幽☆遊☆白書〜2ND STAGE〜

□大会編05
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――魔界統一トーナメントBブロックの四回戦・第一試合



棗(なつめ)
×
飛影(ひえい)



――選手達の休憩所



九浄「棗はオレたちの両親を殺したんだ…」



鉄山と周に、
過去の話しを一通り語り終えた九浄は、小さく溜め息をつく。



鉄山「お前たち二人にそんな過去があったとはな。
正直、驚いたよ。なあ、周」



周「ああ」



九浄から話しを聞いた二人は、九浄と棗の凄惨な過去を聞き、少し暗い表情をしている。



周「その事件の後、目を覚ました棗の様子は、どうだったんだ?」



九浄「目を覚ました棗は、元の棗に戻っていた。
惨劇の時の記憶は、全く覚えてはいなかったよ。
そして、この大会まであの棗になるような事はなかった」



スクリーンに視線を移す鉄山。



鉄山「あのスクリーンに
映し出されている棗は、棗であって棗ではない。そうだろ九浄?」




鉄山の問い掛けに、
九浄は少し考える素振りを見せた。そして一瞬、間をおき、ゆっくりと問い掛けに答える。



九浄「そうだ。あれは棗が作り出したもう一つの人格さ…」



周「別人格が、
実の両親を殺害するっていう惨劇を引き起こしたってわけか…」



九浄「何故今になって、
別人格の棗がまた現れてしまったのか、
それは分からない。だが、間違いなく棗の身に何かが起きているのは間違いない」



鉄山(オレとの喧嘩の中で、棗のあの人格が現れた。一体何故なんだ…。
分からない。あの時、棗の身に何が起きていたんだ)



――Bブロック



《何故、両親を殺した。お前にとっても父と母なのだぞ!!》



棗の頭の中で善と悪、
二人の棗が対峙していた。



棗(クックックッ、
私は親を殺した。だがそれがどうした?弱者は死に強者が生きる。私にとってはただそれだけの事でしかないのだ)



《…何だと!許せない。お前だけは絶対に!!》



棗(うるさい。目障りだよ。試合が終わるまで消えろ)



ぶつかり合う、二人の棗。



《ぐっ……》



圧倒的な力の差。



主人格の善の棗の意識は、悪の棗によって完全に抑え込まれてしまった。



棗(フッ、他愛もない。
あんな奴より、今は飛影だ)



主人格の善の棗との戦いを制した悪の棗は、飛影との戦いに精神を集中する。



飛影(…………)



飛影は黒龍波を放つ構えで、棗をジッと見つめている。



――メイン会場



小兎「あ〜〜っと!!飛影選手、また黒龍波を放つ構えだ!!」



瀕死の飛影が立ち上がり、黒龍波の構えを見せた事で、観客たちの間でざわめきが起きていた。



「飛影の奴、身体はボロボロだぜ!黒龍波を放つ力は、まだ残ってんのか?」



「でも黒龍波は、さっき棗には通用しなかったぜ」



躯(確かにほぼ100%と言ってもいい。黒龍波は棗には通用しない。飛影もそれは分かっている筈だ。何か策でもあるのか)



――選手達の休憩所



黄泉「黒龍波か。あの身体でまだ放つ力があるというのか。大した奴だ。浦飯、お前の仲間はタフな奴が多いな」



幽助「へっ、まあな。飛影は簡単に終わるような奴じゃねーよ」



黄泉「しかしあの棗という女の妖気は強いな。あの女は確か雷禅の仲間の一人だったな」



幽助「ああ。オヤジの喧嘩仲間だ」



黄泉「フッ、雷禅の昔の仲間はどいつもこいつもクセのある奴らだよ」



浦飯「ああ。そうだな」



幽助はスクリーンに映し出されている飛影の表情が気になっていた。



幽助(飛影のあの顔…。何かをやるつもりだ)



どこかいつもと違う飛影に幽助は何か胸騒ぎを感じていた。



それが何かは分からない。



だが何か大きな事が起こる。



幽助はそれだけは確信していた。



――Bブロック



真剣な眼差しで対峙している飛影と棗。



飛影・棗(…………)



異様な雰囲気を醸し出す飛影に、不気味さを感じて、棗は攻撃を仕掛ける事が出来ない。



棗(私の一撃を受ければ、今の飛影なら間違いなく倒せる。だが、あの瀕死の状態で私を倒せるという、あいつの自信はなんだ?今の飛影は不気味だ)



飛影(チッ、やりたくはなかったが、この身体で
あいつを倒すにはこれしかないぜ)



棗に受けた傷が痛み、飛影の額から汗が滲み出てくる。



飛影(魔封紋があるといっても、こいつをやったらオレの身体は只ではすまない)



飛影は、かって暗黒武術会で是流と戦った時の事を思い出していた。



あの時、飛影が戦った炎術士・是流の強さは抜きでていた。



飛影はその是流を倒す為に、当時は未完成であった、邪王炎殺黒龍波を使わざるを得なかった。



未完成の黒龍波を使う事で、是流を倒す事は出来たが、その代償として、右腕を犠牲にする事になったのだった。



強さの次元は違っても、
今、飛影がおかれている状況は、その是流との戦いの時に近いものであった。



飛影(やるしかない。やってやるぜ)



ブォォォォォォ!!!



飛影の妖気が高まる。



棗(来る!)



棗は自分に放たれる黒龍波に備える為に構える。



だが、飛影の行動は棗の予想と外れていた。



バッ



飛影は右手を上に向かって高く挙げた。



飛影「ハッ!!」



ピカーー



飛影の右胸の魔封紋が光る。



ドゥォォォォォォ!!!!


そして飛影は上空に向かって素早く黒龍波を放つ。



――選手達の休憩所



幽助(!!)



黄泉(!!)



――メイン会場



躯(!!)



雪菜(!!)



小兎「あ〜〜っと!!飛影選手、黒龍波を上空に向かって放ちましたァァァ!!これは黒龍波をまた身体に取り込むみたいです!!」


――Bブロック



棗「何ィッ!?」

(黒龍波を私に向かって撃つのでないのか!?)




上空に放たれた黒龍は術者である飛影に向かって来る。



そして。



カーー!!!!!



ズンン



飛影はこれで体内に、三度黒龍を取り込んだ事になる。



ブォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!



飛影の妖気が爆発的に上昇する。



棗「あ…あっ…」



爆発的に上昇したその妖気に棗は驚きを隠せない。



飛影、ニヤリ。



飛影「貴様を倒すには右腕一本で充分だ」



棗(!!!!!!!)



飛影「フッ、貴様には見えるか。このオレの背後に現れた黒龍が。邪眼の力を存分に思い知るがいい」



棗「こんな…、バ、バカな…!?」



飛影、もう一度ニヤリ。



飛影「言っただろう?貴様の安らかな死という最高のプレゼントをくれてやるとな」



続く
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