幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編03
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――魔界統一トーナメントDブロックの三回戦・第一試合



蔵馬(くらま)
×
梟(ふくろう)



――Dブロック



オジギソウの姿が徐々に別の姿へと変化していく。



梟「何だこいつは……!」



妖狐・蔵馬「お前を死へと誘う死に神さ」



妖狐・蔵馬の呼び出したオジギソウは実はこの植物が梟に見せた幻覚だった。



その正体は蜥蜴のような頭を三つ持ち、その口には鋭く尖った牙を持っていた。


その容貌はグロテスクであり、かなり不気味な巨大植物である。



《ギュルルル………》



植物の口から大量の唾液が地面に滴り落ちる。



予想外の植物の登場に一瞬は驚いた梟であったが、
直ぐに笑い声を上げ始めた。



梟「クックック!私を死へと誘う死神だと?笑わせるな。予想外の変化に驚きはしたが、私を殺せる力がそいつにあるとは思えないな」



妖狐・蔵馬「それはどうかな?」



妖狐・蔵馬は目の前にいる巨大な植物に命令を下す。


妖狐・蔵馬「血吹き葛よ、奴を狙え」



《ギュルルル!!!》



召喚した主の命令を受けると三つの頭は同時に口を大きく開けて奇声を発した。


ピューーーー!!!!!



口の中から血のような液体を梟に向けて放つ。



梟「こんな攻撃など!」



バッ!!



素早く上空にジャンプして液体をかわす。



スッ



梟は空中で血吹き葛に向けて右手を構えた。



梟「粉々にしてくれる」



《ギョギョギョ!!!》



ここで血吹き葛は再び梟に幻覚を見せる。



梟「むっ!?」



梟には血吹き葛が二つに分裂して見えていた。



梟「薄気味の悪い化物だ。二つに分かれるとはな」



そう呟く梟の手には妖気で作り出した爆弾がのっていた。



梟「分裂しても私にとっては関係のないこと。まとめて粉々に吹き飛ばしてやるまでだ」



(ニッ)
妖狐・蔵馬「鴉、血吹き葛を舐めてかからない事だ」



シュルシュルシュル



梟(!!)



血吹き葛の身体から大量の触手が出てきて梟の四方を一瞬で取り囲む。



梟(この触手で私を捕らえて締め付けるつもりか?)


手に持っていた爆弾を触手に向かって投げつける。



梟「無駄だ!!」



ドガーーン!!!!!!



四方を取り囲んでいた触手の一角が爆発によって崩れた。



梟は素早い動きで、包囲から脱出するべく空いた一角から飛び出した。



《ギョギョギョ》



梟(!!)



飛び出した先、そこには血吹き葛の頭の一つが口を大きく開いた状態で待ち構えていた。



妖狐・蔵馬「かかったな鴉」


ピューー!!!!



血吹き葛の口から赤い大量の液体が再び放たれた。



梟「チッ!!」



咄嗟によけようとしたが、不意をつかれていた為に、左半身に液体を浴びてしまった。



梟「おのれ!!!」



スッ



梟は両手に爆弾を作り出す。



梟の身体に液体を吐きかけた頭に向かって爆弾を投げつけた。



ドガーーーーーン!!!!


爆弾を受けた頭は粉々に吹き飛んだ。



《ギョォォォォォ!!!!!!》



頭を一つ失い、大きく怯む血吹き葛。



梟は爆風に乗りながら身体を回転させて地面に着地した。



梟「私の身体が薄汚い液体を浴びてしまった」



自分の左半身に付着した液体を見ながら呟く。



妖狐・蔵馬「フッ」



梟の姿を見ながら妖狐・蔵馬は笑う。



梟「私の汚れた姿がそんなに可笑しいか?」



妖狐・蔵馬「鴉、まだ気付かないのか?もう一度自分の身体をよく見てみるがいい」



梟「何だと?」



ズズズ……



梟が再び自分の身体を見ると、身体に付着している血吹き葛の液体が不思議な動きを始めていた。



梟「これは…!?」



突然の変化に驚く梟。



液体は梟の左半身を一気に固めていく。そう、梟の身体を石に変えているのだ。


ピシッ!



そして梟の左半身は完全に石化された。



その瞬間。



梟「ぬァァァァァ!!!!!!!!」



梟が大きな声を上げた。



何故ならば石化と同時に左半身に強い締め付け感が襲ってきたからだ。



フッ



その瞬間、妖狐・蔵馬を苦しめていたエンドレス・ボムが消えた。



妖狐・蔵馬(よし!)



