幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントAブロックの三回戦・第一試


時雨(しぐれ)
×
桑原(くわばら)



――Aブロック



妖狐・蔵馬《うわァァァァァ!!!》



桑原の脳裏に蔵馬の苦しむ姿がよぎる。



桑原「く、蔵馬!?」



桑原は足を止めてDブロックの方角を見つめる。



時雨(??)



桑原(さっきからスゲー爆発が続いている。蔵馬の奴大丈夫なのか…?)



時雨は桑原が攻撃を止めた為、燐火円磔刀を下げて桑原に近付いて来た。



だが、桑原は蔵馬の事に気を取られて、
近付いて来る時雨に全く反応しなかった。



時雨(……)



カチヤッ



桑原(!?)



桑原の首筋に燐火円磔刀の刃の部分をあてた。



桑原「う……」



思わず仰け反る桑原。



その額から冷や汗が流れる。



時雨「桑原、本来ならこれで勝負はついているぞ。何があろうとも目の前で相手と対峙していたならば、
決して気を逸らしてはならぬ」



スッ



そう言うと時雨はあてていた刃を首筋から下へ下ろした。



桑原「す、すまねぇ…」



時雨「御主が気になるのはDブロックの闘いか?」



そう言うと時雨の視線はDブロックに向けられた。



桑原「ああ」



時雨「先程からあの闘場から凄まじい妖気がヒシヒシと伝わってくる」



桑原「ああ、バケモンみてーな妖気だ」



時雨「Dブロックは蔵馬が闘っているのだったな。
何者かは知らぬが、
あの巨大な妖気を持つ者が相手では蔵馬といえども手に負えないかも知れぬな」


桑原(あの野郎の妖気は俺が命掛けで倒した武威を遥かに上回ってる。
浦飯や飛影でどうにか闘えるクラスだ…)



心配そうにDブロックの方角を見つめる桑原。



スッ



時雨は桑原の肩に手を置いた。



時雨「だが、案ずるな桑原」


桑原「時雨…」



時雨「手に負える相手ではないかもしれねが、
あの者は、最後まで勝負を捨てない男だ。拙者は闘った事があるから良く分かる」



時雨は前回の魔界統一トーナメントの二回戦で蔵馬と対戦していた。



その闘いは激闘の末に蔵馬が勝った。



時雨は一度は闘いの中で蔵馬を倒す直前まで追い詰めていた。
だが、勝負を諦めない蔵馬の不屈の闘志の前に敗れたのだった。



時雨「勝負に絶対はない」



桑原(時雨……)



桑原にとって、幽助や蔵馬や飛影の様に信頼している時雨の言葉は、
何故か説得力があった。



桑原「…そうだな。
あいつは実力が上だった電鳳にも勝っているんだ。今度もやってくれるさ」



蔵馬を心配していた桑原の表情が少し明るくなった。


桑原「ありがとよ時雨。
何故かあんたの言葉だと
納得しちまうんだよな」



時雨(やれやれだ)



フゥ〜っと軽い溜め息を付く時雨。



桑原「わりぃな時雨。
勝負に水を差しちまった」


闘いを途中で中断した事を時雨に詫びた。



時雨「フッ、詫びる暇があれば勝負の続きを始めるぞ桑原。拙者も御主との闘いを楽しんでおる。
だが、今度は先程の様な事があれば、容赦なく斬り捨てる」



カチャッ



そう言うと時雨は真剣な目で桑原を見つめると、
距離を取って燐火円磔刀を握り締めて構えた。



桑原「おうよ」



桑原も試しの剣を握り締めて構える。



桑原・時雨(……)



先程とは打って変わり、
再び二人に緊張が走る。



時雨は燐火円磔刀を少ししゃがみ加減に構える。



そして時雨が動いた。



ズキューーン!!!!!



桑原(!!!!)



桑原の顔がたちまち、
驚愕の表情に変わった。



時雨「ウォォォォォォ!!!!!!」



時雨はただ打って出たわけではなかった。



そう、彼は闘いを再開すると同時に自らの最強の技をいきなり桑原に向かって放ってきたのだった。



桑原「オワァァァァ!!!!」



虚を突かれた桑原は慌てて、試しの剣で時雨の技を防ぎに行く。



ガキーーーン!!!!



