幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントDブロックの三回戦・第一試合



蔵馬(くらま)
×
梟(ふくろう)



――Dブロック



梟「クックック、お前には私を殺せない」



梟は左半身を石化されたのにも関わらずその表情には焦った様子は全くはなかった。



妖狐・蔵馬(左半身を石化されているのに奴の余裕は一体何なのだ……)



梟「蔵馬、何度も再生出来る様になった私といえども、流石に完全に石にされたら終わりだ」



そういうと石化している左肩を触る。



梟「さっきの攻撃で私を完全に石化出来なかったのは残念だったな。もう私には同じ攻撃は通用しない」



妖狐・蔵馬「通用しない?
今のお前の半身は石となっている事で本来のスピードの半分も出せない筈だ。その状態で血吹き葛の攻撃をかわせると思っているのか?」



梟「クックック、
確かに今の私ではあの植物の攻撃をかわすのは大変だろうな」



妖狐・蔵馬(俺が受けたダメージを差し引いたとしても半身を石化状態の奴の方が形勢的に不利だ。奴のあの余裕は一体どこから来るんだ)



左半身を石化されながらも、梟が余裕を見せている事で普段は冷静沈着である妖狐・蔵馬が焦りを感じ始めていた。



妖狐・蔵馬「…気にいらないな。お前のその余裕」



妖狐・蔵馬は血吹き葛に梟に攻撃を仕掛けるように合図する。



《ギョォォォォ!!!》



大声で奇声を上げると二つの頭は口を大きく開けて液体を放つ態勢を作る。



ピュー!!!



二つの口から液体が梟に向かって放たれた。



梟「ハッ!!」



バッ



横にジャンプして液体を間一髪でかわす。



やはり半身を石化されている為に梟のスピードは誰の目から見ても明らかに大きく落ちていた。



――選手達の休憩場



飛影「やはり身体の半分が石になった影響が完全に出ているな。奴のスピードはガタ落ちだ」



幽助「いいぞ蔵馬!
そのままあいつを石にしてやれ!!」



――Dブロック



《ギョォォォォ!!!》》


バッ!!



数度に渡って血吹き葛は口から液体を梟に向かって吐きかけていた。



梟はその攻撃をかろうじてかわし続けていた。



梟「フッ、確かに“この状態"ではこの植物の液体を浴びるのは時間の問題だ」


そう言うと右手で素早く口元を覆い隠しているマスクを取る。



ブォォォォォ!!!!!



そして妖気を急激に高め始めた。



すると梟の髪の色が金髪に変化していく。



妖狐・蔵馬(!!)



ブォォォォォ!!!!!



梟の妖気のさらに上昇していた。



妖狐・蔵馬「血吹き葛!狙い撃て!!」



ピューー!!!



妖気を高める為にその場で静止している梟を血吹き葛の液体が襲う。



梟(………)



液体が迫って来てもよけようとしない。



妖狐・蔵馬「何故よけない!!」



バチバチバチ!!!!



梟の身体から凄まじい妖気のエナジーが放出されて、結界を作り出していた。



シュウゥゥゥゥゥ……



液体は梟の結界の前に弾かれた。



妖狐・蔵馬「な、何だと!!!!!?」



ゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!



梟の巨大な妖気の前に闘場が大きく揺れだした。



妖狐・蔵馬「グッ!!」



闘場の大きな揺れに態勢が崩れる。



梟「クックック、ハッハッッハッハ!!!」



梟の高笑いが闘場に響き渡る。



妖狐・蔵馬「馬鹿な!!ここまでとは……」



妖狐・蔵馬は梟がエンドレス・ボムを使う前に放出した巨大な妖気の前に一度は恐怖を感じた。



そして今度は全力の妖気を放出した梟に対して、恐怖心ではなく絶望感を抱いたのだった。



ゴゴゴゴゴゴ!!!!!
!!!!!!



