幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編05
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――魔界統一トーナメントBブロックの四回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
飛影(ひえい)



――Bブロック



棗《お前の兄貴が一体誰なのか教えてやろうか?
お前の兄貴はこの飛影だ》


雪菜《!!!!!!!!!!》



棗の口から雪菜に伝えられた衝撃の言葉。



棗「フッ、念信が切れた。雪菜の奴、よっぽど驚いたみたいだな」



棗はそう言うと足下に倒れている瀕死の飛影の髪の毛を掴んで無理矢理立ち上がらせた。



そして得意気な顔で飛影の耳元でそっと囁く。



棗「お前の妹はお前が兄だという事を知ったぞ」



飛影(!)



棗「これでお前と妹の間に出来ていた秘密は無くなった。私に感謝するんだな」


棗の言葉に飛影は憎悪を剥き出しにして睨み付けた。



飛影「貴様!!」



棗「クックックッ、ハッハッハッハ」



棗の高笑いが闘場に響き渡った。



ボォォォォォ!!



棗(!)



飛影の右手に炎が宿る。



そして炎は一瞬で剣となった。



シュパッ!



棗は咄嗟に飛影から手を離して、後ろにジャンプ。



棗の右頬から血が流れる。



棗「フッ、邪王炎殺剣か。まだそれだけの炎を出せる力があったか」



飛影「ハァ…ハァ…ハァ…邪眼の力を舐めるなよ…」


――メイン会場



雪菜「飛影さんが…」



棗との念信によって、
衝撃の事実を知った雪菜は、呆然としていた。



雪菜(飛影さんが私の捜していた兄…)



今の雪菜にとっては兄が誰なのかが分かったという喜びよりも戸惑いの気持ちが大きかった。



まさか自分があれほど捜し求めていた兄が身近にいる人物だとは夢にも思っていなかった。



雪菜の脳裏に飛影との出逢いから現在に至るまでの出来事が次々と浮かび上がってくる。



雪菜が人間界で捕らわれていた垂金の屋敷が飛影との初めての出逢い。



雪菜「あなたは…?」



飛影「仲間さ…あいつらのな…」



雪菜(あの時が飛影さんとの初めての出逢い。私を人間たちから守ってくれた)


暗黒武術会。左京の手によって崩れ落ちていく会場。


飛影「大丈夫か?」



雪菜「は、はい…。ありがとうございます」



雪菜(私に倒れてきた瓦礫から飛影さんは身をていして私を助けてくれた)



雪菜は両手を胸にあててギュッとした。



雪菜(そしてあの時…)



雪菜の脳裏に飛影との思い出の中で最も印象に残っていた、四年前のあの日が克明に浮かび上がってくる。


――雪菜の回想



雪菜「これを・・・。母の形見です」



雪菜は飛影に氷泪石を手渡した。



雪菜「氷女は子を産むと一つぶの涙をこぼします。それは結晶となり産まれた子供に与えられます。私の母、氷菜は二つぶの涙をこぼしたそうです」



飛影は黙って雪菜の話しを聞いている。



雪菜「一つは私がそしてもう一つを私の兄が持っているはずです」



飛影「よくあの垂金に盗まれなかったな」



雪菜「おなかの中に隠してましたから」



飛影(・・・)



雪菜「あ!!ちゃんと洗いましたから汚くないです」


雪菜は慌てた表情で飛影に説明をした。



飛影「どうしてこいつを俺によこすんだ?」



雪菜「私の兄は炎の妖気につつまれていたそうです。全身を呪布にくるまなければ持てない程だったと泪さん(飛影と雪菜の母の友人)が言っていました」



飛影(俺を放り投げた女だな)



雪菜「あなたと近い種族の人だと思うんです。もしもそれと同じ物を持った方に会ったらそれを渡して私は、人間界にいると伝えて下さい」



飛影「くたばったに決まってるぜ。空飛ぶ城の上から捨てられたんだろ?」



飛影の言葉に雪菜はニコリと笑って答える。



雪菜「きっと生きています」



飛影(・・・)



