幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編04
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――選手達の休憩所



時は一時、現在に戻る。



時雨との戦いで、時を操る能力を披露した桑原に楽越は接触してきた。



桑原「それで、俺に一体何の用だ?」

(こいつ、近くで見るとなんか浦飯に雰囲気が似ているな)



楽越「お前の闘いはずっと見させてもらっている。人間とは思えない闘いぶりだ。本当に大したものだ」



楽越のほめ言葉に桑原は思わずニコリ。



桑原「照れるじゃねーか」



突然話しかけてきた楽越をやや警戒気味の桑原であったが、この楽越の言葉に気をよくして警戒心を解いたのだった。



雪菜はそんな桑原の隣から楽越の様子を伺う。



雪菜(この人は妖怪……?感じる気は確かに妖気だけど、どこか違和感を感じる)



楽越は雪菜の視線に気付いた。



楽越「隣の可愛い姉ちゃん、俺の顔に何かついてるかい?」



雪菜「い、いえ!!?」



慌てて誤魔化す雪菜。



楽越「フッ、それならいいんだけどな。話しは戻すが、俺はさっきの試合であんたが見せた能力に興味があってな」



桑原「俺の能力?」



楽越、ニヤリ。



その笑い方はどこか二人を狙った金髪の男・比羅を彷彿させるものがあった。



雪菜(…………!?)



雪菜は何か分からないが強く胸に引っかかるものを楽越から感じ取ったのだった。



楽越(闘いに夢中ですっかりあんたの事を忘れていた。あんたが三回戦で見せたあの剣のおかげで思い出したぜ。おそらくあれが、比羅が言っていた俺達に必要な能力だ)



桑原「あ〜、おめーが言っているのは時の剣の事か」


桑原は楽越の聞いてきた能力の意味がようやく分かったようだった。



楽越「試合を見た限りだと時を遅くする能力、そして時を加速させる能力の二つがあるような感じだったが、他にもまだバリエーションはあるのか?」



桑原「フッフッフ、それは秘密だぜ。なんていっても時の剣は最強の俺の秘密兵器なんだからよ」



桑原の額からタラリと汗が流れる。



(本当はもうないんだけどな…。カッコ悪いから言えねー)



楽越「そうか。まあいいさ。あんたの次の相手は修羅ってガキだろ?見た感じだとあいつは強いぜ。
今のあんただと他に何かバリエーションがないと勝てないぜ」



桑原「…分かってるよ。
それよりおめー、俺が修羅と戦うってよく知ってたな」



楽越「フッ、他の参加者の事ぐらいは把握しているよ。まあ頑張れよ。検討を祈るぜ」



楽越はそう言うと桑原と雪菜の前から去って行った。


歩きながら楽越は桑原という人間について考える。



楽越(なるほど…。あれが桑原か。面白い人間だ。
あいつなら本当に俺達を助ける力になるかも知れない)



楽越はこの時から桑原和真という人間に対して強い興味を抱く事になるのであった。



一方の桑原はというと



桑原「なんか変な野郎っすね、雪菜さん」



特に楽越を怪しむ事はなく、能天気であった。



雪菜(………)



だが、雪菜の方は桑原とは逆に楽越を警戒しているような神妙な顔で楽越の後ろ姿をずっと見ていた。



桑原「雪菜さん??」



楽越の後ろ姿を見つめたまま、まばたきひとつしない雪菜を心配して顔を覗き込む。



雪菜「あ、和真さん、な、何でもないです!!」



ようやく気付いた雪菜は慌てて誤魔化す。



桑原「本当っすか?」



雪菜「は、はい」



桑原「それならいいんすけど」



とりあえず納得したようだ。



雪菜(楽越……)



雪菜は楽越は果たして味方なのか?それとも敵なのか?それを考えていた。



楽越との対面はほんの僅かな時間だったが、彼女の心の中に強烈なインパクトを残したのだった。



――救護室



棗「そっか…」



九浄「ああ…。蔵馬は残念ながら敗れてしまった」



九浄は蔵馬と鴉の試合の詳細を一通り棗に説明し終えるとフゥ〜っと一息つく。



棗「蔵馬は負けたんだね。彼のあんな気を感じていたからちょっと心配だったのだけど、生きていて良かったわ。でもあの黄泉が蔵馬を助けに入ったとはね。驚いたわよ」



黒鵺の乱入は結局、黄泉と鴉以外には知られておらず、二人がその事を話していない為、公にはならなかったのだった。



棗「そういえば大会は今はどうなっているの?」



九浄「三回戦もそろそろ終盤に差し掛かる頃ではないかな」



棗「もうそんなに時間が経っているのか。
そういえば私が眠っている間に他の試合では、大きな動きがあった試合はあったの?」



九浄「ああ。見ているみんなを驚かした予想外の試合があったよ。蔵馬の試合の後のDブロクの第二試合だ」



棗「Dブロクの第二試合?え〜と確か蔵馬の後は黄泉だったよね」



九浄「そう。その黄泉さ。あいつの対戦相手の仙道って奴がまた凄い奴でな」



棗(仙道???)



棗は仙道の名前を聞いて不思議そうな顔をした。



それは今勝ち残っている選手の中には彼女が実力を知る者以外は大した力の持ち主はもう残っていなかったからだ。



棗「その仙道ってのは強かったの?」



九浄「ああ。二人の戦いはかなり激しい戦いだったぜ」



棗「隠れた実力者がまだいたって事ね」



九浄「そういう事だ。後は大きな動きってわけではないが、俺達にとっては注目の試合があったよ。Aブロクの三試合目だ」



棗「Aブロクの三試合目…。それに私達にとって注目の試合……」



九浄「フッ、分からないか棗?」



棗「う〜ん……」



腕を組んで一体誰と誰の対決なのか、真剣に頭の中で考える。



そして



棗「あっ!!!」



棗は分かったのか、
大きな声を上げる。



九浄、ニヤリ。



九浄「気付いたか?」



棗「煙鬼と孤光!!」



そう、Aブロクの第三試合は前大会の覇者の煙鬼と
その妻である孤光による
注目の夫婦対決が繰り広げられていたのだった。



棗「あの二人の対決なら私達にとって最高に注目の対決になるわね。二人が“ケンカ”をするなんて1000年ぶり以上だもの」



九浄「そうだな。雷禅に振られた孤光が半分やけっぱちで煙鬼と一緒になって以来になるからな」



棗「私はあの予想外のカップルの誕生に唖然としたわ」



九浄「確かにな」



二人はその後、昔の思い出を懐かしむように沢山、話し込んだ。



棗「あっ!」



昔の思い出話しの途中で棗は突然に何かを思い出したように声を上げた。



九浄「うん?どうした棗??」



棗「私は肝心な事を九浄に聞き忘れていたよ」



九浄「何だ?」



棗「黄泉と仙道の試合の結果と煙鬼と孤光の試合の結果よ」



九浄「あ〜、そうだった、そうだった」



九浄も結果を話していなかった事をここで思い出して頭をポリポリと掻いた。



九浄「試合はだな……」



九浄は再び棗に黄泉と仙道、そして煙鬼と孤光の試合について語り始めたのだった。



黄泉と仙道(黒鵺)による
旧友同士の激突。



そして煙鬼と孤光による
最強の夫婦対決。



時計の針を再び戻して
二つの戦いを追いかける。



続く
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