幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントAブロックの三回戦・第一試


時雨(しぐれ)
×
桑原(くわばら)



――Aブロック



桑原「見せてやるぜ時雨!!!この試しの剣の新しい力をな!!!」



そう言うと桑原は試しの剣に霊気を込め始めた。



新型の試しの剣のその能力の一部がついにベールを脱ごうとしていた。



桑原は霊気を込めながら、頭で様々な物の形を思い浮かべ始めた。



そして向かって来る燐火円磔刀に対抗するものを頭の中で作り上げていく。



(ニッ)
桑原「決めた!!」



笑みを浮かべ、
何かを閃いたような顔となった。



桑原「浦飯、おめーの技を真似させてもらうぜ」



ガシッ



両手でさらに強く試しの剣を握り締める。



ブォォォォォ!!!!!



巨大な桑原の霊気が試しの剣に伝わっていく。



そして。



ズズズ……。



試しの剣の刀身が徐々に丸い形に姿を変えていく。


ただ丸い形に変化するだけでなかった。



なんと刀身は通常の数倍の大きさまで巨大化していたのだ。



ゴォォォォォォ!!!!!!!!



桑原に燐火円磔刀が近付いて来ていた。



時雨「これで決める」



バッ!!!



先程と同じ様に時雨は空中にジャンプ。



ガシッ!!



そして空中で燐火円磔刀をキャッチ。



時雨「御主といえども、
この短時間に二度もこれを受ければたまるまい」

(狙いは拙者が斬った同じ場所)



空中から桑原を目掛けて斬りつけてくる時雨に、
桑原は丸く巨大化した刀身の照準を合わせた。



桑原「オリァァァァァァァ!!!!!!」



キュンンンンンン!!!!!!!



試しの剣に一気に霊気を伝えた。



桑原「くらいやがれーーー!!!」



ズドォォォォォォォォォォン!!!!!



丸く巨大に変化した霊気の刀身が、試しの剣の本体から離れて時雨に向かって飛んでいった。



その飛んで行く姿はまるで幽助が人間の時に、
敵に向かって放っていた霊丸そのものだった。



試しの剣の能力の一つは、頭に思い描いたものを
形で再現する能力。



但し、より巨大なものや強力になればなるほど、使う者の身体に負担がかかり、霊気や妖気の消耗も凄まじい。



以前の試しの剣でも、ある程度の変化は可能であったが、新型の試しの剣は使う者の創造力によって、
どのようなものでも作り出す事が可能である。



そのため、桑原が幽助の霊丸を放ったように遠隔攻撃ですら可能となるのであった。



――選手達の休憩場



飛影「おい幽助、あれを見ろ!!」



飛影の言葉にDブロックの闘いを見ていた幽助はAブロックに視線を移した。



幽助(!?)



スクリーンを見た幽助の顔がたちまち変化した。



幽助「おいおいおい、マジかよー……」



スクリーンに映る映像に、流石の幽助も驚きを隠せない。



それは自分が以前放っていた霊丸そのものだったからだ。



――Aブロック



桑原「いけーー霊丸!!」



桑原が叫んだその時。



グラッ



桑原(うっ…)



身体が一瞬、立ち眩みを覚えた。



桑原(やっぱ、試しの剣の能力を使っちまうと消耗が激しいぜ。あんまり使うわけにはいかねー…)



時雨「桑原には霊剣手裏剣以外の遠隔攻撃があったのか!!」



少し虚を突かれたが、
予想外の出来事にも時雨は動じていなかった。



(ニヤッ)
時雨「面白い。受けて立つぞ」



ブォォォォォ!!!!!



全身に妖気を集中した。



グォォォォォ!!!!!



そして桑原の霊丸と時雨が接触しようとしていた。



時雨「こんな霊気の塊など、斬り裂いてくれるわァァァァァ!!!!!」



ビューーーーーン!!!!!!!



