幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編04
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――魔界統一トーナメントBブロックの四回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
飛影(ひえい)



――Bブロック



棗「やっと表に出られた。悪いがあまり力を使う事に慣れていないからな。手加減は出来ないぞ」



飛影「この女は一体……!?」



棗の全身から邪悪に満ち溢れた妖気が放出されている。



飛影(まるで別人だぜ。妖気の質がまるで違う)



棗「久しぶりに表に出られたんだ。しっかりと私を楽しませてくれよ」



飛影「やれやれだぜ」



ズキューーーン!!!



棗に向かって駆け出す飛影。



棗は自分に向かって来る飛影を見ながら不敵な笑みを浮かべる。



ズガァァァァァン!!!!!!



ぶつかり合う二つの巨大な妖気。



――メイン会場



そして時は現代に戻る。



雪菜「棗さん…一体何があったの…」



「フッ、面白い事になっているようだな」



雪菜(!)



雪菜の横から誰かが声をかけた。



雪菜「む、躯さん!」



雪菜の前に姿を現したのは先ほど、痩傑を倒して試合を終えてきたばかりの躯であった。



躯は雪菜の横に並ぶとスクリーンに視線を移す。



躯「棗のあの妖気は鉄山戦の最後で見せたものと同じだ。桁違いに妖気が高くなっている」



雪菜「…私にはあの棗さんは棗さんであって棗さんでないように見えます…」



躯「確かに妖気の質が以前とはガラリと変わっている。あれはまるで別人だ」



雪菜(………)



雪菜の美しくて白い顔は、棗を心配しているのか、今は青白くなっていた。



姉のように慕う棗の変わりようにショックを隠し切れないのだ。



躯「あいつらが心配か?」


雪菜「はい……」



喉の奥から絞り出すようなか細い声で答える。



雪菜「棗さん……」



スクリーンに次々と映し出される棗の姿。



常に邪悪な笑みを浮かべる今の棗は誰もが知っている優しい棗の姿ではなかった。



そんな棗の姿を見ているうちに雪菜は心の中が
どんどん切なくなり、胸を強く締め付けられるような感じがした。



そして知らず知らずに雪菜の目から涙が地面にゆっくりと流れ落ちた。



涙は地面に落ちると結晶となりやがて宝石へと姿を変えた。



躯は無言でそれを拾う。



そしてスクリーンに映し出されている飛影を見た。



飛影は棗の激しい攻撃の前に苦戦を強いられていた。


躯、ニヤリ。



躯(さあ、お前はどうするつもりだ飛影?こんなところで消えてしまうのか?妹が泣いてるぞ。なんとかしてみせろ飛影)



――Bブロック



飛影(さあどうするか…)




飛影は自分のおかれている状況について考え始めた。


それは何故かというと、妖力、攻撃力、防御力、素早さの全てが今の棗は飛影の上をいっていたからであった。



変化した棗の力が一体どれほどのものか、その強さをはかる為に肉弾戦を仕掛けた飛影であったが、実際に戦ってみて、黒龍波を簡単に破った今の棗には、恐らく普通に放っただけでは邪王炎殺双龍波すらも通用しないと感じていた。



ガン!!!



ドガァァァァーー!!



バキッ!!!!



メイン会場の観客達が唸る程の激しい肉弾戦を繰り広げている飛影と棗だが、ここで戦いの流れに大きな変化が出てくる。



棗が飛影の頭の中で考えている事を見抜いたのか、不気味にニヤリと笑うと飛影に話しかけた。



棗「飛影、お前は既に気付いているのではないのか?今のままでは私には勝てないという事を」



飛影「フン。バカな事を言うな」



棗「そうか?あれから黒龍波を使わずに、肉弾戦に戦いをシフトさせたのは、私の力が一体どれほどのものか見極める為なのだろう?」



飛影(チッ、この女読んでやがる)



棗「私の力にお前は正直驚いている筈だ。お前は冷静に振る舞って顔には出してないが、頭の中では私を倒す方法を必死に考えている。フフフ、お前も鉄山と同じだ。大した事はない」



飛影(ピクッ)



棗の言葉に反応する飛影。



飛影「オレが大した事ないだと?貴様のその言葉、直ぐに後悔させてやるぜ!」



これまで冷静であった飛影は棗のこの言葉によって冷静さを失ったのだった。



飛影は棗に攻撃を仕掛ける。



棗「まだまだガキだな。無駄な動きが増えた」



飛影の攻撃を簡単にかわす棗。



そして。



ガシッ!!



飛影の腕を掴む。



飛影(!!)



棗「ハァーーー!!!」



ブーーーン



ブーーーン



飛影の小さな身体を力に任せて振り回す。



飛影(クッ!女のくせになんて力だ)



棗、ニヤリ。



ビューーーーー!!!



飛影の身体を岩壁に向かって投げた。



ドガァァァァァン!!!!!!



飛影の身体がぶつかった衝撃で岩壁が粉々に砕ける。


棗(………)



フッ



棗の姿が消える。



飛影「クソッ!」



ガラガラガラ



崩れた岩壁の下から飛影が出てきた。



フッ



立ち上がったばかりの飛影の前に姿を現す棗。



飛影(!)



ドゴォォォォォ!!!



棗の必殺の一撃が放たれる。



飛影の腹に棗の拳が深くめり込んだ。



飛影「ガハッ!!」



――メイン会場



雪菜「飛影さん!!!」



躯「今の棗の一撃、
まともに入ったな」



飛影は口から大量の血をはいて、地面に片膝をついた。



そして鋭い目つきで棗を睨む。



棗「弱いな。私にお前は勝てない」



飛影(クソッたれ…)



屈辱とも言える棗の言葉に飛影は怒りを露わにして拳を強く握り締めたのだった。



続く
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