夜という暗き闇は哀しみという名にかわり、人の心を染め支配していく。 ならば、せめてこの月明かりの下で今、確かな光を捧げよう。 空の青さと、雲の白さを知らない月がマンタイクを照らした。月明かりの下、その光だけが眩しくて闇色に輝いた海を舞台に、虚像の月が水面に揺らめき波紋と共に歪む。そこにはもうひとつの世界が見えた。 「愛してる」 微かな唇の動きだけで、最期にそれを伝えた。夜と同じその漆黒の君に触れて、ただ静かに水底の館へと姿を無くして沈みんでいく意識。 「さて、と……俺も続いて散りますか」 自分が何処に在るのかもわからないのに、終焉の鐘の音がこの世界に響いた気がした。 待っていて、今から私を探すから。待っていて、愛しい人。そして今度は君を探すから。 時間の果てで、またあなたと逢う約束をしましょう。 同じ終わりと、新たな始まりを夢見た者たちの、最も深い愛情の形。 それは―― 美しき終焉 (ねえ、ユーリ……殺して?) (望みのままに、お嬢さん) 温い感じの狂愛を目指してみました。 |