幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――亜空間



王の得体のしれない謎の技によって、臥竜と瀬流は強烈な一撃を受けた。



だが、技を放った王は臥竜の呪縛によってその場から全く動いてはいなかったのだった。



臥竜「うぐぐ…」



瀬流「一体どういう事だ…」


王の攻撃を受けて倒れていた臥竜と瀬流はゆっくりと身体を起こしたが、かなりのダメージを受けている模様。




二人の様子を見た樹は鋭い視線を王に向けた。



王(ニヤッ)



樹の視線に気付いた王は不敵な笑みを樹に見せたのだった。



樹(王め!)



臥竜と瀬流はようやくここで立ち上がる。



臥竜「一体どういう事だ。王が二人いた…」



瀬流「あれは分身体か、何かか?」



臥竜「分からない。得体のしれない技だ。動きを封じているとはいえ、不用意に近付くのは危険だ」



瀬流「どうする…」



王の放った謎の技は臥竜と瀬流の動揺を誘った。



樹(さっき臥竜は“王が二人”と口走っていたな)



イチガキ「な、何か嫌な予感がする…」



イチガキは手に持つ装置を王達に向けた。



ピピピッ



装置によって臥竜と瀬流が王に勝つ勝率が測定される。



イチガキは表示された数字を覗き込む。



数字を見るなり、イチガキの表情が見る見る内に青くなっていく。



そしてその額から冷や汗が流れた。



樹「どうしたイチガキ?」



樹は様子が明らかにおかしくなったイチガキに問い掛ける。



イチガキ「こ、これを見るんじゃ」



手に持つ装置を慌てて樹に見せるイチガキ。



装置に表示された数値には、22.3%と表示されていた。



樹「王……!」



イチガキ「まずいぞ。臥竜と瀬流が王に勝つ勝率がここまで下がるとは…」



イチガキはもはや焦りが隠せない。



イチガキ「ど、どうする樹?」



樹(まずいな。何か攻略を考えねば王を討つ事は出来ん)



王の技が樹達を追い詰めていた。



――もう一つの亜空間



地下爆弾によって、足の自由を奪われた雷俄は梟の肢体爆弾をその身に受けたのだった。



戸愚呂(兄)「あの野郎を倒したか……!?」



肢体爆弾を放った梟が雷蛾と距離を置いて地面に着地した。



梟「今度は手応えがあった」



肢体爆弾の爆発によって起きた煙りが徐々に晴れて行く。



肢体爆弾を放った張本人である梟は視線を前方に向ける。



梟の着地した場所とは少し離れた場所に、
雷蛾は肢体爆弾をまともに受けて仰向けに倒れていた。



梟「黒鵺、残念だったな」


雷蛾「ぐゥゥゥ……」



肢体爆弾の強力な一撃をまともに受けた雷蛾の身体は、もはや身動きすらままならない状態になっていた。


雷蛾のボロボロになった姿を見た戸愚呂(兄)はほくそ笑む。



戸愚呂(兄)「クックック、いい気味だ。俺様をこんな目に合わせた報いだ」



雷蛾「どうやらこれまでの様だな…」



雷蛾は肢体爆弾によるダメージで身体がボロボロの状態でこれ以上の戦闘が不可能と判断したのか?
覚悟を決めたような言葉を口にした。



それを聞いた戸愚呂(兄)は、梟に大きな声で呼びかける。



(ニヤッ)
戸愚呂(兄)「どうやら覚悟を決めた様だな。おい鴉、さっさっと奴に止めを刺してやれ!能力を食べるのは別に死体になってからでも構わんのだからな」



(ニコッ)
梟「かしこまりました」



ザッ



梟はそう言うと倒れている雷蛾にゆっくりと近付いて行く。



雷蛾(………)



観念したような言葉を口にした雷蛾であったが、
彼の目はまだ死んではいなかった。



まるで何かを狙っているような、そんな目をしていた。



雷蛾(さぁ、来るがいい)