燐火円磔刀が霊丸に向かって凄まじいスピードで振り下ろされた。



時雨「ぬォォォォォォ!!!!!!!」



グググ………



燐火円磔刀の刃が徐々に霊丸に食い込んでいく。



桑原(時雨、マジでスゲーぜ…。こいつもあんたには通用しねーのかよ)



時雨「ウォォォォォ!!!」


グググ……



もうすぐ燐火円磔刀が霊丸を真っ二つに斬り裂こうとしていた。



それを見た桑原は次の行動に出る。



(キッ)
桑原「こうなったら一か八かやってやる」



素早く左手に試しの剣を持ち替えて右手に霊気を集中。



桑原「次元刀ォォォォォ!!!!!!」



ピキーーーン!!!!



桑原は突然、右手に次元刀を作り出したのだった。



――メイン会場



樹「あれは次元刀」



ズキッ



樹(傷が痛むな…)



スッ



樹は桑原に斬られた顔の傷を手で触った。



樹「フッ、あれから数年もたつというのに、
次元刀を見ると傷が疼く」


――Aブロック



桑原「トゥ!!」



バッ!!!



時雨と霊丸がぶつかる空中へとジャンプ。



時雨「桑原…!?」

(奴は何をするつもりだ)



ピキーーン



桑原の右手の次元刀が光輝く。



時雨「あれは次元刀!?」



桑原「オリャァァァァァ!!!!!!!」



ビューーン!!!!!!



次元刀を素早く斜めに振り下ろした。



時雨(!?)



ザシュッ!!!!!!



時雨「グァァァァァァァ!!!!!」



時雨の絶叫が闘場に響き渡る。



次元刀で空間を斬り裂き、自らの霊丸ごと時雨を斜めに斬り裂いた。



巨大な霊丸とぶつかっていた時雨は空間ごと斬る桑原の攻撃を防ぐ事が出来なかった。



シュゥゥゥゥ……



次元刀で斬り裂かれた霊丸はその場で消滅。



そして二人は距離を置いて地面に着地した。



時雨は着地と同時に斬られた傷口を抑えて地面に膝をついた。



時雨「まさか御主が自分が放った霊気の塊を次元刀で斬り裂き、拙者を攻撃するとは…」



時雨の傷口から血が地面に流れ落ちていた。



桑原「とっさの思いつきで一か八かだったが、
なんとか上手くいったぜ」


時雨はゆっくりと立ち上がった。



時雨「しかし、よもや御主の剣がそこまでの変化をするとは予想外であった。
姿形は同じだが、
それは修行で使っていたものと全く別の剣だな」



桑原「ああ、時雨との修行で使っていた試しの剣は、武威に破壊されちまったからな。こいつは武威との闘いの後に知り合いから貰ったもんだ。この試合で初めて使ったんだ」



――選手達の休憩場



死々若丸「あいつ、ここでやっと試しの剣の能力を使ったな」



桑原に新型の試しの剣を渡した本人である死々若丸は桑原と時雨の試合を見つめていた。



死々若丸「この創造能力はある程度の力を持つものなら誰でも出来る。
失敗ヅラが自らの能力を使う事で試しの剣をどのように変化させていくのか見物だ」



――Aブロック



時雨「なるほどな。だが、これで互いに一撃ずつ入れたな。勝負の続きといくか桑原…」



桑原「大丈夫かよ。俺の傷より時雨の傷の方がかなり深いぜ」



(ニヤッ)
時雨「フッ、若造が何を言う。これぐらいの傷で拙者を倒せると思ったら大間違いだぞ」



時雨は桑原に斬られた傷口を見た。



時雨(結構深い。いい一撃だ。普段の拙者ならこの一撃で倒されていただろうな)



時雨の脳裏に桑原が修行を頼んで来た時の光景が浮かんだ。



時雨(あれから御主は短期間で拙者の想像を越える成長を遂げた。そして武威との死闘を乗り越えて、今や拙者を追い越す程にな)



桑原の顔を見つめる時雨。


時雨(師として御主に出来る事、それは安定しない御主の力を自由自在に使えるようにしてやる事だ)



