幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編04
3ページ/35ページ

――魔界統一トーナメントDブロックの三回戦・第一試合



蔵馬(くらま)
×
梟(ふくろう)



――Dブロック



蔵馬(桑原君もあれだけ頑張っているんだ。俺もこのまま終わるわけにはいかない)



桑原の霊気が瀕死の蔵馬に最後の反撃する力を与えようとしていた。



ググッ




蔵馬はゆっくりと立ち上がる。



鴉「フッ、まだそんな力が残っていたのか」



ボンッ!!!



蔵馬の肩をエンドレス・ボムが爆撃。



だが、蔵馬は倒れない。



桑原の霊気が蔵馬に限界を越えた不屈の闘志を与えていたのだ。



蔵馬「鴉、俺の最後の力を見せてやる」



鴉「私にはお前にそんな力が残っているようにはとても思えないが」



蔵馬「残っているさ。一つだけな」



鴉「それは何だ?」



蔵馬は普通なら死んでいてもおかしくない程の傷を受けていた。



そして妖狐の姿に戻るだけの妖気も残っていない。



そんな蔵馬の最後の力。



それは。



蔵馬「俺の命だ」



鴉「何!?」



蔵馬「ハァァァァァ!!!!!!」



ブォォォォォ!!!!



鴉(何だと!?)



蔵馬の身体から凄まじいまでの妖気が放出された。



放出された妖気は巨大な柱のように高く天に上る。



鴉「どこにこんな力が!?」



蔵馬「行くぞ鴉!!!!!!」




カーーーーー!!!



蔵馬の全身が光に包まれて輝く。



そして。



ドーーーーーン!!!



蔵馬によって召喚された吸血植物が一斉に鴉に襲いかかる。



それはまるで暗黒武術会の決勝戦の再現のようだった。


鴉「これは吸血植物か!!」



蔵馬「俺の命を妖気に変えた最後の一撃だ!!!。俺と一緒にお前も死ぬんだ鴉!!!」



鴉「チッ!」



スッ



鴉は両手に爆弾を作り出した。



鴉「妖狐ではない人間の姿のお前の攻撃など、私には通用しない」



放たれる二つの爆弾。



蔵馬「ウォォォォォ!!!!!!!」



―Aブロック



ドーーーーン!!!



Bブロック、Cブロックに続いて巨大な妖気がDブロックから放出された。



桑原「く、蔵馬!?」



蔵馬から放出された妖気を感じ取った桑原はいつもと明らかに違った妖気に戸惑いを隠せなかった。



時雨「蔵馬……」



それは蔵馬と前の大会で死闘を繰り広げた時雨も同様だった。



一瞬、蔵馬の只ならぬ妖気に動きが止まった二人であったが、今は蔵馬の事を心配している時ではなかった。



最後の決着をつける時がきたのだ。



時雨「拙者は全ての力をこの一撃に込める。受けてみろ」



ズキャーーーン!!!!!!!!



時雨の高速回転はさらに速くなり、通常の魔風斬の数倍の速さであった。



桑原「これが最後の勝負だ時雨ェェェェェ!!!」



桑原はさっきのように時の剣で円を描くと一気に領域を広げた。



そして時の剣を構える。



桑原の構えは師である時雨の最強の技。



今まで明らかにしていなかったが、この技の名は、
「神・即・斬」



神ですら容赦なく斬り捨てるという意味合いだ。



あの最強の敵であった武威もこの技で撃破した。



最後の勝負に桑原はこの技を選択した。



桑原の構えを見て時雨はニヤリ。


時雨(最後の勝負に拙者の最強の技を選んだか)




桑原「行くぜェェェェェ!!!!!!」




時雨「たとえ時を遅らせたとしても、拙者の全ての力を込めた魔風斬は時を遅らせたとしても簡単には防げないぞ」




ドーーーーーン!!!!!!!



