幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編04
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――魔界統一トーナメントAブロックの三回戦・第三試合



煙鬼(えんき)
×
孤光(ここう)



――Aブロック



煙鬼「お互いの最強の技で一気に決着をつけるのはどうだ?」



孤光「面白いわね。もちろん臨むところよ」



激しい肉弾戦の後、夫婦対決はいよいよ最終決戦に突入する。



煙鬼「よし、行くぞ」



ブォォォォォォ!!!!



煙鬼は全力を出す為、
抑えていた全ての妖気を放出した。



孤光「ハッ!!」



ブォォォォォォ!!!!



孤光も抑えていた妖気を一気に放出した。



ドォォォォォォォ!!!



二人の巨大な妖気が一本の柱のようになって空に向かって放出されていく。



煙鬼・孤光「行くぞ(よ)!!!!」



――メイン会場



小兎「あ〜〜っとこれは!?各ブロックで第一試合の時に起きたのと同じ現象!二人共凄い妖気です!!!」



「うぉっ!スゲー妖気!?」



「あの夫婦、揃いも揃ってマジでバケモンだぜ!!」


――選手達の休憩所



才蔵「あいつら、ここで一気に勝負をつける気だ」



躯「あれがあいつらの今の全力。妖気はやや煙鬼の方が弱いか」

(最初に一方的に攻撃を受けた影響なのだろうな)



――Aブロック



(キッ)
孤光「アンタ覚悟はいいかい?」



煙鬼を鋭い視線で睨むと構えて戦闘態勢に入る。



(キッ)
煙鬼「それはワシのセリフだぞ」



両腕を少し後ろに引いて、構える。



お互いに構えた状態で暫くの間、沈黙が続いた。



沈黙の中、最初に動いたのは孤光だった。



孤光(ニッ)



フッ



不敵な笑みを浮かべると孤光はその姿を一瞬で消し去る。



ダッダッダッダッ



ダッダッダッダッ



不気味な足音だけが聞こえてくる。



煙鬼(…………)



煙鬼はその場で構えたまま、全く動かない。



フッ



時折、孤光の姿が見え隠れする。



孤光の妖気はより攻撃的に、そしてどんどん大きくなってきている。



煙鬼(来い、孤光。ワシは負けんぞ)



孤光(アンタ、この喧嘩はアタシが勝つよ)



そして。



フッ



孤光が煙鬼の目の前に姿を現した。



姿を現した孤光はその神速で身体を分身させているように見せていた。



その数はおよそ16。



そして16の姿に分かれた孤光が一斉にパンチを放つ。



孤光「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ」



彼女は両手に全ての妖気を集中していた。



――選手達の休憩所



才蔵「出た!孤光の光爆神拳」



――メイン会場



小兎「あーーーーっと!!これは孤光選手が前大会で九浄選手との試合で見せた光爆神拳。ここで使ってきました!!!」



――Aブロック



ドガガガガガガ!!!!!!!!!



孤光の凄まじいラッシュが煙鬼にヒット。



煙鬼「ぐっ!!」



孤光「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!」

(頑丈なアンタを倒すには圧倒的な数の攻撃をくらわすしかない。この喧嘩はもらったよ)



