幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編04
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――魔界統一トーナメントAブロックの三回戦・第三試合



煙鬼(えんき)
×
孤光(ここう)



――Aブロック



孤光「アンタが本気を出さないなら出させてやるよ。この試合、アンタがこのまま一方的に負けたらあたしはアンタと別れるよ」



煙鬼(!!!!!!!!!!!!!!?)



孤光の爆弾発言が煙鬼に炸裂。



煙鬼(な、な、な、な、…………なんだとォォォォォォ!!!)



愛妻家である煙鬼にとって、この孤光の衝撃の言葉は、身体に受けているダメージより遥かに大きな精神的ダメージを与えたのだった。



煙鬼「孤光、それ本気か?」



孤光「もちろんだよ」



煙鬼「本当に?」



孤光(…………)



今度は無言で頷く。



煙鬼「どうしても?」



孤光「しつこいよアンタ」


その声から不甲斐ない煙鬼に対して苛立っているのが分かる。



煙鬼は孤光の目を見てみる。



その目は真剣そのもの。



それは彼女が本気で別れると言っているということを意味する。



煙鬼「はうあ!?」



一気に血の気がひく煙鬼。


孤光「このままじゃあ!
あたしは本気で別れるよ!!」



ズガガガガガ!!!!



強烈なラッシュが煙鬼を襲う。



煙鬼はやっぱり孤光に一方的に殴られ続けている。



煙鬼(ワシ、このままじゃあ、かなりのピンチだぞ)



煙鬼に顔に焦りの色が見え始めた。



――選手達の休憩所



「ったく、煙鬼の奴は何をやっているんだ」



煙鬼と孤光の二人が結ばれるきっかけを作った男がスクリーンに映る戦いを見ている。



二人の喧嘩仲間の才蔵である。



彼は時折映し出される二人の顔の様子から、直ぐに何かあったのだろうっと直感していた。



才蔵「煙鬼の奴、顔が青くなってやがる。何か孤光に言われたな」

(しかし何であいつ孤光に手を出さないんだよ…)



――Aプロック



ここでついに煙鬼がついに打って出た。



煙鬼「ぬぅぉぉぉ!!」



孤光(!!)



ビューン



だが、煙鬼のパンチは全くキレがない。自らが無意識に攻撃をセーブした感じだった。



孤光「バカ!」



煙鬼のパンチは空を切る。


その瞬間。



孤光「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」


ズガガガガガガ!!!



煙鬼「グォォォォォ!!」


煙鬼は全身をめったうちされる。



――選手達の休憩所



今の煙鬼の動きから才蔵は理解した。



才蔵「あいつ孤光を殴る事が出来ないのか…」

(筋金入りの愛妻家だな)