ここで一瞬、大会が始まってから最大の揺れが闘場で起きた。



そしてその揺れを最後に闘場の揺れはピタッとおさまったのだった。



バチバチバチ



梟がゆっくりと一歩、また一歩歩くと凄まじいエナジーが身体から放出される。


(ニヤッ)
梟「待たせたな蔵馬。これが今の私の全力だ」



妖狐・蔵馬「鴉……!」



妖狐・蔵馬の額から冷や汗が流れ落ちた。



――選手達の休憩場



躯「魔界は本当に広い。
こんな男がまだいるとはな」



幽助「おいおいおいマジかよ。鈴木の時に感じたあいつの妖気は俺達と同じぐらいかと思ったが、鴉の野郎、信じられねー。下手すればあいつの妖気は俺達よりでかいんじゃねーのか…」


飛影(チッ……)



修羅「パ、パパ……」



黄泉「言っただろう修羅。蔵馬は勝てないとな…」

(あの力で奴がその気になれば今の蔵馬ではそう長くは持たない…)



梟の放出した巨大な妖気は幽助をはじめとした、
魔界の猛者達に大きな衝撃を与えたのだった。



――Dブロック



梟「クックック、どうした蔵馬?私を石にするのではなかったのか?」



妖狐・蔵馬(化け物め…)



梟「またさっきのように私が怖くなったのか?少しは足掻いてみるがいい蔵馬」


(キッ)
妖狐・蔵馬「行け、血吹き葛よ!奴を石に変えるのだ」


妖狐・蔵馬は血吹き葛に合図して梟に攻撃をするように命じる。



《ギョォォォォ!!!》



ピューー!!



血吹き葛は口から大量の液体を梟に向けて吐きかける。


梟「お前の切り札とやらもそろそろ始末してやるよ」


ダン!!



地面を大きく蹴って、
上空に高くジャンプして液体をかわす。



そのスピードは左半身が石化しているとは思えない速さだ。



妖狐・蔵馬「速い!!?」



――Dブロックの上空



梟は上空から地上にいる血吹き葛を見る。



梟「あの植物に使うまでもないが、せっかくだから見せてやるよ蔵馬。全力の私の攻撃をな」



――Dブロックの地上



妖狐・蔵馬「空に高く上がって奴は何をするつもりだ」


――Dブロックの上空



梟「こおおお」



口から体内に火気物質を集め始めた。



バチバチバチ!!!!!



梟の両手に凄まじいまでの妖気が蓄積されている。



その両手が起爆装置となるのだ。



――Dブロックの地上



妖狐・蔵馬「あの技は!!」


妖狐・蔵馬には梟が何を仕掛けてくるのか直ぐに分かった。



今から仕掛けてくるのは暗黒武術会での決勝、そして鈴木との戦いで見せたあの肢体爆弾だという事を。



梟は肢体爆弾で妖狐・蔵馬の知らない所では神夢界の王、そして黒鵺と、次々と最強の男達を倒して来た。


妖狐・蔵馬「あれを奴に使わせるのはまずい。なんとか止めねば」



妖狐・蔵馬は直ぐに血吹き葛に命令する。



《ギョォォォォォ!!》



シュルシュルシュル



血吹き葛は大量の触手を上空にいる梟に向けて伸ばした。



――Dブロックの上空



梟「クックック、お前の石に変える能力は認めてやる。だが、石化以外のお前の攻撃では私を倒せはしない」



バチバチバチ!!!!



胸の前で起爆装置となる両手を構えると攻撃する焦点を血吹き葛の腹部に合わせる。



梟「死ね」



ギュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!



梟は一気に地上に向けて急降下した。



そして急降下しながら梟は呟く。



梟「地下爆弾」



――Dブロックの地上



シュルシュルシュル



血吹き葛の触手は急降下して来た梟にもうすぐ接触しようとしていた。



ガシッ!



