幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントDブロックの三回戦・第一試合



蔵馬(くらま)
×
梟(ふくろう)



――メイン会場



イチガキ「ヒャヒャヒャ、いいぞ!その調子だ梟」



楽しそうに笑うイチガキ。


その時だった。



ズズズ



イチガキの直ぐ傍の空間から手が出てきた。



イチガキ「お前は…」



驚くイチガキの目の前に、空間の中から緑色の髪をした片目の男が地面に静かに降り立った。



男は地面に降り立つなり、直ぐにイチガキの隣に歩いて来た。



それを横目で見るイチガキ。



イチガキ「ヒョヒョヒョ、お前さんが自らここにやって来るとは珍しいな樹」



空間の中からメイン会場に姿を現した男とは闇撫の樹であった。



樹「そうか?」



無表情な顔でイチガキに答える樹。



イチガキ「そういえば皐月が一度ここに来おったぞ。去り際になにかお前の手伝いをする様な事を言っていたが…。お前はここにいてもいいのか?」



樹「皐月には弥勒達を霊界に連れて行く道先案内人として行ってもらっている」


イチガキ「弥勒達?それに霊界じゃと??」



霊界という樹の口から意外な言葉を聞いて怪訝そうな顔をした。



イチガキ「ワシの知らないところで色々とお前達はやっておるようじゃのう」



樹「ああ」



樹は変わらず無表情。



イチガキ「しかし霊界とは意外な名前を聞くな。
そういえばお前さん達は霊界とは敵対しておったのう。道先案内人か、
何となく読めたぞ。お前さんの事だ、霊界に対して何かしたんじゃろう?」



樹「察しがいいなイチガキ。比羅達を利用する事で霊界を潰す策を思いついた」


イチガキは樹の言葉を聞いて、自分の読みが当たった事が分かり嬉しそうな顔をした。



イチガキ「ワシは直接は面識はないが、話しを聞く限りでは、あやつらは簡単に動く様な連中ではないじゃろう?あの者達をよく
すんなりと動かす事が出来たな」



樹「簡単ではなかったさ」

(弥勒がいたからな)



樹はこれまでの経緯をイチガキに話した。



………。



………。



………。



イチガキ「なるほどのう。あの者達のリーダーの妹をその手にかけたか。ヒャヒャヒャ、樹よ考えおったな」



樹「単独行動したのがあの女の運の尽きだ」



樹の脳裏に恐怖のあまりに悲鳴を上げた砂亜羅の顔が浮かぶ。



樹「俺が女に手をかけたのは今回が初めてだ。
フッ、意外と躊躇う事もなくすんなりと殺す事が出来た。自分の意外な一面を発見出来たよ」



(ニヤッ)
イチガキ「しかしワシはお前さんが女に手をかけるとは驚いたぞ。女を殺す様なタイプには見えんかったからのう」



イチガキの言葉に樹は口元を少し緩めた。



樹「フッ、これも全て忍の為さ」



そして視線をスクリーンに向けた。



樹「大会はどうやら桑原と蔵馬が闘っているようだな」



目を閉じるとまるで昨日の出来事の様に浮かぶ、
浦飯幽助、桑原、蔵馬、飛影、そしてコエンマ達霊界の者達との魔界の扉を巡る闘い。



樹(浦飯、桑原、蔵馬、飛影、お前達とはいずれ再び合間見える事になりそうだ)



イチガキ「ヒャヒャヒャ、樹よ、蔵馬はワシの梟と闘っておる」



樹「そのようだな。
お前の作り出した梟か。他の実験体も凄いが、あの梟はさらに頭一つ抜き出ている」



イチガキ「確かにのう。
じゃが、あの者達も梟には及ばないとはいえ、
素晴らしい力を秘めている。黄泉や煙鬼といった魔界最強クラスの連中にも引けはとらんぞ」



樹(………)



スッ



イチガキの肩に手を置いた。



イチガキ「うん?何だ樹?」


樹「イチガキ、お前の実験体を“また”借りたぞ」



――Dブロック



梟「お返しだ。追跡爆弾(トレースアイ)」



ギーース



梟の作り出した爆弾の生物は不気味な鳴き声を上げると上空の妖狐・蔵馬を狙って、高速のスピードで向かっていったのだった。



――Dブロックの上空



闘場を覆う煙の為に、
追跡爆弾の姿は直ぐに確認出来ないが、
巨大な妖気を秘めた物体が迫っている事は直ぐに分かった。



そして……。



徐々に妖狐・蔵馬に向かって飛んで来た追跡爆弾の姿が視界に入り始めた。



妖狐・蔵馬「おそらくあれは追跡爆弾か」



ギュンンンンン!!!!



そう言うと再びその身体を高速回転し始めた。



ビュー!ビュー!ビュー!


無数の羽根が再び、
矢のように大量に追跡爆弾に向かって放たれた。



妖狐・蔵馬「俺の羽根の矢は鴉、お前の追跡爆弾にも負けていない筈だ」



ギーース



妖狐・蔵馬の放つ羽根と梟の追跡爆弾が接触。



ドガァァァァァァン!!!!!!!!!!!



