幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜
□SIDE STORY
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沢村「桐島、あの女の子がどうしたんだよ」
桐島「どうしたって、あれって、どうみたって…」
大久保「迷子だよね…」
桐島「お母さんとはぐれたんじゃあないのかな。沢村、声をかけてみろよ」
沢村、「エッ!?」と言うような顔をする。
「お、俺がか!?」
桐島「おう。俺達の切り込み隊長だったお前が、まずは行くべきだろう」
沢村「やれやれだぜ」
沢村はゆっくりと女の子に近付いていく。
そして女の子に声をかける。
「おい、どうした?何を泣いているんだよ」
女の子が沢村に気付く。
女の子(!)
そして沢村の姿を見た、女の子の表情が固まる。
長髪で派手なバンドマン風の格好をしている、沢村の姿は、幼い女の子に恐怖心を与えた。
強ばる女の子の表情。
そして、大きな声で泣き出す。
沢村「お、おい、そんなに泣くんじゃねーよ……!!?」
さらに泣き出した女の子を見て慌てる沢村。
ヒソヒソ
道行く人が白い目で沢村を見る。
「何、あの人、危ない人じゃない?」
「警察呼んだ方がいいんじゃねー」
沢村、ズーンと落ち込む。
「俺ってそんなに怪しいのか…グスン」
大久保(そんな姿だからな……)
桐島が沢村の助け舟に入る。
「そこの可愛いお嬢ちゃん、どうしたんだい。お兄ちゃんに話してごらんよ。悪いようにはしない。お兄ちゃんに全てを任せるんだよ」
歯を光らせ、数々のオバサマ達を虜にした、ホストでやっている最高の営業スマイルを見せる。
女の子、沢村に続いて、
桐島を見ても固まる。
普通の女性や、オバサマなら、この桐島の笑顔で簡単に落ちたかもしれない。
だが相手は幼い少女。
そして迷子だ。
ホストの笑顔が通用する筈がない。
女の子、さらに泣き出す。
ヒソヒソヒソ
「あの人、何?幼女を口説いてるわよ」
「嫌ーね。きっとあの人はロリコンよ」
桐島「ろ、ロリコン……!?」
沢村に続いて、桐島もズーンと落ち込む。
大久保、溜め息。
「俺に任せてよ」
そう言うと、落ち込む二人を女の子から遠ざけて、しゃがんで女の子に優しい笑顔で声をかける。
大久保「恐いお兄ちゃん達でごめんね。それでどうしたの。お母さんとはぐれちゃったのかな」
大久保は上着のポケットから、飴を二、三個取り出すと女の子に握らせる。
大久保「この飴、凄く美味しいんだよ。食べてごらん」
女の子「……ありがとう」
女の子、泣き止むと飴を一つ口に入れる。
女の子「美味しい…」
大久保、ニコリ。
「だろっ。俺の一番のお気に入りなんだ」
「へへへ」
女の子に少し笑顔が戻る。
沢村(あいつ…、そういえば、昔からポケットに何かしらお菓子が入ってたな)
桐島(もうあの女の子を手懐けた。すげーな。そういえば、あいつは兄弟が多いから、子供には馴れてるんだった)
大久保「よし、お兄ちゃん達がお母さんを捜してあげるからな。安心しなよ。もう大丈夫だよ」
優しく女の子の頭を撫でる。
女の子「ありがとう…」
大久保は立ち上がると、
桐島と沢村に話す。
「桐島、沢村、この子のお母さんを捜すよ」
沢村・桐島、ニコリ。
「おう!」
三人は女の子の母親を捜す為に動き出した。
そして三人の必死の捜索により、ほどなくして、女の子の母親は見つかった。
「娘がご迷惑をかけました。本当にありがとうございました」
三人に深々と頭を下げる母親。
大久保「お母さん、そんなに頭を下げなくていいですよ。俺達は当たり前の事をしただけっすから」
沢村と桐島も母親が見つかって安堵の笑顔を見せている。
「お兄ちゃん達、ありがとう」
「本当にありがとうございました」
去り際に女の子は笑顔で、姿が見えなくなるまで三人に手を振っていた。
沢村「母親、見つかって良かったよな」
桐島「子供の嬉しそうな顔を見るのって、なんかいいよな」
大久保「ああ。子供の笑顔は最高だよ」
三人は満足そうに母娘が去った道を暫く眺めたのだった。
――そして居酒屋
約束の19時を少し過ぎた頃。
桑原「悪い、遅くなっちまった」
居酒屋に桑原がやってきた。
沢村「桑原さん、待ってましたよ!」
桐島「さあ、こっちに座ってくださいよ」
大久保「すいません。ビール生一杯、追加お願いします」
桑原が席に座る。
直ぐに店員がビールを持ってくる。
四人はビールを片手に持つ。
大久保「それじゃあ、四人揃ったって事で、始めましょうか」
桐島「乾杯は何に乾杯する?」
沢村、ニコリ。
「それは決まってるだろ」
沢村が桐島と大久保に目で合図。
大久保・桐島、理解した模様。
「ああ〜。そうだな」
桑原「うん?」
一人分かっていない桑原。
沢村「では桑原さんと雪菜ちゃんの前途ある未来に乾杯ーーー!!」
桐島・大久保「乾杯ーー!!」
桑原「お、おいお前ら、何言ってんだよ……!!」
予想外の乾杯の言葉に慌てる桑原。
大久保「オレ達、桑原さんと雪菜ちゃんが上手くいってくれる事をずっと願ってるんですよ」
桐島「雪菜ちゃんは、奥手だから、しっかりと桑原さんがリードしないと駄目でよ」
沢村「あんないい子は、なかなかいないっすから逃がしたらいけないですよ。桑原さんがしっかり守ってあげないと」
桑原「始まってそうそう…お前らな〜」
桑原は仲間の言葉に照れながらも、嬉しそうに笑う。
そして心の中で感謝。
(ありがとよ。お前らに会うと、嫌な事があっても直ぐに吹き飛んでくぜ)
四人は、久しぶりの飲み会で大いに語り、英気を養ったのだった。
そして楽しい宴はあっという間に過ぎていく。
沢村・桐島・大久保「じゃあ、桑原さん、また」
桑原「おう。今日は久しぶりに楽しかったぜ。またなお前ら」
家の前で三人と別れる。
桑原、桐島、沢村、大久保、四人の桑原軍団の友情と交流はこれからも続いていく。
堅く結ばれた友情に終わりはないのだ。
三人の後ろ姿を見ながら、桑原は沢村が乾杯の時に言った言葉を考える。
《あんないい子は、なかなかいないっすから逃がしたらいけないですよ。桑原さんがしっかり守ってあげないと》
桑原(分かってるぜ。雪菜さんは、どんな野郎が現れたとしても、俺が必ず守る)
ポケットの中から試しの剣を取り出した。
桑原「この新しい剣でな」
そして、試しの剣を握り締める桑原の目は、大事な者を命がけで守ろうと決意する男の目をしていた。
幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜
序章・SIDE STORY
桑原軍団の飲み会
終わり