その時、血吹き葛の足を三体の地下爆弾が捕まえる。


そして地下爆弾達は同時に言葉を発した。



地下爆弾達「捕まえた」



《ギョオォォォ!!?》



ググッ……



血吹き葛は地下爆弾達に足を捕まえられ、どうにか振り払おうと左右に動こうとするが、完全に足を捕まえられて身動きがとれなかった。



妖狐・蔵馬「あれは鴉の地下爆弾!」



カーーーー!!!



地下爆弾達の身体が光る。


そして。



ドガァァァァァァン!!!!!!



三体の地下爆弾は同時に爆発した。



《ギョオォォォォォォォォォ!!!!!》



ドスン!!!



大きな奇声を上げて血吹き葛は背中から地面に倒れた。



それと同時に梟に迫っていた触手の動きが止まったのだった。



梟は触手の動きが止まるのを最初から分かっていたかのようにスピードを全く緩める事はなく突き進んでいた。



そして目の前に広がる大量の触手をくぐり抜け、血吹き葛に迫る。



妖狐・蔵馬「クソッ!!」



妖狐・蔵馬は素早く浮葉科の植物を召喚。



上空に向かって高く飛ぶ。


梟「クックック!とどめだ!!」



血吹き葛の腹部を狙って一気に両手を突き出した。



そして。



ドガァァァァァァァァァン!!!!!



梟の肢体爆弾によって闘場は大爆発を起こした。



そしてその爆発によって妖狐・蔵馬の最大の切り札であった血吹き葛は粉々に消し飛んだのだった。



――メイン会場



樹「あの梟の肢体爆弾は王を倒した時より遥かに威力が増しているな」



イチガキ「ヒョヒョヒョ、今の梟が全力を出せばあの時の王と同等クラスの力はあるじゃろう」



樹「イチガキ、あれだけの力を持つ梟の制御は上手く出来るのか?」



イチガキ「安心しろ。ワシらにより忠実に従うように調整しておる。大丈夫じゃよ!」



樹「そうだといいがな…」



イチガキ「その声はなんじゃ樹。ワシの技術力を疑っておるのか?」



樹「いや、お前の技術力は信頼しているさ。」

(しかし俺には王と戦った時の梟と今の梟を見た感じ、何故かは分からないが、違和感を感じる)



イチガキ「一体何を心配しているのかは知らんが、
それならワシが今から念信を梟に送り、ワシの意のままに梟を使ってみせよう。お前さんに調整が上手くいっているところを実際に見せてやるわい」



自信あり気な顔で樹に言うと直ぐにイチガキは梟に念信を送り始めた。



――Dブロック



闘場は爆発によって起きた煙に包まれている。



梟「クックック、少しやり過ぎたか?闘場が大きく様変わりしてしまったな」



楽しそうに周辺を見渡す。


大爆発から身を守る為に、上空に逃れていた妖狐・蔵馬が地面に着地した。



梟「お前の切り札であった植物は始末した。次は蔵馬、お前が植物のようになる」



妖狐・蔵馬(…………)



無言で梟を睨みつける。



その時だった。



《梟、聞こえるか?ワシじゃ》



梟(…………)



《聞こえているじゃろう?返事をするんじゃ梟。ワシじゃイチガキじゃ》



突然、念信をして来たイチガキに対して梟はめんどくさそうな態度を見せた。



梟《イチガキ、私は戦いを楽しんでいる。私の邪魔をするな》



イチガキ(!?)



梟の言葉に驚く。



イチガキ《イチガキじゃと!?主であるワシを呼び捨てにするとはどういうつもりじゃ!!》



梟《クックック、
主だと?笑わせるな。私はお前みたいな見苦しい者を主に仰いだつもりはない》


イチガキ《な、何じゃと!、梟…お前一体どうしたんじゃ!?》



梟の変化に戸惑うイチガキ。



梟《梟?変な名前で私を呼ぶな。私の名は“鴉"だ》

※ここから梟の表記は鴉に変わります。



イチガキ《な、何じゃと!!?お前まさか記憶が!?》



鴉は不気味な笑みを浮かべながらイチガキに答える。



(ニヤッ)
鴉「私の記憶は戻った」



続く
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