばもっとヤバくしてやろう！！！｣
グググ……
時雨はさらに力を込めて押し込もうとする。
桑原｢ウォッ！！？｣
ズズズ……
下半身に強い力を込めて、なんとか踏みとどまった。
桑原｢ヌォォォォ！！｣
これ以上、時雨に押し込まれるのを堪える。
時雨｢隠していても分かる。消耗しているな。さっきの技で霊気を大きく使った影響だろう。動きがだんだん悪くなってきているぞ｣
桑原(時雨、気付いていやがったか…)
時雨｢そんな事でどうする！武威を倒した時のあの力はどうした？もっと拙者にぶつけてみろ！お前はその程度か桑原！！｣
桑原(！！)
桑原は時雨の言葉に強く反応した。
ブォォォォォ！！！！！
桑原の霊気が急激に高まる。
桑原｢負けねーぞ！！！｣
時雨(さぁ、お前の力を見せろ桑原！！)
桑原｢ウォォォォ！！！｣
ガキーーン！！！
時雨｢ぐっ！！｣
押し込まれつつあった桑原であったが、瞬間的に爆発させた力で燐火円磔刀を弾いた。
腕が一瞬痺れるほど、桑原の強い力が伝わる
時雨(いいぞ！そうだ。その力だ桑原)
師弟対決はもうすぐクライマックスを迎える。
――Dブロック
ボン！ボン！ボン！
妖狐･蔵馬の左肩、胸部、腰がエンドレス･ボムによって爆発する。
妖狐･蔵馬(ハァハァハァ………)
(ニヤッ)
梟｢クックック、
よく持ちこたえているな。だが、出血が酷い。そろそろ目が霞んでくるはずだ。お前がいつまで立っていられるか楽しみだ。見えない爆弾にせいぜい恐怖するんだな｣
妖狐･蔵馬(クソッ…！)
妖気の力の差が梟と大きく開く今の妖狐･蔵馬には梟の爆弾を目で見る事が出来なかった。
梟｢蔵馬、このまま終わるのはつまらないぞ。わざわざ殺傷力を抑えてやっているんだ。少しは足掻いてくれないと私としてはもの足りない｣
――選手達の休憩場
幽助｢くっ！まずいぜ。蔵馬の妖気がどんどん小さくなっちまってる｣
飛影｢蔵馬の事だ。何か状況を変える策を考える筈だ｣
幽助｢…蔵馬、あんな野郎にぜってーに負けるんじゃねーぞ！！｣
――Dブロック
妖狐･蔵馬はガクガクと震える自分の足を見る。
妖狐･蔵馬(戦いで足が震えるなんてことは初めてだ……)
梟｢フッ、私が怖いか？
命ごいをしてみろ。
私は基本的に命ごいをする見苦しい者は嫌いだ。だが、お前が必死になって命ごいをする姿なら見てみたいな｣
妖狐･蔵馬(キッ)
梟を鋭い目で睨みつける。
梟｢クックック、いいよ蔵馬。私はお前のその目が好きだ｣
妖狐･蔵馬をからかう。
妖狐･蔵馬｢…鴉、お前は絶対に俺が殺してやる！｣
梟｢フフッ、惨めな今の状況はお前としてはかなり悔しい筈だ。私を殺せるならやってみるがいい。
だが、今のお前に私を倒すだけの力はない｣
梟との間に大きな力の差を感じ取った妖狐･蔵馬は、自身の気持ちとは裏腹に身体が本能的に鴉を恐れていた。
しかも相手があの鴉である。妖狐･蔵馬のプライドは大きく傷ついていた。
ボン！！
妖狐･蔵馬の腰が爆発する。
妖狐･蔵馬(…ぐっ、今は怒りにとらわれている時ではない。落ち着かねば…)
妖狐･蔵馬は、心を落ち着かせて、冷静に現状からの打開策を考え始めた。
今はエンドレス･ボムをどうにかして防がねば妖狐･蔵馬に待っているのは死しかないのだから。
妖狐･蔵馬(おそらく鴉自身に大きなダメージ、または衝撃を与える事でこの爆撃から逃れる事が出来る筈だ)
妖狐･蔵馬は胸の中に手を入れると何かを取り出した。
それは小さな緑色の木の実であった。
妖狐･蔵馬(危険だが、
今の俺の手元にあるもので、現状を打開する為に使えるものはこれしかない…)
