幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□SIDE STORY
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幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜


序章・SIDE STORY


桑原軍団の飲み会



――桑原、そして桑原の中学時代からの不良仲間であった桐島、沢村、大久保の三人。



桑原をリーダーとした、この四人を当時の同級生や教師はこう呼んでいた。



“桑原軍団”



皿屋敷中学では、最凶・最悪の不良であった浦飯幽助に次いで、彼等は二番目の問題児。



当時、生徒指導をしていた竹中にとっては大きな悩みの種の一つだった。



そして時が流れた現在、桑原軍団はそれぞれの道を歩き出していた。



リーダーであった桑原は大学に進学。



桐島は地元の普通の高校を卒業した後、大学には行かずに、そのルックスを活用して、隣町のホストクラブで働いていた。今では人気ベスト3に入るまでに急成長。その甘いマスクは、世のオバサマ達のハートをわしずかみにしていた。



沢村は中学や高校の時と違い長髪になっていた。地元の工業高校を卒業後、メガリカに憧れていた沢村は、就職先の大阪でバンドを結成する。地道に活動しながらインディーズデビューを目指していた。



大久保は沢村と一緒に地元の工業高校を卒業した。その後、母子家庭の苦しい家計を助ける為に、そのまま地元の工場に就職。兄弟達の面倒を見ながら、彼は真面目に働いていた。



――この物語は、平凡な大学生生活を続けていた桑原が比羅と接触する直前の物語である。



プルルルルル



大久保が携帯電話を片手に、何処かに電話をしている。



ガチャ



誰かが電話に出たようだ。


『はい、もしもし桑原ですが』



可愛いらしい女性の声が携帯電話から聴こえる。



桑原宅にホームステイをしている雪菜である。



大久保『あっ、もしもし。俺、大久保っすけど』




雪菜『あ、大久保さん。和真さんに何か御用ですか?』



大久保「そうっすよ。桑原さんはいますか?』



雪菜『和真さんは先程、お出掛けになりましたよ』



大久保『あ〜、そうなんすか』



雪菜『入れ違いになってしまいましたね。和真さんが戻られたら、電話があった事を伝えておきますね』


大久保『宜しくっす』



桑原不在の為、大久保は電話を切った。



大久保の隣には桐島と沢村がいる。



沢村「桑原さんはいないのか?」



大久保「出掛けたみたい」


桐島「何処に行ったんだろう?桑原さんは携帯を持ってないから、こういう時に連絡がつかないから困るよな」



沢村「どうする?俺達だけでとりあえず行くか?」



桐島「ああ。後からまた電話をかけてみるしかないな」



大阪に就職した沢村が久しぶりに地元に帰って来ていた。久しぶりに桑原軍団の四人が揃いそうなので、彼らは桑原を誘う為に電話をかけたのだった。



大久保「とりあえずカラオケに行こう」



沢村・桐島・大久保の三人はカラオケ店に向かった。



三人がカラオケ店に向かって歩いていると、見覚えのあるリーゼント風の髪型をした男の姿が見える。



桑原和真である。



桐島・大久保・沢村(!)



桑原は離れていても目立つ為、三人は直ぐに気付いた。



桑原は何か考え事をしながらながら歩いているように見える。



桐島・大久保・沢村「おお〜い、桑原さ〜ん」



三人は笑顔で桑原に呼びかけた。



しかし桑原は考えに夢中で、三人の呼びかけに気付かず、そのまま通り過ぎてどんどん歩いていく。



大久保「あれれ・・・、桑原さん、俺達に気付かずに行っちゃったぞ」



沢村「何か考え事に夢中だったみてーだな」



桐島「待ってくださいよ〜桑原さ〜ん!!」



桐島が桑原の所へ走って行った。



桑原「うん?」



ようやく気付く桑原。



桐島の顔を見て笑顔。



「おう!桐島。久しぶりじゃあねーか!!何やってんだ?」



桐島「久しぶりに皆揃いそうだったから、カラオケに行こうって話しになって。桑原さんとこにも電話入れたんですよ」



桑原「そうなのか?悪いな、ちょうど入れ違いだったみてーだ」



沢村と大久保も歩いて桑原の側にやってきた。



沢村「久しぶりっす。桑原さん」



桑原「よう!沢村。こっちに帰って来てたんか」



沢村「一昨日の夜に帰って来たんですよ」



ジーー



沢村(??)



桑原は長髪になり、そして派手な格好をしている沢村を見て笑う。



桑原「この四人の中では、やっぱりおめーが一番変わったな」



沢村「ははは、やっぱりそうっすよね」



沢村は、長い髪を触りながら苦笑いを浮かべた。



大久保「桑原さんも一緒に今からカラオケ行きましょうよ」



大久保の誘いに申し訳なさそうな顔で答える。



桑原「すまねー、今からちょっとどうしても外せない用事があるんだわ」



桐島・沢村(桑原さんが断るなんて珍しいな)