――Aブロック



煙鬼と孤光
二人が出逢ったのは幽助の父親である雷禅がきっかけであった。



この二人は雷禅が喧嘩を止めて暫くした頃に夫婦になった。



元々孤光は煙鬼ではなく、圧倒的な強さを誇る雷禅の事が好きで猛烈にアタックしていた。



だが雷禅の方にはその気は全くなかったようで、
いつも孤光を軽くあしらっていた。



それでも孤光は諦めずに雷禅にアタックを続けた。



一方の煙鬼の方はというと、実は孤光と初めてあった時から彼は孤光に一目惚れをしていたのだった。



だが煙鬼は孤光の気持ちが雷禅にあるという事をある日知ってしまった。それからはその気持ちをずっと胸の中に隠していた。



煙鬼自身は孤光への想いを周囲に隠しているつもりでいたが、恋愛下手で直ぐに顔に出てしまう為、喧嘩仲間達にはばればれであった。



もちろん孤光本人にも。



孤光は煙鬼の想いを知っても特に気にした様子はなく、知らぬふりをしていた。


そんな状況だからこそ二人がまさか夫婦になるとは喧嘩仲間達は誰一人思っていなかった。



そして喧嘩仲間達は猛烈に雷禅にアタックをし続ける孤光にいつしか雷禅が根負けするのではないかと思ってさえもいた。



しかしある日を境に状況が一変した。



なんと雷禅が突然に人間の女性に心を奪われてしまったのである。



孤光は直ぐに雷禅に逢って問い詰めた。



そして孤光は知った。



雷禅の人間の女性に対する想いがあまりにも強いという事を。
そして同時に知った。雷禅を自分の方へ振り向かす事が出来ないという事も



それからの孤光は雷禅に振られた腹いせにやけ酒を飲んで荒れた。



この時、初めて煙鬼に孤光を落とすチャンスが訪れたのだった。



だが、奥手な煙鬼は行動を起こす事は出来なかった。


そんな状況の中、才蔵が煙鬼と孤光を騙してある事をした。



才蔵の悪ふさげである。



それがきっかけで二人は一緒になった。



二人のなりそめの話しはまた別の機会に語るとして、二人は夫婦になってからは、煙鬼が魔界の王になるまで田舎で平凡な生活をしてきた。



夫婦喧嘩をする事もなく、幸せな生活。



煙鬼の傍らにはいつも孤光がいた。



煙鬼にとって孤光が隣にいるのが当たり前のような状態になっていた。



孤光の爆弾発言は煙鬼の心に大きな衝撃を与えた。
孤光と別れる事なんて煙鬼にはとても考えられない事なのである。



孤光「昔のようにあたしを何で攻撃出来ないのさ!」


夫婦になる前は煙鬼は喧嘩仲間として孤光を殴る事が出来た。



しかし夫婦になって一緒に暮らしてきた長い年月が煙鬼を変えた。



夫婦になる前より夫婦になってからの方が煙鬼の孤光に対する愛情は大きくなっていた。その為、愛するものを傷つける事が出来なくなったのだ。



煙鬼(孤光がいないとワシ困る)




ドガッ!!!



煙鬼「おおう!!?」



孤光がジャンプキックで煙鬼の顎を思いっきり蹴る。



ドスン



蹴り飛ばされた煙鬼の巨体が地面に叩きつけられる。



煙鬼「痛っ……!」



タフな煙鬼といえども、
孤光の攻撃のまえにかなりのダメージを受けていた。



孤光「アンタが本気を出さないのなら次の攻撃で終わる。そうなったらアンタとはお別れだよ」



ブォォォォォ!!!!



孤光の身体から巨大な妖気が放出された。



煙鬼(これは!孤光のあれがくる)



孤光「ハァァーー!!」



フッ



孤光の姿が消える。



ダッ!ダッ!ダッ!



不気味な足音だけが聞こえてくる。



孤光は消えたのではない。あまりのスピードに消えているように見えるのだ。



孤光《不抜けたアンタにあたしをとらえる事は出来ないよ》



全盛期の雷禅を上回る孤光のスピード。



パワーなら魔界でも最強クラスの力を持つ煙鬼だが、大きい体型の為、動くスピードが遅く、圧倒的な速度で動く相手が苦手だった。


煙鬼(この攻撃をまともに受けたらワシはもうこの試合は立ち上がれないかもしれん)



煙鬼の中で絶望感が漂う。



その時だった。



《おい》



煙鬼(この声はまさか!)



《オレだよ煙鬼。分からねーか?》



煙鬼(ら、雷禅…。死んだ筈のお前がどうして!?)



《ケッ、いちいち細かい事気にすんな。それより何やってんだ馬鹿。このまま負けちまっていいのか?負けたら大切なものを失っちまうぜ。あいつは本気だ。お前が負けたら絶対に別れるだろうぜ》



煙鬼(それは分かってる。しかしワシは孤光を好きなあまり本気で攻撃出来んのだ)



《ったく、世話の焼ける奴だ。いいか始まりはどうあれ孤光はお前と本気で戦いたがっている。あいつの事が好きならそれに応えてやれ。愛しているから殴れないのはあいつに対しての優しさじゃない。お前は逃げてるだけだぜ煙鬼)



煙鬼(………)



雷禅(昔のように暴れろよ。孤光に勝て。あいつはいい女房だぜ。逃がすなよ)


その言葉を最後に雷禅の声は途絶えた。



後から考えると雷禅の声は幻聴だったのかもしれない。



だが、これをきっかけに煙鬼は変わった。



煙鬼(やれやれあいつがあの世から出てきてワシに助言していくとはのう。ワシはあいつに余程心配をかけてしまったみたいだ)



煙鬼はここでフゥ〜っと大きく息を吐いた。



そして。



煙鬼(キッ)



息を吐くと煙鬼の目つきが鋭く変化した。



煙鬼「来い、孤光」



両手を上にあげて叫んだ。


――メイン会場



小兎「煙鬼選手は既にボロボロ。このまま孤光選手の圧勝で終わってしまうのか!」



――選手達の休憩所



躯「フッ、終わらないさ」


才蔵「解説のねーちゃんは分からないみたいだな」



才蔵はそう言うとスクリーンにアップで映し出された煙鬼を見た。



才蔵、ニヤリ。



才蔵「煙鬼がついにマジになったぜ」



続く
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