雪菜「これも泪さんが言ってました。『あの子は、私達の言葉を理解していた・・・きっといつか復讐にくるわ』っと。私もそう信じています」



雪菜は真剣な目で飛影の目を見ている。



雪菜「心まで凍てつかせてなければ長らえない国ならいっそ滅んでしまえばいい。そう思います」



飛影「フン・・・それでお前、国を飛び出したわけか〜となると氷河の国が兄探しを許したって話しもウソっぱちだな」



雪菜は顔色を変える事なく飛影の言葉を聞いている。


飛影「いいか、甘ったれるなよ。滅ぼしたいなら自分でやれ。生きてるかどうかも知れん兄とやらにたよるんじゃない」



飛影は雪菜に言い聞かすような口調。



雪菜(!)



雪菜は飛影の言葉に驚き、言葉に詰まった。



雪菜「そうですね。本当・・・そうです」



飛影(雪菜…)



雪菜「なんだか兄に会っても同じこと言われそうですね」



――雪菜の回想・終



雪菜(あの時は本当に不思議な気持ちだった。飛影さんの言葉はまるで兄が言っているように聞こえた。でもそれが何故だかは分からなかった。でも…!)



躯(…………)



雪菜の隣にいた躯は雪菜をずっと見ていた。



躯(棗と念信をしていたようだが、あの様子はただ事ではない。棗との間に何かあったな)



躯は雪菜の肩に後ろから優しくそっと手をかけた。



躯「おいどうした?




雪菜はゆっくりと躯の方を向いた。



雪菜「躯さん……」



躯「棗と念信をしていたようだが、何かあったのか?」



雪菜「飛影さんが……」



雪菜は棗から飛影が兄だという事実を聞いた事を躯に話した。



躯「そうか、知ったのか」



雪菜「躯さんのその反応…、躯さんはこの事を知っていたんですか…!?」



躯「まあな」



雪菜「そうですか……」



躯の答えに下を向く雪菜。


躯「勘違いするなよ。
オレは飛影の口から直接
聞いたわけではない。
あいつをオレの部下に引き入れようとした時に調べて知ったのだからな」



雪菜「……躯さん以外にも知っている方はいるんですか?」



躯「オレ以外に何人かはな。そいつらも飛影から直接聞いたわけではない」



雪菜「何で飛影さんは…
私に自分が兄だという事を話してくれなかったんでしょうか…」



躯「さあな。それは知らない」

(おおよその理由は分かるがな)



雪菜「棗さんもこの事を知っていたなんて…」



雪菜は棗が飛影が雪菜の兄だという事実を知っていたのにもかかわらず今まで話してくれなかった事に少なからずショックを受けていた。



躯「それは棗本人に聞いてみる事だ。何か理由はあるんだろう」



そう言うとスクリーンに映し出されている飛影を見る躯。



躯(飛影よ、お前の心の中をずっと縛り続けていた
鎖がこれで解けてしまった。これからはお前がどうするか見ものだ)



そして雪菜もまたスクリーンに映し出されている棗を見る。



雪菜(棗さん、何か事情があったんですよね?お願い戻ってください。私の知っている棗さんに…。そして私に話してください)



そして飛影を複雑な感情で見つめる。



雪菜(飛影さん、今、私はあなたと話しがしたい。そしてあなたの口からあなたが兄だと私に言って欲しい。兄さん…)



――Bブロック



大きな傷を負い、
今にも倒れて死んでしまいそうな状態の飛影だが、
その眼はまだ勝負を諦めていない。



飛影「…今のお前は強い。おそらく…全力を出した躯と比べてもあまり差はないだろう…」



棗「クックック、瀕死のわりにはよく喋る。今のお前は私の軽い一撃を受けても即死だ。それは分かっているのか?」



飛影「…フン…。勝手に賭けを破ったお前には…最高のプレゼントをやるぜ…」



棗「最高のプレゼントだと?」



飛影は不敵な笑みを浮かべてニヤリ。



飛影「…貴様の…安らかな死という…最高のプレゼントをな…」



続く
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