短編集

□きらきら
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 特別じゃなくていい。ただ“普通“でよかった。ただ“普通“でいたかった。

 賑やかなお喋りに、楽しいショッピング。友達と遊んだり、喧嘩をしたり。本でしか読んだことがない、私の知らない外の世界。
 そんなキラキラしたものがいつも頭から離れなかった。

 この狭い鳥籠から抜け出して、時間を忘れて自由に飛び回れたら。憧れた。夢だった。希望でいっぱいだった。
 こんなにも近くに青空が広がっているのに、飛び立てない。翼はあるのに、羽ばたけずにいた。





 そんな昔話はいつの日か私の中で薄れていく。


「ユーリ、」
「ん、どうした?」


 笑顔、優しさ、温かさ。そんな嘘みたいに素敵なもの。


「ありがとう」


 そんなものに確かに私は救われた。


「おいおい、なんだよ急に」
「お礼が言いたい気分だったの。だから言ったまでよ?」


 世界は広いことも、こんなにも美しいことも、

 お買い物も、楽しいお喋りも、お料理も、
 仲間も、沢山の人との出会いも、
 冒険も、戦いも、
 嬉しさも、悲しさも、寂しさも、沢山の感情も、

 いろいろな外の世界を、いろいろな初めてを、あなたは教えてくれたから。



きらきら
(世界中の何よりも一番あなたが輝いて見える)
(この気持ちを何と呼ぶのか、私はまだ知らない)


ユーリに救われたもう一人のお姫様。


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