幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編05
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――魔界統一トーナメントBブロックの四回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
飛影(ひえい)



――Bブロック



棗「弱いな。私にお前は勝てない」



飛影(クソッたれ…)



屈辱とも言える棗の言葉に飛影は怒りを露わにして拳を強く握り締めたのだった。



――メイン会場



躯「フッ、あの飛影の顔。あいつは今、相当頭にきているようだな」

(飛影、冷静さを欠いたら勝てる戦いでも勝つ事が出来ないぞ)



雪菜「躯さん…」



躯「うん?」



どこか思い詰めたような顔の雪菜。



躯(随分と顔色が悪くなってる。相当思い詰めているな。ま、魔界に来てから棗に世話になっていたと聞くから、当然か)



雪菜「さっき躯さんは別人のようだと言ってました。私もあの棗さんは別人に思えてなりません。」


躯「だろうな。恐らくは棗は二重人格」



雪菜「二重人格…」


躯「飛影との戦いの中で何らかの拍子に棗の別人格が出てきたんだろう」



雪菜「棗さんが二重人格、何故…」



躯「さあな。多分、ガキの頃にでも何かあったんだろう」

(このオレのようにな)



――選手達の休憩所



周「あの飛影がやられた」



九浄「棗…」



周「九浄、オレ達はお前と棗とは古い付き合いだが、あんな棗は初めて見る。まるで別人だ。これは一体どうなっているんだ?」



九浄(………)



周の問い掛けに対して、
九浄は何も言わない。
だがその顔はかなり険しい。



鉄山(九浄のこの顔は…、棗のあの変化について何か知っている顔だ)



周「なあ、話してくれよ九浄、双子の兄のお前なら知っているのだろう?」



九浄(…………)



周の問い掛けに、またもや口を閉ざして何も話そうとしない九浄。彼の目はスクリーンに映し出されている棗を凝視していた。



何も話そうとしない九浄に周はだんだんイライラしてきた。



周「オイ!黙っていないでなんとか言えよ!古い喧嘩仲間のオレ達にも話せないっていうのかよ!!」



大きな声で怒鳴りちらし、今にも九浄に掴みかかってもおかしくないほど周は怒り、そして興奮していた。


鉄山「落ち着け周。気持ちは分かるが、お前が興奮して何になる」



周「鉄山、だがよー……」



鉄山は静かな声で九浄に話しかける。



「九浄、棗の事、話してくれないか?棗はオレ達にとっても大事な喧嘩だ。知る権利はある」



九浄「鉄山…」



鉄山「話してくれないか…」



九浄「分かったよ」



九浄は静かに息を吐いた。



そして二人に語った。



忌まわしき棗の過去を。



――Bブロック



飛影「チッ」



腹部に大きなダメージを受けた飛影は腹を押さえながらゆっくりと立ち上がる。



棗「流石のお前も今の一撃で妖気がガタ落ちだ。一度は私を圧倒していたお前としては今の状況はかなりの屈辱だろうな」



飛影(………)



棗の言葉を飛影は黙ったまま聞いている。だが、その顔は険しい。



棗「その傷ではもう私を倒す事は不可能だ。降参したらどうだ?」



飛影「まったく嫌みな女だ。不可能かどうか見せてやるぜ」



ズキューーン!!!



飛影は棗に向かって駆け出した。



棗「驚いたよ。その傷でまだそれだけ動けるとはね」



飛影「ハァーーーー!!!!!」



激しい連続攻撃を棗に仕掛ける飛影。



だが、傷の影響と冷静さを欠いた今の飛影の動きにもはやキレがない。



棗は飛影の攻撃を軽くあしらっている。



飛影「クソッ!!」



棗「フッ」



バキッ!!



棗の強烈なパンチが飛影の顔面に炸裂。



ズズズっと攻撃を受けた衝撃で飛影の身体が後ろに下がる。



飛影の態勢が崩れたのを見た棗は攻撃を仕掛ける。



棗「ハッ!!」



ズン!!!



体重を前に掛けて踏み込む。



ビューーン!!!!



棗の必殺の一撃。



ドゴォォォォォ!!!!!!!



さっき受けた腹部の傷口に棗の拳がめり込む。



ズズズ…



ズボッ!!



そして飛影の身体を棗の拳が完全に貫いたのだった。



――メイン会場



小兎「!!!!!!」



雪菜「飛影さん!!!!!!」



躯「!!!!!!!」



――選手達の休憩所



九浄「!!!!!」



幽助「飛影!!!」



――Bブロック



飛影「ガハッ」



口から大量の血を吐き出す。



棗の綺麗な顔が飛影の返り血で赤く染まる。



棗は口のまわりについた飛影の血をペロリと舐めた。



そして。



躯「終わりだ」



ズボッ!



飛影の身体から手を引き抜いた。



飛影は再び口から大量の血を吐き出した。



そして飛影の意識が徐々になくなっていく。



飛影は今の自分の身体がどういう状況なのか直ぐに分かった。



そう、これはあの時と同じ状況だ。



かって時雨と相打ちになったあの時。



それはすなわち死ぬという事。



ドサッと小さな飛影の身体は地面にうつ伏せに倒れた。



飛影(クソッ…)



棗はニヤリと笑うと右手を上に挙げた。



――メイン会場


躯「棗のやつ、飛影を殺す気だ」



雪菜「!!」



雪菜は咄嗟に念信を棗に送った。



雪菜《棗さん!!聴こえますか!もうやめてください!!!!!》



雪菜の念信はもはや絶叫に近い声だ。


――Bブロック



棗《雪菜か》



棗は雪菜の念信を聴いて手を止めた。



棗《フッ、何故止めるんだ?せっかくとどめを刺して飛影を楽にしてやろうと思ったのに》


雪菜《お願いです。やめてください。元の棗さんに戻ってください》


棗《クックックッ、残念だったな。もう一人の私は今は深い眠りについている。もう簡単には表に出て来る事はあるまい。何故なら私がもう出させないからだ》



雪菜《そんな…》



棗は足下に倒れている飛影を見た。



棗《おっと、そういえば面白い話を思い出したよ。
もう一人の私がこの飛影と賭けをしていたんだった》



雪菜《か、賭け………??)



棗は倒れている飛影の髪の毛を掴んで持ち上げた。



棗「飛影、お前の大切な女が私に念信を送ってきているぞ」



飛影「ゆ、雪菜…」



棗「兄妹の名乗りもしないうちに死ぬのは無念だろう?私が今から雪菜に話してやるよ」



飛影「貴様…!!まだ勝負はついていない……」



棗はニヤリと笑うと飛影の頭を地面に押し付けた。



棗「そのざまで何を言っている。大人しくしていろ」



雪菜《やめてください棗さん!!》



棗《フッ、雪菜、お前は兄貴を捜していたんだったよな》



雪菜《!!?》



棗《お前の兄貴が一体誰なのか教えてやろうか?
お前の兄貴はこの飛影だ》



雪菜《!!!!!!!!!!》




続く。
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