幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□SIDE STORY
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幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜


序章・SIDE STORY


「黄泉の恐怖の遊園地」


――某遊園地



蔵馬と久しぶりの再会を果たした後、黄泉は息子の修羅と共に修羅が見た看板にあった遊園地にやって来ていた。



修羅「うわぁ〜、凄いよパパ!変な形の物がいっぱいある」



カルチャーショックを受けた様に修羅は驚いていた。


黄泉「これが人間界の娯楽施設である遊園地っていうものか・・・」

(目が見えないとはいえ、分かるぞ。妙に高速のスピードで動いている物体を感じる。未知な物ばかりだ)


黄泉は魔界から社会勉強を兼ねて、息子の修羅を連れ人間界に訪れたのには二つの理由があった。



一つ目は魔界とは違う異世界の文化に触れる事で色々と学び成長して欲しいと思う親心。



二つ目はそして間もなく、魔界で開かれる魔界統一トーナメントの前の息抜きの為であった。



修羅「パパ!こっちだよ!!遊園地の入口があそこにあるみたいだよ」



グイグイ



黄泉「修羅、分かったからそんなにパパを引っ張るな」



修羅は普段とは別人の様に大はしゃぎしていた。



修羅は強引に黄泉の手を引っ張って入口に連れて行く。



遊園地の入口の側に黄泉と修羅か行くと受付のおばさんが声をかけてきた。



おばさん「いらっしゃいませ。お客様ご入場ですか?入園料が大人が1000円、子供が500円です。一日乗り物乗り放題のフリーパスが大人3900円、子供2900円です。ここでは乗り物の乗り放題のフリーパスがお勧めですよ」



※価格はある遊園地の料金を引用しています。



修羅「パパ、この人間が何か訳の分からない事を言っているよ」



黄泉「ああ。人間界では食料を手に入れたり、こういう娯楽施設に行くとお金が必要らしい」



修羅「お金?へ〜、人間界にも魔界と同じ様にお金があるとは驚きだよ。パパはお金持っている?」



黄泉「心配するな修羅。パパに任せておくがいい」


黄泉は息子に自信ありげな顔を見せた。



そして直ぐに受付のおばさんに話しかける。



黄泉「一日乗り放題のフリーパスをもらおうか。大人一人と子供一人だ」



おばさん「はい。6800円になります」



おばさんは営業スマイルで答える。



黄泉「これで足りるか?」


そういうと黄泉は胸元から謎の紙幣を取り出した。



その紙幣には変な顔の妖怪が印刷されていた。



黄泉が差し出したお金・・・、それは昔から魔界全土で広く使われている魔界共通のお金であった。



おばさん「お客様、これは一体何ですか?」



黄泉「何って、お金だが・・・」
(どういう事だ??)



黄泉の差し出した紙幣を見て、怪訝そうな顔をする受付のおばさん。



(ニコニコ)
修羅「パパ、まだ〜?早く入りたいよ」



修羅の目は期待に胸を膨らませて輝いている。



黄泉「ちょっと待ってくれ修羅」



そして黄泉は受付のおばさんにもう一度問いかける。


黄泉「これは使えないのか?俺の来た世界では一番高いお金なのだ」



おばさん「これは外国のお金ですか?この遊園地では外国のお金は取り扱いしていませんよ。日本円でお願いします」



黄泉「な、何だと!?」



受付のおばさんの言葉に驚きの声を上げる黄泉。



黄泉自身も実はまだまだ人間界の事は勉強不足なのだ。



修羅「どうしたのパパ?」


背後から修羅の心配そうな声が聞こえてくる。



黄泉(ま、まずい、持っていたお金が使えないとは修羅に言えない・・・。任せろと修羅に言った手前、カッコ悪いではないか)



黄泉は一人の世界に入り込みブツブツ呟いている。



黄泉(人間界のルールを破ってここに入るのは容易いが、これから人間界で動きづらくなる。一体どうする?)



