幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントDブロックの三回戦・第一試合



蔵馬(くらま)
×
梟(ふくろう)



――選手達の休憩場



陣「蔵馬のあの植物がやられたぞ」



凍矢「まずいな。あの鴉の力は異常だ。このままでは100%負ける。今の蔵馬にこの状況を打開する策が残されていればいいが…」



――Dブロック



(ニヤッ)
鴉「私の記憶は戻った」



イチガキ《そ、そんな馬鹿な!記憶が戻るなど、そんな事あり得ん!?》



梟という身体の中に潜在的に残っていた鴉の記憶が戻った事をイチガキに伝えた鴉。その言葉は彼に対してあまりにも大きな衝撃を与えたのだった。



――メイン会場



イチガキ「ぐむむむ……」



樹(……?)



樹はスクリーンで鴉がイチガキの指示通りに動くかどうか様子を見ていた。



しかし突然、隣で念信をしているイチガキが何やら唸り始めた為、彼の様子がおかしい事に気付いた。



樹(何か梟との間にあったのか?)



イチガキ《ベースにしているオリジナルがあるとはいえ、ワシの技術は完璧の筈じゃ!生前の記憶が僅かに残っていたとしても表にそれが出てくる事などありえん!》



鴉《クックック、
私をお前ごときが計る事など出来はしない。醜いダニめ》



イチガキ《き、き、貴様ァァァァァ!!!》



鴉の暴言によって額に青筋を立てて怒りを顕わにするイチガキ。



そして先程までは自信に満ち溢れていたイチガキの顔は見る見るうちに醜悪な顔に変わっていっていた。



――Dブロック



妖狐・蔵馬(この僅かな妖気の流れ…これは念信か…?)



実際に目の前で念信をしている者がいたとしても、その事に殆どの者は気付く事はない。



それは何故かというと、
相手から送らてくる念信から感じとれる霊気や妖気はあまりにも微少な為、通常は第三者が感知する事は非常に難しい。



だが、この時、妖狐・蔵馬の精神は信じられない程、冷静になっていた。



最大の切り札ともいえる血吹き葛を倒されて追い詰められているこの状況にもかかわらずだ。



それは限り無く冷静になることで絶望的なこの場の状況の打開策を探す為であった。



その結果、妖狐・蔵馬の精神は通常より遥かに研ぎ澄まされていた。



その為、イチガキから送られてきた僅かの妖気を察知し、何者かが鴉に念信で接触してきたのではないかと疑ったのだった。



妖狐・蔵馬(!?)



そしてこの時、妖狐・蔵馬はある事に気付いたのだった。



――メイン会場



鴉とイチガキの間で念信は続いていた。



イチガキ「おのれ………!!!」



歯を強く噛み締めて怒りに振るえる。



樹「おいイチガキ」



イチガキの顔色がどんどん変化していた。その為、
樹はイチガキを落ち着かせる為に声をかけた。



イチガキ(樹……)



樹から声を掛けられ、少しは冷静さを取り戻したイチガキはここで鴉との念信を中断したのだった。



ドカッ



足元を思いっきり蹴るイチガキ。



樹「荒れているな。お前の様子から判断すると梟と何かあったようだな」



イチガキ「う、うむ…」



イチガキは梟との念信でのやりとりについて樹に話し始めた。



――Dブロック



鴉(念心を切ったか。余程頭にきているとみえる)



目を閉じて含み笑いの鴉。


妖狐・蔵馬「仲間との念信か?」



妖狐・蔵馬の言葉に鴉は閉じていた目を開けた。



鴉「念信を気取られないようにはしていたつもりだったがが驚いたぞ。よくわかったな。」



妖狐・蔵馬は真剣な眼差しで鴉の目を見る。



妖狐・蔵馬「鴉、俺は暗黒武術会で死んだ筈のお前が生きている事がずっと不思議でならなかった」



鴉「だろうな」



妖狐・蔵馬「生きていたお前を見て俺はお前があの時本当は死んでいなかったのではないかと最初は疑った。だが、やはり何度考えてもあの時の俺の攻撃は間違いなくお前の心臓を確実に貫いている」



妖狐・蔵馬の脳裏に暗黒武術会の決勝戦の光景がよぎる。



〜妖狐・蔵馬の回想〜



暗黒武術会の決勝戦の第一試合。



鴉「動きたくとも立っているのが精一杯だろう。打つ手なしだな」



妖狐の姿から南野秀一の姿に戻ってしまった蔵馬は鴉によって追い詰められていた。



鴉「魔界の植物は呼べない。植物の武器化も出来なくなった。粉々に吹き飛ばすのは簡単だがそうはしない」



鴉は蔵馬に手を向ける。



ドン!ドン!