桑原「うぐぐ・・・」



桑原の腹部を狙った時雨の技は試しの剣で防がれていた。



まさに間一髪で桑原は攻撃を防いだのだ。



時雨「今のタイミングで拙者の一撃を防ぐとは驚いた」



グググ……



時雨は燐火円磔刀の刃を力でそのまま押し込もうとしていた。



(キッ)
桑原「押し込まれてたまるかよーー!!!」



ブォォォォォ!!!!!



霊気を一気に放出。



桑原「ウォォォォォ!!!!!!!!」



時雨「ぬぅ……!!」



ザザザ……



桑原の巨大な霊気によって、今度は逆に時雨が押し込まれようとしていた。



時雨(この力があの武威を倒した時の桑原の力だ)



武威戦での雪菜の念心による愛の告白がきっかけで、眠っていた力を解き放ち、爆発的に力をつけた桑原。


だが、桑原はフルにその力を発揮出来てはいなかった。



時雨(この力を常に発揮出来れていれば御主はさらに強くなるだろうに、真に惜しいな)



桑原「オリャァァァァ!!!!!」



桑原は試しの剣に力を込めた。



時雨(安定していない力で倒されるほど……)



ブォォォォォ!!!!!



時雨「拙者は甘くないわァァァァァ!!!!!」



時雨の妖気が一気に上昇。


桑原(!!)



時雨「ウォォォォォ!!!!!!」



グググ……



押されていた時雨の力が盛り返した。



桑原・時雨「むうぅぅぅ……」



グググ……



均衡する二人の力。



桑原・時雨「ウォォォォォ!!!!」



ガキーン!!!



二人はお互いの獲物を弾いた。



桑原「くっ!」



時雨「ぬゥゥ!!」



二人共、手に持つ獲物に力を込める。



時雨「ハァァァァ!!!!!」



ビューーーン!!!!



素早く腹部を斬りつけた。


ヒュッ



その攻撃をかわす桑原。



桑原「くらいやがれーー!!!」



ビューーーーン!!!!!!!



試しの剣を振りかざして一気に振り下ろした。



時雨「フン」



バッ!!



バックジャンプで桑原の攻撃をかわして距離を取る。


カチャッ



時雨は身体を横に捻り、
燐火円磔刀を構えた。



時雨「御主にこれを防ぐ事が出来るかな?」



桑原「あれは!?」



時雨「ハァァァァァ!!!!!」



ビューーーーーーーン!!!!!!!!



桑原を目掛けて時雨の手から燐火円磔刀が放たれた。


ゴォォォォォォ!!!!!!!!



放つと同時に燐火円磔刀は、高速回転を始めた。



そして桑原に迫って来た




桑原「は、はえぇ〜!!!!!」



バッ!!!



横に飛んで燐火円磔刀をかわす。



ドテッ!!



桑原「痛っ!!」



桑原の肩が僅かに斬られていた。



パシッ!



時雨の手元に燐火円磔刀は戻った。



桑原(……)



肩を抑えながら桑原は時雨の手元に戻った燐火円磔刀を見つめる。



桑原(前の闘いで時雨が投げるのを見たが、映像で見るのよりスピードが速く感じるぜ)



桑原の表情から、彼が驚いている事に気付いた時雨が口を開く。



時雨「フッ、速さが違うか?お前は拙者がこれを使うところを見ていたようだが、あの程度の相手に拙者が本気で投げるわけがなかろう」



桑原(想像より速かったから少し驚いちまったが、
武威が俺に投げていた斧ほどの速さじゃねー)



カチャッ



時雨は再び燐火円磔刀を放つ態勢に入った。



桑原「チッ、また来るのかよ」



試しの剣を右手で持ち、
左手に霊気を集中し始めた。



桑原(きゃがれってんだ。霊剣手裏剣で弾き飛ばしてやる)



時雨「行くぞ桑原ァァァァ!!!!」



ビューーーーーーーン!!!!!!!!



再び時雨の手から燐火円磔刀が放たれた。



ゴォォォォォォ!!!!!!!!