梟との妖気の差で見えなかったとはいえエンドレス・ボムが止んだ事は直ぐに妖気の変化で察知した。



妖狐・蔵馬(フゥ〜…)



自分の身体の状態を確認する。



血吹き葛が梟と戦いを繰り広げていた間も妖狐・蔵馬の身体はエンドレス・ボムの爆撃を受け続けていた。


妖狐・蔵馬の身体は、今は痛みを消しているとはいえ、爆撃で生じた傷口からの酷い出血によって大きなダメージを負っていた。
そして体力と妖力も大きく消耗していた。



妖狐・蔵馬(少々危なかったな…)



――選手達の休憩所



幽助「おっしゃーーー!!いいぞ蔵馬!!」



拳を上に振り上げて喜ぶ。


飛影「毒死草以外にあんな植物を隠し持っているとはな。正直俺も驚かせられたぜ」



飛影は顔にはあまり出さないが、ピンチを抜け出した蔵馬を見て安心しているようだ。



――メイン会場



樹「蔵馬か…。やはりただでは倒れないな。梟は身体の半分を石化されたが、大丈夫なのか?」



イチガキ「ヒョヒョヒョ、案ずるでない。お前さんも知っている筈じゃ。梟は、ワシがさらなる改良を施しているという事を。あの程度では造作もない」



イチガキは王との戦いの中で、主である自分達の身を梟が守る事も案じる事もなくお構いなしに戦いを繰り広げていた為、自分達に対してより忠誠心を持つように精神面の調整と戦闘力の大幅な改善を行っていたのだ。



この魔界統一トーナメントに梟が参加しているのは、調整後のテストの為にイチガキが参加させているのであった。



だが、イチガキはこの時まだ知らない。梟が妖狐・蔵馬との試合で鴉としての記憶を取り戻している事を。


イチガキ「蔵馬、ワシの頭脳がお前を倒す時が来たのじゃ」



イチガキはそう言うと、
まるで自分の才能に酔いしれるかの様な顔で高らかに笑う。



その様子を冷めた目で見る樹。



樹(このイチガキも道化ながら随分と役に立った。だが、そろそろ用なしだ。
お前に相応しい死をいずれ与えてやるよ)



――選手達の休憩場



幽助「待てよ……」



ここで幽助の頭の中にある疑問が浮かぶ。



幽助「なあ飛影、蔵馬は電鳳との戦いで何であれを使わなかったんだ?毒死草とかいう危険な奴をわざわざ使わなくても、あの植物を使ったら電鳳に勝てたんじゃねーのか?」



飛影「さあな。蔵馬の事だ。何か考えがあるのだろう」



――Dブロック



梟「…あの液体に身体を石化させる力があるとはな。私とした事が迂闊だった。お前の持つ最強の技は二回戦で見せたあの植物(毒死草)ではなかったのだな」



妖狐・蔵馬「そうだ。俺の本当の切り札は毒死草ではない。この血吹き葛だ」



梟「この植物を使えば電鳳をもっと楽に倒せたのでないのか?私が見た限り、
奴を倒したあの植物(毒死草)は主であるお前にも危険なリスクを負う感じがした。そこまでしてこの植物を使わなかったのは何か理由がありそうだな」



妖狐・蔵馬「ああ。お前の言うとおり、この血吹き葛を使えば電鳳との戦いはもっと楽だったさ。だが、
大会でお前の姿を見た時、俺はお前と再び戦う予感を強く感じた。そしてあの時感じたお前の視線からお前は必ず俺の戦いを見るだろうと思った」



梟「…なるほど、私に手の内を隠す為か」

(あの時点での私は鴉としての記憶を失っていた。だが、何故かお前には何か強く引っ掛かるものを感じてお前を目で追っていた。当然だな、私の命を一度は奪った男なのだからな)



妖狐・蔵馬「そうだ。
お前と戦うまでは、たとえ電鳳との戦いが苦しくなろうとも本当の切り札を先に見せるわけにはいかなかった。何故なら…」



梟「何故なら?」



妖狐・蔵馬「お前を確実に殺す為だ」



ここで妖狐・蔵馬から凄まじいまでの殺気が梟に向けられる。



梟「フッ」



妖狐・蔵馬から発せられた殺気を感じ取り楽しそうに笑う梟。



梟「クックック、お前には私を殺せない」



梟は左半身を石化されたのにも関わらずその表情には焦った様子全くはなかった。



妖狐・蔵馬(左半身を石化されているのに奴の余裕は一体何なのだ……)



――選手達の休憩場



修羅「パパ、蔵馬が勝ちそうだね。あいつの身体が半分石になったし」



黄泉「いや、蔵馬はあの男には勝てない」



修羅に険しい顔で答える。


黄泉の背後でも同じ様な険しい顔をしてスクリーンの妖狐・蔵馬と梟を見つめる男がいた。



男にも黄泉の言葉は聞こえていた。



(確かに黄泉の言うとおり、蔵馬がどんなに頑張ったとしても梟には勝てないかもしれない。あの男は底が知れない)



スクリーンに映る梟を鋭い目で睨むと男は拳をギュッと握り締める。



(蔵馬が負ける時…それはすなわち死だ)



続く
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