次々と繰り出される孤光のパンチを全身に受ける煙鬼。



孤光のパンチは煙鬼の腹部にめり込んでいく。



――メイン会場



小兎「これは凄い!!!孤光選手のラッシュの前に煙鬼選手はなすすべがありません!!!」



「スゲー!なんてラッシュだ。これは孤光の勝ちだぜ」



「ついに魔界の王が敗れる時がきたか」



――選手達の休憩所



これで勝負は決まったと観客の誰もが思った。
だがこの二人は違う考えだった。



才蔵「あいつ、いつの間にあんなものを。驚いたぜ」


躯「あれは三年前にはなかったな。あれが煙鬼の新たな力か」



――Aブロック



孤光のパンチは既に煙鬼の身体に数千発はヒットしていた。



孤光「やっぱりおかしい。あたしのパンチの威力が殺されているような気がする…」



孤光の言葉に煙鬼はニヤリと笑う。



煙鬼「どうやら気付いたようだな孤光」



孤光「アンタ…。こんな能力をいつのまに」



孤光の放った数千発のパンチは全て煙鬼にヒットしていた。だが、そのパンチは煙鬼には全くといって通用していなかった。



見た目こそ変化はないが、煙鬼の身体全体が衝撃を弾く弾力性のあるゴムのような状態になっていたのだ。



煙鬼「お前はワシが時々、トレーニングをしていたことは知っておろう。これは密かにワシが編み出していたもの。まだまだ未完成で長時間この身体を保つのは無理だがな」



孤光(………!)



ここで孤光の攻撃の手が一瞬止まる。



煙鬼(キッ)



この瞬間を煙鬼は見逃さなかった。



ブョーーン



孤光「うっ」



パチン



煙鬼が腹に力を込めると孤光の拳を一気に弾きとばした。



煙鬼「フゥ〜。やれやれだわい。正直この身体を保つ事が限界に近付いていたから少し危なかったぞ」



そう言うと煙鬼は右腕を見つめると妖気を込め始めた。



ボン!!




すると煙鬼の右腕の筋肉が急激に膨らむ。



煙鬼「ウォォォォォ!!!!!!」



バッ!!



一気に膨らんだ右腕を孤光に向かって突き出した。



煙鬼「行くぞ孤光ォォォォォォ!!!!」



ドォォォォォォ!!!!!!!!



孤光(!!)



煙鬼の右腕から孤光を目掛けて何か生き物みたいなものが飛び出してきた。



現れたのは邪悪な顔をした上半身だけの鬼。下半身からは凄まじいまでの煙が出ていた。



姿形は違えど飛影が放つ黒龍波にどこか似ていた。



(ニッ)
孤光「来たわね!負けないよアンタ」



――メイン会場



小兎「あーーーっとこれは“邪鬼煙風波”前大会で躯選手を敗ったあの技です」


――選手達の休憩所



躯(ピクッ)



小兎の解説に反応する。



小兎の解説通り、前大会で、この技を身体に直接受けてしまった躯は煙鬼に敗れた。



邪鬼煙風波を鋭い視線で見つめる躯。



躯(あの技でオレは確かに一度は敗れた。だが煙鬼よ、同じ技はオレには二度と通用しないからな)



――Aブロック



ガシッ!!!!



孤光「くっ!!」



邪鬼の両手の拳を両手で受け止める孤光。



《グォォォォォ!!!》



唸るような声を上げる邪鬼。



ズズズズズ………



孤光の身体は邪鬼煙風波の力に押されて後ろに下がっていく。



だが、孤光の顔にはまだまだ余裕が感じられる。



孤光「負けないよ!!」



ブォォォォォォ!!!!!!!!



そう言うと孤光は体内の妖気を一気に放出。



すると邪鬼煙風波を受け止めている両手に力が入る。


《グォォォォォォォ!!!!》



孤光「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!」



邪鬼煙風波の力を孤光の力が徐々に勝り始め、押し返しだした。



――メイン会場



小兎「こ、これは凄い!!孤光選手、邪鬼煙風波を押し返してます!!」



「あの女、マジでスゲー……」



「…オレならあんな女を絶対に嫁にはしないな…あんな女を嫁にするなんて煙鬼の気がしれないぜ」



――Aブロック



孤光「アンタのこれを破ったらもう一度アタシの光爆神拳を撃ち込ませてもらうよ。アンタの話しじゃあ、さっきの身体を作るのはもう無理そうだしね。これが通じなければアンタにアタシを倒す事は出来ない」



孤光は心の中でこの喧嘩の勝利を確信した。



だが。



煙鬼「それはどうかのう。これも試すのは初めてだが、見せてやるぞ孤光」



煙鬼は左腕を突き出す。



孤光(何?)



ボン!!