カチャッ



燐火円磔刀を握り締めて構えた。



桑原(体力と霊気の消耗が激しいぜ。創造能力は控えないとガス欠になっちまう。あんまり能力が使えねーって事が時雨にばれねーようにしねーとまずいぜ)



スッ



時雨が構えたのを見て桑原も試しの剣を構える。



桑原(さっきの霊丸の件があるから、時雨は多分警戒して、燐火円磔刀を投げてはこねーはずだ。投げられると厄介だからな、
ここは剣での勝負に持っていかねーと)



時雨「勝負の続きだ!行くぞ桑原ァァァァ!!!」

(桑原よ。御主の力をもっと引き出してやる。拙者をのみ込むほどのな)



桑原「おうよ」



ズキューーン!!!!!



時雨は高速のスピードで桑原に向かって駆け出した。


深い傷であるのにもかかわらず時雨のスピードはさらに速くなっていた。



弟子への強い想いが時雨のさらなる力を限界以上に引き出していたのだ。



そしてそれは攻撃にも現れていた。



桑原「行くぜ時雨」

(ありがてー!剣での勝負で来てくれた)



桑原も試しの剣を手に、
向かって来る時雨を待ち受ける。



ガキーーーン!!!!!



桑原「ぐっ!」



ザザザ……



桑原(ス、スゲー力だ!?)



時雨の強烈な一撃で後ずさる桑原。



時雨「殺すつもりでかかって来ないと拙者を倒せんぞ桑原!!」



鬼気迫る表情で桑原に向かって叫ぶ。



桑原「…ま、負けねーぞ!!」



師弟同士の激しい剣術の勝負がここに再開された。



――メイン会場



桑原と蔵馬の試合を見つめる中でイチガキは樹に問い掛けた。



イチガキ「樹よ、仙水はまだ目覚めぬのか?」



樹「ああ…」



イチガキ「ワシらの戦力を総結集してようやくあの者を殺して“あれ”を手に入れたというのにのう」



樹「そうだな」



イチガキ「御主、奴は本当に目覚めると思うか?」



樹「必ず目覚めるさ。俺は信じている。そしてイチガキ、分かっているだろうな?お前のやるべき事を」



イチガキ「ヒョヒョヒョ、当たり前じゃ」



樹「お前が実験体で得た技術を存分に使って貰うぞ」


イチガキ「任せておくがいい。この蔵馬と梟の試合が終われば早速取りかかるわ」



樹「頼むぞ」



樹はそう言うとスクリーンに視線を移した。



樹(忍…、目覚めたお前に早く会いたい)



――裏男の体内の中



裏男の体内の中をさ迷う
北神と黎明はとんでもないものを見つけていた。



北神「やはり何度調べても間違いない。これは私の主だった雷禅国王だ」



黎明「これが幽助の父・雷禅」



裏男の体内の亜空間の中で二人は樹が雷禅の墓から持ち去った雷禅の肉体が横たわっているのを発見した。


北神「何故、国王の身体がここに…」

(大会の前日は国王の墓は荒らされた形跡はなかった。すると私達が帰った後か)



黎明(うん?)



黎明は雷禅の肉体から少し離れた場所に何か人らしき姿を発見し、それに近付く。



黎明「おい北神、あれを見てみろ」



北神「どうした黎明?」



黎明の呼びかけに北神が黎明に近付くと、そこには一人の人間が横たわっていた。



それは仙水忍であった。



黎明「こいつは人間の様だが、一体何故こんなところに?」



北神「…分からない。
だが、こんなところにいる人間だ。只の人間ではないだろう」



黎明「生きているのか?」



北神「調べてみよう」



北神が仙水に近付き、
脈を調べようとしたその時だった。



パチッ



北神・黎明(!?)



突然、仙水が目を開けた。


仙水の目が北神と黎明の姿を確認。



そしてゆっくりと立ち上がる。



仙水(……)



虚ろな瞳で二人を見つめた。



北神「お前は一体何者だ?」


北神の問い掛けに仙水は口を開く。



仙水「俺は仙水忍」



暗黒天使、再びこの世に再降臨。



続く
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