攻撃を先に仕掛けたのは時雨だった。



時雨は完全に桑原が時を遅らせてくると思っていた。



だが、桑原はここで時間を遅らせるような事はしなかった。



桑原「ウォォォォォ!!!!!」



ドーーーーン!!!!!!!!!



桑原は時を遅らすどころか、なんと驚異的なスピードで時雨に向かって行ったのだった。



時雨「な、何!?」

(桑原、御主まさか!?)



そう、桑原は時を操る能力で、自らの時を進めたのだ。



目では捕らえる事の出来ない最強のスピードを誇る技に真っ向からぶつかり合う為に。



時雨「面白い!!御主には本当に驚かされる」



桑原「時雨!いや師匠。あんたを俺は越えてみせる!!」



時雨「越えられるなら越えて見せろ桑原ァァァァァ!!」



ガキーーン!!!!




時の剣と燐火円磔刀がぶつかり合う。



バチバチバチ!!!!



接触した二人の身体から激しくエナジーが放出される。



桑原「時雨ェェェェェェ!!!!!」



時雨「桑原ァァァァァ!!!!!」



バチバチバチ!!!




――メイン会場



雪菜「和真さん!!」



ガタッ



座っていた椅子から思わず立ち上がる雪菜。



――Aブロック



神・即・斬と魔風斬、二つの技のぶつかり合いは続く。



桑原「ウォォォォォォ!!!!!!」



時雨「ヌゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」



両者は一歩も引かない。



桑原「ダリャァァァァァ!!!!!!」



ブォォォォォォ!!!!



桑原の爆発的な霊気が時雨の妖気を遥かに上回る。



時雨(!!)



パキン!!



何かの金属が真っ二つになるような音が響き渡る。



時雨(…燐火円磔刀が…………!?)



ドスッ



ドスッ



地面に真っ二つになった燐火円磔刀が突き刺さる。



そして。



スッ



時雨(………)



時の剣の剣先が時雨の喉の前に突き付けられていた。


桑原は師である時雨に打ち勝ったのだ。



桑原・時雨(…………)



お互いの目を見つめ合う二人。



二人が見つめ合ってどれぐらいの時間が過ぎたのだろう。



僅か数十秒の間ではあったが、二人にはとても長い時間に思えた。



桑原の時雨に対する想い。



そして時雨の桑原に対する想い。



この試合は二人の強い想いがぶつかり合う戦いだった。



師弟対決…その勝敗がついに決したのだ。



沈黙の中で先に口を開いたのは時雨だった。



時雨「……見事だ桑原。拙者の負けだ」



桑原「時雨…」



時雨「まさか時を進めることも出来るとは真に驚いた」



桑原「あの瞬間、時を遅くしても時雨の攻撃をかわせない。そんな気がした。俺は時を遅く出来るならその逆も出来るかもしれない。土壇場で一か八か試してみたんだ」



時雨「フッフッフ。御主にはかなわんわ」



シュゥゥゥゥゥ……



二人の放出した巨大な霊気と妖気が消え去った。



そしてそれと同時に桑原の出していた時の剣、そして領域も消えた。



桑原「時雨、さっきは頭ん中がいっぱいいっぱいで気付かなかったが、俺を斬らずに試しの剣を弾いたのは俺に試しの剣をなしに時の剣を出せるように鍛えるためだったんだな」



時雨「フッ、御主は追い込まれないと力を出さないタイプだ。一種の賭けだったが、御主なら出来ると信じていたぞ」



桑原「時雨に勝ちたい。勝って俺を鍛えてくれた時雨に恩を返したい。俺にはその気持ちでいっぱいだった」



時雨「拙者は御主の成長がみれて満足だ。この大会に悔いはない」



桑原「時雨…」



ガシッ



死闘を終えた師弟は力強く握手した。



それを見た審判がここで試合の終わりを宣言した。



「Aブロック三回戦の第一試合は桑原選手の勝利です」



激しい師弟対決を制して、桑原和真、四回戦へ進出。



続く
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