右腕と同じように筋肉が急激に膨らむ。



孤光(!?)



煙鬼「邪鬼煙風波だ!!」


ドォォォォォォォ!!!!!!!



煙鬼の左腕からもう一発の邪鬼煙風波が孤光を目掛けて放たれた。



孤光「そんなまさか!?」


予想外の出来事に孤光は驚愕した。



煙鬼「よし!上手くいったぞ!」

(飛影と周の喧嘩をヒントに思いついた技だ)



《グォォォォォォォ!!!!!!》



二発目の邪鬼煙風波が孤光を襲う。



孤光「うっ!!うわァァァァァァァ!!!!」



ズドドドド…………!!!!!!!



邪鬼の両手から凄まじいラッシュが放たれる。



孤光「うっ………!!!」


孤光は二発目の邪鬼煙風波をまともに受けた。



そして攻撃を受けた事で態勢が崩れて、せっかく受け止めていた一発目の邪鬼煙風波の攻撃も受ける事になった。



――選手達の休憩所



才蔵「勝負あったな」



躯「どうやら飛影の技をヒントにしたようだな。流石は煙鬼だ。あんな風貌でも戦いのセンスだけなら雷禅に全く引けをとらない」



――Aブロック



二体の邪鬼が孤光にラッシュをくらわしている。



孤光は地面に倒れて、
もはやなすすべもなく邪鬼に殴られ続けていた。



煙鬼(………)



パチン



煙鬼は右手の指を鳴らす。


フッ


すると二体の邪鬼は一瞬で消え去った。



孤光「き、消えた…」



煙鬼(………)



孤光はゆっくりと立ち上がる。



煙鬼「大丈夫か孤光」



孤光「アンタ…」



孤光は夫の顔を見つめる。


そこには普段の優しい夫の顔があった。



孤光「馬鹿だね。何で途中で邪鬼を消したんだい。あそこで消したらアタシは大してダメージを受けていないよ。これならまだまだ戦えるよ」



煙鬼「そうだろうな。
自分で邪鬼を出しといてなんだが、やっぱりお前が痛めつけられているのを横から見ているのは耐えられなくてな」



孤光「やれやれ。本当にアンタは馬鹿だよ」



孤光は煙鬼に近付くとその胸に顔を埋めて目を瞑る。


孤光「そして優しい」



煙鬼は少し照れたのか、頭をポリポリと掻いていた。


孤光は目を開けると下から煙鬼を見上げる。



孤光「ちょっと悔しいけどこの喧嘩はアタシの負けだ。アンタが邪鬼を消さなければアタシはあのまま倒されていたからね」



煙鬼「孤光…いいのか?」


孤光「ああ」



孤光は潔くこの喧嘩の負けを宣言した。



その顔は少し悔しげではあったが、満足しているようだった。



審判に合図して試合が終わった事を伝えた。



審判「Aブロックの三回戦・第三試合は煙鬼選手の勝利です!!」



――メイン会場



小兎「あーーーっと注目の夫婦の対決、ついに勝敗が決しました。勝者は夫である煙鬼選手。魔界の王としての意地を見せてくれました!!」



――選手達の休憩所



幽助と飛影が休憩所に戻ってきた。



飛影「幽助、どうやら次のお前の対戦相手が決まったようだぞ」



飛影は既にBブロックの第二試合をあっという間に
終わらせて四回戦に駒を進めていた。



幽助「勝ったのは煙鬼のオッサンか。おもしれー」



幽助は身体の中に流れる雷禅の血が熱く燃えているのを感じた。



飛影「チッ、あの野郎、オレの技を真似していやがったぜ」



会場からアナウンスが流れる。



《これよりAブロックの第四試合を始めます》



飛影「幽助、出番だ」



幽助、ニヤリ。



幽助「この試合に勝ってオッサンと四回戦で勝負だぜ」



幽助はそう言うと笑顔で闘場へと繋がる階段を走って駆け上がっていったのだった。



続く
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