幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編04
34ページ/35ページ

――魔界統一トーナメントBブロックの四回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
飛影(ひえい)



――Bブロック



容赦ない飛影の攻撃は続く。



棗(無理だ。今動くと一気にやられてしまう…!私はこのままやられてしまうの?)



《そうでもないぜ》



棗(!?)



突然、何者かが棗に念信で語りかけてきた。



棗(こ、この声はまさか……!?)



《この状況を打開するのは簡単さ。あんたの秘められた“あの力”を解き放てばいい事だ》



棗(楽越……!!?)



圧倒的な飛影の強さに苦戦を強いられていた棗に突然念信を送ってきたのは、Cブロックで酎と激戦を繰り広げている楽越だった。



棗《貴方は一体何者なの?》



楽越《オレか?オレは何者でもない。只のバトルマニアさ。目の前で戦っている酎って男もなかなかのバトルマニアだ。面白いぜ》



棗《貴方は只のバトルマニアなんかじゃない。邪悪な何かを感じる》



棗と楽越が念信をしている間も飛影の激しい攻撃は続いている。



棗「くっ!!」



ズガガガガガ!!!!



飛影の強烈な煉獄掌によって楽越との念信は一時的に途絶えた。



棗(やられるのは時間の問題だ。でも私はこの喧嘩だけは負けられない!!)



棗の脳裏に雪菜の顔が浮かぶ。



棗(雪菜ちゃんの為に!!)


楽越が再び念信を送ってくる。



楽越《あんたはこの試合はどうしても勝ちたいんだろう?雪菜って女の為に》



棗《どうしてそれを…!?貴方はやっぱり相手の心の中が読めるの?》



楽越《さあな。そんな事より思い出すんだ。幼い頃の記憶を》



棗(幼い頃の記憶…)



ドクン



楽越の幼い頃の記憶”という言葉を聞いた棗の意識が突然なくなった。



ブォォォォォォ!!!



棗の妖気が急激に上がった。



――選手達の休憩所



鉄山「あれはオレを倒した時の棗だ!!」



九浄「棗……!」



――Bブロック



棗「ハッ!!!」



ガッ!!



飛影の攻撃を棗は簡単に弾いた。



飛影(何だと!?)



驚く飛影。



棗(……………)



ズン!!!



体重を前に掛けて踏み込む。



ビューーン!!!!



棗は必殺の一撃を放つ。



飛影「速い!?」



棗が放ったこの必殺の一撃は、これまで棗が放っていたものとは比べものにならないほどスピードが速くなっていた。



ドゴォォォォォォ!!



棗の必殺の一撃が飛影の腹部にヒット。



速さだけではない。その破壊力は通常の必殺の一撃の数倍は増していた。



飛影「ガハッ!!」



口から大量の血を吐き出して吹き飛ばされる飛影。



ドシャァァァァ!!!



飛影の身体が地面に叩きつけられた。



棗(はっ!?)



棗に意識が戻った。



目の前に倒れている飛影を見て驚く。



棗「これは…。私がやったの!?」



困惑する棗。



楽越《フッ、今ので分かっただろう?あんたの力はまだまだこんなものじゃない。真の力を全て出せば目の前の男はあんたの敵じゃない》



棗《怖かった…。私の意識が完全に無くなっていた。今の力で私は鉄山を倒したのか…》



楽越《そうだ。あっという間にな。ま、正確に言うと今のはもう一人のあんたがやった事だ》



棗《も、もう一人の私!?》



楽越《そうだ。気付いていないみたいだな。幼い時のあんたが作り出したもう一人の棗》



棗《何を…言っているの…》




楽越《子供の時のあんたが自分の心を壊さない為に作り出した別人格ってわけさ。フッ、あんたはオレにとって非常に興味深い妖怪だ》



飛影「チッ…」



飛影がゆっくりと立ち上がる。



棗に受けた腹部の傷を見る。



飛影の目つきが鋭くなる。


飛影(この威力、まるで全力の時の躯のようだ)



そして棗に視線を向ける。


飛影(妙だぜ。また前の妖気に戻っている)



楽越《あんたの今の攻撃を受けたあいつは恐らく勝負をつけに来ると思うぜ。
負けたくなければ迷う事はない。もう一人の棗を完全に解き放つんだ》



棗《怖い…。私が私でなくなる。今の私が意識を失えばもう私に戻れない…、そんな気がする。私の中にもう一人の私がいるなんて信じられない》



楽越《フ〜ウ、やれやれだぜ》



飛影「さっさと勝負をつけさせてもらうぞ」

(どうやらあの女、見た感じ、さっきの力をコントロール出来ていない感じだ)


スッ



飛影は右手を棗に向けた。


棗「黒龍波!?」



飛影「面倒になる前にカタをつけさせてもらうぞ」



ピカーー



飛影の右胸の魔封紋が光る。



飛影「邪王炎殺黒龍波ァァァァ!!!」



ドゥォォォォォ!!!!!


飛影の右手から黒龍波が放たれた。



――メイン会場



小兎「あーーーっと!!飛影選手がついに黒龍波を放ちましたーーーーーー!!!!」



――選手達の休憩所



周「今の飛影が放つ黒龍波の威力はオレとの喧嘩で放った双龍波以上だ。棗…ヤバいぜ」



九浄「棗!!」



――Bブロック



グォォォォォ!!!



棗に襲いかかる黒龍。



棗「クッ!!」



棗はガシッと黒龍の頭を受け止める。



ズズズ……



黒龍の力によって後ずさる棗。



棗「只の黒龍波なのになんて力だ!!、防ぎきれない!!!!!」



《ここであっけなくあんたが負けるのを見ても面白くないな。オレがもう一人のあんたを完全に呼び覚ましてやるよ》



楽越の念信が聴こえてくる。



棗《ら、楽越!!》



ドクン、ドクン



棗の頭の中が真っ白になっていく。



棗「クッ…意識が……」



楽越《しっかりとオレを楽しませてくれよ棗》



その言葉を最後に楽越からの念新は途絶えた。



ドクン、ドクン




棗「雪菜ちゃん…、九浄、酎…………!!」



プツンと棗の意識は完全に途絶えた。



そして“目覚める”。



ブォォォォォォ!!!



棗の妖気が再び急激に上昇。



――選手達の休憩所



九浄「棗!!?」



九浄の顔色が変わる。



――Bブロック



パチっと棗の目が開く。



棗「フッ」



棗、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。



棗「この程度の力で私を倒せるものかーーーーーーー!!」



棗は受け止めている黒龍の頭に妖気を込める。



そして。



ズバァァァァァ!!!



なんと棗は黒龍を頭から真っ二つに引き裂いたのだった。



飛影(!!!!!!)



――選手達の休憩所



幽助(!!!!!!)



黄泉(!!!!!!)



――メイン会場



小兎「ひ、引き裂いたァァァァァァ!!!!!」



――Bブロック



グォォォォォォ!!!!!!!!



黒龍は断末魔の悲鳴を上げると消滅した。



棗「ククク、大した事のない技だ」



飛影「何だと!」



棗「やっと表に出られた。悪いがあまり力を使う事に慣れていないからな。手加減は出来ないぞ」



飛影「この女は一体……!?」



飛影の額から汗が滴り落ちる。



この時飛影はこれからこの試合が壮絶な戦いへと突入していく事を感じ取ったのだった。



続く
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