修羅「パパ?」



おばさん「お客様?」



修羅とおばさんは黄泉に同時に声をかける。



黄泉「むむむ・・・」



徐々に追い詰められる黄泉。



その時、黄泉の発達した聴覚に、ある人間達の会話が耳に聞こえてきた。



「おい、金出せよ!」



「やめてください」



バキッ



顔を殴るような音がした。


「う・・・」



「さぁ、出せよ!痛い目にあいたくねーだろう?」



(ニッ)
黄泉(フッフッフッ、神は俺を見捨てていなかったようだな)



修羅・おばさん(??)



修羅と受付のおばさんは突然、不気味な笑みを浮かべた黄泉の顔を見て困惑した。



黄泉「修羅、少しここで待っていろ」



ズキューン



修羅にそう告げると黄泉は高速のスピードで動いて走り去っていった。



修羅「あ!パパ!?」



おばさん「お客様が消えました・・・」



お互いに別の意味で驚く二人であった。



――黄泉の耳に聞こえた先は遊園地近くの建物の裏からだった。辺りに人通りがない薄暗い場所。



バキッ



「まだ、痛い目にあいたいのか?」



チンピラ風の若い男は鋭い目つきで気弱な少年を脅している。



「だ、出しますから!!もう止めてください!!!」


気弱な少年はポケットから財布を取り出してお金を出そうとする。



パシッ



「あっ・・・」



「へっ、せっかくだから財布ごと頂いておくぜ」



「そ、そんな・・・」



黄泉「おい」



そこへ黄泉が姿を現した。


「なんだてめえは!」



鋭い目つきで黄泉を睨みつけるチンピラ風の若い男。


(この人は僕を救ってくれる正義の味方だ!!)



興奮する気弱な少年。



気弱な少年の目には黄泉がチンピラ風の若い男を倒して自分を救ってくれるヒーローの様に見えていた。



彼は黄泉の次のセリフが「弱い者イジメは止めろ!」っといった感じでチンピラ風の若い男に言うものだと思っていた。



しかし彼の予想に反して黄泉の口から出た言葉は意外な言葉だった。



黄泉「日本のお金が欲しい」



「ええ〜??」



声を上げて驚く気弱な少年。



黄泉「うん?」



声を上げた気弱な少年を不思議そうに見る黄泉。



「あ?オッサン何言ってんだ。ナメとんのかコラァ!」



チンピラ風の若い男は黄泉の胸ぐらを掴む。



黄泉(・・・)



ガン!!



黄泉が壁を殴ると黄泉の腕がコンクリートを貫いた。


いわゆる器物損壊である。


「へっ!?」



一瞬で表情が凍りつくチンピラ風の若い男。



黄泉「お金が欲しい」



ゴソゴソ



チンピラ風の若い男は自分のズボンのポケットの財布から2万円をかしこまって、黄泉に差し出した。



(ニコッ)
「ど、どうぞ」



チンピラ風の若い男はひきつった笑顔で黄泉にお金を渡した。



パシッ



黄泉はお金を受け取った。


黄泉「すまないな」



ズキューン



そうチンピラ風の若い男に告げると、二人には見えない高速のスピードで動いて消え去った。



二人(・・・)



唖然とするチンピラ風の男と気弱な少年。



我に帰ったチンピラ風の若い男は気弱な少年に向かって一言。



「こ、このお前の財布はとにかくいただいておくからな」



「そ、そんなぁ・・・」

(あの人は僕を助けに来たのではなかったんだ)



結局、気弱な少年はチンピラ風の若い男にカツアゲされたのであった。



――遊園地の入口



黄泉「待たせたな」



修羅「遅いよー。何処に行っていたんだよ!」



黄泉「い、いや、ちょっとな」



黄泉は涼しい表情で答えた。



修羅「まあいいや!パパ、早く行くよ!」



黄泉「分かった、分かった」



黄泉は受付で、奪ったお金からフリーパスの料金を支払って修羅と遊園地に入園した。



黄泉「修羅、どれから行くのだ?」



修羅「えっと・・・」



キョロキョロ



修羅は遊園地内を観察した。



修羅「パパ!あのジェット・コースターって奴に乗ろう」



ビューーー!!!