スッ
木の実を口に入れると一気に飲み込んだ。
梟(何かを飲み込んだな)
妖狐･蔵馬｢…行くぞ鴉！！｣
ブォォォォォ！！！！！
妖気を高める妖狐･蔵馬。
ダッ！！！
身体に酷い傷を負いながらも、力を振り絞って梟に攻撃を仕掛けるべく動き出した。
梟｢向かって来れるところを見ると私に対する恐怖心は克服したようだな｣
ボン！！！
エンドレス･ボムによって、妖狐･蔵馬の背中が爆発する。
妖狐･蔵馬｢ぐっ！｣
痛みに堪えながらも梟に向かって行く。
梟｢蔵馬、お前が何をするつもりなのかは知らないがエンドレス･ボムを解除出来る程のダメージを私に与える事が出来るとは思えないがな｣
妖狐･蔵馬｢やってみないと分からないさ｣
梟｢せいぜい足掻くがいい。無駄な行為だと思うがな｣
右手を前に突き出すと追跡爆弾を作り出した。
梟｢行け、追跡爆弾｣
主の命令に従い一斉に襲いかかる。
ズズズ…
妖狐･蔵馬は素早く右手を前に出すと弦を作り出すとそれを剣状に変化させた。
妖狐･蔵馬｢樹霊妖斬剣！！！！｣
シュパーン！！！！！
追跡爆弾を爆発させる事なく真っ二つに斬り裂いていく。
梟｢いい太刀筋だ。
しかしエンドレス･ボムによる衝撃を受ければ迫って来る追跡爆弾をかわせまい｣
ボン！！
妖狐･蔵馬の右足が爆発した。
妖狐･蔵馬(………)
今の爆発によって生じた右足の傷口から血が地面に流れ落ちる。
しかし妖狐･蔵馬は何事もなかったように動いて次々と追跡爆弾達を斬り裂いていく。
妖狐･蔵馬(効いてきたようだな)
梟(！)
シュパーン！！！！！
そして妖狐･蔵馬は襲いかかってきた追跡爆弾の最後の一体を斬り裂いた。
梟｢蔵馬、お前がさっき食べたのは一体何だ？｣
梟は妖狐･蔵馬に問い掛けはしたものの、おおよその検討はついていた。
妖狐･蔵馬｢鴉、恐らくお前が今考えている通りだ｣
梟｢なるほどな｣
妖狐･蔵馬が食べた木の実の効能は人間界でいう全身麻酔にかかりながらも自由に動けるというもので、その力でこれまでの爆撃で生じた傷口の痛み、これから受けるであろう傷の痛みを木の実の力で完全に消し去ったのだった。
この木の実は魔界で最近発見されたもので、食べた事で副作用がでるかもしれない危険性もあった。
だが、このまま行動を起こさないでいてはやられる。危険はもちろん覚悟の上であった。
ここで二人の目が合う。
妖狐･蔵馬｢鴉！！｣
梟｢蔵馬！｣
妖狐･蔵馬がついに梟に接近した。
妖狐･蔵馬｢ハァァァァァ！！！！！！｣
ビューー！！！！！
樹霊妖斬剣を梟の頭部を狙って斬りつけた。
バッ！！
梟は攻撃をかわすべく宙に素早くジャンプした。
妖狐･蔵馬｢奴を攻撃しろ｣
カーーーー！！！！
地面が一瞬、大きな光を放つ。
そして。
ズガァァァァァン！！！！
地面を突き破って巨大なオジギソウが姿を現した。
梟｢馬鹿め！電鳳に通用しなかったものが私に通用すると思っているのか蔵馬！｣
オジギソウは梟を飲み込もうと触手で攻撃を仕掛ける。
梟｢ハッ！！｣
ドガーーーーン！！！！！
攻撃を防ぐ為に追跡爆弾でオジギソウを爆撃する。
梟の爆撃によって怯むオジギソウ。
梟｢次の攻撃でお前の自慢のオジギソウは終わりだ｣
(ニヤッ)
妖狐･蔵馬｢そうだといいな鴉｣
梟｢何？｣
妖狐･蔵馬｢お前はこの植物をオジギソウと思っているようだが、残念だが違う。今お前が見ていたのはこいつの作り出した幻覚だ｣
ズズズ……
オジギソウの姿が徐々に別の姿に変化していく。
梟｢何だこいつは……！｣
妖狐･蔵馬｢お前を死へと誘う死神さ｣
続く