大久保「そうなんっすか、残念です。桑原さんの歌うメガリカの曲を聴きたかったですよ」



桑原「悪いな。この埋め合わせは必ずするからよ」



桐島「桑原さん、カラオケの後、夜に飲み会もやるんですけど、そっちの方でも来れないですか?」



桑原「おう。そっちの方なら行けるぜ」



桐島「じゃあ、いつも俺達が集まっている、あのお店に19時に」



桑原「分かったぜ」



大久保「俺達はこのままカラオケに行きますんで」



沢村「じゃあ桑原さん、また後で!」



桑原「おう!後でな」



桑原は一人、中学校のある方に向かって歩いて行った。



桑原と別れた三人は、予定通りカラオケ店に向かって歩き始めた。



それぞれの道を歩き始めた四人が、久しぶりに夜の19時に某有名居酒屋のチェーン店に集まる。



――カラオケ店



桑原と別れた桐島、沢村、大久保の三人は、カラオケ屋で歌を歌っていた。



沢村「大久保いいぞ!!!」



沢村が大久保に熱い声援を送った。



すると大久保は熱い声援に応える様に立ち上がり、ノリノリでメガリカの代表曲とも言えるナンバーを熱く熱唱し始めた。



これがかなり上手い。



そして大久保は上半身を反らしながらシャウト。



桐島「いいぞ!いいぞ!」


沢村「大久保のシャウトを聴くと帰って来た気がするぜ 」



大久保は今度はマイクを持って、狭いカラオケルームを縦横無尽に走り回る。



大久保「〜〜♪♪♪」



大久保はノリノリ。



中学の時より体重が増えた為か、お腹のお肉がタップン、タップンと激しく揺れる。



沢村が桐島に小さな声で耳打ち。



沢村《おい桐島、あの腹の肉を見ると焼肉が食べたくならねーか?》



桐島《た、確かに。しかし大久保の奴は体重が年々増えているな》



沢村《前に俺が会った時より、確実にお腹の辺りが進化を遂げているぞ》



桐島《あいつの身体、中学の時より一回り大きくなったからな》



沢村《もしかしたら日々のストレスかも知れねーな。あいつは苦労しているからな〜。グスン》



ちょっと涙ぐむ沢村。



実際には大久保が太っている理由は、単純にスナック菓子が大好きで、暴飲暴食を続けている為であった。


まさに自業自得である。



大久保「ウォォォォ!!」


大久保が再び歌いながら激しくシャウト。



桐島・沢村「大久保最高ォォォォ!!」



大久保「イエーーイ!!!


マイクを右手で、クルクル回転させるパフォーマンス。


もはや最高潮に達した大久保を止められる者は誰もいなかった。



桐島「桑原さんも来れば良かったのにな」



沢村「ああ。桑原さん、最近は忙しいのか?」



桐島「そうでもないよ。わりと暇な大学生活を送っているみたいだし、今日のカラオケでも、いつもなら用があっても、それをすっぽかして来て来れるのだけどな」



沢村「だよな。となると、桑原さんが来ない理由は何だろう?」



大久保「何の話しをしてるの?」



一曲をようやく歌い終えた大久保も二人の話しに入って来る。



桐島「桑原さんが俺達のカラオケに来なかった理由。何の用事かなって思って」


桐島・沢村・大久保(……)



三人は顔を見合わせる。



そしてニヤリッと笑った。


沢村「久しぶりにあれをやるか」



沢村の目がランランと輝く。



大久保・桐島「のった!!」



三人の気持は満場一致。



沢村「では俺からな。ズバリ!身体がウズウズして喧嘩に行ったに500円!!!」



桐島「バカッ!中学の時じゃねーつーの」



大久保「だったら次は俺。こっそりと他所で飼っている猫に餌をやりに行ったに300円!!」



沢村「アホッ!桑原さんなら直ぐに拾って帰って、家で飼ってるぞ。親父さんも静流さんも、一家全員猫好きだし」



桐島「任せろ。ここは俺が当てるよ。ホストとしての俺の勘。雪菜ちゃん絡みに1000円!!」



沢村・大久保「なるほど!」



沢村「正解は飲み会に桑原さんがやって来てからだ」


桐島「燃えるな!」



大久保「誰か当たっている奴はいるかな?」



くだらない賭事に熱くなる三人であった。



大久保「雪菜ちゃんか〜。案外、桐島が正解かもな。何かあり得そう」



沢村「俺は大阪に行ってるから、現在の状況を知らねーけど、あの二人は最近はどうなんよ?」



桐島「進展なし。だって桑原さんはあの顔でめちゃめちゃ純情だし、雪菜ちゃんも恋愛は奥手だからさ〜。俺ならあんなカワイイ子は放ってはおかないのだけどな」



大久保「あの二人、仲が凄くいいから、見ているこっちが世話を妬きたくなるよ」



沢村・桐島「だな」



――皿屋敷中学の裏山



桑原「ハッ、ハッ、ハクション!!!」



大きなクシャミをする桑原。



もちろん雪菜絡み。桐島が正解である。



鼻を擦りながら桑原は不思議そうに呟く。



桑原「風邪か??」



桐島達がカラオケで熱唱している時、裏山で必死に、再び次元刀を出す為に努力していた桑原であった。



それは自分自身と雪菜を守る為。



比羅の魔の手がもうすぐ桑原に近付こうとしていた事を彼はまだ知る由がなかった。



――夕方



カラオケ店を出た桐島、沢村、大久保の三人は桑原と後で合流する居酒屋のある方面に向かっていた。



大久保「19時までもう少し時間があるぞ。どうする?」



沢村「ゲーセンでも行っとくか?」



大久保「あれっ?沢村〜、桐島を知らない?」



沢村「あ?」



キョロキョロと辺りを見回す二人。



桐島は二人から少し離れた所で立ち止まっていた。


沢村・大久保「桐島〜〜!!!」



桐島に近付く二人。



沢村「桐島、立ち止まってどうしたんだよ?」



桐島「悪い悪い。ちょっと気になってな」



沢村「何かあったのかよ?」



ようやく大久保が二人の所に走ってやって来た。



大久保「ゼェゼェゼェ。沢村〜、足が速いって!」



僅かの距離で息を切らす大久保。



ちょっと呆れ顔の沢村。



沢村(少しは痩せろよ)



大久保「桐島、どうしたの?」



桐島はゆっくりと右手で指差した。



沢村・大久保「何だ?」



桐島が指を差した先には、小さな女の子がしゃがんで泣いていたのだった。



続く
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