梟が間近に来るのを待ち構える。



死を目の前にした男の顔を見るのが好きな戸愚呂(兄)は、身体を再生させながらも、雷蛾の顔を楽しそうに見る。



だが、人並み以上に用心深い戸愚呂(兄)は、雷蛾の顔を見た瞬間、何か策があるのではないかと感じ取ったのだった。



戸愚呂(兄)(あいつめ、まだ諦めてない。何か狙っていやがる)



そして雷蛾にやられた自身の身体を見る。



何度も再生する不死身の身体だが、肉体的なダメージは残る。



雷蛾の鎌によって、身体をズタズタに裂かれた状態にされ、徐々に身体を再生させているとはいえ、戸愚呂(兄)の受けたダメージは大きい。



戸愚呂(兄)「この状態で領域を広げるには、精神の負担がちょっと大きいが、鴉が万が一やられてしまったら俺もやばいぜ……」



意を決して戸愚呂(兄)は
“盗聴”の能力を使う為に領域を亜空間内に再び張り巡らせたのだった。



そして“盗聴”の効果は直ぐに現れた。



戸愚呂(兄)「ククク、心の声がばっちりと聴こえてきたぜ」



クラッ



一瞬、戸愚呂(兄)は意識を失いそうになった。



戸愚呂(兄)「ハァハァハァ……、危ねーな、意識が飛びそうになったぜ」



雷蛾(!?)



雷蛾はここで異質な力を感じ取り、戸愚呂(兄)の張り巡らした領域に気付いた。


雷蛾(これは戸愚呂(兄)のあの能力か!?奴め!あの身体でもまだ能力が使えるのか!)



そう思った時は既に遅かった。



戸愚呂(兄)「クックック、今頃気付いても遅いぜ。俺はゴキブリ以上にしぶといのだからよ」



戸愚呂(兄)の頭の中には、“盗聴”の能力により、雷蛾の考えが心の声として伝わっていた。



戸愚呂(兄)「鴉、奴にそれ以上近付くな」



戸愚呂(兄)の言葉を受けて、梟はピタッと足を止めた。



雷蛾(戸愚呂(兄)……!)



戸愚呂(兄)「鴉、奴にはまだ最後の切り札があったようだ。近付いていたら、今のお前でも危なかったぜ」


梟はチラッと戸愚呂(兄)を見る。



梟「礼をいいます戸愚呂(兄)様」



ブォォォォォ!!!!!



梟は巨大な妖気を両手に蓄積させた。



雷蛾「チッ、どうやら戸愚呂(兄)を甘く見すぎてしまっていたな……」



雷蛾は、梟を倒す為に狙っていた最後の切り札も戸愚呂(兄)の“盗聴”によって見破られた事で完全に勝機を失った。



その為、今度は本当に観念するしかなかった。



スッ



梟は右手を雷蛾に向けた。


倒れている雷蛾のまわりを梟が作り出した無数の爆弾生物が取り囲む。



梟「安心しろ。原型は残しといてやる」



雷蛾は覚悟を決めて目を閉じた。



目を閉じてほんの僅か数秒の時間でしかなかったのだが、雷蛾の脳裏には、彼が忠誠を誓う王ではなく、黒鵺として魔界にいた頃の記憶が流れた。



それは蔵馬や黄泉、他の盗賊仲間達との楽しかった頃の思い出だ。



梟「吹き飛ぶがいい」



梟が手を前にかざすと爆弾生物達は一斉に雷蛾に襲いかかったのだった。



カーーーーー!!!!!



雷蛾の身体のまわりが光に包まれる。



そして。



ボォン!ボォン!ボォン!


雷蛾(蔵馬…、黄泉…)



次々とその身に爆撃を受けて、雷蛾の意識は徐々に遠のいていく。



戸愚呂(兄)は爆撃を受けている雷蛾の姿を楽しそうに見つめる。



戸愚呂(兄)「クックック、こっちはようやく片付いたな。後は王だけだ」



雷蛾は梟、そして戸愚呂(兄)によってついに敗北したのだった。



続く
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