短編集

□eight Hundred
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 今から言うことは、全部が本当のことだよ。


 砂糖はしょっぱくて、塩はとっても甘い。だから、君の好きなプリンなんて、本当は食べたいのに我慢してたノイシュタットのアイスキャンディなんて、塩の固まりなんだよ。

 冬は汗ばむ季節で、夏は凍える季節で。カルバレイスに行く時は、コートにマフラーに手袋でしょ。うんと厚着をしないと風邪ひいちゃう。ファンダリアに行くときは、涼しい格好して水もたっぷり持っていかないと、太陽と暑さにやられちゃうね。

 鯨は星空を泳ぎ、消えない虹のアーチを潜る。飛行竜に乗ってる時に、もしかしたら出会えるかもしれないね。

 君のことは大嫌い。ずっと一緒にいたくない。一瞬で忘れたし、思い出になんかならない。

 神様は存在するし、65億の夢は叶うし。だから、苦しいことなんて、辛いことなんて何もない。

 いつか争いごとはなくなるし、みんな永遠に笑いあえるし。みんなが手を取り合って笑える、幸せな日々はずっと続いてくんだね。

 そして、

 嫌いな君は今でも、元気で息をしている。息をしている。


 今から言うことも、全部が本当のことだよ。


 命に終わりはなくて、過去は容易く変えられる。だから、永遠なんて簡単に手に入れられるし、人は過ちを犯すことはない。

 君のことは大嫌い。君はぐう、とお腹を鳴らし、眠くなったらまた眠り、眠り飽きたら目を覚ます。

 西からお日様はのぼり、兎はお月様の上に。だから、『月では兎さんが餅搗きしてるんだよ』って言った私を馬鹿にしたこと、ちゃんと謝って。

 幸せにきっと終わりはないし、みんながみんないい人だし。みんなが笑っていられる世界に、裏切りなんて、悪なんて存在しない。

 そして、

 嫌いな君は今でも逢いたい時に逢えるし、逢いたい時逢えるし。


 この先言うことは、全部がウソっぱちだから、聞き流してほしい。ねえ、どうか聞き流してほしい。


 神様は存在しない。だってもし存在してたら、こんな残酷な結末なんて与えないのでしょう。

 ほとんどの夢など潰える。全てが叶ったら、人は夢や希望を抱くことはない。

 まだまだ争いごとは続く。たくさんの血が流れ、たくさんの命が消えていく。

 みんな終わりがくること気づいてる。だから絶望するし、苦しくて叫んだり、泣き崩れたりもする。

 君のことが大好きです。ずっと隣にいたかった。裏切り者として海に沈む前の、生きてる君と。

 ウソツキの私で、ウソツキのままの私でいたかった。


 この先言うことは嘘か本当かわからない。



嘘 八 百
eight Hundred

(君の生きていたこの素晴らしい世界で、君の分も生きたい)
(君の分も生きていたい)
(ああ、)
(君の生きているその素晴らしい世界で、君と一緒に生きたい)
(君と一緒に逝きたい)


また元ネタはボカロ。だがしかし、ほとんどそのまま。←
嘘つきな女の子は誰よりも素直。嘘つきな女の子は誰よりも壊れやすい。


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