ググッ



桑原は左手に力を込めた。


桑原「剣よ、飛べェェェェェェェ!!!!!!」



左手から十数発の霊剣手裏剣が放たれた。



(ニヤッ)
桑原(さっきの時雨に放った霊剣手裏剣とはわけが違うぜ。タップリと霊気を込めて作ったからな)



ゴォォォォォォ!!!!!!!!



ビュー!!!!ビュー!!!!ビュー!!!!



桑原「弾き飛ばしてやれ!!!霊剣手裏剣!!!」



時雨「無駄だ。御主のその霊剣手裏剣では拙者の燐火円磔刀には通用せんぞ」



ぶつかる燐火円磔刀と霊剣手裏剣。



ガキーン!!!ガキーン!!!ガキーン!!!



時雨が回転させて防いだ時と同様に、燐火円磔刀は霊剣手裏剣を軽く弾き飛ばした。



桑原「な、何ィィィィィ!!!!!!!!」



燐火円磔刀を霊剣手裏剣で弾き飛ばす自信があった桑原は、驚きのあまりに大声を上げた。



ゴォォォォォォ!!!!!!!!



霊剣手裏剣を弾き飛ばした燐火円磔刀は桑原に向かって飛んで行く。



桑原「チクショー!!時雨の燐火円磔刀を甘く見過ぎていたぜ」

(仕方ねー、ギリギリでさっき見てーにかわすしかねーか)



時雨(………)



霊剣手裏剣を弾き飛ばしたのを見届けた時雨が、
ここでさらに動きを見せる。



ズキューーーン!!!!



獲物を持たない素手の状態であるのにもかかわらず、高速のスピードで桑原を目掛けて一直線に駆け出した。



桑原「な、時雨!!?」



時雨が桑原を目掛けて駆け出した事にここで気付く桑原。



ゴォォォォォォ!!!!!!!!



桑原に燐火円磔刀が迫っていた。



バッ!!



桑原の少し手前で時雨は高くジャンプ。



ガシッ!!!!



桑原に迫る燐火円磔刀を空中でキャッチ。



時雨「貰ったぞ桑原ァァァァァァァァ!!!!!!」


ビューーーーーーーン!!!!!!!!!



その勢いのまま燐火円磔刀を振り下ろした。



桑原「や、やべー!!!!!!」



予想外の時雨の攻撃の前に桑原は動作が完全に遅れた。



ズバァァァァァ!!!!!


桑原の左肩から右の脇腹までを斜めに斬り裂いた。



桑原「うわァァァァァァ!!!!!!!」



桑原の絶叫が闘場に響き渡る。



――メイン会場



ガタッ!!



雪菜「か、和真さん!!!!?」



桑原が時雨に斬られた事に驚き、雪菜は椅子から立ち上がった。



――Aブロック



時雨(手応えはあったが……)



バッ!!!



時雨は素早く桑原から離れた。



桑原は片膝を地面に付いて、斬られた傷口を手で抑えていた。



傷口から血が地面に滴り落ちる。



桑原「やっぱ、流石に強いぜ時雨」



時雨(……)



時雨は自らが斬った桑原の傷口を見た。



時雨「なるほど。御主、あの瞬間に拙者の攻撃をかわせないと判断したようだな。霊気を防御にまわして、急激に肉体の防御力を高めたか」



桑原「ああ。あの状況じゃあ、かわせなかったからな」



桑原は傷口を抑えながら
ゆっくりと立ち上がった。


時雨「その様子だと見た目ほどダメージは少なそうだ。御主の防御力の高さには呆れるぞ。だが、
そうでなければあの武威を倒す事は出来なかっただろうな」



時雨は燐火円磔刀を三度投げる構えを見せた。



時雨「だが、先程より御主のスピードはその傷によって落ちているはず。
霊剣手裏剣も通じないこの攻撃を今度はかわせまい」


ビューーーーーーーン!!!!!!!!



時雨の手から燐火円磔刀がまたもや放たれた。



ゴォォォォォォ!!!!!!!!



高速回転となり桑原を襲う。



桑原(ニッ)



飛んで来る燐火円磔刀に対して桑原は不敵な笑みを見せた。



桑原「見せてやるぜ時雨!!!この試しの剣の新しい力をな!!!」



そう言うと桑原は試しの剣に霊気を込め始めた。



新型の試しの剣のその能力の一部がついにベールを脱ぐ。



続く
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