闘場に再び大爆発が起こる。



モワァァァァァァ……



闘場があっという間に煙によって覆われた。



妖狐・蔵馬「行くぞ鴉!!」


ギュンンンンン!!!!



妖狐・蔵馬は休む事なく身体を高速回転。



ビュー!ビュー!ビュー!


羽根を矢の様に大量に地上にいる梟に向かって放ち続ける。



――Dブロックの地上



梟「来たか」



羽根の矢が次々と降り注いで梟に襲いかかってきた。


今度は避ける事はせずに、羽根の矢を迎え撃つ。



スッ



両手を素早く前に突き出した。



梟(キッ!!)



その目が鋭く光る。



ボン!!ボン!!ボン!!


ボン!!ボン!!ボン!!


降り注ぐ羽根の矢は梟に触れる前に次々と爆発していく。



梟「蔵馬め。あくまで空からの遠隔攻撃に徹する様だな」



フッ



再び追跡爆弾を作り出した梟。



梟「行け追跡爆弾」



ギーース



追跡爆弾は先程と同じく妖狐・蔵馬の放った羽根に向かって行った。



ビュー!ビュー!ビュー!


上空から次々と降り注いでくる妖狐・蔵馬の羽根の矢。



ドガァァァァァン!!!!!



追跡爆弾と羽根が接触して再び大爆発を起こしたのだった。



梟「そのような子供騙しの様な攻撃がいつまでも通用すると思うなよ蔵馬」



フッ



次々と追跡爆弾を作り出す梟。



ギーース



次々と上空の妖狐・蔵馬を狙って飛んで行く追跡爆弾。



そしてその度に羽根の矢と接触しては爆発を起こしていた。



暫くこの後、妖狐・蔵馬の羽根の矢と梟の追跡爆弾のぶつかり合いは続いたのだった。



――選手達の休憩場



陣「Dブロックは随分派手な闘いになったな。殆ど爆発の煙で分かんないぞ」



スクリーンに映し出されている映像は梟の爆弾の煙によって、闘場が覆われている為に、妖狐・蔵馬と梟の姿を見る事が出来なかった。



陣「蔵馬もいきなり空から攻撃するなんて、思い切ったことしただな」



凍矢「妖気では確実に蔵馬より鴉の方が上だ。思い切った攻撃をしていかないと、ジワジワとやられてしまうのだろう。あれで正解だ」



陣「だな。それにしても鴉の奴はバケモノみたいに強くなってんな。そもそもあいつは暗黒武術会で蔵馬に殺された筈なのに、
どうやって生き返ったんだ?」



凍矢「それは分からんが、もしかしたら暗黒武術会にいた者の中から何者かが関与しているのかもしれんな……」



――Dブロック



ドガァァァァァン!!!!!!!!



ドガァァァァァン!!!!!!!!



ドガァァァァァン!!!!!!!!



妖狐・蔵馬の羽根と梟の追跡爆弾との激しいぶつかり合いが続いていた。



梟「フッ、この小競り合いに飽きてきたな。蔵馬にはそろそろ地上に降りて来てもらうとするか」



梟の表情はどこかまだ遊んでいるような余裕が見られた。



スッ



梟はそう言うと地面に両手を向けた。



梟「ハァァァァァ!!!!」


ブォォォォォ!!!!!



先程、100m四方を軽く吹き飛ばした時の様に梟の妖気が急激に高まる。



――Dブロックの上空



妖狐・蔵馬「何だ!?」



急激な梟の妖気の上昇に、妖狐・蔵馬は高速回転を止めて、羽根の矢を放つのを止めた。



妖狐・蔵馬「鴉の妖気がさっきのように急激に上がっている。あいつ一体何をするつもりだ」



――Dブロックの地上



梟「出て来い」



梟が呟くと、その両手から小型の丸い形をした一つ目の生物が姿を現した。



そして。



ピタッ



二体の丸い形の生物は梟の身体に張り付いた。


ギャーース



不気味な独特の鳴き声を上げた。



すると。



カーーーーー!!!!!



その身体が光輝く。



梟「フロート・ボム」



ドガァァァァァァン!!!!!!!!



梟は自らを大爆発させた。


大規模な爆発と凄まじい爆風が吹き荒れる。



――Dブロックの上空



ビューーーーー!!!!!


妖狐・蔵馬「くっ!?」



凄まじい爆発に身体が煽られる。



妖狐・蔵馬「あいつ一体どういうつもりだ。煙でよく見えなかったが、鴉は自らを爆発させた様に見えたが…!?」



予想外の梟の行動に驚く妖狐・蔵馬であったが、
直ぐに彼はそれ以上に驚く事となる。



――メイン会場



イチガキ「ほ〜う。
ワシの実験体を借りたじゃと?あの時以来じゃな」



樹「ああ、そうだ。
あの時は、あの実験体達を持ってしても“あの男”を殺すのには少々骨が折れた」



イチガキ「あの者はワシの実験体達を相手に互角以上の闘いを繰り広げたのだ。それだけでも賞賛に値するわい。ところで樹よ、実験体達を今度は何に使うのだ?」



樹(ニヤッ)



イチガキの問い掛けに樹は不敵な笑みで返した。



その笑みには邪悪な陰謀が行われる事を暗示していた。



続く
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