蔵馬「あああ!!」



左肩、右手に爆撃を受けて大きな鳴を上げる蔵馬。



鴉「お前はいつまでも私のそばにおいておきたい。頭だけは綺麗なままで残してやるよ」



蔵馬(どうやらお前は気付かなかったようだな……。俺の本当の狙いに)



蔵馬は鴉の身体の一点を見つめる。



蔵馬(お前が血を流しているところ、心臓だ。後は妖怪の血が大好きな吸血植物を呼ぶだけだ)



観客席からは妖怪達の「殺せ」という大きな歓声。



蔵馬(お前は大きな勘違いをしている。俺はこの姿でも魔界の植物を呼べるのさ。死とひきかえにな…………。俺の今の全妖力を一気に燃焼しつくす最後の奥の手だ)



鴉「じわじわいくか」



スィ



鴉は蔵馬の身体に右手を向けた。



蔵馬の身体が爆撃を受けて爆発する。



幽助・桑原「蔵馬」



ドッ



爆撃を受けた蔵馬はその場に倒れた。



樹里「ダウン」



倒れている蔵馬に審判の樹里がカウントを数え出した。



観客の妖怪達の凄まじい歓声で場内は包まれた。



鴉「カウントなどいらん。生きるか死ぬかだ」



右手を上にあげる。



蔵馬にとどめを刺す為に。


蔵馬(ちがうな)



蔵馬は鋭い目で一点を見つめて集中。



鴉「死ねっ!」



鴉は蔵馬に攻撃を仕掛ける。



蔵馬「お前も死ぬんだ!」



カーー



蔵馬の全身が光輝く。



そして



ドーーーン



蔵馬は命をかけた最後の力で吸血植物を召喚した。



鴉(!?)



ドスッ!



驚く鴉の心臓を吸血植物が貫く。



鴉「吸血植物…馬鹿な呼べる筈は…」



鴉はその場に崩れ落ちるように倒れたのだった。



〜妖狐・蔵馬の回想・終〜



鴉「お前の吸血植物で心臓を貫かれて死んだ筈の私がお前の前に現実に立っている。クックック、お前にしてみれば不思議な話しだろうな」



妖狐・蔵馬「ああ。だが、
さっきの念心で俺はある事に気付いた」



鴉「なんだそれは」



妖狐・蔵馬は軽く息を吐くと静かな口調で話し始めた。



妖狐・蔵馬「お前の復活には裏で何者かが暗躍している。つまり何者かが死んだお前を蘇生させたという事だ」



鴉「フッ、面白い推理だ。何故そう思った?」



妖狐・蔵馬「さっきの問い掛けで俺は「仲間との念信か?」とお前に聞いたが、お前は一切それを否定しなかった。それはつまりお前には仲間がいるという事だ」


鴉「なるほど」



妖狐・蔵馬「そして暗黒武術会でお前が死んだと仮定すると自ずと何者かがお前を蘇らせたという答えが導き出されてくる」



鴉「目の前で切り札ともいうべき植物を倒されていながらまだまだ頭はまわるようだな」



妖狐・蔵馬「さらにつけ加えると幽助と戸愚呂(弟)の戦いの後に左京がドームを崩壊させたあのタイミングを考えると、その人物は暗黒武術会に関係していた人物。そうでなければお前の身体を持ち去る事は出来ない。となるとあの場にいた者となる」



鴉(…………)



妖狐・蔵馬「違うか?」



鴉「クックック!ハッハッハ!!」



鴉はここで大きな声で笑った。



妖狐・蔵馬「何がおかしい」


鴉「本当にお前はいいよ蔵馬。ますますお前を俺のそばにおいておきたくなった」



妖狐・蔵馬「それはごめんだ」



鴉「南野秀一の姿もいいが本当のお前の姿である妖狐の状態で永遠に私の手元においてやるよ」



ブォォォォォ!!!!!



妖狐・蔵馬「ぐっ!」



鴉は攻撃的な妖気を妖狐・蔵馬に向ける。



バチバチバチ!!!!!



そしてその身体からは凄まじいまでのエナジーが放出。



鴉「見事な洞察力は褒めてやる。だが私の復活が分かったからといって何の意味がある。今からお前は私によって殺されるのだからな」



鴉は右手を妖狐・蔵馬に向ける。



鴉「そろそろ決着をつけさせてもらうぞ蔵馬」



妖狐・蔵馬(…意味はあるさ。俺がお前に勝てばな)



鴉「まずは這いつくばってもらおうか」



スィッ



ドン!!



妖狐・蔵馬の両肩、両足の膝が同時に爆発する。



妖狐・蔵馬「グワァァァァ」


ドシャッ



爆撃を受けてその場に倒れる。



鴉「エンドレス・ボム」



鴉は再びエンドレス・ボムによって妖狐・蔵馬を包囲させた。



鴉「前の殺傷能力を抑えていたエンドレス・ボムと同じと思うなよ。私はもう手加減はしない。直ぐに死にたくなければ少しでも足掻くのだな蔵馬」



ボン!!



妖狐・蔵馬の身体をえぐるような鋭い爆撃。



妖狐・蔵馬「うああ……」

(…俺は諦めない。この命が尽きるまでな………)



――選手達の休憩所



黄泉(………)



鴉の容赦のない爆撃を受けてどんどん小さくなっていく妖狐・蔵馬の妖気を肌で感じ取った黄泉は何かを決意したようであった。



傍にいる修羅が父親の変化に気付く。



修羅「パパ?」



黄泉「修羅よ、俺は蔵馬をこんな戦いで死なせたくはない。万が一の時には俺は蔵馬を助けに行く」



修羅(!?)



黄泉と修羅の背後で蔵馬の試合を熱い視線で見ていたこの男も黄泉と同じ様な顔をしていた。



男はツンツンと立つ髪の毛を触る。



この男は予選で酒王と同じブロックにいた男。



そう、仙道である。



仙道(蔵馬…!)



ブォォォォォ!!!!!



これまでひたすら隠していた巨大な妖気が仙道の身体の中で燃え上がろうとしていた。



続く
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