黄泉と修羅の目の前でジェット・コースターが走っている。かなりのスピードだ。



黄泉「面白いのか?」



修羅「パパ、あれは絶対に面白いって!!」



黄泉「そうか?」



黄泉は修羅に言われるままにジェット・コースターに乗る事にした。



このジェットコースターこそが黄泉に凄まじい恐怖を味わせる幕開けになろうとはこの時点では知るよしがなかった。



――ジェットコースター



黄泉「これに座っていればどうやら走りだすようだな」



(ニコニコ)
修羅「面白そう!」



黄泉「狭いし、自分が動かないのは性に合わんな」



ガタガタガタ



ジェット・コースターがゆっくりとゆっくりと動き始めた。



黄泉「何だ?こんなにも走り始めは遅いのか?」



修羅(ドキドキ)



修羅の目は輝く。



黄泉「な、何だ!?この緊張感は・・・。いつからさっき、俺が感じたあのスピードになるというのだ??」


目の見えない黄泉には加速地点が分からなかった。



(ニコニコ)
修羅(ワクワク)



ガタガタガタ



ジェット・コースターは徐々に加速地点に近付いてきた。



黄泉(この俺をここまで緊張させる物を作り出すとは、人間界は意外と侮れないな・・・)



人間界の技術力に黄泉は警戒を強めたのだった。



そして。



ドォォォォォォォ!!!



黄泉(!)



ジェット・コースターが加速地点からスピードを急激に上げて走り出した。



(ニコッ)
修羅「面白しれーー!!」


修羅の興奮は最高潮。



黄泉「ウォォォォォ!!?」



黄泉は突然の加速で悲鳴を上げた。



満面の笑みの修羅。ひきつった表情の黄泉。



ドォォォォォ!!!!!



さらに加速するジェットコースター。



黄泉「ぬォォォォォ!!!」



加速に伴って悲鳴の声の大きさが増していく黄泉。



修羅「スゲー!!スゲー!!」



父親である黄泉とは対称的にはしゃぎまくる息子の修羅。



黄泉「うわァァァァァ!!!」



もはや黄泉に父親としての威厳はなかった。



そして・・・。



ジェットコースターが元の場所に戻って停止した。



修羅「よっと」



修羅がジェットコースターから降りる。



修羅「最高に面白かったよ!!ね、パパ?」



修羅はそう言って黄泉の顔を見た。



黄泉(・・・)



黄泉は無言でゆっくりとジェットコースターから降りる。



修羅「どうしたんだよパパ?」



黄泉の様子が変な事に気付いた修羅。



そして黄泉はしゃがみ、真剣な顔で息子の肩に手を置いて一言。



黄泉「に、人間界・・・、恐るべし」



バタッ



修羅「パパ!!パパ!!」


かって魔界を統一するべく、一大国家を築き、圧倒的強さ、そして計算高く、策略にも優れた男であった黄泉。



魔界で最強クラスの妖怪の一人でもある黄泉は人間界の娯楽施設である、ジェットコースターによって敗れ去ったのであった。



――30分後



修羅「パパ大丈夫?」



父親を心配する息子。



黄泉「もう大丈夫だ修羅。時間をロスしてしまったな。次はどれに乗るか?」



なんとか復活を遂げた黄泉。



修羅「え〜っとね・・・」



キョロキョロ



修羅は辺りを見渡す。



修羅(!)



何かを発見する修羅。



直ぐに黄泉の腕を引っ張り、次のアトラクションに連れて行く。



修羅「パパ!次はあれに乗るよ!!」



ドォォォォォ!!!!!



黄泉「こ、この音はまさか!?」



そう、修羅が次に選んだアトラクションは先程のジェットコースターに勝るとも劣らない絶叫マシンであった。



そして・・・。



修羅「やっほーー!!」



黄泉「ぬォォォォ!!」



黄泉の絶叫マシン地獄はまだまだ続くのであった。



終わり
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